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44話目 停戦交渉 その4

停戦交渉が始まった。

まずは停戦の条件についての提示を求められた。

魔族側は魔法の空打ち合いが停戦の条件になると言うことだ。

人類側の条件は人類の支配者、2大恐怖様とすり合わせ済みだ。

俺はその人類側の条件を口にすべく、俺が言っても良いかを確認する意味で死神さんの方に目線を走らせた。

死神さんは下を向いて、テーブルの下で何か書いているようだった。

交渉のメモか。


黙っていても始まらないので俺は停戦条件を口にすることにした。


「人類側の停戦条件は魔族軍が人類領の東端の極一部に撤退し、占領した地域の大部分を返還してもらう事です。」

「シュウ君、それは我々が魔法の空打ち合いをするために占領地の東端に移動するだけで良いと言う意味なのですか。

数百年に渡る戦争を仕掛けて置いて・・・・、いや、戦争をしていて、賠償金や戦争責任者の引き渡し等々は必要ないと言うのですか。

我々はそれでいいかもしれませんが、失礼ながら、人類軍はそれで納得するでしょうか。」


「人類の2大恐怖様様がそれで良いと言っているのです、何の問題もありません。キッパリ」

「本当に良いのか。

少なくとも私は皇帝を退位し、宰相共々人類に引き渡されることを覚悟していたのだが。」

「皇帝、そんな必要はありません。

人類と話し合いを持ち、停戦に踏み切れる決断力と政治力を持った方が魔族の皇帝である方が人類にとっても好ましいと思います。

もちろん停戦に当たっては、今回の戦争の発端からすると賠償金等々を請求すべきだと言う意見もありました。

しかし、まずは停戦に合意し、魔族はその衰退に抗い、人類は平和と領土を奪回することでより繁栄に進む事が急務だということになりました。

賠償金等々の話で停戦合意が遅れることが一番まずいと言うことです。

賠償金で一部の者は潤うでしょうが、停戦が遅れれば将来の繁栄に水を差さすことになります。」


「人類側がそれで構わないのなら、我々帝国としてもそれに異議を唱えるものではない。」

「しかし、シュウ君やその人類の2大恐怖様は良いとしても、他の軍の幹部は騒ぎ出さないでしょうか。」

「そうだな。職業軍人の立場として言えば戦果を得られそうなのに何もないのはな。

まぁ、為政者としてはその停戦条件はありがたいが。」

「先ほどの挨拶の時も言いましたが、具体的な停戦工程を策定した旅団の参謀長が人類軍の幹部に今説明しているところです。

きっと、説得してくれるでしょう。」


「ちなみに、それって、人身御供、生贄ってことですか。」

「宰相、お察しください。

数百年の戦争に終止符を打つんです。多少の・・・、ねっ。

まぁ、ぶっちゃけ俺にあの役が回ってこないで良かっ・・・・・・。

と言うことで、停戦条件に付いては合意できますか。」

「帝国としては問題ない。むしろ本当に人類側はそれ良いのか心配なんだが。」

「皇帝、ここでその点を心配しても前に話が進みません。

停戦、そして交流が始まったところで不足分は返して行くことも可能なはずです。

シュウ君、停戦、そして魔法の空打ち合いの具体的な方策は立っているのでしょうか。

頼っているばかりで申し訳ありませんが、我々は停戦条件についていろいろ話をしましたが、その後のことについてはあまり具体的な話はしていないんですよ。」


「宰相、停戦条件、停戦と魔法の空打ち合いまでの工程(案)については黒い計画書に人類案をまとめてきました。

提出させていただきますので、一度じっくりと確認していただけますか。

次回の交渉ではその点についてすり合わせたいのですが。

ソニア、黒い計画書の写しを出してくれるか。」


ソニアは困惑した様子で、死神さんと俺を交互に見ながら口を開いた。


「それなら死神の奴がさっきかっさらうように持って行ったけど。」

「えつ、死神さんどうしたんです。

俺が話をしている間にこそこそテーブルの下で何をしているんですか。」

「シュウ様、私の黒い計画書も死神さんに回収されてしまいましたけど。」イリーナちゃん

「私もだ。」パキトさん

「我のもだ。」ドラゴンさん


「死神中隊長、黒い計画書をどうしたんですか。

皇帝側に引き渡して下さい。」

「なにを言っているのシュウ君。

この黒い計画書に書かれている停戦条件で、停戦なんてできるわけがないじゃないの。」


