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エルフのステータス

少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

仕方ない、自分から言い出した事だ。

[俺MPもおかしいみたいなんだ、82万8千くらいある]

俺が視界のステータス画面を見ながらそう言うと、またもやスクレイドがくらっと、目眩でも起こしたかのようにブティシークから転げ落ちていった。

しかしクリフトとセリは気にしながらも、なるべく反応しないようにしている。

やはりすぐにブティシークの背に戻ってきたスクレイドは、額に手をあて唸り始めた。


[えっとね、MPと呼ばれる魔力値は高ければいいってものでもない、使い方を覚えなきゃ無駄と言ってもいいくらいなんだよねぇ、だけどもちろんMPが低ければそもそも魔法自体弱くなる]

[うん、なんとなくわかる]

[それで、ヤマトくんの場合高すぎる魔力から様々な魔法が苦労なく使えるよねぇ?]

確かに、産まれた頃から治癒魔法を使いまくってあまつさえ垂れ流して死んだらしいからな。

そして今この世界ではまるでゲームのように、使いたい魔法やスキルがを念じるだけで発動する事ができるようになった。


[じゃあその数値や実力を確かめるには実戦が一番手っ取り早いかなぁー、ということで一緒に飛竜のところに行ってみるかい?]

なんでそうなった?

最悪追いつかれたら撃退、もしくは皆を守れれば良いと思って相談したのに。

どうしてわざわざ飛竜に向かってく話になった?


[そこまでの積極性は望んでないんだけど!?]

[ちなみにレベルはいくつなのかな?]

やめろォー!!

なんて事聞くんだこいつ!

俺はレベルの話が嫌いなんだぞ!

だって顔文字なんだぞ!!

[ちょっとそれは言えない…かな…]

あからさまに目を逸らし口ごもる俺に対し、スクレイドは不審そうに見つめてくる。

[エルフのステータスは聞いたのに…ねぇ…]


ボソッと呟いた言葉には何か独特の重みを感じる。

「クリフト、セリ、あのさー」

「飛竜が来たか!?」

突然呼ばれたクリフトは緊張感を走らせて身構える。

「いや、ちょっと聞きたいことがあって…」

「驚かせるなよ、どうした?」

「えっと、エルフにステータス聞くのってそんなヤバいことなのか?」


「はああぁ!?」

クリフトは出せる限りの大声で叫ぶ。

「まず他人のステータスは普通は教えないし聞かないって言ったよな?」

うん、教えてもらった。聞いた。納得してないけど。

でも旅の仲間になるからってな理由でクリフトは2種類のステータスを教えてくれたんだっけ。


「他種族、しかもエルフのステータスなんてプレーシアの軍事力に関わる情報おいそれと聞けるわけないだろ!?教えてくれるはずもないけどな!」

「まさか勇者様はスクレイド様にステータスを伺うなんて無礼を働いたのですか!?」


クリフトもセリも大慌てで俺を責めるように叫ぶ。

そんなにまずい事だったのか?

「や、でも教えてくれるはずもないなら聞いても事実とは限らないんだろ?」

そう、そこはスクレイドの信用問題の話である。


するとクリフトは呆れたように諭す。

「あのなぁ、エルフは嘘がつけないんだから教えてくれる時は真実だぞ?だがだからこそエルフ個人のステータスなんて滅多に知る機会はないし統計もとれない、もし知れたら高値で取り引きされるか、国によっては爵位や領地が貰えるくらいだ」

「ええええーーー!?」

って事は!?

スクレイドはそんな大事なもんを教えてくれたわけ!?

「き、聞いちゃった…」

ちらっとスクレイドを見ると珍しくむすっとしている、ように見える。

「いくら異世界人だって言ってもな…スクレイド様!教えることなんてないですからね」

「いや、私たちも悪かったのだ、時間はあったのだから少しでもこの世界と勇者様の世界の常識の擦り合わせをすべきだった…」

クリフトは困った様子で訴えかけ、セリは気落ちしながら自分を責めている。

後の祭りとも知らずに。


「クリフト、セリ、ありがとう…またスクレイドと話すから…」


二人にお礼を言って、念話に戻る。

[あのー、スクレイドさん?]

[はいはい、信用されてない俺に何の用かなぁ?]

怒ってる?いや、すねとる。



[俺なんかに一つとはいえステータスを教えて良かったのでしょうか?]

 罪悪感から敬語になってしまう小心者の俺。

[おたくが聞いたよね]

[ハイ、ソウデシタ]

[で?ヤマトくんは俺の秘密を聞いてもレベルは教えてくれないんだね?]

 あれっ?こいつにやにやしてない?

 でも仕方ない、いつか誰かには相談したかった事だ。

[顔文字ってわかるか?]

[カオモジ?]

 うーん、やはり伝わらないようだ。

[別に言いたくないわけじゃなくて、レベルが数値で現れてないんだよ]

[へえ?]

