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シュウの冒険 東の占領地を目指して 1話目 村の異変

次の日、磯の香で目が覚めた。

それは決して不快なものではなく、なにか生物の原点をくすぐられるような何とも言えない心地の良い香りだ。


俺たちはマドリンの町を再度堪能することもなく、朝食後に城壁都市に転移し、さらに特一風見鶏の町に転移してきた。


元ストーカーさんは姿が見えないけど一緒に転移できたのだろうか。

"ソニアちゃんと手を繋いでいたわよ。"


出たな。証拠にもなく手まで繋いでいたとは。


"だって、迷子になったら困るもの。"


うぐっ、迷子か。それがあり得る外見なので何も言えなくなった。

しかし、どっちが迷子になりそうなのかな。


村の風見鶏の守り人は事前にソシオさんから連絡が入っていたためか、突然の俺たちの転移にも慌てた様子はなく、再会できて嬉しそうに挨拶をしてくれた。


「お疲れさまでした。風の聖地は見つかりましたか。」

「はい、ちゃんとありましたよ。後で詳細を村長に伝えます。

もし機会があったら、あなた方も風の聖地を訪ねてみてくださいね。」


「私たちでも入れるものなのですか。」

「大丈夫ですよ。

礼拝堂がありましたので、これから人類とエルフ族とで巡礼の地として整備し、そこに繋がる道も整備するつもりです。」


「わかりました。村長に詳細を聞いて、興味が湧いたら行ってみます。」

「是非、そうしてください。

ところで、その村長はどこにいらっしいますか。」

「村長は自宅にいると思います。

シュウ殿たちの帰還を首が3cm以上伸びるぐらいずっと待っていました。」


「何か俺たちが戻ってこないとまずい事態になっていますか。」

「とにかく村長のところに早く行ってあげてもらえますか。倒れる前に。」


「「「・・・・・・・」」」


何が起こっている特一風見鶏の村。


風見鶏の前で村長がどうしたのか悩んでいたら、ここでも芦高さんを目ざとく見つけた村の子供たちに芦高さんが囲まれてしまった。


「あそぼ。」「滑り台して。」「高く持ち上げて。」

「芦高さん、荷物を集会場の前に置いたら、子供たちと遊んでいていいよ。

今日はこれ以上移動する予定はないし。

夜はオーク狩りに行っても良いよ。」


「ご主人様がそうしていいと言ってくれるのであれば、遊ぼうかな。

ちょっと荷物を置いてくるんだな。」


芦高さんはそういうと子供たちと一緒に一足先に集会場の方に向かった。


芦高さんとすれ違うエルフの方々も以前のように絶叫しながら逃げていくこともなく、子供たちに囲まれて歩く芦高さんを微笑ましく見送っていた。


「さぁ、俺たちも村長の家に行ってみますか。

あっ、パキトさん、アイナさん、アラナさんはどうしますか。

一緒に来ますか。それともいったんお家の方に戻りますか。」


「私たちは集会場の前で待っているよ。皆で村長の家に押し掛けても迷惑だし。

荷物の整理もしたいしね。」


「わかりました、残りは戻ってきた挨拶も兼ねて村長の家に行きましようか。」

「あっ、パキトさん、王都から僕宛てに連絡が来ていないか確認してもらえますか。」

「ソシオさん、わかりました。村の連絡係に聞いてみます。」

「ありがとう。」


「しかし、村長が私たちの帰還を待ち焦がれるなんて、何かあったのかしら。

駄女神さんがついに誘拐犯となったとか、信じられないことをしでかしたのかしら。」

「お姉ちゃん、きっと近郊の村々からエルフ男をさらって、森の奥地で飼っているのかも。

以前、牧場を作るようなことを宣言していたし。」


「とにかく行ってみよう。すごく悪い予感がするから。

直ぐには人類領に戻れない事態になっているのかもしれないし。」


俺たちは芦高さんとパキト兄妹と別れて、村長の家に来た。

ドアをノックして、ドア越しに声を掛けた。


「村長、シュウです。ただいま風の聖地の探索から戻りました。

風の聖地について報告したいので、話を聞いてもらえますか。」


そう声を掛けたら、ドアの向こう側でどたどたと走って近づいてくる複数の足音が聞こえた。

今にもドアにぶつかりそうな勢いである。


「シュウ殿、お帰りなさい。

とりあえず中に入って。こっちはもう大変なことになっているんだよ。」やつれた村長

「シュウ君、聞いておくれよ。わたしゃどうしたらいいかわかんないよ。」お玉を振り回して興奮気味の奥さん


「村長、どうしたんですか。そんなに焦って。俺たちが風の聖地を探しに行っている間にここで何か有ったんですか。」


「シュウ君、有ったんですかなんて何を暢気なことを言っているんだい。

