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こちら次元間 チャンネルわん・にゃん放送局 報道特集 あの世界の秘密 第5回放送 放送延長分

「9時になりました。こんばんは。9時のニュースの時間ですが、今日は報道特集の第5回目放送が予定通りに終わりませんでしたので、放送時間をさらに延長してお送り致します。キャスターはいつものまねき猫です。

それでは、続きを始めさせていただきます。

Dデレクター改めてこれまでの調査報告をお願致しますにゃ。」


「先ほどもお話しさせていただきましたように、今日のメインテーマは前回と同様に、名無し星の人々の生活様式を取り上げたいと思っています。


生活様式と言うと何か堅苦しく聞こえてしまいますが、普段の生活の様子を見せてくださいというごくカジュアルなテーマですにゃ。」


「そのカジュアルな生活ぶりの意味合いを解説していただくゲストを本日もお呼びしております。


本日は星間文化中央大学生物生活学類生活文化学部食物文化学科のP教授にお越しいただいております。


P教授のご専門は食物と文化の関係と言う崇高な分野で、特に御出汁と知能の発達と言う食物と文化だけでなく医学的な見地もお持ちです。

また、高名な料理研究家でもございまして、今までにいくつものレシピ集を次元間仮想空間電子図書館に寄贈されております。


P教授、本日は放送が延長になってしまい、申し訳ございません。よろしくお願いいたします。

ところで、お好きな御出汁は動物性節系でしょうか、それとも菌系でしょうかにゃ。」


「Pでございます。過分なご紹介ありがとうございますわ。おいしいものと文化の発達は密接に関係しております。

ただ、腹を満たすだけで満足な生物の文化とは、どん欲に甘いものを欲しがる生物の文化とは、文化やくらしの様子は食べ物と密接に関係しておりますわ。


ちなみに好きなお出しは海藻系でございます。


私も毎回この特番を大変興味深く拝見しております。

名無し星の食べ物に視点を置いてみますと、これまでもいろいろな食べ物の話が聞こえております。

また、人々はそれを楽しんでいるように拝見しました。

これはかの星の文化が非常に多様で、心豊かに生活を楽しんでいるような印象を受けます。


今、戦時中とのことですが、それでも心の安らぎのため美味しい食事を求めるということは、以前、生徒会長さんがおっしゃっておりましたように、基本的にかの地の人類は平和を愛しているということだと思います。