 スクレイドは興味を持ったのかいつもの調子でこちらを向いてくる。


[この世界の人間のレベルの平均も上限も知らないけど、とにかく数字が出ないんだ]

[そんな事は初めて聞いたよ]

やはりスクレイドでも知らなかったらしく、腕を組んで考え込んでしまった。

 と、その時

『クキャアアアアアーーー!!』

『クケエエエェーー!!』


 とうとう二頭の飛竜が後方に姿を表した。

「でかい!!」


 頭から尻尾までの体長はペガルス、いや、馬の三倍程で翼は左右併せて体長と同じくらいの大きさがあり、先には鋭い爪のついた三本にわかれた指の様な作りになっている。

 腹より下にある太い二本の脚も同様に三本の指に鋭い爪、その先には長く硬そうな尻尾。


 見た目は博物館で再現された模型や、映画に出てくる恐竜のような硬そうな皮膚に凶暴な顔で、頭に角のような突起がある。

 一頭は角が一本あり、もう一頭は角が二本だが、一本角の奴に比べると身体が少し小さいようだ。

 そして危惧していた速さも然ることながら、問題は高度だった。


 ペガルスより遥か高くをあの巨体でこちらに向かって飛んでくるのだ。


「ちっ、来たか!」

 クリフトはアメリアとテリスを追い越さないようにブティシークの速度を調整しながら後方上空を警戒している。

 するとスクレイドが念話で話しかけてくる。

[どうする?さっき言ってた実戦、やってみるかい?]

 わざわざ飛び込む真似はしたくないとは言ったものの、実際に飛竜を目にして守勢というのも悪手である事がわかる。

 そしてスクレイドだけで二頭を止めることが出来るのか。

 いや、こいつなら難なく出来そうっちゃ出来そうだし、ケロッと帰ってきそうな気もする。

 放っておこうかな。

[今なんか失礼なのか褒められたのか、よくわかんないけど嫌なこと考えてなかったかい?]

 やはりスクレイドは読心術でも使えるんじゃないか?

[わかった、足でまといにならないように頑張るからよろしく頼む!]


 二頭の飛竜は姿を確認してから僅かな時間で、もうすぐそこまで迫ってきていた。

「クリフト!俺もスクレイドと行ってくるからアメリアをよろしくな!気をつけろよ!」

「ヤマト様!?危ないです!!」

 アメリアは声を張り上げ止めようとする。

「ヤマト!?お前の強さは知ってるが…」

クリフトが言い終わる前に俺とスクレイドはペガルスから降りて上空を目指す。


「お二人共、ご武運を!」

セリはアメリアを先導するように駆け抜けて行った。



「あれはつがいだね、角が一本で身体の大きい方が旦那だよ、足には絶対に捕まらないようにしてね、あの爪には麻痺毒があるんだよねぇ」


『クキャアアアアアーーー!!』

『クケエエエェーー!!』

 スクレイドは飛竜に向かいながら説明をしてくれる。

 そして飛竜を見つめると、残念そうに続けた。

「そうか、捕食の為に来たのか、縄張りを荒らされて怒っているならここを抜けるだけの時間を稼げば良かったんだけどな」

「こいつらの言葉がわかるのか?」

「ああ、大抵の生き物の言葉、というより思念のようなものを読める」

「えっ、じゃあ俺の考えとかも読まれてるの!?」

 自分でも非常事に何を心配してるのかとは思うが大事な事だ。

「知能が高い種族の考えは読めないから安心していいよ、ヤマトくんは顔に出るからわかりやすいだけなんだよねぇ」

「良かった、のか?」

 なんて、呑気な会話をしているともう飛竜のすぐ目の前までたどり着いた。

「驚いてるみたいだねぇ、この高さについてくる獲物は初めてらしい」

 そう言ってスクレイドは雄の飛竜の前に出る。

 自然と俺は雌の飛竜に対峙する事となった。


飛竜たちも俺たちを獲物と認識したのか、はたまた障害とでも思ってくれたのか、ペガルスを追うのをやめてこちらを睨め付けてくる。

「これ本当に大丈夫なのか…」

臨戦態勢の飛竜の迫力に、思わず弱音を吐こうとした時、スクレイドは先程までとは違い、穏やかさが消えて苛立ちを見せた。

「そうかよ、お前らにはこの力の差がわからないのか…引く気はないって事だな…?」

その言葉に呼応するように、飛竜たちも雄叫びを上げた。

『クキャアアアアアーーー!!』

『クケエエエェーー!!』


なんだ…スクレイドの様子がおかしい、というかキレてる?突然なぜ?

「それなら遠慮はいらねえな!俺は殺す気で来たやつには容赦はしない!!」

鳥肌が立つほどのスクレイドの魔力、いや。

殺気を感じる。

何かやばい気がして咄嗟に声をかける。

「スクレイド!勝利条件の確認だ!」


するとスクレイドはこちらを不快そうに見た。

「勝利条件?」

「そうだ、ほら、目的は三人とペガルスを逃がして、ある程度で俺たちも離脱、それから先を急いで合流することだろう!?」

「離脱…ねぇ」


スクレイドは少しトゲが取れて気だるそうになると、頭に手を置いて何度か軽く叩いて目を瞑った。

そして次に目を開くと穏やかな笑顔で頷いた。

「そうだねぇ、時間稼ぎの間にヤマトくんの力試しもあったんだよねぇ」

そう言ったのは飛竜と対峙する前までの、俺の知っているスクレイドだった。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

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