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幻想旅団Twilight frontline  作者: 睦月スバル
命の尊さを知るRPG
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2話 幻想世界【イデア】

「……っは!」


 荒い呼気と共に俺は目を覚ました。

 俺はどうやら悪い夢を見ていたらしい。

 そのせいで冬だというのに体は汗でびっしょりと濡れていて気持ち悪い。

 少しでも気持ち悪さを軽減させようとコートを脱ごうとして――その手が止まる。


「どこだよ、ここ」


 そこは自宅の部屋でも、大学の教室でもなかった。ついでに言えば呑気に寝ていられるような場所でもなかった。

 空を見上げれば鳥の代わりにドラゴンが羽ばたき、地には角の生えた馬がそこかしこを駆け回っている。

 俺が寝ていた場所は、思いっ切りファンタジーな平原だった。


「俺はまだ、夢を見てるのか……?」


 ありきたりだと知りながら頬を抓る。すると思った通りの痛みが伝わってくる。……この光景は、どうやら、夢ではないらしい。


「その通り。貴方の目の前に広がる事象も風景も等しく全てが現実です」


 すると無機質な、それでいて嫌に耳に覚えのある声が聞こえた。

 額に青筋を立てながら振り返ると、そこには当然のように俺を殺した女死神が立っていた。


「ようこそ、幻想世界【イデア】へ。私グリム・リーパーは貴方の来訪を歓迎します」


「【イデア】って、何なんだよ。というか俺を元の世界に返してくれ」


「落ち着いて下さい。ちゃんと話しますので」


「これが落ち着いていられーー」


「あまり大きな声を出して彼等を刺激しない事です。貴方も、二度死ぬのは嫌でしょう?」


「っ」


 脳裏によぎったのは、大鎌で両断されたときのーー皮膚の上を鋭い氷がなぞったような感覚……悍ましい死の実感。あれを二度も体験するなんてごめん被る。


「賢明な判断に感謝を。では、場所を移しましょうか。ここは話をするには、向きませんので」


 女死神改め、グリム・リーパーはそう言って鎌の柄で地面を突くと、いきなり地面に大穴が開いた。いや、地面がぽっかりと消失してしまった、というのが正しいか。

 何がともあれ。


「ーーは?」


 当然のように、俺の足場もなくなる訳で。


「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


 ……俺は、人生初の紐なしバンジーを体験することとなった。


♪ ♪ ♪


 どれだけ下に落ち続けた事だろう。少なくとも五分以上は落ちている気がする。おかげで少しだけ思考する余裕が出て来た。

 そして思う。

 コレ、どう甘く見積もってみてもやっぱり俺の命は助からないんじゃなかろうかと。

 だって、落下してる時間だけで体感五分。一体どれほどの位置エネルギーがあることやら。考えるのも恐ろしい。着地時、果たして俺は原形を留めていない気がする。

 おのれ死神。二度死ぬのは嫌だろうと宣いながら自分はしっかりキル数稼ぎとは恐れ入る。絶対に許さない。


「そろそろ到着です。着地の準備を」


「出来るかっ!?」


 地面が近付く。勢いは一向に衰えない。

 俺は死を覚悟して目を閉じーー。


「あれ、痛くない」


 拍子抜けして、また目を開ける。

 地面との距離は僅かに数センチ。しかし落下する様子はない。俺の体は、浮いていた。


「当然です。何の用意もなくあの高さから落ちれば普通の人間は死にます」


「てっきり再殺したいものかと……うげっ」


 口にした瞬間地面との距離がゼロになり、俺は頭から地面に突っ込んだ。

 鼻の頭がジーンと痛み、目尻には涙が浮かぶ。

 畜生、死神めと思いつつ見顔を上げると、そこには、一面の星空があった。いや、これは星空というより寧ろーー。


「宇宙?」


 遮られるものなく輝く星々が散りばめられたそれは、プラネタリウムで見る宇宙の姿そのままだった。


「驚きましたか」


「あ、ああ」


 地中に宇宙がある異常事態に思わず生返事を返す。


「一般的に、地中に宇宙が広がっているのは異常です。しかしこの世界に於いてそれはおかしな事はありません。何故ならここは幻想世界【イデア】。人々の想いや想像から生まれた……物語の世界なのですから」


「……そんな所に俺を連れて来て、どうするつもりなんだ」


「では、単刀直入申し上げます。杉原清人さん。貴方には【イデア】と地球、二つの世界を救う勇者となって頂きたいのです」

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