2話目 遠い目をしていないではっきり言ってよ
5分後にパキト兄妹がやって来た。
皆、困惑のと言う字が顔に出ている。
「村長、どうなっているんですか。私たちが居ない間に。
集会場が要塞化しているんですけど。」
「パキトさん、要塞化してるって、いったい。」
「ソシオ様、集会場の建物が風の魔法属性フィールドで守られています。
ムリにドアを開けようとすると鎌鼬が発生するようです。
この通りに。」
パキトさんの腕は何かに切られたような傷が出来ていた。
でも、あまり深い傷ではないようなので、そんな大けがをするような強い魔法属性フィールドではないと思われた。
「私も風属性フィールドを纏っていますからこの程度ですが、風属性以外の方がドアに触れるともしかして腕がチョンなてことになるかもしれませんので、気を付けてください。」
マジか、そんなに強いのを展開しているのか。
「それ。」
ソニアがパキトさんに土魔法系の治癒を掛けた。
腕の傷はあっという間にふさがった。
ちなみに、なぜ治癒するのに水じゃなく土の方を選んだんだ。
「ソニア様、ありがとうございます。
しかし、あの中はどうなっているんでしょうか。」
「あっ、パキトさん、子供たちが芦高さんと集会場の前で遊んでいる思うんですけど、風の属性フィールドで危ない目に会っていませんよね。」
「シュウ君、それは心配しないで。
初めに芦高さんに対して鎌鼬が発生したらしいけど、まぁ、彼だから何ともなかったんだけどね。
それで、危険を感じた芦高さんは子供たちをかばいながら、特一風見鶏の施設がある方の門の近くで遊ぶと言って移動していったわよ。」
「アイナさん、教えてくれたありがとう。
子供たちが何ともなくて良かったよ。
芦高さんは、まぁ、心配ないと思ったけど。
しかし、村人を傷付けるほどの風の魔法属性フィールドを村の真ん中にある集会場の周りに発生させるなんてどうなっているんだ。」
「シュウ君、まずは村長の話を聞いてみようじゃないか。
村長、それではこれまでの経緯を話してもらえるかな。」覚悟?を決めたソシオさん
「まぁ、皆座って、お茶でも飲んでおくれ。
あわててもしょうがないから落ち着いては話をしなくっちゃあね。」さっきは慌てすぎてお玉を振り回しながら家の中を走り回っていた村長の奥さん
「シュウ殿たちが風の聖地の探索に出てから、だいたい10日が経ちますかね。
旅立ったその日は、まずは交渉相手の人柄をよく知るために、お互いの自己紹介と、雑談をしていたんですよ。」
「それは3人でですか。」
「私とカロリーナさん、カメさん、そして、記録係の村人が2名同席していました。
駄女神様が戻ってくるまで、基本的にこの5名で交渉を行うことを初日に確認しました。」
「すでに初日のあいさつの段階で異変と言うか、まぁ、普通の外交ではない雰囲気を醸し出していたんですが。」
「村長さん、その香ばしさはどんなものだったの。」エリナちゃん
「まあ、ピンク色と言うか、ハートが飛び交っていたというか。」
「んっ、人類とエルフ族の交渉なんだよな。なんでそんな雰囲気になったんだ。」一番事情にうといのに、さらに異常な交渉の雰囲気になっていることで混乱の極みに達した白シッポちゃん
「えっと、シュウ殿、この豹族の方々は一体どなたですかな。」
「村長、紹介が遅れて申し訳ありません。
この二人は、風の聖地探検の案内役をお願いしたマドリン近郊にある豹族の村の方です。
こちらの白豹さんの方がイザトラさんで、豹族の村長の娘さんです。
こちらの黒豹さんはノアフさんで、イザトラさんの護衛役だそうです。
俺たちはこれからもエルフ領で探検を続けたいと思っていますが、それに興味があるということで一緒に旅をすることになりました。
それと今ここで人類とエルフ族が外交の下準備をしていますが、その取り決めは豹族にも適応されることになるので、豹族の代表として交渉内容を確認しに来てもらったというわけです。」
「豹族の外交官のようなお立場ですか。」
「まぁ、外交と言うものができるほど豹族はもう数はいないからな、基本はエルフ族の取り決めに従うことになると思う。
