9話目 第108独立旅団
漸く人数の増えた訓練を終えた。
まぁ、今日の訓練はかなり短めだったが。
いろいろあったが、後は白黒両魔法協会の参議という高職の特攻隊長と死神さんにまかせておけば悪いようにはならないと思う。
ここは大人に甘えよう。
ちなみに、高職でなくても、特攻隊長と死神さんなら無敵と思うが。
そうして、俺たち8人は寮に戻ってきた。
今日は男が2人なので、ハーレム状態は回避。
エリナの機嫌は非常によろしいようだ。
エリナの笑顔が、夕日に生えて天使のようだ。
いつものように、皆で礼拝・・・・・・・・・・・、生徒会長のお祈り長すぎ。
「書記長、会長の礼拝はいつもこんなに長いんですか? 」
俺はすぐ終わって、エリナにクリーンを掛けてもらって食堂に来たが、まだ生徒会長は祈っている様だった。
「いつもよりは長いわねぇ。
きっと、一昨日からのトラブルが解決したことを神様に感謝しているんだと思うわ。」
「僕は現実主義者だから、今回のトラブルについてはシュウ君たちに感謝するよ。ありがとう。
とりあえず、卒業までの道筋は何とか付けられそうだよ。
そのあとは、先生たちにおまかせかな、今のところ。」副会長
死神さんが任せろと言ったところが不安だが、特攻隊長は当てにしていいと思う。
「漸く、落ち着いて課題に取り組めそうだよ。」
「副会長、安心してはなりませんよ。
生徒会最大の行事にして、生徒会役員を何人も胃潰瘍にしてきた、聖戦士見習いの歓迎会が来週末にございます。
準備の方は如何でしょうか。」
漸く礼拝の終わった、生徒会長がストレスを連れてやってきた。
「基本的に寮の新歓と同じですから、準備は終えています。
一番の問題は例の告白タイムですね。」
「ああっ、あれ。
あれを今年もやるんですか? 死人が出ますよ。
今年は止めましょうよ~っ。」書記長
「書記長、告白タイムって何ですか。」
「ふふっ、シュウ君は関係ないので楽しんでね、告白タイム。
それはね。聖戦士見習いの新入生がペアになりたい人ができたら、壇上で大声で名前を呼ぶの。
これが面白いの。生徒会役員にとっては地獄の一丁目だけど。
気に入った人が一人ではない場合は何人でも名前を呼んで良いのよ。」
「えっ、ハーレムを作ってよいという許可ですか。」
「そうじゃなくてね。
名前を呼ばれた人同士で、ペアの座をかけて競争するの。」
「聖戦士見習いの奪い合いですか。
それはさぞかし壮絶そうですね。」
「その競い合う方法によっては、死にはしないけどと言う状況になるわ。」
「そこの方法が難しいところで、簡単にすると力関係がはっきりせず、例え勝ち残っても遺恨が残るし、かといってハードにすると死人が出そうだし。
はーっ。まだバトルの方法を決めかねているんだ。
悩ましいよ。」
「俺は関係ないですよね。巻き込まないでくださいよ。
エリナと一緒に楽しんでいいと師匠たちに言われているんですから。」
「シュウ君たちは大丈夫でございますわ。
堂々の結婚宣言済みですもの。
バトルに参加するには及びませんわ。」
俺はホッとした。
でもこれがいつものように、悲劇の始まりだった、かな。特にエリナが。
次の日、午前中は講義。
昼食のため、皆が食堂に集まった。でも5人だけ。
生徒会メンバーはストレス(歓迎会)の打ち合わせのため、生徒会の役員室で軽食を取るようだ。
午後は熊師匠の剣技の訓練だから、しっかり食べておかないと途中で訓練をリタイアすることになると思う。
生徒会長、ちゃんと食べてるかなぁ。
俺たち5人が訓練場に連れ立って行くと、相変わらず、死神さんが芦高さんにちょっかいを出して、挙句に壁に激突させられ、そしてヒール、を繰り返していた。
なぜか横にアンタル黒総帥もご出馬。
こちらをみて、にやつきながらメスをチラつかせるのは止めてください。
俺は背中に悪寒が走った。
そして、向こうから熊師匠がどすどすやってきた。
あれ、後ろに隠れているはソニア。
すっごくいやそうな表情で、いやいやカロラさんに手を引っ張られてこちらに近づいてきた。
「ほんとは行きたくないんだからな、カロラが後で門前町であのチーズケーキを3つおごってくれるというから、超仕方なく行くんだからな。
なんで俺まで、そんなところに行かなきゃなんないんだ。
行きたいやつが勝手に行けよな。」
超ぶつぶつ言っている。
特攻隊長の言うことを聞かないやつは、ちょっとお仕置が必要だな。おしりぺんぺんだ。
その向こうから慌てて走ってくる生徒会組3人。
あっ、熊さんを追い抜いた。
ギリギリ訓練時間に間に合った。
治療中の死神さん以外、訓練場の入り口に集合した。
カロラさんから何か重要な決定事項の通達があるらしい。
カロラさんは、相変わらずソニアの手をがっちりと握り、隙あらば逃げだそうとするソニアにも話を聞かせようとしていた。
「主な関係者が集まったようね。
それでは、軍司令部と黒魔法協会、白魔法協会の協議結果を決定事項としてを伝えます。
軍の命令になりますので、姿勢を正して、しっかりと聞いてください。」
