27話目 ふっ、時々、ぶっふぉ
エプロンをしたエリナが俺たちの方に近づいてきた。
「そろそろ、昼食にしましようか。話はまた後でね。
どうせ5時にならないと突風が緩まないので、その間は祈るぐらいしかすることはないんだから。
午後からゆっくりとまたお話をすればいいとおもうわ。」
アイナさんとアラナさんと話をしてもいい?
"そんな余計な元気が出ないように、お湯だけにするわよ、シュウのお昼ご飯。"
えっ、マジで。
くっ、まずいぞ。キャンプ飯にもありつけないなんて。
ここは素直に方向転換だな。
「エリナ、お昼は何かな。」
「そんな期待しないでね。今日中に突風待機キャンプに戻ると思って、食材をあまり持ってこなかったの。
干し肉野菜スープと固焼きパン、リンゴに柿、それにお茶ね。
スープのおかわりはあるからどうぞ。」
さりげなくキャンプ飯だと言っているよな。
でもこの状況で贅沢を言うつもりは全くないので、若奥様の手料理をおいしくいただきます。
芦高さんが配っているトレーと食器類を受け取り、エリナとソニアにスープとパン、果物を入れてもらう。
「エリナとソニア、そしてタイさんが作るお昼はメニューがキャンプ飯でもおいしそうだね。」先ほどの失言を取り返すのに必死な俺
「いっぱい食べてね。」スープの肉だけ入れようとするソニア
俺、野菜も好きだからバランスよく入れてください。
あっ、エリナちゃん、柔らかいパンなんてないから。全部、固いから。一個一個をつついて固さをチェックするのは止めて。
でもうれしいな、2人は俺にだけできるだけのサービスするつもりのようだ。
エリナも先ほどのことを忘れたようで一安心だ。般若が盛ってくれるキャンプ飯なんて・・・・、恐ろしくて食えんからな。なんか混ぜてありそうで。
あっ、後ろのソシオさんにニンジンだけ入れるのは止めてあげてソニア。
野菜好きのエルフさんでもそれはちょっと、バランスの良いスープなんだから万遍なく具材を入れてあげて。
ほら、目から汗を出しそうになっているじゃないか。
エルフもちゃんとお肉を食べよう。
パタン。
シッポさんたちが礼拝から帰ってきた。
あっ、タイさんが迎えに行っていたのね。
みんな揃ったので、一緒に昼食となりました。
シッポさんたちは、午後からは外に出て庭の整備をするそうだ。
キャンプ設営用のスコップを背負って来た芦高さん、マジで使える子だなぁ。
今日は日帰り予定だけれど、今後巡礼ツアーががスタートすれば、豹族が交代でここにきて、礼拝と共に食料と日用品の搬入、庭の手入れを奉仕としてさせてほしいと言っていた。
その辺はここの管理者に就任予定の風の巫女様(駄女神さん)と宿泊施設の管理者になる方と相談してほしいと言っておいた。
ちなみに、宿泊施設の管理者を越後屋さんにしようと思っていたが、礼拝堂の管理者を人類から出すのであれば宿泊施設はエルフ族に任せてほしいとのソシオさんからの提案で、エルフ族から出してもらうことになった。
駄女神さんとコンビをくむなら、当然、エルフ男若衆だよね。
そいつ、マジで終わったな。
ソシオさん、それでいいの。犠牲者は覚悟の上ですか。
その覚悟があるのであれば、もう、俺は何も言いません。
最後に一言、ソシオさん強制だけは止めてね。
越後屋さんには、風の聖地突風待機施設の管理をしてもらうことになった。
どっちで小銭稼ぎしても変わりはないだろうし。
そんな、ここの運営について話をしながら、昼食を済ませた。
後片づけは、ソニアのクリーンとエリナの乾風であっという間に終わってしまいました。
俺も手伝いたいのだが、魔法が使えないので、エリナには旦那様は座ってお茶でも飲んで、午後からどうするか考えてほしいと言われました。
「シュウ、片づけは終わったわよ。
さあ、夕方までどうしようか。」
「お姉ちゃん、まずは礼拝じゃない。」
「じゃあ、タイさんもエルフ族の皆さんも一緒に礼拝に行きませんか。」
「そうねぇ。ここに着いてからちょっとあわただしかったから、まだ、満足に祈っていないわね。
