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37話目 風の聖地の事業


「でも、確かに風の聖地は人類領で目指す教会の機能をちゃんと備えているんだよなぁ。」

「お兄ちゃん、教会の機能って何? 」

「郊外にあり、エルフ族が巡礼し、そして、強者の出現や種族の安寧と繁栄を願って祈る。」

「あっ、確かにそうだね。

教会事業の根底にあるものは教会に行って祈ることだもんね。」

「風の聖地への巡礼はエルフ族の間でもだいぶ広まってきたと聞いているわよ。

設立の経緯をよく知らない王族や地方の族長の一族にも熱心に通っている方もいらっしゃるそうよ。

それに風の聖地で祈った後に越後屋シッピングセンターでお買い物するのがとても楽しみなんだって。

特にあそこでしか手に入らない、人類領のお菓子やお土産が人気らしいわ。」


「あっ、確かに帝都からの帰りに寄ったけど、マドリン行きの風見鶏に大行列を作っていたもんな。

迷子の案内係までいたような気がする。」

「門前町の例のケーキ屋さんの商品があまりにも人気だから、近々に工場を新設するって言ってたもんね。」

「その上に今は罪人さんが温泉を探しているだろ。

運良く近くで見つかったら、ショッピングセンターの他にスパリゾートが併設されることになるよな。」

「そうするともう一大リゾート地ね。

そこで結婚式を挙げるかぁ。

あっ、シュウ、私たちの結婚式も今度、風の聖地でやらない。」


「エリナ、何を雷ちゃんのような考えなしの要望を吐き出しているんだ。

結婚式の会場を駄女神さんが、披露宴の会場を越後屋さんが取り仕切ってんだぞ。

どうなるか想像できないぐらい怖ろしいことが起こるような気がすんだけど。」

「あっ、そうだった。

あそこで結婚式を挙げるぐらいなら地獄の一丁目の方がよっぽど安心だよね。

少なくても本物さんとお友達の鬼さんは心から祝福してくれそうだもんね。」


えっ、そうなの、エリナ。


「人が集まり、祈るだけでなく、体と心を癒す空間かぁ。

理想的なんだけどね、あそこで教会事業を進めるのが。

越後屋ショッピングセンターや越後屋スパリゾート(仮称)で越後屋が出張ってくるのは、まぁ、商売だからしかたないし、支払い能力さえあれば変なことはしないと思うよ。

だけど、駄女神が人の幸せを祝福なんてできるのかなぁ。

悪霊降臨とか呪詛とか変な事をしないように駄女神の奴が礼拝堂の表に出てこれないようにできないのかなぁ、お兄ちゃん。」


「もともと風の聖地は奴らを封印した場所だからな。

そこに入り込んで、奴らだけをさらに封印すんのは無理だろう。

それに結婚式なんだから風の女神の巫女である駄女神さんは必ず表に出てくんだろ。

そして、わけのわからん説教や呪いの言葉、悪霊降臨なんてしてもらっちゃったら誰も喜びの水なんて出てこないぞ。

その上、帰りに越後屋ショッピングセンターに寄って、結婚式のお祝い気分のまま大量の買い物をして、代金が支払えなくなって身包み剥がされてみろ、あっという間にうわさが広がって誰も風の聖地で結婚式なんて上げなくなるぞ。

何といっても結婚式が一番、喜びの水の稼ぎ時なんだからな。」


「いずれにせよ風の聖地一か所だけでエルフ領での教会事業をすべて賄うことは難しいわね。

突風の凪の時間が朝晩30分なんで、風の聖地にまで行くのは一部の熱心な巡礼者だけのようなのよ。」

「えっ、そうなのエリナ。

先日、越後屋ショッピングセンターを通ったおりには、さっきソニアも言っていたようにかなりの賑わいだったけどな。

あそこに居た皆が巡礼者じゃないんだ。

じゃぁ、何しに・・・・・・って、ショッピングが目的なのかほとんどのエルフさんは。」


「結局、凪の時間が短すぎて行きたくてもいけないし、越後屋ショッピングセンターには珍しいモノがたくさん置いてあるし、その上に遊戯施設も充実し始めたりして、風の聖地に行くのをあきらめてショッピングに専念してしまう方もいるらしいわ。

中には入れ込み過ぎて、マドリンにたどりいたころはパンツ一丁、なんて方もいるとかいないとか。」

「えっ、あそこでギャンブル施設の導入は禁止のはずだよね。

まさか、強面の自由業のおじちゃん方が無許可で路地裏に入り込んでいるとか。」


「これまではそう言うことがあったかもしれないけど、これからはそれはないんじゃないかな。」

「そうなの、お姉ちゃん。」

「罪人さんの仕事が他所から入り込んだ強面の自由業のおじさんたちを見つけ出してはお友達になることみたい。

拳で語り合おうみたいな?

