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43話目 停戦交渉 その3

宰相の後に付いて、俺たちは牢獄を上へ上へと昇っていく。

数階を登ると明かりが魔法で光る松明から小さい窓から入る日光に変わった。

転移した場所は監獄の地下部分だったようだ。

きょろきょろ見回す俺に隣を歩いていた総司令官が気が付いて話しかけてきた。


「シュウ君、この牢獄はな、下に行くほど表で罪を裁くことができない囚人が入ることになっているんだよ。

君たちが転移してきた牢屋はな、闇に葬るしかない者たちが捕らわれている場所らしいぞ。」

「帝国にとって存在したことそのものを消したい人ということですか。」

「多分な。」

「多分ですか? 」

「あぁ、儂はあれほど地下深くまで監獄があることを今日初めて知ったんだよ。

おそらくあそこの存在は国の一部の者しか知らされていないのではないか。

儂も軍の総指揮官となったため知ることが許されたのだと思う。」


なるほど、だからkiちゃんたちがあそこにいたのか。

帝都にいるはずのない得体のしれない獣人だもんな。


「では、あの監獄は入ったら二度と生きては出られない場所。

あっ、死神さんの地下19階とおんなじだ。」

「シュウ君、私のプライベート空間がどうしたの。」


と、首を傾げて死神さんが聞いてきた。


「どこの国でも上層部はそういう暗部を持っているということか、ボソ」総司令官

「いえ、中隊長の地下19階は別です。ヒソ」

「別だと。」

「はい、生きている者は入れない。

死神さんに首チョンされて傀儡化されたモノものだけが入れるみたいです。ヒソ」

「なんと彼女は死者を操れるのか。

それでシュウ君は彼女を死神さんと呼んでいるのか、ヒソ」


「本物の死神さんの方がましですよ。

首ションしたら地獄の鬼さんにちゃんと引き渡して、鬼さんの上司の方に公正な裁きを受けさせるんですから。

死神さんは地獄の鬼さんになんて引き渡しませんよ。

傀儡にして、魂ごと地下19階に永久に保存するみたいですから。ヒソ」

「安らかな死すら、平等な死すら許されないというのか。ボソ」

「ということで、交渉のテーブルでは皇帝派の魔族側の意見を述べることは構いませんが、交渉の場を離れたら絶対に逆らっちゃぁダメですよ。

ヒソ」

「わかった、貴重な情報に感謝する。

危なかったぁ、帝都のこの監獄よりももっと恐ろしい所に足を突っ込むところだったぁ。ボソ」


総司令官が呟くと後ろに付いてきている死神さんを振り返って、ぶるっと震えていた。


「総司令官、どうかされまして。

私は別に怖くはありませんよ。

でも、そのちょっとビビっているところは素敵ですわね、ジュルリ。」


と、怪しい光を目に宿らせて総司令官を見ていた。

例のリストに総司令官が加わった瞬間だった。

後ろを振り返っただけで地下19階行きが決定したようだ。

総司令官チ~ンだな。


地下19階の新たな住人が決定したタイミングで宰相が立ち止まった。

そして、空いているドアから部屋の中を指さした。


「漸く今日の会議場所に着きました。

この部屋が一番窓が大きくて明るいんですよ。広いし。

地下は嫌いだと伺っていますから。」


あっ、くっさいモノやカビ様が生息していなければ地下でも良いんですが。


部屋の中を覗くと豪華な木製のテーブルがロの字型に並べてあり、その周りにはこれも豪華な革張りの椅子が各辺に3個づつ並べてあった。


「それではお入りください。

入り口から左側に人類の交渉団の方、中隊長様とドラゴン族の龍一様、そしてシュウ君がお座りください。

右側には我々皇帝派が座らせていただきます。

尊王様は奥にお座りください。

そして、エルフ族の方は、申し訳ないですが、入り口のところでお願いします。」


宰相に促されてイリーナが一番奥の真ん中の席に座り、その後ろにつるはしさんが控えるように立っていた。

右側は真ん中に皇帝が座り、イリーナの近い方に総司令官、入口の方に宰相が座った。

人類側は真ん中に死神さん、奥に龍一さん、宰相の対面に俺が座ることになった。


ソニアは俺の近い所に、真ん中は開けて、宰相の近い所にパキトさんが座ることになった。


皆が着席すると宰相が立ち上がって口を開いた。


「部屋の隅に会議録の作成のために書記官を2名入れさせてください。

