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30話目 輪廻の会合と月の女王 その2

祝600部分


この物語も完結に近づいています。

最後まで、お楽しみください。


テーブルの下を向いたまま、イリーナがぽつりぽつりとつぶやく様に口を開いた。


「エリナは光の公女として、中心にいる者の旦那様の横に並び、旦那様を支えて歩み始めた。

私はどうなのかな。

月の女王として、私は旦那様の横に並び、支えているとはとても言えないわ。」


俺はそんなイリーナ言葉に動揺した。


「イリーナどうしたんだ、急にそんなことを言い出して。」

「エリナが光の公女としての役割を果たし始めたのに、私は相変わらずだなぁと思って。

私は月の女王として、各種族の繁栄に何も役に立っていないと思って。

そんな私が旦那様の寵愛をエリナと争う何て、おかしいわよね。」

「そうかなぁ。

イリーナは尊王派の住民を良くまとめ上げていると思うけど。

しかも、エリナはこれから事業を始めるところだし。

俺はどちらも、光の公女、月の女王としての役割を果たしているんじゃないのかと思っているけどな。」


「そうじゃないの。

エリナは光の公女として、中心にいる者が決めた輪廻の会合の措置を実際に行おうとしている。

そして、全種族を救済し、繁栄に導こうとしているわ。

私はその一部の住民をまとめているだけ、中心にいる者を支えているとは言えないわ。」

「ん~っ、でも、ここ数百年はイリーナを含めた代々の月の女王が踏ん張って来たから尊王派の住民は黒い霧の中で平穏な暮らしを築けてきたんだと思うよ。

例え、トレント族事業が尊王派の地域に及んだとしても、尊王派の住民にとっての尊王の存在の意味合いはそんなに変わらないと思うけどな。

それに、これまでは一緒にその役目を背負うはずの中心にいる者や光の公女がいなかったんだから、ひとりきりの月の女王がやれる役目の範囲がある程度は限定されてしまっていたのは仕方ないと思うな。」


「それは代々の月の女王が果たしてきた役目で、それを否定するつもりはないわ。

それでも今日では中心にいる者と光の公女、そして、月の女王が揃ったわ。

その上、輪廻の会合に集いし者どももすべてそろっているわ。

そして、それぞれが輪廻の会合に集いし者どもとしての役割を果たし始めている。

そのような中で、今までと同じ役割しか果たしていない私は光の公女たるエリナが負っている役割と比較すると何と不甲斐ない事だと思われるの。」


「俺としては光の公女と月の女王が同じような役割を負っているとは思わないんだけどな。

前に誰かが言っていたのを思い出したんだけど。

光の公女はお日様の様にその強く輝く光で広く人々を照らし、幸せに導くものだと。

それに対して月の女王はその優しい光で闇を照らし、傷付いた心を優しく包んで癒し、明日の生きる活力を与えるものだと。」

「光の公女は人々に生きる道を示し、月の女王は人々を癒す、という意味でしょうか。」


「本当のところはどうだか俺にはわからないけど、二人が同じような役目を負っているわけでもないし、どちらの役目が重要かということでもないと思うんだ。

他の輪廻の会合に集いし者どももそれぞれに合った役目を負っているはずたよ。

だから、イリーナもエリナがどうしたこうしたはあまり関係ないと思うんだ。

自分のできる事を背一杯やることが大事なんだと思うよ。」

「自分のできる事を精一杯ですか。」


「そう、それをさぼると罪人さんの様に人類と皇帝派の魔族が数百年に渡って戦争状態になったり、尊王派が皇帝派の魔族から隠れてひっそりと不自由な生活を強いられたりするんじゃないかと思うんだ。

