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カルビア7 17歳の大和

少しでも楽しんで頂けましたら幸いです。

魂の融合を果たしたはずなのに魔法は増えていなかった、そして魂に残機があるのはなんなんだ?

すり減らすのではなく、それこそ融合する前のように一つずつ無くしていくような。


昼間クリフトと話をしたことで余計な事を思い出して自問自答する。

こんな時に限ってアイツはなりを潜めるのだから役に立たない。


昔に戻れたら、…昔と言っても、どの時のどの世界の俺なのかなどと、馬鹿馬鹿しい事を考えてしまう。


「大和、大和…」

「おお!?…って、ルカ?」

いつの間にか寝てしまっていたらしい俺は、ルカに起こされてベッドから飛び起きた。


「ごめんな!戻っても大丈夫だって伝えるの忘れてた」

「…え?うん」

「なんだよ、怒ってんのか?クリフトはスクレイドに任せたから大丈夫だぞ!」

「大和、何かいい事でもあった?」

「そんなん無いけど、なんでだ?」

「いや…あ、君って、一度寝ると誰の気配も察知できないのはどうにかならない?危ないじゃん」

「言われてみれば…こええな!危険すぎるだろ!その発想はなかった!」

「…本当に大和だよな?」


少しの会話のあと、ルカは訝しげにこちらを見て距離をとった、なんでだ?

「俺なんか変か?」

「酒でも飲んだ?」

「酒…そりゃ飲んでみたいけど、待てよ?この世界じゃ成人が16だろ!?てことは俺は堂々と飲んでいいのか?どっちの世界の法律守ったらいいと思う?いや、俺転生だからこっちでいいのか!」

「…大和が壊れた」

「失礼な!」

俺は軽快に立ち上がった…はずだったが、身体が言うことを聞かずよろけてベッドに転んだ。


「ん?おかしいな、それより!ルカはちゃんと飯食ってきたか?俺に付き合ってばっかだと身体が持たないぞ?俺は何でもアリのチート野郎だからな、お前になんかあったら俺は一人が嫌な時は誰といたらいいんだよ、な?」

「うっ、うわ…なあ、本当に変だ…スクレイドに何かされたのか!?」

ドン引きのルカから出た人物の名前は、スクレイド?なぜここでスクレイドが出てくるのか?


「…あー、あいつ!またお前を怒らすようなことをやらかしたのか?よし、ちょっと叱ってくる」

今度こそベッドから降りて、部屋を出ようとすると目の前にルカが立ちはだかって、俺の両肩を掴みぐわんぐわんと揺らした。


「待って大和!本当にどうした!?どこに行くつもりなの!?」

「へ…?アメリアたちの部屋に行ってさ、スクレイドをこらしめたら、ついでにちょこっとアメリアに癒されてこようかと…ん?あれ…あーわかったルカ、ちょっと待ってくれな!一回スキル確認するか、…えっと、どれだ?いやこんなんアレしかないだろ!アホか俺は!」

「……は?」

珍しく顔のパーツがとっちらかったルカを待たせ、スキルを見るとやはり使用した覚えのない【自己暗示】が発動してる!


詳しくなぞってみると…ああ!なるほどね、17の俺に設定されてたわけだ!

「これはかなり…すごい恥ずかしいぞ!?っと、…ルカ、悪いが今見たものを全部忘れてくれないか?」

「…大和?」

「その…、寝ぼけていて【自己暗示】を中途半端に発動させていたらしい、気にするな」

ルカの理解力に期待をして、大雑把に説明を切り上げる。


しかし、これ以上は触れてくれるな、そんなニュアンスを込めた言葉はルカには届かなかった。

「スキル…それで大和はどんな暗示をかけたらあんなことになるわけ?」


あんなことなどと言われてるぞ、17歳の俺よ。

「誰になりきってたんだ?すごかったわ…」

「…俺だ」

「ん?」

「17歳の俺自身だ!もういいだろう?勘弁してくれ」

「あれが…クリフトたちの知ってる…、まじで?」


そんなに信じられないだろうか、確かにやかましく鬱陶しいのは認める。

だからこそ本当に忘れて欲しいのだが。

「もう一回…」

「なん、だと?ルカ、あんなものをこれ以上見てどうする気だ」

「もう一回だけ!何かやばい精神攻撃でも受けてるのかと思ったんだよ!そうじゃないなら少し話してみたい!」

「ほう、精神攻撃…そこまで言われてわざわざ馬鹿を晒すと思うのか?」

さすがにあんまりな言われように、俺は少し気を悪くした。


だが、なぜかルカは引く気配がない。

「俺の黒歴史は筒抜けじゃん…、まあそれは俺が悪いわけだし俺は君にとって仇なんだからその程度なんだろうね、無理をいって悪かったね」

まさか、ルカがすねている?嘘だろう?どうしたら先程まであんなに馬鹿にした相手と話したいと思うのか理解ができない。

「ルカ…」

「うん、もういい、ごめんて」

何がそんなに気に障ったんだ、怒りたいのは俺の方なのだが…。


「くそっ、30分だけだぞ…そしてその後は永久に封印する!それでいいな?」

「…わかった、バッチ来い!」

なぜ醜態を晒さなければならないのだろう、そんな疑問が頭を駆け巡りながらも不本意極まる俺が自らスキルを発動しなければいけないとは、これはどういう嫌がらせなんだ?

