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46話目 停戦交渉 その6

「エリナが賢者かどうかはわかりませんが、4属性魔法を使える優秀な魔法術士であることは間違いないでしょう。」

「なんと、4属性魔法術士だと。

2属性でもあまりいないはず。」

「旅団は普通にいるよね、半部はそうじゃないの。

お姉ちゃんが4属性、私が炎以外の3属性、死神も黒魔法を入れれば3属性だよね。

あっ、龍一さんは何属性?」

「我か、人の基準で言うと4属性にドラゴン族特有の魔法が使えるな。」


「シュウ君のいる旅団とは何かすごい戦力を保有しているのですな。

ここ一年で我々が連戦連敗するわけだな。

もう少し早く停戦にこぎつけていたら、多くの命が・・・・。」

「総司令官、それはお互いさまではないですか。

後、100年、いえ、そもそも人類領に入った時点で魔法の空打ち合いをお願いしていたら、ということになりますから。」

「宰相の言う通りだ。今は過去を憂うよりもこれからのことをしっかりと話し合うことが必要であろう。

シュウ君、話の腰を折って申し訳ない。

旅団員のどなたがかエルフ族の王都でマナが漂うのを感じられるといった話だったか。続きを教えてもらっても良いだろうか。」


「わかりました。

王都にマナが漂っているのを感じられたのは先ほど話に出ていた4属性魔法術士のエリナというものです。」

「さすが4属性魔法術士ですね、周りに漂うマナを感じられるとは。」

「宰相、彼女もどこでもマナを感じ取れるわけではないそうです。

エルフ族の王都の王宮に居たためだそうです。」

「シュウ君、王宮はマナが濃い場所なのですか。」


「そのようです。

実はエルフ族の王宮は魔の森というものに囲まれていて、その魔の森にトレント族が暮らしているそうなんですよ。」

「なるほどそういうことですか。」


宰相は俺の話を聞いて納得したように指で顎を摘まんでうなずいていた。


「宰相、一人で納得していないで儂にもわかるように話してくれ。」

「総司令官、トレント族はマナを大量に作り出せると教えていただきましたよね。」

「あっ、そうか。トレント族が住むという魔の森に王宮が囲まれていれば、そこはマナが非常に濃いということか。」

「総司令官、その通りです。

王宮や魔の森には風が常に吹いていてトレント族によって作られたマナは王宮付近から町の方に広がって流れ出ているそうです。

話は変わりますが、王都にいる旅団調査隊とエルフ族の行政担当者で王都の住民の寿命の調査を行っていました。

その結果は驚くべきものでした。」


「シュウ君、まさか、王宮の近くに住む者ほど寿命が長いという結果だったというのでしょうか。」

「宰相のおっしゃる通りでした。

王宮に近くに住むか、そこに勤務する者ほど、且つ、長くそこにいる者ほど寿命が長いという結果です。」

「それでエルフ族の寿命の低下もマナの減少によるものだと結論に至ったわけですね。」

「はい、その通りです。」


「つまり、魔法の空打ち合いによるマナの生成法からトレント族によるマナの生成にいずれは替えていきたいということか。」

「皇帝、その通りです。

先ほども言いましたが、エルフ族や魔族の住む町々の隣にトレント族の住む魔の森を作っていくことでそれぞれの町のマナを賄っていこうということです。

これを我々はトレント族事業と名付けて、すでにエルフ領では実行に移すための相談がなされています。」


「トレント族事業ですか。

シュウ君、かなりトレント族に頼ることになるがトレント族としてはトレント族事業を進めることに納得して、協力はしてくれるというのでしょうか。」

「はい。トレント族の住む魔の森を広げるということはトレント族の繁栄にもつながるからトレント族事業をどんどん進めてくれという言葉をトレント族からもらっています。

トレント族としては各所の魔の森で静かに暮らすことが望みだそうです。

エルフ族と魔族の種族の衰退を止めるために必要なマナを生成するトレント族とその住まいの魔の森を住民の皆さんは大事に守ってくれるものとを信じています。」


「確かに、魔の森ができたら大事にしていくだろうな。

自分たちの寿命にかかわる問題だからな。」総司令官

「シュウ君、トレント族事業を推進していけば魔法の空打ち合いなど必要ないのではないか。