礼拝堂で祈るのも久しぶりだし。
ゆっくり、させていただきましょうか。」
タイさんのゆっくり礼拝。夕方まで終わらないかもしれない。
職校の礼拝所ではいつも20分は祈っていたし。
「それじゃ、行きましょう。それぞれのペースで、今お願いしたいことを祈りましょう。」
「シュウ君、風の大精霊と風の女神様に種族の滅亡を救ってくれる強者の出現を祈るんじゃないの。」アラナさん
「それはもちろんですが、他にも、色々感じていることを祈っても良いと思いますよ。」
「シュウはメイド戦隊なんちゃらについては祈っちゃだめだからね。わかった。」
「げっ、何を突然言い出すのかなぁ。
エリナ、そんなことはないよ。
やだなぁ、こんなアイラさんとアラナさんの前で変なことを言わないでよ。
そんなことは祈りません。」
甘いなエリナ、今は妖艶な月の女王の出現を祈るのがマイブームさ。ふっ。
「シュウ、心の妄想が念話で駄々洩れだぞ。
きっと、父ちゃんとおばちゃんにも届くと思うぞ。
シュウの願いは風の大精霊に届くけどなぁ、叶うかどうはわからなんなぁ。」
「かなうわけがないのじゃ。」
「かなうと面白いかもね。」
「かなっても、甲斐性なしでは、・・・・・ふっ。」
そのふっだけはやめろぉぉぉぉぉ、絶対だめだと確信しているけど、ダメって言わないでおいてあげるわという上から目線が山盛りだぁぁぁ。
「というわけで、奥様もこの頃おわかりのようで、妄想に対していちいち反応はしなくなりましたね。ふっ。」
"ふっ。" by エリナ・また旦那のしょうもない病気がね、何が楽しいんだか
"ふっ。" by ソニア・お兄ちゃん、もう少し大人になんなよ
"ふっ。" by シルフィード様・救いようがないわね
"ぶっフォ" by シルフ様・お昼は焼き芋だった
「何を言っているんだ皆、止めてくれよ。
俺のシュウはそんな、ふっ、じゃねぇぞ。
寧ろブッの方が近いぞ。なぁ、おばば。」
「まぁ、そうじゃな。特に最凶キャンプ飯の後はそうじゃな。消化不良を起こしそうじゃからな。」
「ということで、礼拝の後はお腹を休めるために各自宿泊施設でゴロゴロということにします。
尚、礼拝の時間に個人差がございますので、礼拝が終わった方からご自由に休憩に入ってくださいましね。」
「じゃぁ、私はお兄ちゃんと一緒にゴロゴロする。」
「ソニアちゃん、それはちょっと危険よ。どうしてもというなら、窓を全開にしてからにして頂戴。
常に風魔法の発動準備をしておくのが必須だわ。」
「そっかぁ、芦高ちゃんガスマスク持ってない。」
「ガスマスクって何なんだ。知らないのだ。」
お前ら失礼過ぎ、必ず出るとは限らんだろうが。
「お兄ちゃん、絶対しないと誓えるの。」
「ゲッ、甲斐性なしですからはったりでもリスクのある発言はできません。」
「皆さん、そろそろ礼拝堂に移動しませんか。
アイラさんたちご兄妹はとっくに行ってしまいましたよ。」
「タイさん申し訳ありません。お腹が落ち着いたら礼拝堂に行きますので、先に行っててもらえますか。」
「わかりました。先に行って、祈っております。
シュウ君の甲斐性なしをすこしでも直していただくように祈った方が良いでしょうか、風の大精霊様に。」
全く、効果がなさそうなのでそれは祈らなくてもいいです。はい。
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。
10/5より、「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。
この物語は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。
死神さんと旧ランク8位が結婚式のために故郷に帰ったときの物語です。
時間的には本編と同じ時の流れになっていますので、別伝としてお伝えすることにしました。
318部分からの本編の進行に大きく影響してくる別伝ですので、本編ともどもよろしくお願い致します。