ただし、豹族だけが不利になるような取り決めがないか確認したいと思っているだけだよ。
エルフ族はそんなつもりはなくとも、数が少ないと言うだけで不利になることもあるしな。」
「確かに魔族と戦うときはエルフ族と人類が一緒に戦うという条約を結べば、実際の戦いに豹族も駆り出されることも考えられますからな。
豹族が戦いを望まなくても決まりだからとエルフ族と人類に迫られれば、従わざる負えない場合も出てきましょう。」
「魔族と戦うこと自体は俺たちは拒むことはないが。
まぁ、そう言ったなし崩し的に従わされることがないか確認したいだけなんだ。
エルフ族は特に豹族を不利な立場に追い込むようなことはないと思っているがな。思わぬところでってものがないように、交渉の内容だけはt確認したいと思っているんだ。」
「わかりました。後でこれまでの交渉内容を聞いていただきましょう。
それにこれからは豹族のことも考慮して、交渉に臨みたいと思います。
本当は豹族からも交渉人を出してもらえばいいのですが。」
「その点はすままねぇな。豹族は風の聖地の運営の方でエルフ族と人類に貢献させてもらうつもりなんだ。
そのためにちょっと人を交渉に割くことは難しいな。」
「その点は了解しました。
交渉内容は王都経由でソシオ様が随時把握されるでしょうからシュウ殿たちと一緒に確認してください。」
「悪いがそうさせてもらうよ。」
村長が今のやり取りで漸く外交官としての落ち着きを取り戻したように見えた。
「話を戻しますが、初日のあいさつの段階でピンク色になったというのはどういうことなんですか。」
外交官の凛々しい顔から、瞬時に絶望に打ちひしがれたおっさんにもどっちゃったよ、村長。
「初日の交流でカロリーナさんがカメさんを甚く気に入って、嫁に行くと言い出したんだよ。」
「「「「「「「「なんだってぇぇぇぇ。いきなりなんでそうなる。」」」」」」」
「まあ、それはピンク色だな。」
「妾はいっぺんで目が覚めたのじゃ。どうした雷ちゃん、いたく冷静なのじゃが。」
「カロリーナさんは奥様より積極的ですわね。出会ってその日にプロポーズだなんて。」
「カロリーナって誰なの。雷ちゃん」
"なんて劇的な展開なのでしょう。風の神殿なんかでシュウ君を待っていないで、ソニアちゃんとここでそれを見ていたかったわ。
その夜は当然あれよね、あれ。初めての夜。むふふふふふ。"
元ストーカーさん、ここでもストーカーするんですか。
それにチンチクリンはそんなことを口にしちゃいけません。もっと大きくなってからにしなさい。
"ちぇっ"
「それでカメさんはどうしたんですか。もちろんそのまま夜に突入したんですよね。シュウと違って。」
若奥さんも何という方向に話を持って行くんですか、何気に俺の甲斐性なしを非難しているし。
「でも、カメさんは外交官としてここに来たのですわ。
彼がその責務をないがしろにしてピンク色に染まるとは思えませんの。」
おおっ、さすがに長く生徒会とチームで一緒に働いてきた方のお言葉は重みが違うぜ。
「まぁ、外交上のリップサービスのようなもんだと思って、その日の交渉はそれ以上のサプライズはなく終了したんですが。
その日の夕食の交流会で・・・・・・」遠い目をして黙った村長
「あぁ、その交流会で・・・・・・」同じく遠い目をして黙った村長の奥さん
一体、交流会で何があったんだぁ。遠い目をしていないではっきり言ってよ。
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。
10/5より、「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。
この物語は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。
死神さんと旧ランク8位が結婚式のために故郷に帰ったときの物語です。
時間的には本編と同じ時の流れになっていますので、別伝としてお伝えすることにしました。
318部分からの本編の進行に大きく影響してくる別伝ですので、本編ともどもよろしくお願い致します。




