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6話目 芦高さんの実力と新しい訓練仲間

次の日、昼食をかき込んで、慌てて俺とエリナは黒魔法訓練場に来た。

うるさいさんから芦高さんが寂しくてめそめそしていると言われたからだ。


訓練場に来てみると芦高さんがその巨体にもかかわらず矢のようなスピードでやって来て、その長い足で俺とエリナのぽっべを撫で始めた。


「きゅいん、きゅいん。」

嬉しそうに何度も鳴いている。


「ごめんね、一緒に居れなくて。

でも午後は一緒だよ。

少しづつ一人でいるのに慣れようね。」

エリナが優しく芦高さんの足を撫で返す。


「おっ、こいつがお前たちのペットか。立派な蜘蛛だな。

何か得意な芸はあるのか? 」熊師匠

今日は熊師匠と剣術の訓練だ。


「まだ、昨日飼い始めたばかりですよ。何か教えるなんて。」


「そういえばこの子、訓練すると転写魔法が使えるらしいわ。文献に書いてあった。

足に鉄の入ったリストバンドを付けるらしいわ。」


今回のペット騒動の元凶の死神さん。

相変わらず黒いマントの中に死神リストとでっかい鎌を隠し持っているらしい。


「そうなんだ、早速一個付けてみようよ。」

エリナは小さい宝石が付いた髪留めを芦高さんの足に通してみた。

じゃ行くね、ヒール転写。


「熊師匠がお酒臭いから、きっと二日酔いね。

芦高さん、熊師匠にヒールを。」


「ぴゅき」


熊師匠が光始め、光がどんどん強くなっていく。

だんだん眩しくて、熊師匠が見えなくなってきた。


「芦高さん、魔力込めすぎだよ。

回復しすぎて、身体が幼児化したらまずいよ。」

「ぴゅぴゅきぃー」


「ごめんだって、初めてなので思いっきり魔力を込めちゃったって。」通訳うるさいさん


「すごいよ。転写魔法使えたよ。

ちょっと失敗したけど、訓練すれば普通に使えるようになるよ。」


「足高さんすごーい。

ちゃんと制御できるようになろうね。

そうしたら私たちのチームに入れてあげるわ。

ねえ、旦那様。」


「そうだね、芦高さんが俺の補助をしてくれれば助かるなぁ。


まてよ、エリナが俺と足高さんに転写属性フィールドを使えば、そのフィールドはエリナ、俺、足高さんは自由に使えるわけか。


ふむふむ。


そうすると、俺が発動した属性フィールと足高さんが発動した属性フィールドは基本的にはエリナの属性フィールドになるわけだから別の属性フィールド同士でも重ねられると。


俺一人でも二つの属性フィールとを発動することができるが、制御できるのはどうしても一属性のみになってしまう。

しかし、制御者が二人になるわけだから・・・・・・、聖戦士が二人チームに居ることに。」


「助かったぁ、すごいヒールで頭だけでなく、体のだるさもすっきりしたぜ。

芦高、ありがとな。


シュウの小難しい話を聞くとまた頭が痛くなりそうだが、結論的にお前らのチームヤバくね。と言うことでLAか。」


考えることを早く辞めたいので、常に簡単な結論だけを聞きたがる熊師匠。


「でも、制御できればの話ね。

今日からは芦高さんも訓練に参加しなさい。


そして、リストランク8位をからめ取って、解剖しようね。

そのためにちゃんと糸の制御も私の言う通りできるようにならなきゃだめよ。」


「うちの芦高さんを不毛な戦いに巻き込まないでください。」


「でも、芦高さんの飼育費用と責任を持つのは黒魔教会+私だしぃー。

何もメリットがないのはねぇ。

協会の予算から飼育費用をちょろまかす口実が必要なのよねぇ、ねぇ、ねぇぇぇぇぇっ。」


強気に出てくる死神さん。


「魔物が転写魔法を制御する過程を研究するだけでも、今年の各魔法協会共催の学会総会で最優秀魔法研究賞の受賞は間違いないですよ。

その副賞の研究補助金から飼育費を引いてもだけでもかなりの黒字なんじゃないでか? 」


「えへへへっ。そうかもね。

しばらくリストランク狩りをやめて芦高さんの訓練に手を貸すわ。えへへへへっ。

最優秀魔法研究賞か。えへへへへっ。」


死神さんもちょろすぎ。これで芦高さんの指導者ゲット。


「では、さっそく始めましょう。

エリナのチームに入るなら、水、氷系統が良いわね。

まずは転写氷属性フィールドを発動してみましようか。」


芦高さんは俺たちのチームに入りたいためか、素直に死神さんの指導を受け始めた。


「さぁ、おめぇらは今日は剣の稽古だ。大剣を振って振って振りまくれー。」

「わかりました。芦高さんに負けないようにしないと。」

「私も頑張る。」


俺たちはいつものようにくたくたになるまで訓練を続けた。


その休憩時間。


「すごいわよ、芦高さん。