「本日、13:00より第108独立旅団を設立する。
1. 本旅団の設立目的は魔族支配地域の奪還及び見習い魔法術士もしくは見習い聖戦士の戦闘地域での実地訓練、他の軍団からの要請によるの戦闘援助、支援を主な任務とし、これに従事するためである。
2.本旅団本部は黒魔法協会に設置する。
3.本旅団長は黒魔法協会総帥とする。
4.本旅団はすべての軍施設の他に、聖戦士及び魔法術士職業訓練学校、白魔法及び黒魔法協会の施設を使用することができる。
5.全ての経費は軍司令部より支給する。
6.本旅団の解散及び改変については黒魔法協会において起案し、各軍団長の賛成多数を持ってそれを実行する。
附則として、
1.本旅団が各軍団の戦闘地域でほぼ単独で戦勝し、支配地域を拡大した場合には拡大地域の運営権は本旅団が所有するとし、実際は近接軍団の支援を受けながら運営するものとする。
2.本旅団が魔族の支配地域の奪還を目的に作戦行動する場合は要請された各軍団は最大限の人的、物質的援助を行うものとする。
3.本旅団に関する重要な疑義事項の解決に関しては白魔法協会でその事項を起案し、各軍団長の賛成多数を持ってそれを実行する。
それでは、部隊の編成を発表する。編成は現状。中隊編成とする。
第108独立旅団 編成
中隊長 エレオノーラ
第1小隊 小隊長 カロラ
隊員 エレオノーラ
第2小隊 小隊長 イムレ
隊員 ソニア
第3小隊 小隊長 シュウ
隊員 エリナ、芦高さん
以上です。後ほど旅団所属の辞令と各隊長の任命書をお渡しいたします。
もちろん、芦高さんにも辞令が出ます。なぜか。」
「また、リンカチームと生徒会チームは見習いのうちは第1小隊の預かりとなります。
職校卒業後はそのままこの旅団に在籍することも可能です。
任務は主に魔族支配領域を奪還することです。
来週の戦闘地帯での演習は第2軍団の戦闘地域をお借りすることができました。
ただし、物資的な支援は可能ですが、人的な支援は案内役の一個小隊のみとするとのことです。」
「まあ、この中隊、はっきり言って2個師団ぐらいのパワーがあるので心配はいりません。」
「このことを一日で決めてきたんですか。
すごいでね、その事務能力と交渉術」副会長。
「これが大人のケンカよ。
さっ、魔族からとっとと支配地を奪い、我々の支配地域を建設しましょう。」
「えーっ、俺も行くの。演習とやらに。」ソニア
「演習は軍の任務ですから、無断欠席は命令拒否、敵前逃亡罪を疑われて、・・・・」副会長
「疑われて? 」ソニア
後ろから大きな声で俺が
「クビチョンだーーーっ。」
「ひぇぇぇぇぇっ。」びっくりしたソニアが10m飛び上がった。
顔が引きつり、青ざめている。
そして、なんかお股を押さえている。
まさか、また。
俺は申し訳なさそうにしながらソニアの側に移動した。
「ごめんなさい、ソニア様。
びっくりさせてしまい申し訳ありません。」(ここまでは皆に聞こえる声)
「また、ちびったろ。パンツの替え持ってるか? 」(超小声)
ソニアは俺の後半の一言で、震えながら顔を青と赤の交互に色を変えている。
「黙っててほしいか。じゃ、ソニアは俺の子分に決定な。
YESの返事はガルルだ。OK?」(超小声)
「くすん。こんな姿を2回も見られたんじゃ、もう嫁にいけない。シュウ責任とって。お嫁さんにして。」(超小声)
「げっ。」
「シュウ、ソニア様をびっくりさせちゃダメじゃない。
メっ。もう、涙を流しているじゃない。
また避けられるわよ。」エリナ
「驚かして、ほんとにごめんなさい。ソニア様。
怒らずに演習に一緒に行ってもらえますか。」
「はい、シュウ様にどこまでもついて行かせていただきます。キリッ」
「世間でいうところの愛人枠でも結構です。
一緒にどこまでもつれて行ってください。くすん。」(超小声)
「早まるな。いまさら、嫁に行くなんて歳でもないでしょ」(超小声)
「一度ぐらい、嫁に行かないと死んでも死にきれないし。」(超小声)
「というわけで、仲直りして、どこまでも一緒に行くね。シュウ様」
「あの愛人枠じゃなく、妹枠でお願いします。」(超小声)
やばい、脅しが効きすぎた。
俺が欲しいのは子分で、愛人じゃねぇ。
これが皆、特にエリナに知れたら、タラり(冷や汗)。
「いいなぁ、シュウばっかりモテやがって、俺にも紹介しろよ。彼氏。」
熊さんでいいですか。
「俺は人がいいの、大体熊の指には入んないじゃねぇかよ。
もう、今の話、エリナにチクってやる。ぷんっ(怒)。」
どうやって?
「エリナの枕元に立って。」
お前は死んだエリナのひいばぁちゃんか。
ちゃん、ちゃん。
「なんか唐突でよくわかりませんが、急にソニア様がやる気をだしましたね。
では、遠征に備えて備えて皆で訓練しましょう。
まずはランニングで体力作りから。訓練場100週。
始め。」
やることがめちゃ特攻隊長だった。
次から新しい章が始まります。いよいよ、魔族との縄張り争いが勃発します。