【自己暗示】…【記憶はそのままに、17歳の俺自身】


ポチッとな!


「ってかさ、そんなに面白いか?なんの嫌がらせだよ?俺はお前のことを唯一シリアスの続く奴だと思ってたのに…うおい!笑ってないで話を聞けっての」

「嘘だろ?大和…」

「なんだよ」

「面白すぎるっ!」

「だから嫌だって言ったろ!?やめろ!そんなアホを見るような目で見るな!この身長が似合わないのかもしれないな…身体も…ほら!俺こんなんだったんだ」

「まじで!?ちっちゃ…」


もうこの際だ!八等身のイケメンがこんなテンションだから残念でおかしいんだろ?気持ちはわかる、って!モノローグもこの仕様になるのか、うっわ恥ずかしい!


…モノローグ?なんの事だ?


と、そんなことよりメタモルフォーゼで見た目も17歳の俺そのままにしたというのに、ルカはなぜかまだ笑いを押し殺して肩を震わせている。

「おい、小さいと聞こえたんだけど?」

「やっ、ふはっ!だって、え!?急成長し過ぎじゃん?」

「いいんだよ、そんなの目覚めた時の俺が一番驚いたんだから!起きて鏡見たら誰だよこのイケメン!?って状態。二年寝てたらこれだぞ?その時の俺の複雑だけど喜びが勝ちそうな気持ちなんかわからないだろ!」

「うっわ、うざ…面白すぎるだろぉ」

「お前の面白いは褒め言葉として受け取っておく、それでまだ聞いてなかったな、飯は食ってきたのか?」

ルカは一度キョトンとしてから、再び涙目になるほど笑った。

「食べた、食べてきたよ!君のいいつけを破るわけないだろ?」


「言いつけ!?俺そんな感じなのか?忠犬にも程があるだろう、ぅおわっ!?なんで!?」

突然ルカに抱きつかれて驚いた。


「小さいのがドタバタしてるから、つい…」

「お前は小さい動く生き物を仕留める本能でも持ち合わせてるのか!?猫かよ!!てことは俺は虫かネズミ!?」

「大和がツッコミ!?ボケ!?なにそれ!?」


もう何をしても笑われる。

でもこんな楽しそうなルカを見たのは初めてだ。

まるで友達みたいで悪い気はしないかもしれない。


「うん、お前が楽しそうだから、まあ良しとするか!」

「え?」

「なんか知らんが楽しいんだろ?俺もこんな時間久しぶりだ…って言っても、それまでが辛かったとかはルカのせいじゃないからな?でも離してはほしい」

「…大和も楽しいのか?」

「そう言ったつもりだけど、通じてないのか?」

「確認しただけだよ…ありがとう」

「?ああ、それより俺がこのテンションでアメリアに癒しを求めようとしたら全力で止めてくれ!」

「どれだけ癒されたいの」

「そりゃもう!すごい癒されたい、正直に言えちゃうのも若気の至りだよな!」


そんな会話が丸々30分繰り広げられ…。

突然その時はやってきた。

「俺は【自己暗示】を永久にセットして、今日のこの馬鹿騒ぎと醜態を忘れようと思うんだが、お前も忘れてくれないか?」


【変態】も解除され、今の姿は目線が高く、いつもの深紅の髪になっている。

「これを忘れろってのは無理があるっ…楽しすぎた!」

「そうか、それでも俺は忘れるからこの話は禁句にしてくれ」

「そんなに嫌だったのか?」

「羞恥心の問題だ、まあ、お前が楽しめたのならそれでいい」

「またそんな…そうか、君は変わらないんだね」


どういう意味だ?


「変わったから分別もあって羞恥心が働くわけだが?」

そう言ってスキルを発動しようとした時、ルカは大きな声を出して俺の腕を掴んだ。

「待って!消さないでくれよ!」

「どこまで笑いたいんだ」

「違うんだ、楽しいと言ってくれた時間を、無かったことにしてほしくない…」


ルカは俯いて、それから普段通りの笑顔になった。

「まあイジりたいのはその通りなんだけどね?」

「…今後この話題に触れないなら、まだ残しておく」

「そんな、データみたいに」

ルカは訳のわからないボケをかましながら、やはり笑った。


翌朝ベッドから起き上がった俺はそのまま固まって動けなくなった。

「どうしたの?」

隣に寝ていたルカは心配そうに様子を伺った。

「だい…丈夫だ気にするな」

「そんなこと言われても、汗かいてるじゃん」


俺はここ一年近くその存在すら忘れていたものに苦しめられていた。

「そうか…人間はこんな造りだったな…」

「大和、どういう事?」

「笑ったことによる筋肉痛だ、腹…いや、みぞおちが痛む…」

そう、俺は自分がしでかした痛みは耐性が効かず、そのまま表れる。


そして痛みとは無縁の生活を送っているため、痛みには有り得ないほど弱くなってしまった。


特に筋肉痛にはアキトとの楽しい日々とトラウマが複雑かつ同時に思い出された。

そんな俺の真剣な悩みとは裏腹に、ルカは唖然とした。

「きんにくつう?」

「そうだ、昨日笑っただろう、普段使わない筋肉を久々に酷使するとな、人には筋肉痛というものが出る」

「筋肉痛は知ってるって…」

ここまで読んでくださりありがとうございます。


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