表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/620

2話目 雷って最強?

休憩を終了し、再び俺たちは進軍を開始する。


しかし、今のところ探索に何も引っかからない。


周りはかの大防衛戦の傷跡がまだあちこちに見て取れた。

向こうの山の不自然な削れ方は、水・土共魔法の土石流を敵の部隊に大規模に発動したのかもしれない。

そのような大規模魔法の発動跡が、戦闘地帯の最前線に近くなればなるほど多く見て取れた。


熊師匠やソニアはその中を必死で生き抜いてきた強者であることが、この大戦跡から容易に想像できた。


俺たちは荒廃した戦闘地帯を何事もなく、進軍した。

職校チームは戦闘地帯に漂う独特の雰囲気にだいぶ慣れた来たのか、不必要な緊張感が取れ、戦うものとしての姿に変わってきた。

ここまでは順調な演習と言ってもいいかもね。


しばらくたって、また、中隊長から停止の合図だ。


「中隊、停止。ここで、昼食とする。一時間の休憩。

火はお湯を沸かすのみ。携帯用昼食とする。


まずは第3小隊が警戒にあたれ。

20分後に第1小隊が交代。最後は第2小隊が警戒に当たるとする。


それでは休憩。」


俺とエリナは警戒に当たる。

俺は目視で、エリナは全方位検知魔法を発動。

そこに昼食の必要のない芦高さんが寄ってきて、エリナと俺にその足を擦り付けて甘えている。

「きゅいーん。きゅん。」


「俺も手伝う。一緒に居たいから。だって。」通訳さん


芦高さん、すっかり俺たちのペット、いや、仲間になったな。

ちょっと甘えん坊のところが弟みたいだな。

おっと、余計なことは考えないで警戒に当たらないと。


これからは魔族との戦いが必須となるため、以前のペット魔族さんとの戦いで窮地に陥った原因である闇魔法対策を用意してきた。


闇魔法を使える人類はいないが、魔族の主力魔法である闇魔法の対処法は良く知られており、闇魔法を直接研究している黒魔法教会のある研究員より直接の指導を受けることができた。

闇魔法対策について死神さんに相談したら、協会で一番詳しい人を紹介してもらえたので。


それによると闇魔法に対抗するには雷属性魔法が適しているとのことだ。


黒い霧の様なこちらの魔法を発動できなくなる闇属性フィールドを無効にする方法は雷属性フィールドの発動である。


例の黒い霧を吹き飛ばすのに風が、また、霧を洗い流すために水が有効であり、その両方を兼ねた水・風共魔法の雷属性魔法は闇魔法の天敵であり、今度は逆に雷属性魔法で闇属性魔法の発動を完全に抑え込めるとのことだった。


雷属性魔法を持つものは水・風属性の白魔法術士である。


この辺は当たり前と言えば当たり前なのだが、問題なのは実は水・風の白魔法術士は、ただでさえ珍しい白魔法術士の中でも稀有な存在なことである。

この中隊所属の白魔法術士は中隊規模としては異常な数が所属しているが、その属性魔法をあげると次のようになる。


カロラ 炎・風

エレオノーラ 水・土

ソニア 水・土

リンカ 水・土

ドロッチャ  水・土

エリナ 風・水


また、4属性魔法の相性は次ようになっている。

水と土 〇

風と炎 〇

水と炎 ×

風と土 ×

風と水 △

土と炎 △


当然、白魔法術士は〇の組み合わせが多く、△は稀有、×は全くいないという形となっている。


このことからわかるように文献上でかつて実在したとされる光の公女のような4属性魔法を操ったものが実在することはもはや伝説級、いや、おとぎ話の類とされるのも無理がないことである。


このようにエリナは△である水・風の白魔法術士であるがその存在は稀有である。

よって、闇魔法に対し単独で立ち向かえる魔法術士の存在が稀有であるため闇属性魔法を得意とする魔族に人類が苦戦していることは道理である。


では、通常どのように闇魔法に対抗しているかと言うと、水魔法の豪雨以上と風魔法の暴風以上を同時に発動し、闇属性フィールドを緩和することで漸く魔族に対抗することが可能となる。

闇魔法魔族1人対し、人類側は風と水の魔法術士が防御をもう一人が攻撃をと最低3人の魔法術士が必要となっている。


つまり、俺の闇魔法対策と言うのはエリナの雷魔法である。


まぁ、対策と言うほど俺は何の努力もしていないのですが、これで闇魔族に「おれって最強、おれつえーっ。」ができることだけはわかったかな。


俺たちの警戒も終わり、休憩に入った。


お湯で固形スープを溶かし、ビスケットと固焼きパンをそれに浸して食べる。

これまで、寮の飯やエリナの豪華弁当に慣れていたため、非常に苦痛な食事となった。

これから慣れないとね。


エリナはそれがわかるのか、それと自分の弁当に自信があるのか俺をいたわってくれた。


「シュウ、辛くない? 」

「エリナのお弁当が人類の至福であることを今理解した。」


エリナはまたぽっぺに手を当てて、真っ赤になりながらくねくねし始めてしまった。

こうなると自分の世界に入って、何を言っても聞いてくれなくなるのが俺のエリナちゃんだ。


そこにビスケットを口いっぱいに放り込んだかわいい妹のソニアが近寄ってきた。


「お兄ちゃん、チョコペーストを付けるとこのビスケット美味しいよ。

塗ってあげようか? 」


チョコペーストなんてどこから出した。妹よ。

そんな物資があの基地で支給されたのか。


「そのチョコペーストどうした? 」

「へへっ。案内役の人にもらったの。」


くそーっ。俺の妹を餌で手懐けるとは。やるな。

ソニアのお菓好きは職校生の間じゃ常識だからな。


「お兄ちゃんはいいから、ソニアが大事に食べるんだよ。

一気になめちゃ明日の昼に塗る分がなくなるよ。」


といって、チョコペーストの瓶のふたを閉めてあげた。


ちょっと待て、ソニアって、実年齢百〇〇歳、見た目は7,8歳で、言動はお菓子に弱いという以外は実年齢に近い九尾の狐並みに狡猾だったと思う。


今の言動は3~4歳並みではないか。何かさらに幼児化していないか?

ちょっと甘やかしすぎたか。


「ちょっと、まずい状況じゃな。

ソニアの体だけでなく心にも幼児化が現れてきたのう。」背負ってきたおばちゃん、元気だった?


「このままじゃ、赤ちゃんになっちゃうのか。」うるさいさん

「あの方の影響が顕著に表れているのう。まぁこうして、教会本山を離れれば影響が弱まるので少しはましになると思うのじゃが。」

「じゃ、しょっちゅう遠征に来る必要があるってのか。」

「まぁ、妾は外を出歩けるのでうれしいがのう。」


「お嬢様、このまま順調に魔族の地が攻略されれば、あそこに近づいてきますがよろしいので。」

「げっ、そうか。

その時はシュウたちの遠征について行かず、教会本山の寮のシュウの部屋で日向ぼっこをしたやり過ごそうぞ。」

「承りました、お嬢様。その方向でシュウを誘導します。」


何かこの人たち怪しい会話をしている。

でも、あの人がソニアの幼児化に関わっているのか。

いずれわかるからとあの人のことは放置していたが、妹のことが関わっているのなら無視はできなくなってきたな。


休憩時間に一人考え込むシュウ。

顔を赤くしてくねくねしているエリナ。

チョコペーストの瓶を誰かに開けてもらって、またなめ続けるソニア。


傍から見ていると訳の分からない集団となっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