この黒い計画書をぱらっとめくってみたのだが、我が軍の撤退と人類領の東端での駐留、そして魔法の空打ち合いについてしっかりとその工程が記載されているようなんだが。

トレント族事業を推進するのであれば魔族軍の自領への撤退だけを計画すれば良いのではないかな。」


「皇帝、トレント族事業を即時に皇帝派の魔族領で展開できるのであればそういう計画書になるのですが。」

「シュウ君、我が領でトレント族事業をすぐに展開できない事情でもあるのでしょうか。」

「宰相、その通りなんです。

実はトレント族はエルフの王宮の魔の森に少数しか存在しないみたいなんです。

エルフ領と皇帝派と尊王派の魔族領のすべてのマナをトレント族事業で賄うことなど直ぐには不可能なんです。

現状、エルフの王都ですら賄い切れていませんので。

と言うことで、トレント族の数をいかに増やすかが今の一番の課題ですね。」


「なるほどそういうことですか。

十分にトレント族が増えるまでは魔法の空打ち合いに頼るしかないということですか。」

「宰相、それにちょっと言いにくいことなんですが・・・・・・。」


俺がちょっと言い淀んで困った顔をしたら、宰相が焦ったように口を挿んできた。


「シュウ君、何でも言ってください。

まさか、トレント族が魔族領で暮らすのが嫌だとか。」

「いえ、そういうことではありません。

トレント族は王都の魔の森以外で暮らしたことがありません。

ご存知のようにエルフ族は森を愛し、守り育てるような種族です。

そういった意味ではエルフ領内で魔の森を広げていることについては相性から言っても問題ないのですが。」


「魔族は炎属性の魔法術士が大勢いいるからな。

炎と木々、確かに相性としては最悪だな。」

「皇帝、トレント族としても魔族領で生きていくことを嫌がっているわけではないのです。

ただ、ちょっと不安というか、よその土地で暮らしたことのないトレント族にとって相性の悪い土地で暮らすのがちょっとという程度なのだと思います。

トレント族事業が順調に進んでいけばそういう問題も解決するのではないかと思っています。

ということで、トレント族事業はエルフ領で先に始めたいと思っています。

ある程度実績を積んでから尊王派の魔族領、そして、皇帝派の魔族領に広げて行きたいというのが旅団の希望です。」


「それまでは魔法の空打ち合いを行うということなのだな。」

「皇帝、申し訳ないのですが、そのように進めさせていただけないかと。」

「シュウ君や旅団の皆さんが気にするようなことではない。

トレント族事業が魔族領で順調に進むまで人類軍は魔法の空打ち合いに協力してくれるというのだろ。

感謝することはあっても、非難するところは全くないと思うが。

魔法の空打ち合いにせよ、トレント族事業にせよ、我々皇帝派の魔族は人類やエルフ族、そしてトレント族に頼らなければならないのだ。

再度、お願いする。

申し訳ないが魔族のために魔法の空打ち合いとトレント族事業への協力を頼む。」


皇帝派そう言うと、立ち上がって、深く頭を下げた。

それに続いて、両脇にいる宰相と魔族軍の総司令官も立ち上がって、深く頭を下げてきた。


「皆さん、頭を上げてくださいな。

我々人類軍は停戦と人類の繁栄のためにそうするだけですの。

だから、気にしないでください。

あっ、どうしてもというなら、停戦追加条件 その2の履行をお願いしますわ。

それで手を打ちましょう。

ねっ、ねっ。」言い出すタイミングを狙っていた死神さん


「ひぇぇぇぇぇ、儂の首はまだ狙われていたのかぁぁぁぁぁ。」


総司令官、ち~ン。


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


感想や評価、ブックマークをいただけると励みになります。

よろしくお願い致します。


本物語"聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます"も第620部分(3/25公開予定)でようやく終了を迎えます。


長い間、お付き合いをいただきありがとうございました。


3/27日より新しい物語、"聖戦士のめまい 肉壁狂響曲"を公開していく予定にしています。

こちらの作品も宜しくお願い致します。


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