36話目 絶体絶命 封印が解ける
「私たち、それで何の話をしていたんだっけ。」
エリナちゃん、そっからなの。
さすが天然平目ちゃんだ。
「えぇ~と、確かお姉ちゃんに教会事業について説明していたんだと思うけど。」
「あっ、そうだったわ。
トレント族事業に協力するために人類領では教会事業を展開して、喜びの水を集めて、トレントさんの若木を育てるのよね。」
「そうだよ。リーナと死神の奴がそうすると決定したから、もう絶対にやる事になるんだよ。」
「でっ、ソニアちゃん。なんで、教会事業の話になったんだっけ。」
エリナがかわいく首をまたまた傾げる。
「お姉ちゃん、もうボケが出たの、やばいよ。
まだ、14歳になったばかりだよね。
2百年近く生きている私でさえ覚えているのに。
大丈夫?
話のきっかけは・・・・・」
「ソニアちゃん、ちょっと待って。
もちろん覚えているわよ、ちょっとド忘れしただけよ。
この年でボケるなんてありえないでしょ。
死神さんのマンタじいさんじゃあるまいし。」
両手をソニアの方に差し出して、手のひらを広げて横に振って、先を言わないようにというアピールをする、エリナ。
当然覚えているよね、どうしてエリナが旅団基地に帰ってきたかだよね。
「えぇぇぇと、あっ、わかった。
シュウがイリーナと密会していないか確かめに来たんだった。
それでイリーナは来ていないという話になって、安心して、教会事業の話になったのよね・・・・・・・、んっ、なんか変? 」
やべえ、マジで大丈夫かエリナ。
"お兄ちゃん、お姉ちゃんはちゃんと介護保険に入っているよね。
何かまずいような気がしてきた。"
若いからまだだと思うぞ。
あれは40歳以上じゃないのか。
"えっ、マジで。
ちょっとどうしようお兄ちゃん。
公的支援が受けられないよないよぉ。"
「冗談、冗談よ。
いやだわ。この年でボケるなんてありえないでしょ。」
と言って、今度は頭を掻き始めたエリナ。
「エリナ様はエルフ領でどのように喜びの水を集めて、トレント様たちを増やしていくかの具体的な方策をご相談しにシュウ様をお尋ねになったのではありませんか。」
「そっ、そうよ。そうだったわ。
そしたら、すでに人類領では教会事業として具体的な方針が立ったいたのよね。
びっくりだよね。
それを聞いて焦って、頭が真っ白になったというわけなのよ。
んっ、そうなのよ。
焦って、頭が真っ白になっただけなのよ。
決して、ボケたわけじゃ・・・・・、あはははははっ、ウケ狙いでボケただけだから。
脳みそがボケたわけでないからね。」
エリナは何か冷やせをかいて、片手でパタパタ顔を仰いでいた。
マジで、忘れてたんだ。
「人類は教会事業かぁ。
それ、良いはねぇ。
エルフ領でも教会事業ができないかしら。」
「お姉ちゃん、エルフ領では人類の教会に相当するところはないの。」
「結婚式やお葬式、誕生のお披露目、成人式などのイベントは町や村の集会場でやるようなんだけどね。
祈りを捧げたり、心に誓いを立てるような精神的な支えという場所はないようなのよね。
しいて言えば森の中がそういう場所なのかもね。
青々とした木々や森の存在がエルフ族の心の支えなのだと聞いたわよ。
ソニアちゃんもエルフ族と人類のハーフなんだから、森の中にいると心が安らぐということはないの。」
「う~ん、と別にぃ。
私にとっての癒しの場所は町の中のお菓子屋さん。
あっ、森の中のお菓子屋さんでもぎりぎりOKだよ。
お菓子に囲まれていると心が休まるよ。
お菓子の家に住んだら1000年ぐらい生きられそうなぐらい元気が出るよ、きっと。」
どんだけお菓子が好きなんだ。
バランス良く食べないとチンチクリンのまんまだぞ、ソニア。
「エルフ領でのトレント族事業として今のところ出ている案は、お祝い事があったら魔の森の木々の葉っぱを集会場に持ち込んでもらって、それで涙を拭いてもらうというのが挙がったんだけどね。
何か不自然なのよね。
涙を葉っぱで拭いてくださいってのがね。」
「あぁ、それはここで死神さんたちと話した時も出たなぁ。
結婚式で出た喜びや感動の涙を葉っぱで拭くイメージがわかないって。」
「それで出たのがおまじないという考え方だよね。
結婚式で出た涙を葉っぱで拭いて、魔の森に収めると、結婚した当事者が幸せになるとか、次は自分に幸せな出会いが巡ってくるとか。」
「さらには、おまじないを信じてもらう前提としては教会に通いなれて、教会で祈ることが精神的な支えになるようにしないといけないということになったんだよね。
