こちら次元間 チャンネルわん・にゃん放送局 報道特集 あの世界の秘密 第4回放送 放送延長分
「9時になりました。こんばんは。9時のニュースの時間ですが、今日は報道特集の第4回目放送が予定通りに終わりませんでしたので、放送時間をさらに延長してお送り致します。キャスターはいつものまねき猫です。
それでは、続きを始めさせていただきます。
Nさん聞こえますか。」
「・・・・Kさんまずいにゃ。誰もいないにゃ。
・・・・どうしましょう、まずいですにゃ・・・・」
「落ち着いてワン。向こうから人族のにおいがするので、行ってみるワン。」
「あーあーっ。聞こえますか、Nさん。
中継の画像は入っていますよにゃ。」
「あっ、失礼しました。聞こえています。こちらNです。
実はあれから人を探しているのですが、今日に限って誰も通らない状況です。
もう少し待ってもらえますか。
いま、人を探しているところですにゃ。」
「わかりました。
生中継ですので、こちらの都合に合わせて事が進むとは限りません。
もう少しねばってインタビュー可能な方を探してください。」
カメラが教会本山の方を映し、少しズームをアップした。
その時に向こうの方から女子3人組が肩を落としながらとぼとぼと歩いた来るのが映り込んだ。
「Nさん、教会本山の方から3人の方が歩いていらっしゃるようですか。
確認できましたかにゃ。」
「えーとっ。あっ、確かに3名歩いていますね。
でもなんだか、しょんぼりして、元気がなさそうですね。
心配ですのでちょっと声を掛けてみますにゃ。」
「わかりました。よろしくお願いします。
ただ、本取材には制限がありますので、トラブルに過度に関わらないようにお願いしますにゃ。」
「了解しました。」
カメラは女子3人組に近づく。
一人は背が高くバインバインのイケイケ風ねぇちゃん。
一人は胸が異常に発達した落ち着いた女の子。
最後は二人の後ろに隠れるように歩て来るメガネをかけた気弱そうな女の子だった。
「ちょっとよろしいですか。
私たちはこの門前町をみんなに紹介するために取材をしている者です。
もし、よかったら門前町のお店の紹介や買い物風景を取材させていただけないかと思い、お声を掛けさせていただきました。
突然のことで、びっくりさせてしまいましたら大変申し訳ありません。
如何でしょうかにゃ。」
「大変申し訳ないんですけど、私たちは今深刻な悩みを抱えていまして、本当はそういうことでしたらお手伝いしたいのですが。
今、自分たちのことでいっぱいいっぱいなので。
お断りします。申し訳ありません。」牛胸さん
「わかりました。取材へのご協力については結構です。
こちらこそ、失礼しました。
ところで、差し支えなければあなた方のお悩みについて聞かせていただくことはできますか。
先ほどから様子を見ていましたが、ちょっと心配になるほど気落ちしているようでしたので。
聞いたからと言って、何か力になってあげられることはないかもしれませんが、他人とちょっと話すことで気持ちの整理がつくこともありますし、実はスタジオと言ってここから離れた場所では高名な先生や切れ者のキャスター、優秀なスタッフなども多数控えており、私とあなた方のやり取りの様子を見ているところです。
アドバイス的なことやそれが無理でも心が少し軽くなるようにカウンセリングに近いことも可能かと思いますにゃ。」
「うーんっ。」
「軍の関係者じゃねぇみたいだし、愚痴ぐらい言ってもばれやしないだろ。
おっさんの言うとおり、気持ちの整理がつくかもしれねぇしよ。全くあったまくるぜ。軍のやつら。」
「悲しいというか、何かに憤慨されているようですね。
我々に話すことであなた方が不利になるようならこれ以上はお聞きしません。
ただ、我々の仲間で軍の関係者やそれと親しい人は誰もいないことはお約束します。
私なんて先日、軍の関係者に突撃インタビューしたら、氷漬けにされたうえ、龍の住処まで蹴り飛ばされてしまったぐらいです。にゃはははははっ。」
「えっ、龍って、まだ生息していたんですか。ほんとに? 」
「はい。龍さんのブレスで氷を溶かしてもらい、何とか一命をとりとめました。
命の恩人の龍さんとは時々龍さんの住む山の麓の町で焼き魚定食をつまみに、一杯やる程度には親しくさせていただいておりますにゃ。」
「軍とは親しくなさそうだし、愚痴ってもいいだろうよ。なぁシュリ。」
「・・・・・・猫みみ、触りたい・・・・・・」
「シュリがなついたみたいだから、リンカ、言ってやんな軍の非道さをよう。」
「わかったわ。では、話しますが、面白くないですし、軍の関係者にはこのやり取りについては話さないでくださいね。」
「どうせ留年だぁ。軍のやつらにばれたって、怖くはねぇぞ。」
「私たちは魔法術士職校の3年生です。」
「その制服は生徒会長とご一緒ですねにゃ。」
「生徒会長をご存知でしたか。」
