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シュウの教会奪取 人類逆襲の始まり 1話目 熊さんのいびき

建物とは言っても急ごしらえのためテントよりはましだという程度で、キャンプはキャンプだった。床が固い。


まぁ、見張り番がない分、十分に睡眠はとれるはずだったのだが。


うちの旅団は男が三人なので、部屋なんてもったいない、押し入れで十分と言うことで物置のような狭い空間を男部屋として与えられた。


これは男で土魔法術士がいないのが致命的であったことが露呈した格好だ。


書記長が男の部屋を作るのを忘れたと言って、急遽、装備品の収納場所をにわかに区切って、さらに3段に分けてくれた。ありがとう・・・・・、ぐすっ。


教会本山の最下級宿泊所のタコ部屋以下と熊師匠が言っていた。

まぁ、飲んで寝る人にはこれで十分だが、そこで読書をしたり、考え事をするには最低の場所だった。


特に、どこぞで飲んで帰ってきた熊師匠のいびきが、石を固めて区切った空間に反響しまくり、教会本山にあるパイプオルガンを聞いているような壮絶な騒音被害をもたらした。


これには別のちゃんとした部屋で寝ていた女性隊員も騒音に耐え切れず、苦情の嵐が俺が寝ていた男倉庫にもたらされ、ますます休むどころではなかった。


「ちょっとこの熊公を何とかしろよ。男共。

何とかできないなら熊公を連れてここから出ていけ。

わかったな」


酔っぱらって寝たところを起こされてご機嫌斜めな特攻隊長。


「そんな。ここを出て行ったら行くところがありません。」副委員長


「じゃっ、クマだけ捨ててこい。」

「えーっ、かわいそうですよ。一応師匠なんだし。

カロラさんだって同じ中隊の仲間じゃないですか。」


「俺の睡眠を妨げる奴は人類の敵だ。人類の敵は魔族。

最前線に行って熊公を向こう側に投げ捨ててこい。


副委員長は風属性だったな。

ちょうといいじゃないか。運びやすくて。」


「こんな夜中に最前線に行って、帰ってきたら明日の朝になりますよ。」


「あーんっ。いいんだよ。熊公さえここからいなくなったら。

お前らが徹夜しようが途中で力尽きて3人で野宿しようが俺の知ったこっちゃないんだよ。


睡眠不足はお肌の天敵なんだぞ。

お肌が荒れたままお見合いをして、また、お肌の手入れも満足にできないようなガサツな方とはお付き合いできませんと言われて、断られるんだ、相手からお見合いを。


わーんっ。泣いてやる。


このままお前たちのせいで、独身・彼なし・小金ありのままアラサーからアラフォーになるんだ。責任とれよ。責任。


シュウは諦めるとして、お前、副委員長責任取れよ絶対。わーんっ。」


「「熊さんを差し上げましょう。」」


「うわーん。俺なんかもう人間の男と付き合えないんだ。うわーん。ひっく。」


特攻隊長は、熊さんと同じく、まだっぱらっているよ。


「わかりました、お肌の天敵の熊さんはお外に捨ててきます。

安心して、お休みください。」


まあ、外で寝てても毛布かけりゃ、大丈夫でしょ、熊だし。

まだ冬じゃないし。

はっ、熊師匠、もしかしてもう冬眠かもね。


俺と副委員長は熊さんを外の大きな樹の下に置いてきた。

まぁ、連隊のキャンプも近いので見張り番の目が行き届き、変なものに襲われることはないでしょ。


これで安心して眠れる。



次の日の朝。熊師匠はなぜかタコ部屋に戻って来ていて、爆睡していた。

熊さんの穴籠り本能で、根性で帰ってきたのか。

このたこ部屋に。

不思議だ。


俺は皆を起こさないように、タコ部屋を出て、さらに外に出てきた。

初の社奪取に成功し、朝にも拘らず気分が少し高揚していた。


朝日に向かって伸びをしていると、リンカさんが隣にやって着た。


「おはようございます。」


「おはよう。

昨日はあわただしくて、ゆっくり話せなかったわ。

改めて、おめでとう。


シュウ君の野望が二つも進んだみたいね。社の奪取とエリナとの結婚式。」


「えっ。結婚式のこと知っているんですか。」

「昨日すべて聞いたわ。結婚式の顛末。」

「まさか、エリナですか。」


「ふふっ、昨日私たちの部屋で椅子をステージにして、エリナが事細かに語っていたわ。