教会で祈り、喜びや悲しみで出た涙を葉っぱで拭いてもらい、それを魔の森に収めるともっと大きな喜びがやってきたり、悲しみは喜びに変わったりするというおまじないなんだよね。」
「確かに、おまじないという意味合いになれば涙を葉っぱで拭くっていうことに違和感はなくなるわよね。
エルフ領でもそんな場所がないかしらねぇ。
なければ作れば・・・・・・・・・。」
「教会を作るの、おねぇちゃん。教会と言えば・・・・・・・」
「ソニア、どうした。エルフ領で教会を作るって・・・・・・・・・」
「シュウ、どうした。エルフ領で教会を作るってところでみんな点々になっちまったぞ。」
「エルフ領の教会ですか。・・・・・・・」
「エルフ領に教会ですわね。・・・・・・・」
「どうした、姉ちゃんやフロムまでエルフ領の教会と言ったきり、後が点々で続かなくなったぞ。」
「雷神、もうその話題はここまでにしておきなさい。
大変事態になりそうですよ。あの禁断の・・・・・、あっ、これ以上言うとフラグが立ってしまいますわ。」
「私も良くは存じませんが、うわさで聞くところでは・・・・・、あぁ、これ以上は恐ろしくて口に出せませんわ。」
「どうしたんだよぉ、みんな。
エルフ領に教会を作ったって変じゃねぇよな。
大変なことっていったい何なんだよう。」
「雷ちゃん、聞きたいのか。
聞きたいのなら言ってもいいけど、フラグが現実になったらその対応は雷ちゃんに一任するからな。
そうなったら、当然、秘書契約は解除だ。俺は関係ないからな。
これは決定事項だ、いいな。」
「ちょっと待ってくれ、シュウ、俺を見捨てるっていうのか。
じゃぁ、聞かなくてもいいや。」
「雷ちゃんが責任を取ってくれるんだ。
じゃぁ、言ってもいいわよね。」
「いいんじゃねぇ。」
「さすが、我が妹。」
「雷神様は勇者様ですわ。」
「えっ、それを聞いたら勇者になっちゃうの。
えっと、聞かなくてもいいです。
お口にチャック、お耳に耳栓、目にはアイマスクが俺のデホだからな。
だから、言っても無駄だからな。
俺には聞こえないからな。
だから責任は取らねぇし、シュウからも離れねぇからな。」
「そこまで聞きたいのなら教えて進ぜよう。」
「シュウ、だから俺は聞きたくないって、言ってんだろ。」
「雷ちゃん、エルフ領に今も教会は存在するんだ。
なぁ、エリナ、ソニア。」
「そうなのよ、忘れたいだけだったのよ。」
「そうだよ、信じたくないだけだったよ。」
「えぇぇぇぇっ、そうなのか。すでに教会があったのか。
じゃぁ、それを利用してエルフ領でも教会事業を始めればいいんじゃねぇか。
何だ、好都合なものがすでにあったんじゃねぇか。」
「ふっ。」
「フッ。」エリナちゃん
「はぁ~っ。」ソニアちゃん
「・・・・・・・」フロムちゃん
「みんなどうしたんだよ。ふっだの、はぁ~だの。
俺がなんか変なこと言ったか、なぁ、姉ちゃん。」
「まぁ、雷神が責任を持って対応するというなら問題ないでしょう。
確かにエルフ領には教会が存在します。
それもご主人様が創設された教会です。」
「姉ちゃん、シュウが教会なんて作ったっけか。」
「確かに、あの場所と比較すると、地獄の一丁目がバルハラと化すと言われておりますわね。
死神大魔王様も近寄り難い場所、この世とあの世のカオスをすべて集めてもあそこよりは秩序があるとお聞きしておりますわ。」
「えっ、シュウが作ったんだよな。
地獄がパラダイスに見えるような場所を・・・・・・・」
「ああする他はなかったんだ、なっ、ソニア。」
「そうする以外思いつかなかったもんね、ねっ、お姉ちゃん。」
「そう、この世の混沌をすべて封印した場所、風の聖地。
私たちが絶対に触れてはいけない場所。」
「あぁぁぁぁぁぁ、確かに礼拝堂があって、皆が祈ってるぅぅぅぅ。」
あの中に住まう者達が再び世に出ることになるのか。
雷ちゃん、後は頼んだぞ。
「・・・・・・・・・・」
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。
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本物語"聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます"も第620部分(3/25公開予定)でようやく終了を迎えます。
長い間、お付き合いをいただきありがとうございました。
3/27日より新しい物語、"聖戦士のめまい 肉壁狂響曲"を公開していく予定にしています。
こちらの作品も宜しくお願い致します。