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6話目 全員合格って本当なの?

俺たちは訓練を終え、食堂に集まった。


俺以外の4人は3~5日も前に到着しており、その間のもあのオオカミたちの猛アタックがあり、うんざりしてストレスが溜まっていたとのことだ。


それが俺たちのお披露目? も兼ねて、外で訓練したことで心に溜まった黒いものが抜け落ちたようだと言っていた。


戦士は戦ってなんぼだもんね。


「ところで、皆、筆記試験の勉強はしてきたの。」アリーズ


「俺は毎日手紙を書いて表現力を鍛え、教会の図書室から本を借りてこの国の歴史とかを復習してきた。

あと、アルバイトでいつ新居がいつ買えるかぐらいは計算できるぐほど数字に強くなったよ。ねっ。エリナ。」


「はい。さすが私の旦那さま。入試対策は完璧ですね。」


「僕も歴史や算術をしっかり勉強したよ。」ボルガ

「俺も似たようなもんかな。」ペーテル

「毎日訓練あるのみ、ガハハハハハっ。」脳が筋肉なガサツな人。


おい、まじか、ほんとに何も対策していないの?


「えっ、何もしていないの。」アリーズ


「もちろんさ。これまでに聖戦士職校の入試には誰も落ちたことがないんだろ。

苦手なことに時間を掛けるなんて、なんつー無駄なことをしてるんだ、おめぇらは。」


「でも、これまで落ちた人がいないだけで、今年はわからないわよ。」


「大丈夫、大丈夫。今年も同じだって。」


凄い根拠のない自信だ。筋脳の人の気楽さはまじで尊敬するよ。


雑談をしていると夕食の時間になった。ここは一応教会施設なのでまずは礼拝だ。


本当はここまで来たら教会本山の礼拝堂に行きたいのだが、外のオオカミさんたちが、夜になったため数は減ったが、まだまだ獲物を狙っていらっしゃる。

実は何人かで交代で見張っているみたいだ。そこはオオカミさん、仲間意識は強いのね.


仕方なく、今日の礼拝はゲストハウスに設置されている礼拝部屋で済ますことにした。

皆でぞろぞろ礼拝部屋に行くと一人知らない女性が真剣に何か祈っている最中だった。


すぐにその人の礼拝は終わり、こちらを振り向いた。

栗色の髪の神秘的で凄く素敵な女性だった。

職校の制服を着ていたので、どうも見習い魔法術士らしい。


「先輩来ていたんですね。こんばんは。」


「ボルガさん、こんばんは。

今日も外の生徒たちが騒がしくて申し訳けございません。

試験が間近というのに。


本来は試験に備えたお稽古やお勉強に時間を割かねばなりませんのに。こう外野がうるさくては捗りませんね。」


「生徒会長。毎日励ましてくれて、ありがとうです。

今日はテラスで楽しく訓練もできました。

筆記試験の方はもうあきらめているやつもいますし、ここで勉強できたとしても結果は変わらないと思います。」


「そんな、まだあきらめないでください、筆記試験も今から徹夜するばなんとかなるかもしれません。」


「会長さん、筆記試験なんて名前を書けりゃぁ、いいんだろ。

とりあえず。」


「試験の問題については詳しくはわかりません。

知り合いに聞いたところなかなかの知識を必要とするとのことでした。

どのくらい解ければ合格かについてはわかりません。」


「歴史と算術の問題は出ると聞いたのですけど、中学校レベルの問題でしょうか?

僕は実技に自信がないので、知識で加点して合格を目指したいと思っています。」


「そうですね、私も実際の受験者よりそのような問題が試験にでると聞いています。」


「じゃぁ、俺は実技だけで合格してやる。

よし、明日も訓練しようぜ、皆。」


「実技の方が重要かと思いますが、さすがに筆記試験で0点というのは,不合格になるかと.」


「ええええっ、全員合格じゃないのかよ。」


「確かに全員合格しています。

しかし、全員一回で合格したわけではないと聞いています。


ここ数年、皆さん一回で合格しているのは試験問題の傾向が同じで、効率よく勉強できているためですね。


追試や再募集はないので、過去に落ちた人は一年間教会本山の宿坊のお手伝いをしながら受験勉強を続けて、翌年合格したと聞いています。」


ボルバーナは顔を真っ青にして、油汗をかいている。

漸く自分の状況が理解できたらしい。


「聖戦士に算術は必要なさそうに思えますが、実は魔力の配分や相手を上回るための魔力の込め方など算術のセンスが戦闘時に必要とされる場面が多々あります。


敵までの到達時間なんかもそうですね 


高名な聖戦士は算術のセンスが高いと聞いたことがあります。」


生徒会長が話をするごとに汗の量が増えてくるんですが、ボルバーナ君。

ほんとに何も勉強してこなかったの。


「しかし、算術のセンスはすぐに身に付くものではないそうです。

まずは地道な計算をたくさんして、そこに応用的な問題を解き進めることで算術のセンスが高まるそうです。」


徹夜じゃ身に付かないってことだ。

ボルバーナ君は止めを刺されてしまったようだ。

プルプル震えている。


これで俺の同期は4人かな。

かわいそうだけど、ボルバーナは来年俺の後輩になるかもな。

さすがに2回は落ちないだろう。


「会長さん歴史は徹夜で暗記すれば少しは点数が取れるかなぁ。」


ボルバーナは算術は諦めて歴史に己の進退をかけることにしたようだ。


「基本覚えれば良いのでそれで構わないですが、どこの時代が出題されるかはわかりませんので、算術のマイナスをカバーするとなるとかなりの知識を詰め込まなければなりませんね。


それでも何もせずに諦めるよりは良いことだと思います。


小学生レベルの教科書を用意します。

必ず覚えなければならないものはここに含まれていますので、これだけでも覚えましょう。」


「センパーイ、よろしくお願いします。」


ガサツさが消えて素直な子になった。

まぁ、今の話はボルバーナを破壊するのに十分な威力だったもんな。


「さぁ、シュウも夕食が終わったら勉強しよ。

私がつきっきりで教えてあげるわ。」


「あなたは見習い魔法術士3級のエリナさんね。

受験生以外は夕食前にここを出なければなりませんよ。」


「生徒会長、私はシュウの婚約者です。

一晩中シュウの側で受験準備のお世話をします。」


「規則です。

婚約者でも婚姻してても今日のところは出てくださいね。

明日も学校はお休みなので朝食後にまたここに来ればよいと思います。」


「でもーーーっ。」


「わかりましたか。返事は如何? 」


穏やかな表情の生徒会長だか、その目は相手を射抜くような鋭さを一瞬見せた。


「わかりました。帰ります。シュウまた明日ね。ちゃんと勉強してね。


あっ、クリーンだけでも・・・・」


「帰りますよ。」


「はい・・・・」


エリナが生徒会長の後ろをついて、何度も振り返りながらトボトボ帰っていった。


夕食後に勉強しよう。合格できるように。

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