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12話目 呪われたゲストハウスで合格発表。当然、結果は、、、、

ゴーッ、ガタガタ。突風がゲストハウスを揺さぶる。


俺たちの楽しい昼食がオカルトお姉さんに浸食され、恐怖の時間に変わろうとするとき、ゲストハウスの玄関の扉がギーッと悲鳴を上げた。


ゴーッ、ガタガタ。突風がゲストハウスを揺さぶる。


ゴーッ、ゴーッ、ガタガタガタガタ。突風が持って行き場のない怒りをぶつけるようにゲストハウスを揺さぶる。


ゴーッ、ゴーッ、ゴーッ、ガタガタガタガタガタガタ。突風が堪え切れない悲しみを訴えるようにゲストハウスを揺さぶる。


コツコツコツ、ガチャッ、ギギギッ。

玄関とリビングを隔てる扉が開かれた。


コツコツコツ。リビングにはみんながいたはずだ。

なぜ誰の話し声も聞こえないんだ。


コツコツコツ。明らかに何かを探している。

冷気が高まり、俺の冷や汗を凍らしていく。

なぜだ、なぜ誰の声もしないんだ。


コツコツコツ、だんだん足音が食堂の方に近づいてくる。


コツコツコツ、もうすぐ食堂だ。

俺の膝が震える。

魔族との戦いでもここまで膝が内側に曲がって震えたことはない。

知らず知らず俺は自分の腕で自分の体を抱きしめ、震えている。


もう歯もかみ合わず、ただただ震えるのみ。


ガチャ。食堂の扉のノブがゆっくりと回される。


ギギギーッ。食堂の扉がゆっくりと開く。


食堂の扉は俺の真後ろだ。俺はエリナの顔を覗き込む。


その目はこれ以上開けないほど開かれ、口も何か言いたそうだが開いたままで動かず、とても言葉を発することはできそうにない。

そして、その手は俺の真後ろを指さし、その指もぶるぶる震えて焦点が定まらない。


コツコツコツ、その者は俺たちの方にゆっくりと近づいてくる。


俺は何とか、ほんとになんとかちょっとだけ首を動かし、窓を見た。

そこには血の涙が幾筋にも固り黒い痕になったお姉さんが、夕日を浴びながら口元をわずかに引き上げ、これで復讐を遂げたかのような妖艶な薄笑いを浮かべてこちらを見ていた。


コツコツコツコツコツコツ、うぎゃーっ、やばいよ、やぱいよ。お姉さんごめんなさい。ほんとにごめんなさい。


そして、コツコツコツ、ピタ。


そいつは俺の背後で止まった。


そいつの手が上がり、俺の肩に手が下ろされるわずかな風圧を感じた。


そして、ピタッ。


俺の肩にやつの手が触れた。


骨ぼっい、骸骨のような手。


おれは恐怖のあまり、何も言えずただただ震えるだけだ。


窓の外のお姉さんの顔はますますニタニタ、魔女の微笑みから悪魔の微笑みに変わった。


そしてついに、ついに、そいつは口を開いた

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ。


「シュウ君、入学試験の結果を報告するので、食事中に申し訳ないのだけれど、中断してリビングに集合してくれないかな。」


そいつの名は、職校長。


試験の結果を報告しに来てくれたのでした。


俺は安堵のあまり、腰が抜けて立てなくなった。


「びっくりさせないでくださいよ。職校長。

あんまりびっくりして腰が抜けました。」


「食事に夢中のところを無言で肩をたたいたので、びっくりさせてしまったようだね。

すまない。立てそうかな? 」


「わっ。」


エリナが叫ぶ。今度はどうした、ついに来たか、お姉さんの亡霊め。


「どう? びっくりした。

びっくりさせると元に戻るかと思って。」


天然さん発動。

この状況でよくにこにこ笑って、そんなことができますね。


「びっくりが追加され、余計に腰が抜け・・・・・、あっ、立てた。」


俺は椅子から立ち上がることができた。

エリナ、すごい。さすが青色魔法術士。

人を治療するのは得意ですね。


でも、状態異常回復魔法を使えばよかったのでは?

そこはやっぱり天然さんが発動してしまったわけか。

俺は一人で納得した。


一時食事を中断して、職校長とエリナに続いて食堂からリビングに移動した。


リビングでは青ざめた同期4人が椅子に座っていた。

これから合格発表のため、皆が緊張しているのがわかった。

特にボルガはちょっと震えているようだった。


先ほど皆の声が聞こえなかったのは、みんな緊張して食堂まで聞こえるような大きな声を上げることができなかったためかもしれない。


俺も椅子に座り、エリナは俺の後ろに立って、両手を俺の肩に置いている。

俺の緊張を和らげるためかもしれない。


「それでは、皆さんそろいましたね。

今年の聖戦士職業訓練学校の入試合格者を発表します。


皆さん、今日はよく頑張りました。得意な分野もそうでない分野も一生懸命試験に取り組む姿は素晴らしいものです。


しかし、入試である以上、成績をある程度収めた者は合格し、そのある程度まで達しない者は残念な結果となります。


しかしですね、私はこう思います。


たとえ残念な結果であっても、今日まで一つの目標に向かって努力してきたことはこれからの君たちの生きる糧となるに違いありません。」


職校長の話が長いな。

まず、結果を言ってよ。


弱冠一名が職校長の今の言葉を聞く度ににどんどん青ざめていくんですが。

職校長の話方はどう考えても全員が良い結果とは思えないしな。ダメだとすれば、ちらっ、あいつだろうな順当にいって。


「本当に頑張りましたね。


合格した人はおめでとう、聖戦士職校にようこそ。

残念だった人はもう一年、ここの宿坊でお手伝いをしながら来年を目指すこともできます。


そして、来年は必ず花を咲かせましょう。」


やっぱり。ボルバーナは体を目一杯小さくして、震えていた。

下を向いた顔からひと滴く、落ちるものがあった。


「それでは思い切って合否を発表します。

何度も言いますが、例えダメだったとしても決して下を向いてはいけませんよ。

今日まで頑張った自分を誇り、胸を張っていてください。」


もうっ、引っ張りすぎ。

その上、最後はボルバーナの方を向いて優しく諭すように言うもんだから、ますます小さくなっちゃったよ。ボルバーナちゃん。


もう、わかったから発表してくれ。彼女がわいそうすぎる。


「おっほんっ。


それでは今年の聖戦士職校の合格者を発表します。


今年の合格者はシュウ・・・・」


やったー、合格だ。俺はやったよ、エリナ、クズミチ。


「今年の合格者はシュウ君以外の全員です。シュウ君は残念ですが。」


「はぁっ?????? 」


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