13話目 落ちた。でも、一筋の希望の光が、
「今年の合格者はシュウ君以外の全員です。
シュウ君は残念ですが。」
「はぁっ?????? 俺が不合格、俺だけが不合格。」
何故だ。
筆記試験は歴史と算術は8割はできたと思う。
魔法の方は完ぺきだった。
名前を書き忘れた。いやいや、3回は見直したはずだ。
実技試験か? 模擬戦。
確かに剣を直接交わすことはなかったが、エア模擬戦で聖戦士協会の参議の熊さんといい勝負をしていたと思う。
魔法の模擬戦。
ちょっとやりすぎたけど、実力は示せたはずだ。
聖戦士協会参議の熊さんと白魔法協会総帥のソニア様のペアを完璧に追い込んだのだから。
じゃっ。魔法溜か?
でもいくつでもいいと言われたし。
基準はないとお姉さんが・・・・・、お姉さん・・・・・・、ああああああああっ、お姉さんだ。
お姉さんのお弁当じゃなくて、エリナのお弁当を選んだ結果だ。間違いない。
あのお姉さんのご両親が実はエリナの母さんでも手も足も出ないほどの黒幕で、俺が彼女に血の涙を出させるほど邪険にしたことを逆恨みして、職校に手をまわして・・・・。
やばいよ。これでは来年受け直したとしても、もう絶対合格できない。
俺はもう絶対に聖戦士になれないんだ。くそーっ。
こんなことならエリナに土下座して謝って、今日だけだからと納得させて、2人きりの会議室でお姉さんを俺の膝にのせてその美脚と胸の弾力を堪能しながらお弁当をあーんしてもらえばよかった。
そうしたら、確実に合格、しかも特待生だったかもしれない。
聖戦士になったら、戦場に行ったきりでここに戻らず、予定通りエリナと魔族を叩き潰し、将官級の魔族を4体倒して、そのまま軍を引退し、ド田舎の教会を2人で守って幸せになればいいだけのことだったんだ。
なぜ、あの時そのことに俺は気付かなかったんだーっ。
俺は終わった。クズミチ、俺は駄目だったよ。
俺は負け犬として、ソンバトに戻るよ。
道場で武人になるか教会で魔力溜に魔力を充填して一生を生きて行くよ。
クズミチ、笑わないでくれよ。
恥ずかしくて、実家には戻れない。ああああーぁ。
「シュウ、大丈夫? ショックだよね。あんなに頑張ったのに。ぐすん。
私がもっと、もっと支えていれば、もっと厳しく勉強する時間を管理していれば・・・」
違うんだ、違うんだよ、全部俺のせいだ。
食べる弁当の選択をミスったんだよ。
エリナは悪くない。俺を一生懸命支えてくれて、最後はおいしいお弁当まで作ってくれた。
その弁当の美味しさに酔って、周りが見えていなかった俺がバカだったんだよっ。
「シュウ、まさかおまえが・・・・、俺ではなくおまえが・・・・、なんかの間違いだ。
そうだ、さっきは言い間違いだったんだろ、職校長。
ボルバーナ以外って言うつもりがシュウ以外って間違ったんだよな。」
「いえ、私は結果を正しく伝えました。
シュウ君以外は全員合格と。」
「もういいよ。ありがとう。エリナ、ボルバーナ。
これが俺の実力なんだ。
言い訳しないよ。
正しい答えを見抜けなかった俺が間抜けだったんだ。」
「シュウが不合格なんて何かの間違いだ、そう思うよね。ペーテルも、アリーズも。」
「職校長、シュウの不合格の理由を教えてもらっていもいかしら。」
「俺もぜひ聞きたいぜ。
筆記試験がボロボロの俺が合格で、ずっと頑張っていたシュウが不合格の理由をよう。」
「わかりました。普通は不合格の理由は当事者にしか伝えないのですが、一部皆さんにも関わりあることなので、ここでお話ししましょう。」
「僕たちがシュウの不合格の理由というのですか、それはあまりにもおかしいと思うのですが。」
ホルガたちが俺の不合格の理由なわけないじゃないか。
不合格の理由は俺が食べる弁当の選択を間違ったんだよ。
「エリナさんも泣かないで聞いてください。
あなたにも関係があることです。」
「私が、私が、私がシュウの不合格の理由だというんですか?
私が一体何を。
私が試験前、シュウにべったりして、周りに迷惑を掛けたから?
試験後に食べるお弁当を作るために、夜中に門前町の魚屋や肉屋、八百屋、牛乳販売店、鍋と重箱を買うために道具店、飾りのためにお花屋さん、デザートのお菓子屋さん、お茶屋さんを叩き起こして迷惑を掛けたので職校に抗議があったから?
うえーん。うえーん。シュウ、ごめんね、ごめんね、ごめんなさーい。
もう、こんな旦那様の足を引っ張り続ける私なんて、婚約解消よね。うえーん。」
エリナは全然悪くない、すべて俺が悪いんだ。
まさか、エリナも処分されるんじゃ。
お姉さんに対抗してお弁当を作ったから。
そのお弁当を俺が食べたから。
まずい、まずいぞ。
俺が食べる弁当を選択ミスしたためエリナを巻き込きこんでしまった。
まさか、エリナも職校を退学になるんじゃ。
ごめん、ごめんよ、エリナ。
「皆さん、冷静に。そこのお二人を除いて、皆さんは職校生になるんですよ。
まずは私の話を聞いてください。」
そこの二人、俺とエリナのことだ。
やっぱり、エリナは職校を退学になるんだ。
俺はなんてことをしてしまったんだ。
俺は弁当の選択ミスをした自責の念で、立っていられずソファーに倒れるように座り込んだ。
「まずはシュウ君のことですが、特例で・・」
「特例で再試験ですよね。」ボルガ
「いえいえ、再試験は伝統的にやらないことになっています。」
「それじゃ。」
「ボルガ君、最後まで私の話を聞いてください。」
「シュウ君は特例で、聖戦士協会の参議であるイムレ様の内弟子に決定しました。
身分は剣士14級。
後見役としては黒魔法協会総帥のアンタル様が務められます。見習い期間がなくなったわけですな。
ただし、聖戦士職校で通常の見習い聖戦士のように机上での勉強は君たちと一緒に受けてもらいます。」
「エリナさんも特例で、白魔法士協会の参議であるカロラ様の内弟子に決定しました。
身分は術士13級。
後見役としては白魔法協会総帥のソニア様が務められます。
ただし、魔法術士職校で通常の見習い魔法術士のように机上での勉強は今まで通り受けてもらいます。」
「まぁ、平たく言うと午前中は職校で勉強、午後は師匠と実践訓練、生活は職校の寮ですね。
もちろん、身分は軍人ですから何なら軍の独身官舎でもいいですよ、夫婦官舎はさすがに早いでしょう。」
「シュウ君、職校には合格できなかったが、内弟子として第一線級の方に直接指導してもらえる栄誉を勝ち取りましたね。
エリナさんもシュウ君をしっかり支えているところが評価されて同じような扱いにしました。」
「お二人とも軍人となりましたので、ちゃんとお給料が出ますよ。
その上、シュウ君はアルバイトもできるので、ウハウハですね。
お金はちゃんとエリナさんが管理された方が良いでしよう。
シュウ君が持っているとイムレ様に酒代として貢がされてしまいそうですから。」
職校長はしてやったりというにやけ顔で、俺とエリナに入学試験? 入隊試験の結果を告げるのであった。
シュウは何とか半分だけ目標の聖戦士職校に入ることができました.
次回から新章です.シュウの職校生活が始まります.