お友達のいる街ではそういった強面の自由業の方もおいそれとは黒い事はできないわよね。」


「そっかぁ、罪人さんがまじめに仕事をしている限り、あそこの路地裏は黒く発展はしないのかぁ。

んっ、そうしたら、なんでパンツ一丁なんだろ。」

「大方、珍しい人類領のお料理でも食べ過ぎてお財布が軽くなって、お金以外のもので支払ったんじゃないかしら。

そういった方の面倒も罪人さんのお仕事らしいわよ。」


「罪人様が一番の強面の自由業の方に聞こえてしまうのは気のせいかしら。」

「・・・・・・・・・・」

「まぁ何にしろ、お父様がまじめに仕事をしているようで一安心ですわね、フロムさん。」

「はい。」


いつも一番先に口を挿んでくる雷ちゃんはお口チャック中か。


「今の話を聞いて、風の聖地とその門前町の越後屋ショッピングセンターが順調に機能している(意訳: 奴らがきちんと隔離されている)ようで安心したよ。

順調に行っているのならなおさら、何とか奴らを隔離したままで風の聖地の機能だけをエルフ領に広げらんないかね。」

「じゃぁ、人類領の教会のように風の聖地を本山として、分社化すればいいんじゃない。

駄女神は風の女神の筆頭巫女として風の聖地の礼拝堂に一生封印。

越後屋ショッピングセンターは各地の風の女神の礼拝堂に必ずしも併設する必要はないから、越後屋もあそこに封印、ってのはどうかなぁ。」


「なるほど、分社化ね。

エルフ領の各地に風の女神の礼拝堂を築くというわけか。」

「でも、駄女神を封印したままで風の聖地、風の女神の教えを説く司祭様はどうするの。

風の聖地の分社化だから教えを説く者が必要になるわよ。」

「それならこれまで熱心に風の聖地で祈りを捧げ、かの地の整備を手伝ってもらってきた豹族に頼むのはどうだ。

数は少ないけどマドリンの郊外で隠れ住んでいた豹族をもっと広い世界に出て行ってもらういうのは。」

「確かに豹族としても村と風の聖地という閉鎖的なところで生きていくよりもエルフ領の各地に出て行って、広い世界に触れた方が種族として開放的に生きて行けるかもね。

前向きで開放的な心がさらに種族の衰退を食い止め、逆に繁栄を得ることになるんじゃないかと思うんだよ。」


「とすれば、それを引っ張っていくのは白黒しっぽちゃんたちか。

水の使徒や巫女としての役割が今一はっきりとせずに、漠然とエリナの手伝いをすれば良いんじゃないかと思っていたけど、エルフ領で教会事業を広げる役目を負ってもらうというのはいい考えだと思うよ。」

「そうだよね。

私、王都に帰ったら白黒シッポさんたちに来てもらって風の聖地の分社化について相談してみるわね。」


「あっ、お兄ちゃん、風の聖地の本当の姿を豹族さんたちにバラしちゃうの。」

「それは止めておいた方が良いと思うな。

一気にやる気をなくしてしまうと思うぞ。

少なくても、俺はそうだな。」

「それじゃぁ、魔の森の葉っぱに喜びの水を付けるおまじないの部分だけを追加で情報提供するわね。

人類で今そう言うことが流行っていると言えば、多少奇妙な行いでも受け入れてもらえるんじゃないかしら。」

「そうだな。エリナ、そう言う方向で頼むよ。」


「これでトレント族事業の具体的な方策としては、人類領では教会事業。」

「エルフ領では、風の聖地の分社化事業ね。」

「そして、尊王派と皇帝派の魔族領では尊王の社とその一族の施設で尊王の事業と言うわけだよね。」


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


感想や評価、ブックマークをいただけると励みになります。

よろしくお願い致します。


本物語"聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます"も第620部分(3/25公開予定)でようやく終了を迎えます。


長い間、お付き合いをいただきありがとうございました。


3/27日より新しい物語、"聖戦士のめまい 肉壁狂響曲"を公開していく予定にしています。

こちらの作品も宜しくお願い致します。


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