「前回のインタビューでは生徒会長に魔法についてご親切にいろいろ教えていただきました。
また、生徒会長の心の願いをお聞かせいただきました。
それは聞いている者に感動と心に勇気を与えてくれるものでしたにゃ。」
「そうですか、でも私たちの話は何も感動を生まないと思いますけど。」
「それでも是非お話しください。
話に興味があるというより、あなた方の落ち込み様が心配なのですにゃ。」
「わかりました。続けますね。
先ほども言いましたように私たちは職校3年目の見習い魔法術士2級です。
今は1級を目指し、様々な課題に取り組んでいるんですけれども、今回1級昇格の最難関と言われる、戦闘地帯に行き魔族と戦闘をするという課題がついに出されました。
もちろん、職校生の私たちだけでは魔族なんて相手にできないので、通常は軍の定期パトロールに臨時で加えてもらい、魔族が出たら一発魔法を撃って、すぐに引き返すのが課題クリアの通例になっています。
私たちは今回、ある部隊に加えてもらえるよう手続きを取っていたのに、いきなり別の職校チームを入れることになったので君たちの今回の同行はなしにしてくれないかと先日言われてしました。」
「そこからいろいろな部隊に同行を願い出ましたが、全て断られてしまいました。
その理由もある程度把握できたのですが、これは軍の機密に当たるのでこれ以上はお話しできません。
この課題をクリアしないと1級に上がれないし、1級にならないと職校の卒業試験を受ける資格がないため職校で最終学年である私たちは卒業できず留年となります。
留年するようなチームはダメチームのレッテルが押されて、むしろ来年の方がこの課題の同行を断られる確率が非常に高くなるわ。
どうしよう、卒業でなかったら。ぐすん。」
「泣くなよ。まだ、時間はある。もう一度、部隊を当たってみようぜ。軍のくそったれが。」
「えーっと、ざっくり整理しますと卒業するために必須な単位を取るための試験を大人たちの裏切りのため受けられそうにないということですかにゃ。」
「ざっくり過ぎますが、主旨はその通りです。ぐすん。」
「スタジオのまねき猫です。初めまして、こんにちは。
何にか大変な事態が起こっているようですね。
辛い話をさせてしまったようで、大変申し訳ありません。
大人の裏切りで前途ある若者の将来を閉ざしてしまうなんて、絶対に許されるものではありません。
私が特派員なら断固その部隊に抗議に行っていますにゃ。」
「初めまして、職校3年のリンカと申します。私たちの愚痴を聞いていただき、ありがとうございます。」
「とんでもない。
ところで、現実的な話に戻しますと、何か対策はありますか。
先ほどお仲間の方が手当たり次第にもう一度部隊にお願いをしに行くと言っておられましたがにゃ。」
「これは私たちのチームメイトのリンダです。
リンダが言うようにもう手当たり次第にお願いするしか考え付きません。
お願いに伺うのに手ぶらでは如何かと思い、門前町に手土産を買いに行くところでした。
もう、いくつ必要なのかもわかりません。ぐすん。」
「それで、そのような様子で門前町に行こうとされていたんですねにゃ。」
「はい。お恥ずかしいところを見せてしまいました。
そのうえ愚痴まで。」
そうしていると、教会本山の方からものすごい砂煙と悲鳴と絶叫が近づいてきた、と思ったらこちらの注目にも関わらず一気に通り過ぎて行った。
「こらまてぇー、てめーぇ、今日こそは解剖してやるリストランク8位ーぃ。」
「待てと言われて待つのはワンコだけだ。俺は人だから天邪鬼なんだよ。」
「屁理屈こいてんじゃねぇぞ。こらまて。
お前は俺の実験のために生まれてきたんだよ。」
「そんなことはゼータイにないよ。しつこいぞ、毎日毎日。
いいかげんあきらめろーっ。」
「バーカ、死神リストから名前を消すにはこの鎌の露となった時なんだよ。」
「その鎌の露になったら、死んじゃうじゃないか。」
「俺がそんなへまをすると思うか。ちゃーんと処理はしてやるよ。ゾンビかもしれんがね。」
「それは死ぬことじゃないか。
もうなんでもしますので、許してくださーい。」
「許さーん。待てーっ。」
「すいません。今のは? 」
「あれは教会本山名物の死神の獲物狩り、ですね。」
「死神ですか。
確かに黒いローブと自分の背丈より大きい鎌、そして何か大事そうにノートを持っていましたねにゃ。」
「死神さんの方は黒魔法協会参議のエレオノーラ様ですね。
あのノートは〇スノートと言われており、解剖の候補者リストだそうです。」
「解剖ですかにゃ。」
「なんでも能力の高い男性を解剖して、その能力の高さを解析する研究をしていてるそうです。」
「解剖された後はどうなりますかにゃ。」
「噂ではなんでも黒魔法協会の地下19階にある絶対侵入不可能な地下室で標本として永遠に裸体をさらすことになるそうです。ブル
