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30話目 ホテルの部屋で

昼食後、マドリンを目指すことに。

巡礼の道、転移魔方陣が整備されればこの村に立ち寄る必要もなくなる。

予定では、城壁都市と風の聖地突風待機施設との間に風見鶏が設置されるためだ。


また、マドリンと風の聖地突風待機施設間にも風見鶏が設置されるので、それらの中間地にあるこの村、あるいは、周辺の豹族の村には巡礼者の往来はほとんどなくなるはずである。


まぁ、熱心な巡礼者はマドリンから風の聖地まで祈りながら歩いて行く者もいるかもしれないけど。

その場合にはこの村に立ち寄ることも考えられるが、今のところそのような巡礼が一般的になることは想定していない。


主街道から外れることになるのでさぞかしがっかりするかと思ったら、今までも忘れられた村のような扱いだったので、特に気にしていないとのシッポさんたちの話だった。

寧ろ、風の聖地の運営に裏方で関われることに非常にやりがいを感じるとのことである。


滅びゆく豹族として今まではただその運命を受け入れるしかないと思っていたところに、強者による救済と東の占領地の同族の開放という、二つの希望が出てきたことで、これからは豹族の村も活気づくことを期待しているとのことだった。


やはり、人が何かの目標に向かって力を尽くすことは、例えそれが絶望的な運命に抗うことだとしても、その姿を見る方にとっては何か感動を生み、そして、何とかしてその抗いを成功に導く手伝いをさせてほしいと思わせることができるのだと思った。


