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41話目 停戦交渉 その1

皇帝の後ろに目をやると、皇帝と同等の立派な衣装とたいそうな鎧を着た2人の大柄な男性魔族が控えていた。


「まずは魔族側の交渉メンバーを紹介したいのだが構わないか。」

「よろしくお願いします。

その後で人類側の今日の交渉メンバーを紹介させていただきます。」

「うむ、よろしく頼む。」


皇帝は一歩右にずれて後ろに控えていた二人の魔族を前に出るように促した。


「こちらが帝国宰相だ。主に内政の責任者となる。」

「この鎧を着けたのが帝国軍の総司令官となる。

人類領における停戦と撤退、そして、魔法の空打ち合いの責任者となる。」


「宰相を仰せつかっております。

停戦がなりましたら、人類への賠償や今後の外交の指揮を執らせていただくことになります。

これからよろしくお願い致します。」


というと、宰相は優しく微笑んだ。


「儂は新たに帝国軍の総司令を仰せつかった。

先月までは帝国軍の遠征軍左翼軍団長を務めていた。

先日の人類軍との戦いで先の帝国軍総司令官や参謀長、副総司令官等々が戦死したため、私に総司令官の重責が回ってきてしまった。

交渉の妥結内容に従い人類領に駐屯する帝国軍の指揮を執ることになる。

人類軍とこれから何度も話し合うことになると思うが、よろしく頼む。」


このごっつい魔族さんが軍の総司令官かぁ。

それも人類領で戦っていた指揮官かぁ。


そんなことを思いながら総司令官の挨拶を聞いていたら、死神さんが一歩前に出で口を開いた。


「横から失礼します、総司令官さん。

先の総司令官が戦死したことは存じておりましたが、参謀長や副総司令官まで戦死したことを私たち人類軍に話してしまってもかまわないのかしら。」


死神さんの言葉を聞いて、総司令官の横で見守っていた皇帝が前を向いて口を開いた。


「それは構わない。

まずはわが軍の中枢部に幾人もの戦死者が出たことは残念なことだ。

しかし、先の総司令官がいた中央軍3個師団が一瞬で全滅したことは知っているのだろ。

君たちもあの遠征軍の作戦指揮を総司令官一人で執っているとは考えないであろう。

遠征軍の中枢部が崩壊したことは容易に想像がつくのではないか。

そうならば隠した所で意味はない。

また、帝国軍は多くの優秀な指揮官を抱えている。

戦死した者達の代わりになる者が不足しているわけではない、この新たな総指揮官のようにな。

一番の理由は、帝国としてはもう数百年の人類との戦いを止めたいのだ。

前も話したが、帝国軍の人類領への侵攻は人類領を支配したいためではない。

人類軍との戦いによりマナを増やして、それを浴したいだけなのだ。

戦わずしてその目的が達せられる可能性が出てきたのだ。

帝国は人類軍と停戦し、魔法の空打ち合いの方に舵を切りたく思う。

そのためには相手に含むことなく本音で話をする必要があるだろう。

だから、腹の探り合いは止めたい、そのメッセージの一つだと理解してもらえればありがたいのだが。」


「そう言うことですか。

総司令官さんの先の言葉は皇帝派の魔族軍の今回の停戦に向けた話し合いにおける姿勢と理解しました。

それではシュウ君、今度は人類側の交渉団を紹介して頂戴。」


今の死神さんと皇帝のやり取りを聞いて、この交渉が人類と魔族の運命を左右する重大な会議であることを改めて認識させられた。

その橋渡しを俺がしている格好だ。

いやが上にも緊張感が上がってきた。


「それでぶぁは・・・・・・」

「お兄ちゃん、噛んじゃってるよ。落ち着いて。」


皇帝もお微笑みながら言葉を掛けてきた。


「シュウ君、緊張するのはわかる。

君のような少年にこの場を取り仕切ってもらっている状態だからな。

でも、交渉のすべてを君に背負わせようとしているわけではない。

だから、一人ですべてを動かそうとしなくても良いのだ。

慌てずにゆっくりと話してくれ。

それに、例え今のように失敗しても誰も笑うものなどおらんよ。」


「皇帝、ありがとうございます。

それでは改めて、人類側の交渉団のメンバーを紹介します。」


「よろしく頼むぞ。」


「まずは交渉団の団長の・・・・・・・・・」


「どうした、シュウ。緊張のあまり声が出なくなったか。」


違うんだ雷ちゃん。死神さんの名前って何だっけ、俺は知らないんだけど。


「そっからかぁ。全くシュウは、どうしようもねぇな。

死神の名前は・・・・・・・、姉ちゃん知ってるか。」

「エレオノーラ様ですわよ。」


えっ、そうなの。初めて知ったよ。


「おっほん、失礼しました。緊張のあまり言葉が出てきませんでした。」


"シュウ君、良いのよ。

その慌てた顔がとても素敵だったわ。

後で緊張がほぐれるように抱きしめて舐めまわしてあげるわね。

交渉後のご褒美として。"