自分で魔法を制御したりすることはまだ無理だけど、ちゃんと指示してあげるとその通り、正確に転写魔法を発動するわ。


これは凄い発見よ。

これで今年の学会賞は私のもの。


本当は状況に合わせて自分で発動してほしいけれど、これは実戦で経験を積まなければ無理ね。


まぁ、慌てる必要はないわ。

このネタで、次の年の学会賞も私のもの。てへへへっ。」


「芦高さん、頑張っているね。魔力はまだ残ってる?」

「ぴゅきき」

「大丈夫そうね。じゃ、もう少し頑張ろうか。

今度、一緒にオーク狩りに行こうね。」

エリナが優しく芦高さんを諭している。


休憩していると、知らない職校生3人組が俺たちに声を掛けてきた。


「あのーっ。」

「はい? 」

「今、オーク狩りに行くと聞こえたのですが、それは戦闘地帯に行くということですか。」


「そうなると思います。

この蜘蛛は俺たちのペットなんですが、週に一体オークを食べさせる必要があるんです。

確実にオークを狩るには戦闘地帯に行くしかないかなぁとみんなで話しています。」


「あのーっ。突然こんなことを言って混乱させるかもしれないけど、私たちもそれに同行させてもらえないかしら。

お願いします。」


胸が牛並みのおっとりした感じの職校生が急に頭を下げた。

やべーっ。胸の谷間が。

それに合わせて後ろの二人も、

「「お願いしまーす。」」


エリナの顔が般若に変わった。


胸が牛さんと、メガネをかけたおとなしそうな人、ボルバーナのような元気な人の3人組だった。


「急に同行させてほしいと言われても、何か事情があればそれをまず聞かせてもらえませんか。

若干一名確実に反対しそうな人が出ましたので。」


エリナ胸のでかい人に対抗心燃やしすぎじゃ。エリナもそんな気にするほどペったんじゃないと思うよ。


「ご主人様、それをちゃんと奥様にお話しくださいまし。「おれは牛は嫌いだ。君ぐらいの大きさが俺にとっては理想的なんだ」と。一度きちんとお話しすれば、ご納得して、牛胸が近寄ってきてもそうそう般若には変身しないと思いますが。」


「はんっ。シュウは嘘は言えないもんな。

牛胸が嫌いなんて。魔法溜施設のお姉さんが下を向いた時なんて、目を見開いてみてたもんな。


でもよ。シュウは本当に胸の大きさなんて気にしてないよな。

胸じゃなく、エレナが大好きなんだよな。


くそーっ。うらやましいぜ。」


うるさいさんなんだかんだ言ってもわかっているじゃないか。俺のこと。

「だから、俺にも彼氏を見つけてくれよ。」


そこは自分で探してください。

結構、おしゃれで指輪をしているは人多いから、そのうち見つかるでしょ。

「そんなぁ。」


「もちろん初めから説明するわね。」牛胸さん。


「私たちは職校3年目の見習い魔法術士2級なの。

今は1級を目指し、様々な課題に取り組んでいるのだけど、今回1級昇格の最難関と言われる、戦闘地帯に行き魔族と交戦するの課題が出されたの。


もちろん、私たちだけでは魔族なんて相手にできないので、通常は軍の定期パトロールに臨時で加えてもらい、魔族が出たら一発魔法を撃って、すぐに引き返すのが通例なの。


私たちは今回、第19師団のある部隊に加えてもらえるよう手続きを取っていたのに、いきなり別の職校チームを入れることになったので君たちの今回の同行はなしにしてくれないかと先週言われたの。


それからいろいろな部隊を当たっていくうちにわかったんだけれど、実は10番台の各師団が今休暇中で、休暇が終わって戦闘地帯に戻ったら各職校チームは魔族課題クリアのためにその部隊と合流するはずだったの。


ところが先週第13、15、17、18師団は各軍団の戦闘地帯が急に魔族の襲撃にあったため、休暇を切り上げて戻ってしまったの。


その師団ともともと同行するはずだった職校チームがすべて課題クリアの同行を断られてしまったの。

そこで、断られた職校チームはその他の部隊へ急遽変更を強いられて、大混乱の状態だったの。


ほとんどの職校チームは何とか他の部隊に同行を許可されたのけれど、私たちはどこも相手にされず、途方に暮れていたの。


最後の望みとして何とか黒魔法協会にそういう伝手がないか相談しに行こうと思っていたところに、戦闘地域に行く話が聞こえてきたので、こうして声を掛けたわけなの。」


うっ、やべーっ。その話の発端は俺たちの入隊式じゃないか。

俺はそっとエリナの方を向いた。


エリナも気が付いたらしく、尚且つ、自分の母親への歪んだ思いがそれら4師団の急な予定の変更であることがわかっているため、複雑な思いから顔が歪み青ざめ、目に涙を溜めていた。


俺はまず、エリナをの手をとり、顔を俺の胸に埋めさせ、肩を抱くように抱きしめた。


" エリナ、俺だけを見て。俺の心臓の音が聞こえる?

