5話目 新人聖戦士職校生の歓迎会 生徒会主催編 最後はボルガ
「とりあえず、私たちの手に負えない個人的な性癖についてはひとまず置いといて、ボルガ君のことはどうなったんですか。」
おおっ、ぶった切りの王女、エリナ様降臨。
「そそそっ、そうよね。手に負えないことに思い悩んでも仕方ないわ。所詮他人事だし。
おっほん。それでは本日のメインイベント、ボルガ君のやっちゃいました報告~ぅ。
エリナさん覚悟はいい。」
「えっ、どんなボルガ君の醜聞でも聞く覚悟はできていますよ。」
「シュウ君はどう。エリナさんを愛し、守り続ける覚悟はある? 」
「えっ、突然俺れたちに振られても。
でも、エリナのことは絶対放しません。」
「えっ、もう、シュウったら、こんな朝から私を抱きしめて放さないなんて。
そんな他人様の前で、堂々の子づくり宣言。恥ずかしくて、表に出れないじゃないの。
もう、ちょっと待ってね、今、お部屋のベットメイクを済まして、体をクリーンして、でもシュウはクリーンなしでね。
だって、あなたの体臭は私の大事な旦那様を嗅覚で感じるための重要なアイテムですもの・・・・・・・・・」
「先輩、ああなったエリナはだれも止められません。
取り合えず、嫁を守り通すぐらいの覚悟は真の魔王様に植え付けられていますので何を聞かされても大丈夫です。」
「ほんとに~ぃ。じゃ、なぜ結婚式の話題からに・げ・て・い・るのかなぁ。ふふんっ。」
「・・・・・、シュウ君かわいそう。リンカ、もう、許してあげて・・・・」
「ごめん。そんな気は全然なかったんだけど。ただ、うらやましいと思ったの、人をそんなに深く思えるのが。
そうしたら、何かだんだん腹が立ってきて。ごめんねシュウ君、遊んじゃって。」
「俺、もて遊ばれていたんですね。しくしく。今度、真の魔王様(義母)に報告しておきます。」
「マジ止めて、それだけはご勘弁を。
確実に社会的に抹殺されるから。
二度とお天道様のあたる場所に行けなくなるなるから、しくしくし。」
「おめぇーら、いい加減じゃれるのはやめれーぇ。話がマジで進まんぞ。
もう、俺が話す。リンカは一回、外でラジオ体操、何だラジオ体操って、突然頭に浮かんだ、ままぁいいや。
リンカは外て伸びをして落ち着いてから戻ってこい。」
「できれば、エリナも連れてって。」
「わかったわ。ちょっと行って来る。」
「それでは僭越ながら、このリンダが改めて、ボルガ君の新歓での顛末を報告しましょう。
あれは雪の降る寒い夜でした。????」
「リンダさん、昨日は暑くて寝苦しかったです。
教会本山は季節外れの雪だったんですか。
それで、凍死者が出そうになって、生徒会役員が朝まで奔走することになったんですね。すべて理解しました。
・・・・・・で、ボルガがどうしましたっけ。」
「・・・・・とりあえず、リンカが戻るまで、無理かと思うけどまじめに話を進めましょうよ・・・・・」
「「ごめん、調子に乗っていた。反省はしている。」」
「おっほっん。
告白タイムに最後に登場したのはボルガ君だ。
ちなみに俺はさっきのみみず腫れにビビッて、ボルガ君の話の正確なところは自信がない。シュリ、ホローをヨロ。」
「・・・・・私もできる限り、頑張る・・・・・」
「それでは、続けるぞ。
ボルガ君は生徒会副会長に促されて、いやいやな風に壇上に上がったんだ。
周りからは、ヤジを含めて早くペアの名前を叫べとの下種な催促だ。
それにビビったのか、ますます彼は縮こまってしまい、下を向いてブヅフツ一人で呟いているように見えた。
これでイライラした来た観客がペア指名を求める催促の罵声がどんどん大きくなって、彼が何か叫んでも、観客の罵声を制する生徒会の声も何にも聞こえなくなったんだ。
そんなときに彼が指で耳を塞ぎ、渾身の大声を出そうとする様子を見て、罵声をあげていた観客は彼の声を聴くために静かになったんだ。
そして彼は渾身の力を込めて、希望のペアを言ったんだ。
こんな風に。」
リンダさんは話したように指で耳をふさぎ何か叫ぼうとしている。
「僕の理想のペアはエリナさん・・・・・・」
「えっ。」
「えっ。」自分のピンク色の世界から舞い戻ったエリナ様
「と言ったんだ。後半の「・・・・・」は絶叫の余り、誰も意味を理解したものはいないようだったぜ。
会場は一瞬、氷原のように固まり、冷たい風だけが吹き抜けていったようだった。
彼と接触のあったエリナと言う名の女の子はそこのシュウの嫁さんだけと言うのは事前の詳しいボルガ・リサーチ班の研究で分かっていたみたいなので、これは世紀の横恋慕かと言う声が会場のいたるところでささやかれたさ。
ペアをあきらめた者たちは面白半分で事の成り行きを楽しむ余裕があったが、これで収まらないのはボルガ君一途に走ってきたお姉様キャラの連中さね。
元々あの背格好に、シャイな性格そうだろ。誰が引っ張っていってあげないと道も歩けないように見えるんで。
これからはお姉さまが引っ張っていってあげます風の連中がボルガ君にずっと付きまとっていたんだ。
当然、お姉さま方はお互いを蹴落としながら、だいたい30人ぐらいまでに取り巻きが減ったんだ。
そのようにして残った最強のお姉様方の中からあとはボルガ君の印象に残った数人が当然ペア候補に指名されると読んでいたんだな。
ところが、壇上に上がったボルガ君はぐちぐち。