空が明るい青色から深藍に、小鳥の甲高いさえずりからフクロウの闇に響く鳴き声に換わるころ、漸く俺たちはマドリンの町に入る門を通った。

門が閉まるぎりぎりの時間だった。


マドリンの町に同行したシッポさんはイザトラさんとノアフさんだけで、風の聖地に手伝いとして同行したシッポさんたちは、風の聖地への巡礼の準備をするとのことだった。

特に周りの豹族の村への風の聖地で見聞きしたことを伝えることが彼らの重要な仕事となる。


俺たちは以前に泊まっていたホテルに今日も泊ることになった。

ホテルはソシオさんがしばらく風の聖地冒険隊のために借り切っていたので、相変わらず俺たちの貸し切り状態だった。

その他には城壁都市とホテルとを結ぶ風見鶏の守り人は常駐していたけどね。

留守の間、お疲れ様です。


以前使っていた部屋に荷物を置いて漸く落ち着いた。

同室はノアフさんだ。

エルフ族のパキトさんとソシオさんは別部屋に移った。


何気にエリナとソニアが荷物を俺の部屋に置こうとしたので、丁寧に彼女らに割り当てられた部屋に誘っておいた。

全く油断も隙も無い。

その間に何度か「チェッ」と言う舌打ちが聞こえたが、聞こえなかったことにしておこう。


遅い夕食の後、芦高さんと雑談をしてから部屋にノアフさんと戻ったら、いつの間にかエリナとソニア、そしてイザトラさんが部屋のテーブルでお茶をしていた。

いや、イザトラさんはお酒だな。


「さぁ、シュウもそんなところに突っ立っていないで遠慮なくこっちにいらっしゃい。ベッドの上が空いているわよ。」


あの~ぉ、一応ここは俺とノアフさんの部屋なんですけど。


「どうしたのエリナ。何か用があるの。」


「ほんとシュウは冷たいのよねぇ。妻が夜一緒に居たいというのに邪険に扱うのよ。用がないと来ちゃいけないの。

ソニアちゃん、こんな甲斐性のない旦那を持つと苦労するわよほんと。」


「そうよねぇ、お兄ちゃんだからこんな扱いも我慢しているけど。

私の旦那さんはもっと甲斐性のあるやつを見つけるわよ。」

「ソニアは嫁にはやらんぞ。」

「そんなことは嫁に行きたくないぐらい、一生面倒を見てくれるぐらいの甲斐性を付けてから言ってよね。お兄ちゃん。」


うぐぐっ、正論過ぎてなんも反論ができん。


「痴話げんかはそのぐらいでいいだろ。

夜も遅いし、さっき言った本題に入ってくれ。」白シッポさん


「本題?」


その時、部屋をノックする音が聞こえた。

ソニアは誰が来たのかを知っているらしく、自分の部屋のようにその相手を招き入れた。

ソシオさんだった。


「なんか、シュウ君が呼んでいると言っていたんだけど。あっ、豹族の二人もいたのか。

シュウ君、それで用って何だい。」


「ごめんね、呼んだのは私なの。」

「えっ、エリナさんのご用なんだ。」


「もともとは俺がこれからの予定をもう一度ノアフと共に聞かせてほしいとエリナさんに頼んだんだ。

そしたら、ソシオさんも一緒の方がいいと。

これから皆で人類領に行くので、人類領に初めて行く人はちゃんと予定を確認した方がいいということになったんだ。」


「イザトラさんが頼んだのか。ノアフさんのために。」

「ノアフは今後のことをシュウ君たちから直接は聞いていなかったからな。

ノアフも水の巫女と言うならただ俺たちにくっついてくるのではなく、何のためにどこに行くのか知った上で人類領に行ってほしいんだ。」


「わかりました。今考えている今後のプランを説明しますね。

何か不具合があったらその都度指摘してください。


まずは城壁都市経由で、人類領へ繋がっている特一風見鶏のある村に行きます。

そこでは今、人類とエルフ族の今後の外交を進めていく上で必要な下交渉をしています。

まずはこれまでの下交渉の結果を教えてもらうことにします。


豹族として、その内容に意見があれば言ってほしいと思います。

おそらく、エルフ族として豹族も扱われることになると思いますので。」


「それはエルフ族が取り決めたことに豹族も従うということか。」


「人類と個別に交渉することも可能ですが、まずは、今回の下交渉の内容を確認してください。

とても豹族として受け入れられないのなら、また考えましょう。」

「わかったよ。そうしようぜ。」


「エルフ側の交渉役は王族と族長会議から派遣されたカロリーナさんと言います。

カロリーナさんには一端交渉を中断してもらい、その代わり風の聖地への巡礼について整備してもらうつもりです。

カロリーナさんとへの説明と依頼はソシオさん、お願いします。」


「わかったよ。

風の聖地の巡礼の件については、シッポ村で、父に王族と族長会議で早急に検討してほしいと連絡をしたよ。

明日の午前中までに何らかの回答が出来そうだとのことだったよ。

そして、特一風見鶏の村に結果を知らせてくれるそうだ。

OKならカロリーナさんを存分に働かせることが出来るね。」


「ソシオさん、ありがとうございます。

俺たちはその間、行方不明と言うか好き勝手に生きている駄女神さんを探すつもりです。」

「駄女神さんと言うと、例の風の巫女か。巫女としては本物だよな。

でも風の女神の化身としては嘘っぱちだけど。」イザトラさん


「その人です。とりあえず、風の聖地を運営する中心人物の一人なので、人類領に一度連れて帰り、輪廻の会合についてや風の聖地についてをすべて了解してもらって、働いてもいたいと思っています。


この二つのことが片付いたら、いよいよ、人類領に行きます。

これはシルフィード様も一緒に行ってもらう予定です。」


"了解したわ。"


ソニアストーカーがいた。


"シュウ君、何か失礼なことを考えたでしょ。

風の大精霊が風の使徒を心配するのは当たり前のことです。

それにいつ人類領に出発するかも聞いていませんので、くっついていないとね、ソニアちゃんに。"


もう、好きにしてください。


"シュウお兄ちゃんの許可が出たので、もうストーカーとは呼ばないでね。"


「おっほん、続けますね。


人類領に入ったら、ソシオさんとイザトラさん、ノアフさん、それにその辺に隠れている元ストーカーさんは第1083基地の旅団宿舎に滞在してもらいます。

まずは、俺たちの旅団の陰の支配者、人類の恐怖の片割れの死神さんに輪廻の会合に関するこれまでのすべての話をします。


そして、協力が得られるとの返事をもらったら、次は、土の大精霊ノーム様と水の大精霊アクア様にお会いし、今回のエルフ領での出来事と今後の話をしたいと思っています。


あっ、話は変わりますが元ストーカーさん。

アクア様とノーム様にチンチクリンズに入ってと懇願されても絶体に入らないようにしてください。不幸になります。」


"そうなの、チンチクリンズっていったい何なのかしら。"


「知らない方が幸せです。」


"わかったわ。いいお友達でいましょうねって、返事をすればいいのかしら。"


「・・・・・・、なんか違うような気もしますが、まっ、そんな感じの返事でいいと思いますよ。」


「大精霊様たちとの会合が終わったら、まだ、輪廻の会合について話ていない旅団メンバーに全てを話して、これからのことに協力してもらえるよう頼みます。

これが人類領でのざっとした予定です。


これがすべて順調に終わったら、今度は旅団全員でエルフ領に戻ってきます。


エリナチームはエルフ王族の寿命の調査と風の聖地の運営の整備、そして俺たちは・・・・・」


「月の女王に会いに、東の占領地に行くんだよな。」


俺はイザトラさんに大きくうなずいた。


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


第14章はこれで終了です。

次より新章が始まります。

第15章 シュウの冒険 東の占領地を目指して

お楽しみに。



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