俺はエリナの温もりを感じているよ。


今、エリナを思いっきり、抱きしめるよ。

エリナは暖かいね。


エリナの思いは俺の思い。

一人だけで抱え込まない。

一緒に良いことも悪いことも乗り越えて行こうね。


エリナ、大好きだよ。

今までは恥ずかしくて言えなくてごめん。

俺はエリナが大好きだ。俺と一緒に居てくれるよね。

そうして、俺と一緒の道を歩んでくれるよね。 "


" もちろんだわ。旦那さま。私の旦那さま。


私はあなたと一緒の道を一緒に歩いて行くと決めたのです。

たとえあなたがどんなに拒否したとしてもです。

もう止められません。"


" だったら、今回のことも一人で背負わずに一緒に向き合おうね。俺のエリナ。"


" もちろんです。旦那さま。

取り乱してごめんなさい。


あなたの温もりとあなた言葉でいつもの芯の強いエリナに戻ります。

このまま、抱きしめてほしいけれど、目の前のことにちゃんと受け入れたいと思います。


だからもう私を放してもいいですよ。

私はあなたの思い知っていますので、どんな批判にも耐えられます。

だから、手を放してもいいですよ。"


「事情はよく理解できました。

ただ、お互いに人柄も実力も何もわからない状態で、戦闘地域、特に魔族との接触が予想されるところに一緒に行きましょうとは言えないと思います。


熊師匠、エレオノーラさん。こうしてはどうでしょう。


ここで一緒に訓練して、お互いの実力の把握とレベルアップを図りながら、改めて一緒に行くか決めるというのは。

期間はとりあえず1週間後。


多分これ以上は芦高さんの食糧事情があるので、引き延ばせません。


もし同行が難しいよあなら、一旦、元のメンバーだけでオーク狩りに行って、また実力が上がったら、全員で行くというのは。」


「さすが、私の旦那様です。

困っている方を見捨てない、やり方ですね。


いずれにせよ、近いうちにみんなで戦闘地域にオーク狩りと魔族退治に行こうということですもんね。」


「ありがとう。ほんとにありがとう。

ここで修行して、実力をアップし、課題を終えて見せるわ。

何よりも私たちを受け入れてくれた君たちのために、きっと、恩をかえすわ。」

「俺もだ。」「・・・・私もきっと。・・・・」


「そういえば、自己紹介がまだだったよね。俺はシュウ、」


「あっ、皆さんのことは有名なので、ある程度のことは知っています。それよりも私たちのことは全く知らないと思いますので、こちらから自己紹介をしますね。


私はリンカ、水と土の見習い魔法術士2級です。

チームでは後衛で支援職ですね。」

「俺はリンダ、火の見習い魔法術士2級だ。当然バリバリの前衛だぜ。」

「わたしは・・・・、恥ずかしい。

うん、でもちゃんと言わなきゃ。

私はシュリ、風の見習い魔法術士2級、遊撃&中衛だよ。もう恥ずかしくて、ここまででいい? 」


「俺はシュウ、そして、ペアのエリナ、ちょっと変わってるけど魔物のペットの芦高さん。

ここの訓練場に住んでいるんだ。

とても寂しがり屋なんで、手が空いているときはできればここにきて声を掛けてくれると「きゅいっ。」とか言って喜んでくれるよ。」


「ひゅいっ。」


「えっ、こんな大きい魔物をペットにしているんですか。

さすがに噂の新歓乗っ取り婚約会見彼氏のいない私には目の毒ペアは違いますね。」


「すみません、その新歓乗っ取りうんちゃらペアと言うのは何ですか? 」


「知らないんですか? あなた方の噂を。」


「まぁ、そのネーミングを聞けば新歓でやらかしちゃこと全部ですから仕方がないとして、そんな恥ずかしい二つ名的な呼び方を俺たちがされていたなんて知りませんでした。」


エリナが急に胸を張って、自慢げにしている。


「まぁ、悪い噂じゃないから気にしないで。」

「俺もペアほしい。ペーテル君を紹介して、シュウ君。

やっぱ、ペアを組むならイケメンだよな。」リンダ

「・・・・・・私も、可能であれば・・・・・・ボルガ君を・・・・・、

でも恥ずかしくて、本人の前ではペアを申し込めない。」シュリ。


「今度機会があれば、紹介するよ。

でもライバルが2~3百人はいからねぇ。

このごろ争奪戦も激しさを増して、俺でもなかなか近づけないよ。」


「やっぱ、そうだ

よな。まぁ、俺たちはここで修行して聖戦士に頼らなくてもいいような魔剣士を目指すよ。」

「そうだね、まずは進級して、卒試に備えなきゃね。

もう半年もないし。」

「・・・・・・・進級したい。・・・・・・・・」

「じゃ、早速みんなで訓練しようか。」


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