まぁ、そこがお姉さま方がこぞって寄って来た要因なんだがな、はっきりしないとダメよ的に叱咤激励したわけだ。
そんなお姉さま方の指導にも関わらず、ぐちぐちまだ言い続けるもんだから、ついに観客まで巻き込んでの大騒動、お姉さま方は焦りと不安から、観客は見世物が進まないことへの苛立ちからな。
グズグスしていた彼がついに意を決して、ペア候補の名前をついに叫んだわけだ。
それがよりによって、人妻たるエリナだったわけだ。
ほんとはエリナの名前を叫んだ後も何か重要なことを叫んでいたように思うがな。
もう、お姉さま方も観客も何でエリナなんだと大騒ぎさ。
特にずっと引っ付いていたお姉さま方は自分たちライバルの中からペア候補が呼ばれるのならまだしも、人妻で、しかも男と最前線で今一緒に暮らしている女を指名するなんてどういうことだと彼のいる壇上に叫びながら髪を振り乱して詰め寄ろうとしたわけだ。
観客の中ではエリナとの関係を憶測する者はひそひそ話をして大人しかったんだが、そのお姉さん方の取り乱し方に興味を覚えた連中がお姉さんたちを煽る煽る。
それでさらにヒートアップしたお姉さんがボルガ君にまさに詰め寄ろうとした瞬間に生徒会が人のバリケードを作って、お姉さま方の突撃を阻止したんだ。
そのスキにボルガ君をどこかに逃がしたんだけどな。
収まらないはお姉様方とそれを煽った連中だぁ。
ボルガを出せだのエリナを呼び出せだの生徒会との押し問答だ。
その内、お姉さま方の間でもお前がしっかり見張っていないからエリナに横取りされるだのなんだのと内輪もめも始まって、収拾がつかない騒ぎになっちまった。
俺たちはこれはもう今日の出し物は終了だと思って、寮に帰って来たんだ。
エリナへのその後の突撃も懸念されたんだが、職校生でここの新しい教会の転移魔方陣の番号と座標をを知っているのは俺たちと生徒会役員チームだけだから、エリナが教会本山に戻ってこなければエリナの安全や教会本山での大きな混乱はないだろうということで、昨日はそのまま寮で待機して、今日こうして情報を伝えにやって来たわけだ。
途中、生徒会役員チームが死んだように寮の前に座り込んでいたから、昨日からの経緯を聞いてからこうして一緒に転移魔方陣でやって来たわけさ。
そういうことだから、エリナはしばらくはここで待機だな。
シュウも例の結婚式のことはみんな頭から飛んだと思うけど、横恋慕事件に巻き込まれそうだからしばらくここに居ろ。」
「私は旦那様がいればどこでも桃源郷ですので、このままここで訓練と任務に励みます。旦那様もここで一緒に頑張りますよね。」
「おおっ、エリナの安全が一番だからな。どうせここでの生活も慣れてきたので、しばらくここに居ても何ら問題はないな。
でも、リンダさんたちは教会本山に帰っても問題ないとしても生徒会役員チームは戻っても大丈夫だしょうか。」
そこに戻ってきたリンカ。
「生徒会長たちは大丈夫だと思うわ。秩序を守ろうとしただけですもの。
残る問題はボルガ君ね。今どこにいるのかしら。」
「・・・・心配。思いつめていなきゃいいけど。・・・・・・・・
気弱そうだし。自分じゃ何もできそうにないし・・・・・・・・」
「ボルガは大丈夫だよ。ちょっとやつれているかもしれないけどね。ねっ、エリナ。」
「はい、旦那様。彼は強い男の子です。
愚痴は多いですが、誰かに支えてもらわないと前に一歩も進めないようなひ弱な男の子ではありません。」
「えっ、そうなの。なんか、思いつめていたから、心配なのよね。」
「皆さん、ボルガのことを誤解しています。
その背格好と慎重な態度から、どこか頼りないダメな弟キャラだと思っていませんか。
あいつは強いですよ。体はこれから鍛えていく必要がありますが、心は誰よりも強いですよ。俺はわずかの間しか付き合いがなかったけれど、あいつはダメな弟というより、慎重で冷静な兄貴キャラですよ。
ボルバーナの理不尽な我がままにも苦笑しながら付き合ってたのはあいつだけですから。
おそらくあいつは、お姉さんキャラではなく、一緒に高みを目指して歩んでくれる女性か守ってあげたくなるような妹キャラとペアを組むことを望んでいたと思います。
でも、常に自分の思いの対極にある人に囲まれて、ただただ苦笑していたのかもしれません。
だから、昨日のペアの指名でもエリナとだけ言ったのではなく、
エリナさんのように一緒に歩んでいけるようなしっかりとした女性とか、
エリナさんのようにかわいくて頼られたら張り切って頑張りたくなるような女性とか、
エリナさんのように一緒に居るだけで幸せになる女性とか
言ったと思います。
具体的にペアとして指名したのではないと思いますよ。」
「もう、やだーっ、旦那さまったら、そんなに私をほめても何も出ませんよ。
でもさっき、ベッドメイクは済ましてきたので、さっ、さっ、私の部屋に行って、ねっ、ねっ。ダーリン。」
「「「もうごちそうさまです。何も入りません。口にも、目にも、耳にも。
向こうの私たちの目と耳に入らないところで、勝手にいつまでもいちゃいちゃしててください。
新婚さんはあっち行ってて。」」」
「旦那様、皆さんの許可も出たことですし、ねっ、ねっ。」
「何も解決してないけどなぁ。」
その時、リビングのドアが開いて、死神中隊長が黒い塊を引きずってやってきた。
「客を生け捕ったわ。捕ったどーっ。」