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26話目 エルフ族のために

祝300


風の女神像に祈るために、おっきなにゃんこさん一同は宿泊施設からワイワイ言いながら、礼拝堂に向かう廊下へ出て行った。


それを見送る、俺とソシオさん。


ソシオさんがポツリと呟く。


「豹族は羨ましいな。」


「どうしました、ソシオさん。」

「祈るだけで救われるかもしれないというのに、それはそれとして、自分たちの手でも運命に抗おうとする姿勢が羨ましいと思うんだ。」


「?」


「これがエルフ族だったら、ほとんどの者が祈るだけで終わってしまうよ。

次の危機が来たらまた強者が救ってくれるからいいと考えるのだろうなエルフ族は。」

「そういう考え方をするんですか。」


「人類だったらどう考えるんだい。」

「ざっくり言って、恐らく、8~9割はエルフ族と同じ考えで。残りの者が豹族と同じように抗おうと考えるんじゃないですかね。」


「人類は数が多そうだから、例え1割の人が抗うことを考えても大きな力になりそうだね。」

「そうですね。同じ思いの人を集めると結構な数になりますね。

まぁ、うちの旅団の者はみんな抗う派でしょうねぇ。

その中でも若干1名はそれに便乗して斜め上で儲け話に持って行こうとするはずです。」


「人々を救うことを儲け話にするのかい。

ちょっとそれはエルフ族にはなかなか考えられないことだよ。」


「もちろん、人々を救うことを第一に考えるとは思いますか、その脇でね、ちょろちょろと小銭稼ぎをしそうです。


軽いけが人に秘薬とか言って、ガマの油なんかを売りつけるのは平気でやりそうですね。ヒール掛けた方が速いのに。

そう言えばタイさんからヒール料をせしめようとして、手痛い反撃にあっていたなぁ。


まあ、そう言うところが斜め上でと言うところですけどね。」


「仲間からヒール料を取ろうというのかい。それは何とも、たくましいというか、ドライというか。

まぁ、私も王族で、人々を導く立場にあるから、お金で救われる人がいるなら出せるだけ出したいとは思うけど。」


「はははっ、その話は忘れてください。いろいろな人がいるという例えですよ。」

「そういう意味では人類は数が多いだけに、いろいろな考えがを持っている者がいるんだろうねぇ。」


「そうですね。いろいろな考えがあるだけに逆にまとまらないことも多いですがね。

ただ、一人の考えよりも10人、10人よりも100人と、できるだけ人を集めた方が、あっと言う面白いアイデアが出てくることは間違いないですね。


今回の輪廻の会合でもできるだけ多くの考えを集めて、最終的な措置を決めていきたいと思います。

そしてもっと大事なことは措置後もできるだけ長く皆が平穏に暮らせるようになることですね。


いずれにせよ、まずは、エルフ族や魔族が種族として衰退している原因を知ることが大事ですけどね。

それを踏まえた輪廻の会合の措置でないと、根本が解決しませんから。」


「そうだよね。衰退が始まっているのに、それがわかっているのに何故かを考えようとしないものが多すぎるよエルフ族は。」


「まあ、そう言わないで。

きっと、エルフ族の中にもソシオさんと同じ思いの同族がいますよ。

ただ、それが誰だかわかっていないだけで。

そう言う志を同じくする者を探すためにこの風の聖地を作り上げて、そして、巡礼ツアーを企画したんでしょ。」


「そうでけど、そういう者が集まってくれるだろうか。

だんだん不安になって来たよ。」


「大丈夫だと思いますよ。豹族はその方向で話がまとまりそうじゃないですか。

あそこはイザトラさんがそういう方向に皆をまとめてくれました。

村に帰ってもそうするでしょう。


エルフ族はソシオさんが志を同じくする者をまとめてくれればといいと思います。

志を同じくする者はそんなに多くはないかもしれませんが、一人でも二人でもそういった方を仲間にしていくことが大事なのではないでしょうか。」