プッ、魔王様に嵌められて結婚の誓いの言葉を一字一句言わされたところなんて、爆笑よ。


今思い出しても、ぷぷぷぷっ。もう駄目。

シュウ君を見てると思い出して笑いが止まらないわ。ぷぷぷふっ。


もう行くね、笑い死にする前に。

ぷぷぷふっ」


俺、終わった。

今日からの職校は爆笑の渦だ。

俺を見かけると全員が大笑いするに違いない。


あの時は祠の呪文だと思って、一字一句魔王様の言うことをただなぞっていただけで、その言葉の内容を考える余裕がなかった。


もう、俺、ここに住みつこうかな。教会本山に戻りたくないよ。

俺はため息とともに、心の言葉をつぶやいてしまっていたらしい。


「ここに居ていわよ。しばらく世捨て人みたいに。

何ならエリナもつけましょうか。料理番として。」死神隊長。

「えっ、良いんですかここに居て。」


「まぁ、しばらく落ち着くまではね。

うちの旅団の誰かがここにいないとまずいかなぁと思って。

ここの利権を持っているのは私たちだからね。

お手伝い(小作人)の第2軍団に好き勝手にされても困るから、だれか監視が必要なのよね。


最初は第1小隊、第2小隊、第3小隊、卒業したいチーム、そして歓迎会の終わった生徒会チームの順でここに一日交替で駐留するを考えたけどね。


でも、中隊のメンバーはシュウとエリナ以外は職校生の学業、私たちは魔法協会や聖戦士協会の仕事があるしね。


特に私なんかリストランクの消化をしないといけないでしょ。

それが本職だから。」


この人にとって、新しい教会の運営より死神リストの消化の方が大事なんだ。

恐るべき、死神リスト。


「ほんとのところは、新しい教会の運営について軍内部でちょっと調整が必要かなぁと、教会本山で少し動き回る必要があるのよね。大人としては。」


それはついでで、本当の目的はそのついでを理由に各軍団を自由に動き回り、死神リストを埋めるつもりだな。

俺が教会本山に戻れば爆笑の渦。死神さんが戻れば阿鼻叫喚の渦。

どちらの渦を取るか。人類の大事な岐路に立ったわけだ。


「エレオノーラさん。中隊長の任務お疲れ様です。

昨日はよく眠れましたか。睡眠不足はお肌の天敵ですよ。

私たちのようなアラサーには。」


来たよ、お肌も内面もガサツな人。もう取り繕っても遅いからね。正体は特攻隊長と皆な知っているからね。


「私は特にお肌は・・・・・、すべすべですが。

触ってご覧になります。」

「いえいえ、お互い・・・・・・・、すべすべだわ。」


「おほほほほっ。夜中に余計なお怒りをぶち上げると、お肌にもストレスを与えるのかしら。」

「じゃ、おめぇはあの熊公のいびきの中でもすやすやと眠れたって言うのか。」


「要らぬストレスは極力排除するようにこのリストをいつも持ち歩て居てますわ。この鎌と一緒に。


いびきがうるさいと思えば、このリストの末端に加えますわ。いつかやってやれるように。


丁度熊さんは昨日の件でもうすぐトップ10入りですね。

能力の高い順でなく、迷惑を掛けられ続けたポイントだけでトップテン入りを果たす最初のヤローですね。


面白くなってきました。私への迷惑だけでトップ10.

どんだけ後悔させてやりましょうか。いひひひひひっ」


熊師匠まずいよ。ほんとまずい。


特攻隊長と死神さんを敵に回すなんて、この星誕生してから数えて数十億年、初めてのことだ。

きっと、骨すら残らない、いや、熊ゾンビだ師匠は。南無ーっ。


「シュウ、おはよ。

熊師匠のいびきに負けず、よく眠れた?

男の倉庫がうるさかったら、私のベッドの中に堂々と入ってきても良いのよ。

もう夫婦だから。ねっ。


さぁ、朝食を作りますか。

皆に内緒でシュウにはハムを超厚切りのステーキ風に切ってあげるからね。


旦那さま。体力着けて、今夜こそ頑張ろうね。ふふふっ。

ここにしばらく滞在許可ももらったし。


あはははははっ、目指すぞ憧れの女子の頂点を。


女子の頂点とは特攻隊長曰く、旦那アリ・家持ち・子供アリ・主人元気で留守がいいの専業主婦。


そんなのいやーっ、ずっとシュウと一緒がいいの。」


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