微笑ながらも口元は上に挙がり、まさに本物さんが獲物を追い詰めたような悪どい顔をしながら言い放ちやがった。


「えっ、いまさら何を言っているんだすか。

リーナ様共々、あの停戦条件を承認してくれましたよね。」

「そんなの知らないわ。

皇帝派の話を伺って、よ~く考えたら私に何のメリットもないのよね。」


今になって考えが変わったと言うのか、死神さんは。


「まぁ、俺も死神の奴があんな条件で停戦に合意するとは思わなかったけどな。甘いぜ、シュウ。」雷ちゃん

「数百年に渡る戦争ですからね、仕掛けた側はもうやめましたで済むかもしれませんが、仕掛けられた方は負けたわけではないですので、それなりの賠償が発生するのが当然ですわね。」メイド長

「では一体、死神様は皇帝側に何を要求するのでしょうか。」フロムちゃん

「それはきっとあれじゃ。」耄碌さん

「ついに儂の活躍の場が来たのじゃ、儂で皇帝を首チョンじゃ。」ナタ婆


えっ、皇帝の首が欲しいの死神さん。わからなくはないけど


"そんなものいりませんわよ、気色悪い。"


気色悪いって。


「中隊長殿は何をお望みなのですか。お話を聞かせてください。」

「死神さん、突然、何を言い出すんですか。

宰相、すいません。

本当に人類側の停戦条件は魔族軍の人類領の東端への撤退だけだったんです。

ちゃんと黒い計画書にも・・・・・・・」


俺は死神さんが集めた黒い計画書の写しを指差して、あわあわしながら死神さんを問い詰めようとしたら、死神さんが俺の話を遮った。


「ちゃんとこの黒い計画書に記載されていますわよ。魔族の撤退以外の停戦条件が。」

「えっ、そんな追加の停戦条件何て書いてないです。

ここんとこ、この交渉でプレゼンするために毎日内容を確認していましたから。

絶対にないです。

信じてください、皇帝。」


俺がさらに焦って言うと皇帝派の3人は困惑した顔で俺と死神さんの顔を交互に見ていた。


「私もお兄ちゃんに付き合って何度か黒い計画書の停戦条件を見てたけど、死神の言うような追加の停戦条件なんて書いてなかったけどなぁ。

ちょっと見せてみぃ。」


と言うとソニアはがばっと立ち上がり、死神さんの下へ。

そして、死神さんが集めた黒い計画書の一つを取り上げて、ページをめくり始めた。


「確かここに、停戦条件が・・・・・・。

がぁぁぁぁぁ、手書きで何か追加してあるぅぅぅぅ。

お兄ちゃん、いつの間にか停戦条件が追加されてるよぉぉ。」


「えっ。」


俺は死神さんから奪うように、もう一冊黒い計画を取り上げて、慌ててページを捲った。


「確かこの辺に停戦条件が・・・・・・。

がぁぁぁぁぁ、手書きで何か追加してあるぅぅぅぅ。

いつの間にか停戦条件が追加されてるぞ。

しこもなんだこの停戦条件の追加条項は。

"追加条件 その1: シュウ君を3日間舐め回す権利。"

"追加条件 その2: 魔族軍の総司令官を私のコレクションに差し出すこと。"

さっき、テーブルの下でこそこそ内職してたのは皆の黒い計画書の写しを集めて、こんなものを追記していたのか。

停戦とは何の関係もないだろ。

自分の趣味を書いただけだろ。」


「てへっ。」


「てへっ、じゃねぇ。年を考えろ。」


「シュウ君、冷た~い。そんなに冷たくすると3日を3箇月に書き換えるわよ。」


「それに総司令官を傀儡のコレクションに差し出せはないでしょ。

首チョン前提だよね。

戦争の責任を問うているんじゃなくて、単なる趣味だよね。」

「だって、ついさっき例のリストの2番目に新規に載ったんだもの。

求めるのは当然でしょ♡。

あっ、もちろんシュウ君が一番よ。」


げっ、いつの間にかランク1位に俺が戻っているし。


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


感想や評価、ブックマークをいただけると励みになります。

よろしくお願い致します。


本物語"聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます"も第620部分(3/25公開予定)でようやく終了を迎えます。


長い間、お付き合いをいただきありがとうございました。


3/27日より新しい物語、"聖戦士のめまい 肉壁狂響曲"を公開していく予定にしています。

こちらの作品も宜しくお願い致します。


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