私も早く和平を結び、心から美味しい食事をいただける日が来ますことを大学内のチャペルで毎夕お祈りをさせていただくようになりました。

長くなりまして申し訳ございませんが、本日は皆様と一緒にかの地の文化を楽しませていただけたら幸いですわ。」


「私たち当特番のスタッフも先生と同じように、かの地に平和が訪れることを心から祈っております。


それでは現地の特派員のI改めNさんを呼んでみたいと思います。

Nさーん。聞こえていますか? にゃ。 」


「こちら名無し星のHです。

実はNさんはお尻が悪化しまして、今日は撮影基地のテントで腹ばいになってなって休んでいます。

そのため本日は代役として私Hがインタビューアーを、そして、狐族のKさんに人探しを、カメラを犬族のKさんに担当してもらっています。

本日の特番の現地進行はHKKトリオでお送りしますにゃ。


「Hさんよろしくお願いします。ところで、Nさんの様子はどうですかにゃ。」

「なんでも昨日、例の龍さんとしし唐で一杯やっていたところ、なぜが3回続けてからいのに当たって、ケツの血流が異常に上昇したため腫れがひどくなったとのことです。

まぁ、明後日には取材班にカムバックできるとのことですので心配はいりませんにゃ。」


「わかりました、ありがとうごさいます。たいしたことがなくてよかったです。

それでは早速リポートをお願いいたしますにゃ。」


「私は今、教会本山と門前町を繋ぐ道の門前町側の入口付近にあるお魚屋さんの前で待機しております。

いま、Kさんがインタビューに答えてくれそうな人を探しておりますにゃ。

生放送ですので、少々お待ちくださいにゃ。」


「あっ、Kさんがお一人の若い女性を連れてくるようです。脚の線が凄く素敵ですね。それと豊満な胸部をされております。非常な女性らしい素敵な方ですにゃ。

出来れば抱っこしてほしいにゃ。気持ちよく昼寝ができそうにゃ。」


「Hさーん。仕事中ですよーっ。

まぁ、抱っこしてもらって昼寝がしたいほど素敵な女性だということは伝わってきましたにゃ。」


「初めまして、お嬢さん。私はチャンネルわん・にゃんの特派員のHと申します。

本日は門前町についていろいろご質問やご案内をしていただけるとのことで、ありがとうございますにゃ。」


「こちらこそ、私の作るお弁当に興味を持っていただいたようでありがとうございます。

彼もあなた方のように素直に私の作ったお弁当に興味を持ってくれたらうれしいのに。つれないんだからぁ。」


「初めまして、私はメインキャスターのまねき猫です。そことはすこし離れた場所からお話をさせていただいております。

本日はよろしくお願いいたしますにゃ。」


「まぁ、語尾が「にゃ」だなんて、なんてかわいいの♡

私はビオラです。教会本山の魔力溜施設で働ている女の子19歳です。よろしくお願いします。」


「ビオラさんは今から何をされるのでしょうかにゃ。」


「シュウ君がもうすぐ帰ってくる予感がするの。

今度こそ私のお弁当を食べてもらおうと思って。その材料の買い出しです。」


「もしよろしければそのシュウ君とのご関係をお聞きしてもよろしいですかにゃ。」


「また、にゃなんてかわいい♡

シュウ君はその私のあれよ、あれ。もうわかるでしょ。」


「えっと、恋人さんか旦那さんですかにゃ。」


「もうっ、旦那様なんて呼ぶのはまだは・や・いですーぅ。」


「では、恋人と言うことですかにゃ。」


「まぁ、ねぇ。」


「えっと、今恋人さんはお仕事で出かけされていて、もうすぐ帰ってくるとのお手紙でも届いたのでしようか。」


「彼は手紙を書く何てそんなまめなことをするタイプじゃないの。

でも私にはわかるわ。


そろそろ、記憶から薄れるころなのよね。私の胸の谷間と私のすらりとした足の記憶が。

それを鮮明にするために彼は私のところへ戻ってくるはずだわ。」


「なるほど、強い心のつながりなのですね。

独身の私にはうらやましい限りですにゃ。


その上で、お弁当で彼の胃袋まで捕まえて、あなたの魅力でがんじがらめにして、そのまま人生の墓場へ引きずっていこうという算段ですかにゃ。」


「うふふっ。わかる。

私の作るお弁当の魅力にはだれも抗うことはできないわ。

あのまな板娘なんかのお弁当なんて一瞬で忘れさせてみせるわ、この胸の感触と美しい足をプラスしてね。おほほほほっ。」


「しかし、それほどあなたに思われている彼氏も幸せ者ですね。ほんとうらやましい。


ところで、今日のお弁当は何を作るつもりですかにゃ。

私としてはサバの塩焼きとうの巻き卵、海老のから揚げなんかがお勧めですにゃ。」


「まぁ、どれもおいしそうですね。どうしようかなぁ。」


「すみません。スタジオのPと申します。彼を思うお弁当作り、頑張ってください。


ところで、先ほどの特派員の方が提案されていたメニューの材料はすべてそちらの門前町で入手できますか。」


「そうですね。すべてそろうと思います。

ただ、今日は海老の入荷があるかはわかりませんね。」


「ありがとうございます。ちなみに、あなたのお好きなお出し系は何でしょうか。私は海藻系ですわ。」


「私は特にこれと言ったものより、彼の好みに合わせます。

彼は肉体労働をしていますので、濃い味付けが必要となります。

それに合ったものと言いますと節系でしょうか。海老の頭なんかも良いお出しが取れますね。」


「ビオラさん、お若いのに素晴らしいですね。ほんと彼は幸せ者ですね。

こんな素敵な人に思われて、大事にされて。女の私でも妬けてきましたわ。」


「ふふふっ、私の魅力の仕上げをお弁当でするつもりなの。」


「ところで、私の話も聞いでいただけますかわん。」

カメラを持ちながら突然話しかけるなんか我慢できない様子のK特派員。


「私はお弁当のおかずと言えば絶対ミニハンバーグと鳥カラだと思います。

そのどちらかが入っていないお弁当なんてお弁当じゃないと思うワン。」


「あら、わんちゃんのそのふさふさ尻尾もかわいいわ♡

そうねえ。ガテン系で育ち盛りの彼にはやはりお肉は必要ね。ハンバークなんていいかも。」


「ですよねぇ、ワン。」


「でも、お魚も食べた方が良いと思います。青魚は頭が良くなると言いますしね。

「さかなさかなぁ、さかなぁをたべーるとぉ、あたまあたまあたま、あたまがよくなるぅ」と言う歌が調査依頼者様のお住いの地球のごく一部の地域のスーパーとかいう食料品が何でも売っているお店で呪文のように繰り返されているそうですにゃ。」


「えっ、食料品はお店ごとに得意なものがあるんじゃないんですか。

肉はお肉屋さんとか、魚はお魚屋さんとか。


加入ギルドの関係でよそのお店の商品は販売できないと聞きましたわ。」ビオラ


「そういう専門店的なところもありますが、総合スーパーとか言って、食料品の他にも衣類やお鍋などの鉄製品、お花なども売っているそうです。


私たち住んでいる星間共和国の首都ではすべて仮想空間商店と言うところでお家に居ながら商品を買うことができます。


特殊な装置で、服ならば生地の手触りやお惣菜ならその匂いなどもわかってしまうんですよ。


その代わり、試食などはできませんがね。


ここに来て、いろいろな商店をまわって、試食をさせていただいています。

その際、商品の香りや味だけでなく、レシピや近所の噂話と言った食材と関係ない情報までも入手でき、人と人との触れ合いと言うものを体験できたことは報道に携わるものとして貴重な経験をさせていただいたにゃ。」