もう、大変だったんだからうちの旦那は。

人類との交渉役と言う外交官だからって、あれはひどいもんだよ。」


「村長、何があったんですか。

大変な事があったのは察しますが、僕たちは今マドリンから帰って来たばかりで何も知らないんです。

王都経由で伝わってくる情報ではここで大変なことが起こっていることは伝わってきていません。

事を解決するためにも、まずは落ち着いて状況を話していただけますかね。」


「ソシオ様、申し訳ない。私も想定外のことで、動揺してしまっているんだ。

ソシオ様、そして人類の方々、心して聞いてほしい。」


村長さんのその改まった態度から何かとんでもないことがここで起きていることが察せられた。


「実は、大変申し訳ないことに、・・・・・」


村長の何か噛み締めたものの言い様に、俺も緊張感が増してきて、次の言葉を待つ間にのどがゴクリとなった。


「村長、集会場はどうしちゃったの。

村の集会場を閉鎖なんてして。

誰かが閉じこもっているようなんだけど、何に使っているの。

シュウ君たちの荷物を入れられないじゃないなの。」


アラナさん村長の家に飛び込んできて、村長に抗議するように叫んだ。


「集会場が閉鎖されているって、しかも誰かが使っているようだなんて。

人類とエルフ族の交渉に使っているにしては村長がここにいるしな。

誰が閉じこもっているだろ。」


「そこまではわからなかったの。

兄妹で荷物整理をするために集会場に荷物を運ぼうとしたの。

そしたら、"ご用のある方は村長を通してください。ただいま、集会場は使用しているため閉鎖中です。邪魔しないでください。邪魔するとかみつきます。"と張り紙がしてあったの。

どうも誰か私用で使用しているようなの。

と言うことで、張り紙の通りに村長にどうしたのか聞きに来たわけ。」


「そうなんですよ。私が抱えている問題も集会場で起こっていることなんですよ。

はぁぁぁぁっ。」


ここ10日ぐらいで村長さんが一気に100歳ぐらい年を重ねてしまような印象を受けた。

人間だったら死んじゃうぞ。


「村長さん、集会場の中にいったい誰がいるのかしら。」

「エリナさん、実はあの中にはカロリーナさんとカメさんが閉じこもっています。」


「げっ、カメさんとカロリーナさんですって。

籠って、交渉をしているのかな。

そんなに根を詰めてやらなくてもいいのにね、お兄ちゃん。」


「ソニアちゃん、交渉と言う割には村長さんはここにいるんだけど。

まぁ、駄女神さんもいないし、村長も交渉だけが仕事じゃないでしょうから、今日のところは2人に任せたんじゃないの。


そして、ちょっとややこしい交渉事が出てきて、公に議論できないから2人で額を合わせて今話し合っているんじゃないの。


この説明であればすべてのつじつまが合うわ。

どう、シュウ、私の考えは。」


「シュウ殿、エリナさん、私は一昨日に集会場から追い出されたんですよ。カロリーナさんに。」


「「「えっ、カロリーナさんに追い出された。なんで。」」」

「私が知りたいですよ。はぁぁぁっ。」

「カメさんとカロリーナさんはあの中で何をしているんですか。」

「私が知りたいですよ。はぁぁぁっ。」


「ちょっと、あんた。私がりたい、はぁ、だけでは皆が何のことだかわかんないよ。

取り敢えず、シュウ君たちが風の聖地の探検に行っている間のことを話したら。」


「そうだな、そうするよ。しかし、どうしてこんなことになったのか。はぁぁぁぁ。」


「もう甲斐性がないねぇ、あんたも。わかってたけどね。

アラナちゃん、取り敢えず、パキトさんとアイナちゃんも呼んできてよ。

集会場の前で右往左往しているよきっと。」

「わかったわ、呼んでくるね。」


アラナさんはあわてて、村長宅を出て行った。


いったいどうなっているんだ。


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


10/5より、「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。


この物語は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。

死神さんと旧ランク8位が結婚式のために故郷に帰ったときの物語です。

時間的には本編と同じ時の流れになっていますので、別伝としてお伝えすることにしました。


318部分からの本編の進行に大きく影響してくる別伝ですので、本編ともどもよろしくお願い致します。


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