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2、琴葉

 奏多は随分前から私を、徒歩で二日程離れた大きな街、マカナイルの医者に診せたがっている。が、この周辺の山々に点々とある小さな集落や村を相手に薬師(くすし)を生業としている私に、それは出来ない相談だった。


 私が街の医者に掛かれば、琴葉は自らの病すら面倒をみられない腕の悪い薬師だと、すぐに噂が立つだろう。


 薬師は村や集落単位でそのコミュニティに属する人間を一手に引き受ける。そしてどの薬師を使うかは、村長や族長が決める風習になっていた。彼らには、魔術士呪術士と医師と薬師の境が曖昧な者も多い。


 悪評は風よりも早く走り抜ける。そして、この周辺を縄張りとしている薬師は私だけではなかった。奏多や私が街の医者に掛かれば、下手をすれば、来月を待たずに収入が途絶えるだろう。


 一度そうなれば、この地で生活を立て直すのは至難の業で、取り返しが付かない。家族の思い出が詰まっている、両親の遺した店や家を失うのは嫌だった。


 勿論基本的には自給自足の生活であるから、直ちに今日明日食うに困るという事はない。が、衣類や家財道具。取り分け金銭売買でしか扱っていない品もある、薬の材料の仕入れに差し障りが出るのは致命的だ。


 現状、夢の件について気になってはいても、患者が私本人ではこの目で状態を見る事も叶わず、お手上げだった。幸い、直ちに死んだりはしなさそうなので、追々考えるより他はない。




 ときに今更ながら、揺する叩くまでは良いとして。奏多ときたら、か弱い女性を蹴るとは何事か。遅ればせながら、その内絶対やり返そうと思う。

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