「Pです。H特派員のおっしゃる通りですわ。

私もレシピ集なども出させていただいておりますが、ちょっとしたコツをレシピ集ですべて伝えることはできません。

例えば湿度の高い日はこうした方が良いといった細かいコツというのは実際に食材を見ながらお話をしないと伝われませんもの。


私たち星間共和国で暮らす者は余りに利便性を追求しすぎて、真の情報交換とか人と人との暖かい交流とか言った手間のかかるけれども生きていく上で大事なものをなおざりにしているのかもしれませんね。


私もレシピ集を作成するためにお家に籠ってお料理をするのではなく、お料理教室を開いて、いろいろな方の料理のコツを伝え合うような交流を持たなければと、今日のビオラさんと特派員さんの交流を拝見して、反省をしているところですわ。」


「あのう、特派員の狐族のKです。


話を元に戻して申し訳ありませんが、お弁当にはぜひいなりずしを入れていただけませんかね。あれは絶品です。

お出しがしみ込んだお揚げ。考えただけでも口から液体がたれそうです。


あとは汁気が多いのでお弁当に適さないかもしれませんが、うちのお嫁さんは巾着、卵とかお餅が入ったものを良く作ってくれます。私の好物なんですこん。」


「巾着かぁ、美味しいですよね。見た目では中に何が入っているかわからなくて食べるまでわくわくしますね、私。」


「ビオラさんは、巾着を縛ってあるかんぴょうを先に食べて、中身を確認してからお揚げを食べ始める派ですか、それともいきなりお揚げを食べて中身を確認する派ですか。どちらですかねこん。」


「私はどちらかというとお揚げにかぶりついちゃう派てすね。」


「Pです。せっかくのお弁当メニューのお話で盛り上がっているところ申し訳ないのですか、そろそろメニューを決めてお買い物をしないと夕方になってしまいますよ。

彼がいつ帰ってくるかわかりませんがせっかくのお弁当が間に合わないんじゃ困りますよ。」


「あらいやだわ、私ったら。

お弁当のおかずは何にしようかしら。

とりあえず、お魚屋さんでものぞいてみようかしら。


あっ、今日は楽しいお弁当談義ありがとうございます。

皆さんのご意見を参考にさせていただいて、彼のためだけの特別なお弁当を作りますね。」


「スタジオのまねき猫です。頑張ってください。

この特番を始めてから、いろいろな方とお話をさせていただき、一人一人の思いや夢を知ることができました。


そして、その夢は待っていてはいつまでも届かない、その夢に向かってあがき苦しむことがいつか何らかの形で幸福を生むことを知りました。


あなたのお弁当への思いがいつか形になってあなたへ幸福を運んでくることを切に願います。


今日は取材にご協力いただき、ありがとうござましたにゃ。」


「ご丁寧なお言葉が心に染みました。

今の言葉を聞いて、私はもっと上を見て歩んでいきたいと思います。


このお弁当は本当は食べてもらえることはないかもしれないと思っています。

でも、このお弁当を作ることが私の夢なんです。大好きな人がこのお弁当を開けた瞬間に笑顔になり、そして、食べておいしいよって言ってくれる瞬間を目指して努力します。

私の夢はここにあります。


今日のお弁当のメニューは決めました。

ご飯はお揚げを使ったお稲荷さん。

お肉料理はから揚げ、お魚は海老のから揚げ。

すべて揚げます。

私はさらに高みを目指します。今日は本当にありがとう。

私の決意の結果を見ていただけないのは残念ですが、きっと、きっとおいしいお弁当に仕上げてみますね。」


「ビオラさん、美しいです。その志が美しいです。

私ももっとこの仕事を頑張って、この星の美しいところをどんどん皆様にお伝えしたいと思います。

それでは名残惜しいですがこの辺で中継を終了したいと思います。

また、全力で取材を続けます。

ご期待くださいにゃ。」プツン


「若者の努力する姿が、美しい。

毎回思いますが、この星は美しさで溢れています。

当局はこの美しさをもっともっと皆様にお伝えしていく所存です。


次回の全力取材の結果をお待ちください。それではまたにゃ。」プツン


放送後、ビオラがお魚屋の女将さんから海老を値切っていると我らがエリナ様が登場。お隣の八百屋に入って、お買い物。


「今日の夕飯はシュウの希望で焼き立てのピッザよ。チーズとベーコン、ホウレンソウ、バジルをたっぷり。それと、熱々の肉団子の野菜たっぷりスープ。


普段、キャンプ飯ばっかりで味気ないって。

やっぱり、出来立てを食べたいって言っていたもの。


うふふっ、冷えたお弁当よりも熱々の出来立てを食べさせてあげるのが妻の務めよね。

まっててね、私の旦那様。」


月は知っている。ビオラのシュウへの深愛を。

太陽は知っている。でもね、エリナにはどこか一歩届かないことを。

星は知っている。でもね、この努力が、シュウからは得られなかった、真の幸福を別の形でビオラにいつかもたらすことを。


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