会議録の1部は確認のためにお持ち帰りをお願いします。

次の会議で修正点のご指摘をお願いします。


それではお茶をお出ししますので、メイドを入れます。

一息入れてから交渉を始めましょう。」


そういうと宰相は入り口に行き、控えている者に声を掛けていた。

やがて、数名の魔族のメイドさんが大きなワゴンを押して入ってきて、テキパキとお茶の用意を始めた。


つるはしさん、何をぽーっと眺めているの。

あんたもメイドさんなんだから何か手伝いなよ。


と思っていると、あっという間にお茶とお菓子の配膳が済んでしまった。

そして、書記官と思われる方と交代して、一礼後にそそくさと室外に出て行ってしまった。


あっ、つるはしさんは何もしなくて良かったんだ、その方が絶対に早いしな。

"あなたの仕事は余計なことはしないで、微動だにしないで黙って待つことよ!! "の状態だな。


出てきた菓子は赤様でも黒様でもなかった。

クッキーやチョコの様なものがワゴンの中から出されて、各自の前に置かれた皿の上に山盛りに乗せられていた。

いやぁ、赤様だったら交渉どころではなかったよな。

部屋中に赤様エキスが充満して、大変なことになるからな。

この辺からも皇帝派の今回の交渉にかける意気込みが感じられるな。


「菓子なんかで相手の心意気を計るとは、さすが俺のシュウだ。」

「これは"私、帝都に出張に行ってきました!! " なのかしら。」

「ご主人様、つるはしさんに毒見をしてもらう事をお勧めします。

あの方はそれ以外に役に立ちそうにございませんから。」


なるほどねぇ。まだ、相手を完全に信用してはいけないと言うことか。


俺がつるはしさんにお菓子を渡して食べさせようと思って、皿を持ち上げようとした瞬間に俺の皿からソニアが3個ほどお菓子を掴んでひょいひょい口に入れてしまった。

しかも何でおれの皿からなんだ、自分の分があるでしょ。


「あっ、ソニア~っ。」

「どうしたの、お兄ちゃん。甘くておいしいよ。

味見してあげたんだよ。」

「大丈夫か、ソニア。」

「何が? 」


「シュウ君、毒なんて入れる姑息なことはしないから安心してください。

そのような事をするぐらいなら、初めから停戦交渉をしましょうなんて言いませんよ。

それでもここはまだ敵地なんですから一応は疑うべきかとは思いますね。

私たちが食べてみせた後に食べた方が良かったですね。」

「え~っ、食べちゃダメだったのぉ。

こんなおいしそうなのにぃ。」お菓子をくれる人はすべて善人なソニアちゃん


「これは食べても大丈夫ですけど、世の中には良からぬことを考える輩もいないとも限らないので、その辺は注意した方が良いですよと言うことです。」

「宰相、儂たちのことを信用してくれていると言うことなのではないのか。」


いや、総司令官。ソニアはお菓子に釣られて思考がすべて性善説になっただけです。


「そうですね。

交渉する相手としてぐらいは信用してもらったと捉えましょうか。

それでは、早速、交渉を始めましようか。

お菓子やお茶などを召し上がりながら、話を進めさせてもらえばと思います。」


「宰相、まずはどの辺から交渉するのだ。」

「皇帝、私たちは人類にマナを供給してもらう事をお願いするだけです。

こちらからの要望はそれに尽きると思います。

その為には人類軍と魔族軍の停戦が大前提となります。

従って、まずは人類側の停戦に当たっての条件を提示していただきたいと思いますが。

いかかでしょうか。

人類側の求める停戦条件はどのようなものになるでしょうか。

賠償金でしょうか、皇族や大貴族の人質でしょうか。」


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


感想や評価、ブックマークをいただけると励みになります。

よろしくお願い致します。


本物語"聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます"も第620部分(3/25公開予定)でようやく終了を迎えます。


長い間、お付き合いをいただきありがとうございました。


3/27日より新しい物語、"聖戦士のめまい 肉壁狂響曲"を公開していく予定にしています。

こちらの作品も宜しくお願い致します。


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