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天帝王記  作者: Z−1
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第一章:北の聖君

三天十五国の世界

三神島ゴエルを中心に海を隔て、取り巻く五つの国。ゴエルを含めた六つの島を総称してイェノブと言う。

そこからロスト海域、死海を挟み南西に位置するのは、三神島天あまつ、それを中心に、海を隔て取り巻く五つの国。六つを称して禅昇と言う。

そこから東に曲海を挟み、東に位置する。イェノブからは東南に位置するのは、三神島ハンザもしくは夜千山やせんざ、それを中心に同じく五つの国があり、称してマルタといわれる。

ロスト海域、死海、そして、イェノブとマルタを隔てる闇海の中心にはメレヒと呼ばれる、万物を拒む孤島が存在する。

そのイェノブ、天、マルタを総称してヴェルヴェンと言う。



そして、ここはイェノブ五国最大の栄華を持つ国ホラスト。


 国民からは、千年来の名君と呼ばれ、義を重んじる国王フェルノアが統治する国。ヴェルヴェンの中でも最北端のこの国は、冬は草木が地に潜むほどの極寒の地であり、毎年の冬には国民の一割が凍死をする国であった。しかし、フェルノアの統治が半世紀程過ぎたとき、三神島ゴエルの慈しみを受け、そのときから、冬を越すのに苦を感じない程度の寒さになっていた。

 王は玉座に着いたその時から、老け枯れることはない。フェルノアは王になったとき既に五十を超える年齢であったが、そのときから全く老けることはなくなっていた。これは、ゴエルや諸神の力と言われるが、詳しいことは今になっても分かることはなかった。

 ただ一つ言えるのは、名君と言われる王が半永久的に国土を納め、栄華を極めることが出来るし、逆に暴君も国土を納めることが出来るのだ。


 フェルノア王は玉座に座り、跪礼をして深く叩頭している者達を見下ろす。

「面を上げよ。これより朝議を行う。アルバン」

 は、と返事をして立ち上がる男がアルバン。この国の宰相であり、議の進行を勤める。

「以前より、議題として挙がっていたヨハンのベリオン及びアルマカへの侵略行為ですが、これの背景には禅昇の牙があるように思われます」

 フェルノアは肘掛けを指でコツコツと叩きながら、深い溜息をつく。ヨハンとは三神島ゴエルから南西に位置する国であり、イェノブ最大の武力国家で、軍事産業はイェノブ五国の中でも群を抜いて優れている。そして、そこの後ろ盾として、禅昇の牙がいるのだ。牙は十五国最大の武力国家と言われている。牙はその武力にものを言わせた統治国家で、国民からも他国の民からも恐王と言われ恐れられている。

 その二国が今進軍している国ベリオンとアルマカ。ベリオンはゴエルの西に位置する農業国家。農業の技術が優れており、作物は他国にも輸出され値もなかなかのものが多い。それと共に温暖な土地を利用した牧畜が盛んで、同じく他国にも多く輸出されている。そして、何よりも有名なのが完全平和主義を唱えた。軍隊をほとんど持たない国家ということ。

 アルマカは女王が治めている国で、ゴエルより南東に位置する。国土の七割が砂漠になっている。しかし馬車などの輸送手段が卓越しており、他国との貿易が盛んで、その分取り締まりもしっかりなされており、砂漠が大半を占める国とは言えぬ豊かさを持っている。それとともに貿易をしない者達も独自の技術で織物や加工をしており、アルマカの織物は王宮の者達が使うほどの高度な技術と高い品質である。

 だが、この二国とも軍備は不十分と言えた。両国が立ち向かうにはヨハンの軍隊の力が大きすぎるのだ。両国とも王が玉座に着いて、まだ三十年と少ししか経っていない。百余年の長命国ヨハンに対抗しうる力はまだないのだ。

 ゴエルから東に位置する国、セントブルも昨年玉座に着いたばかりの新王で、他国に干渉する力があろうはずもなく、この自体に手を差し伸べることが出来るのは、十五国の中でも随一の長命国七百年の王朝を築いたホラストしかない。

「まずは、ヨハンに使者を送ることが必要であろうな。侵略行為の追求、及び軍隊の撤退を要求するしかあるまい」

王がアルバンを見据える。アルバンは御意と言うと、側仕えを呼び、使者の件を伝える。側仕えはこのまま、宮廷の南部にある国旋官庁におもむき、国旋官庁長官に言伝をし、長官が国旋官の中から使者を任命し、使者がホラストを発つ。

「陛下、しかし使者を送ったところで、黙殺あるいは使者を殺めることがあると思いますが、その場合はやはり…」

 宰相アルバンはフェルノアの意を確認するかのように、進言を求める。フェルノアは頷き、アルバンの後ろにいる男を見る。

「バレル将軍、使者の不遇がある場合はやむを得ぬだろう。国軍二連と王軍一連を一編隊として、二編隊を準備しおくのだ。ベリオン、アルマカ両国に救援部隊を送る準備を」

 バレルと呼ばれた将軍は、その官位の通り、熊のような体つきで、顔にはこめかみから顎にかけて一本の太い傷跡がある。しかし、将軍に任命されるだけあり、目は落ち着きをもち思慮深さが伺える。

 続いてフェルノアは自らの影に呼びかける。

「カイエル、そなたにはセントブルまで向かってもらい、ヨハンの進軍に注意せよと忠告して参れ」

影が一瞬揺れて、御意の声とともに、フェルノアの影が消える。それは国王一人に対し、一人憑くといわれる影臣と言われる。国王が玉座についたその時より、姿を現し王の命じるままに動く。影臣はメレヒで生まれ、自らが仕える王が現れるまでメレヒで暮らし、仕える王が現れれば、一生を王と共に過ごし、王と共に朽ちると言われている。

フェルノアはそれ以外にも官僚達に命を下し、ヨハンの侵略行為に対する抗いを整えていった。王としての器量が問われる。三天十五国の理を守るためにフェルノア王以下ホラスト国が動き出した。

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