まっ、そのつけが溜まった罪人さんは越後屋さんの下で100年間の年季奉公。

地獄の鬼さんが天使に思える、死神さんとその親友の鬼さんのお迎えが待ち遠しい状況に陥っているんだけどね。」


「やっぱり、だめだわ、私。

できる事を精一杯やっているって言えないもの。

輪廻の会合の歯車がどんどん回って状況が刻一刻と変わっているのに、私のしていることは先代たちの月の女王と同じ。

私だけ自分の役割を精一杯果たしているとはいえない。

もっと、今代の月の女王として果たすべき役割があるはず・・・・・・」


そう言って、再び、頭を下げて沈黙してしまった。

もともと華奢な体がより一層小さくなったように思えた。

二人の間に沈黙という壊そうとも壊しきれない壁が出来たような状況だ。

俺は掛ける言葉を必死で探していた。


そんな気まずい雰囲気が流れているのを知ってか知らずかメイド姿の能天気な薹の立った魔族さんが笑顔で戻ってきた。


「いやぁぁ、すっかりサッちゃんと厨房の入り口で話し込んじゃったのよ。」


こいつは自分の役目に目覚めることは一生ないな。

もう、罪人さんと一緒に強制的に働かした方が良いんじゃないか。


「サッちゃんや厨房にいる皆に死神さんの結婚式の様子なんかを聞いて盛り上がっちゃったぁ。

良いなぁ、結婚、そして、新婚生活。」


俺は黒い塊さんの現状が一瞬、頭をよぎった。

あんな状況が羨ましいのか。

まぁ、女性側(意訳: 死神さん)からするとやりたい放題だから良いように見えるかもな。

万が一、ないとは思うけどメイド服を着た薹の立った魔族様が結婚なんて言うことになったら、その旦那にこそっと、死神さんと黒い塊さんのような夫婦関係にあこがれていたよと耳打ちしておこうと、俺は心に強く誓った。


「ところで、シュウ君とご主人様は結婚式を挙げないの。

私もサッちゃんたちに良いネタを提供しないとね、お茶うけに。」


俺たちの結婚式は近所のおばちゃんたちの井戸端会議のネタってことですか。

その前に薹の立った方の結婚が先じゃないんですか。


「シュウ、無理を言うな。

相手がいないだろうが。

飯場生活が長いのにそこで男を捕まえられなかった奴だぞ。」


雷ちゃん、旅団基地の周りに居る魔物(雄限定)、オークでいいや、を捕まえてきて。


「んっ、オーク? 焼肉にでもすんのか。」


つるはしさんでも直ぐに結婚できるかなぁと思って。

子供もバンバン出来そうだし。

一応、二本足で歩いているから人型生物の範疇だろ。

顔がいやだったら紙袋でも被せて置けば良いだろ。

目のところに穴を開けてな。


「結婚式と言えば、教会事業のメインイベントにするって聞いたよ。

それで喜びの水を集めるんでしょ。

シュウ君と尊王様の式だったら、いっぱい集まりそうだよね。

尊王の関係者だけだけど。

シュウ君の関係者で感動して涙を流す奴なんているの。

ソニアさん?」


「何を言っているんだつるはしさん。俺の方の出席者だって・・・・・・・、居ねぇな。

ソニアは無理だな。

唯一そうしてくれそうな実家の家族からは離縁されているしな。」

「そっかぁ、そうなんだ。

シュウ君ごめんね、ない物ねだりだったわ。」

「わかっているなら聞かないで。」

「そうすると結婚式は尊王の宮、尊王の社でするのが良いわよね。

昔、魔族が尊王派と皇帝派に分かれてしまう前って、尊王様や尊王様の一族ってそういう冠婚葬祭を執り行うのが大きな仕事の一つだったんですよね。

何か人類の教会事業って尊王様やその一族のかつての役割にすごい似ているなって思って。

今じゃどちらかというと尊王様やその一族の方って、中央や地方の指導者としての役割が大きくなっているのよね。」


下を向いたいたイリーナがつるはしさんの昔の尊王の役割について話をし始めてから少し顔を上げて、口を開いた。


「そうですね。尊王とその一族は魔族の精神的な支えとなる役割を負っていましたね。」


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


感想や評価、ブックマークをいただけると励みになります。

よろしくお願い致します。


本物語"聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます"も第620部分(3/25公開予定)でようやく終了を迎えます。


長い間、お付き合いをいただきありがとうございました。


3/27日より新しい物語、"聖戦士のめまい 肉壁狂響曲"を公開していく予定にしています。

こちらの作品も宜しくお願い致します。


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