それを戦利品として毎晩晩酌をするのが死神さんの趣味とささやかれています。ブル
死神リストに載ったが最後、どんな強者も最後は、ブルブル、標本になるとのことです。」
「それで、あの男方は死に物狂いで逃げていたんですね。
その死神さんの方はここ教会本山では絶対権力者と言うことでしょうかにゃ。」
「その通りだと思います。
しかし、何故か女性はそのリストに載っていないそうです。
時々門前町のケーキ屋さんで、ソニア様とその秘書のカロラ様と一緒にケーキを爆食いしている姿が目撃されます。
そのため、同じ女性には何か手を出せない重大なコンプレックスを抱えているとのうわさです。」
「ちなみにもうどうでもいいですが、逃げていた死神に愛された男は誰ですかにゃ。」
「あの方は軍の司令官レベルの方です。
詳しくは機密ですのでこれ以上は。
後程、死神さんに愛でられ、地下で標本になったとのうわさが聞こえてきましたらお話ししても問題ないと思いますが、今のところ生きていましたので秘密ですね。」
「わかりました、詳しい情報をありがとうございますにゃ。」
「ちょっとお待ちください、スタジオのCです。
初めまして、リンカさんたち。軍の都合に振り回されて大変でしたね。
同じ大人として、大変恥ずかしく思います。
ところで、その死神さんとやらは軍の司令官級の方を震え上がらせる、絶対強者なのですよね。」
「強者と言う観点から見れば、あの死神さんに逆らえるものなどいませんね。
男性限定ですけれども」
「伺っているお話を整理しますとですね、軍の男性司令官級を完全に逆らえなくしている死神さんは女性と甘いものに弱いということですよね。」
「ざっくりと言えばその通りです。」
「では、こういう風に言い換えられますよね。
死神さんに甘いお菓子を献上し女性がお願いに行けば軍の男性司令官にその願いを強引に聞き遂げさせることができると、言うことですよね。」
「確かに、今までの状況を踏まえるとその通りですねにゃ。」
「しかし、死神さんは門前町の甘いものマイスター的存在です。
門前町のお菓子ごときでは自分でいくらでも買うことができるので私たちのお願いを聞いてもらえるとはとても思えません。」
「あっ、C名誉教授、そういうことですか。
なるほどわかりました。
Nさん、背中の東京バナナを彼女たちに渡してくれますかにゃ。」
「えっ、あああっ、そういうことですね。早速、お渡しします。これをどうぞにゃ。」
「えっと、これは何ですか。」
「これは遠くの遠くの星から持ってきた、甘いお菓子です。
その星では一番人気のお菓子で、神の恵みと言われている? いつから?
まあ、それクラスの神にお供えするための最高級菓子です。
この星にはこれしか存在しませんし、我々も次にいつ手に入るかわからない超ウルトラスペシャル珍しい神にささげるお菓子です。
これを今日の取材のご協力の代償として差し上げます。
これであればかの死神さんもご納得し、あなた方の願いを聞いてくれるものと確信いたします。
さっ、お受け取りくださいにゃ。」
「でも、そんな、珍しい菓子を私たちがいただいてもよろしいのでしようか。」
「どうしても受け取りにくいのであれば、とりあえず教会本山の礼拝堂にお供えし、日ごろの100倍真剣に礼拝をすました後であれば神様もこれを受け取ることを否定することはないと思いますにゃ。」
「わかりました。ありがとうございます。
初めてお会いした方々にここまでよくしていただけるとは大人の世界もまんざらではないと思いました。
ありがたく頂戴し、使わせていただきます。」
「ご遠慮なく使ってください。吉報をおまちしていますにゃ。」
「Cです。私も若い方々の絶望する姿は見たくありません。ぜひ軍への同行を勝ち取ってください。期待しています。」
「みなさん、ほんとにありがとう。絶対卒業して見せます。」
「俺も絶対卒業して、大人の理不尽をぶっ飛ばしてやるぜ。」
「・・・・・がんばる。・・・・・その前に猫みみと犬みみをモフモフさせて・・・・・・、ぽっ」
「今回は門前町の暮らしぶりをお伝えする予定でしたが、急遽、若者たちの卒業にかける思いを実現する作戦会議に中継を変更させていただきました。
このような変更について視聴者様には大変申し訳なくお詫びいたしますが、前途ある若者のためにこの放送時間を使わせていただきました。
ご理解のほどをよろしくお願い申し上げます。
現地のN特派員、K特派員、本日は貴重な情報をありがとうございます。今後も取材を続けて、新たな情報の収集を引き続きお願いいたしますにゃ。」
「ああ、やめて、耳だけはモフモフするのはやめてにゃーーーーーんっ。」プツン
「お聞き苦しいシーンを最後にお見せして、大変申し訳ございません。
これからも当局は名無し星の情報収集に全力を挙げ、新しい情報が得られ次第特番で放送させていただきますにゃ。」プツン