いらん。


「こちらが交渉団団長のエレオノーラです。

人類軍独立第108旅団の中隊長です。

俺、自分も隠さず本音を言わせていただきます。

中隊長は人類の2大恐怖、人類軍の支配者の一人です。

人類軍は中隊長の決定にすべて従います。

よって、今日の交渉の内容は人類軍の総意と考えてもらっても過言ではありません。」


「シュウ君、口を挟んで申し訳ないのだが、一つ聞かせてもらっても良いでしょうか。」

「あっ、宰相、何でしょうか。」


「人類の2大恐怖とおっしゃたように聞こえたのですが、中隊長さんの他にもう一人、人類軍の支配者がいらっしゃるということでしょうか。」

「その通りです。もう人はわが旅団の事務局長です。

はっきり言ってヤバいです。

俺、自分なんて、知らない間に社会的に抹殺されていましたから。

人類軍の総司令部に行くぐらいならここに来た方が心が落ち着きます。」


「シュウ君、なんて言ったらいいかわかりませんが、人類領で哀しいことがあったらいつでも帝都に来てください。

歓迎しますよ。」

「宰相、ありがとうございます。すぐにそうさせていただきます。」


「教会本山って、魑魅魍魎の住処なんですのね、龍一様」鱗ではなくドラゴンさんの腕に着けてもらったフロムちゃん

"そんなことはないと思うが。シュウ君にとってはそうなのかもしれんな。"


「後でお渡ししますが、今日の停戦の話し合いにおける人類側の停戦の提案はこの黒い冊子に記載してあります。

この内容は2大恐怖様様の承認を得ています。

この内容から大きく外れた場合には、一度、旅団に持ち帰ってその内容を協議させていただくことになります。」


「そう言うことですか。

その冊子に書かれている内容で合意ができるのなら、すぐにでも停戦が可能ということですかね。」

「その通りです、宰相。

ちなみにただいま人類軍の総司令部でも軍の幹部を集めてこの冊子について説明しているところです。

この停戦計画書にほぼ合意してもらえるなら、人類側は本日でも停戦が可能です。

死神さん、そうですよね。」

「それで構わないわよ。」


「ということで、交渉団の紹介を続けさせていただきます。

ソニアと龍一さんは前回もここを訪問した者で、直接、皇帝とも言葉を交わした間柄ということで今日も付いて来てもらいました。」


「よろしくね。」

「我は交渉するというより、交渉の行く末を見守りに来と言った方が良いだろう。」


「龍一さんより、交渉の行方の見守りという話が出ましたが、今日の交渉は人類と皇帝派の魔族だけでなく多くの種族の将来に関わってくると考えています。

そこで、エルフ族からも今日は人を出していただいています。

まずはソニア。

ソニアは人類とエルフのハーフで、しかもエルフの王族となります。

エルフ族の代表としての資格は十分満たしていると思います。

それともう一人、こちらがパキトさん。

エルフ族の外交官で、人類との友好にご助力いただいている方です。

本日はエルフ族の代表として、エルフ族の指導部である王族と族長会議よりこの交渉を見届けるように派遣されています。」


パキトさんは皇帝に挨拶するために前に出てきた。


「パキトと言う、よろしくお願いします。

人類と皇帝派の魔族の停戦への交渉を見届けさせていただきます。」

「パキト君か。

君が初めての公式なエルフ族の魔族領への訪問者となると思う。

外交官として、我々とも交流を進めてほしいものだ。」

「わかりました、皇帝。」


次はイリーナの番だな。

とういう風に紹介しようか。


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


感想や評価、ブックマークをいただけると励みになります。

よろしくお願い致します。


本物語"聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます"も第620部分(3/25公開予定)でようやく終了を迎えます。


長い間、お付き合いをいただきありがとうございました。


3/27日より新しい物語、"聖戦士のめまい 肉壁狂響曲"を公開していく予定にしています。

こちらの作品も宜しくお願い致します。


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