「志を同じくする者を一人でも二人でもか。

確かにそう言う者を探して育て上げようと漠然と思ってきたんだ。


そして、シュウ君たちと出会って、漠然としたものが、具体的な方法となった。

それはきっとすごいことなんだよね。


出会いが人を成長させるか。


これから出会う志を同じくする者たちによって、僕ももっと大きく成長することが出来るかもね。

そうすれば輪廻の会合もまた違った措置の方法が出てくるかもしれないな。」


「そうですね、不安がって止まっていては進みませんね。

先はどうなるかわかりませんが、暗闇でも一歩踏み出さないと光のあるところにはたどり着けないと思います。」


「はははっ、でも僕は運がいいな。」

「運がいい? 」

「だって、そうだろう。僕の前は真っ暗闇じゃなくて、シュウ君やエリナさん、ソニアさんたちが明かりを灯してくれているじゃないか。

僕はその明かりを頼りに、もっと日が一杯に射しているところを探しているんだ。

真っ暗闇じゃないよ。」


「俺たちが灯しているいう光の先が正しい道だと良いんですが。」

「正しいかどうか確認するために進むんだよ、きっと。」


食堂の扉が開いて、宿泊施設を見て回っていたパキト兄妹が戻ってきた。

アイナさんと、アラナさんがニコニコ笑っている。


「アイナさん、宿泊施設に何か楽しいものがありましたか。ニコニコしていますけど。」


「宿泊施設じゃないんです。

豹族の方々が楽しそうにワイワイ言いながら礼拝堂に向かって行きまして。

何か楽しいことがあったのかなと後姿を追っていたら、皆さんのシッポも楽しそうにゆらゆら揺れていたんです。

そのシッポを見ていたらなんだか私たちも楽しくなってきて。」

「シッポゆらゆらさんたちはここから出て行ったようですが、何かいいことがあったんですか。」


「アラナさん、それはきっと新しい希望と言うか目標ができたからじゃないですかね。」

「新たな希望ですか。その希望がシッポさんたちの心を弾ませているということですか。」


「そのようです。

彼らはここで、初めは風の聖地で風の大精霊と風の女神に強者の出現を祈り続ければ豹族は救われるという話をしていました。」


「それはあの予言の石碑に書いてあったことですね。」アイナさん

「その通りです。そんな話をしていたら、別のシッポさんが祈るだけでいいのだろうかと言い始めたんです。」


「予言を信じるならば祈るだけでいいはずよね。」アラナさん

「予言が正しくて、祈ることによって強者に救われる。

そして、次の困難が起こった時にはまたその強者に頼るのかと言う話が出てきました。

次も強者が助けてくれるかはわからない。

助けてもらえなければ、祈りながらただ、豹族の滅亡を待つだけになると。」


「危機に立ち向かう力と気力が失われるということでしょうか。」

「そういう話でした。

自分たちの代は強者に救ってもらうので良いとしても、次の代はその次は、子孫はと言うように考えていくと、種族として過酷な運命に抗う力を子孫に引き継いでいかないと遠からず、豹族は滅んでしまうとの考えに至った様でした。」


「種族として運命に抗う力を持ち続けて、それを子孫に受け継いでいきたいと言うとですね。」


「むそうですね。

結局は祈りながら強者の出現を待ちつつ、自分たちでも豹族の衰退を食い止めようということでした。」

「祈りはわかりますが、豹族さんたちでできることとはいったいなんでしょうか。」


「豹族の村での歓迎会の折にも話が出ていましたが、東にある魔族の占領地から同族を救い出そうということですね。

そのためにも何とか東の占領地に忍び込んで、そこの様子をさぐって来ようということになりました。」


「それって、村で聞いた話変わっていませんね。

その割には新しい目標ができたように嬉しそうにしていましたが。」パキトさん


「それは一つは祈ることによって強者の出現し、救われる可能性が出てきたことが大きく関わっているように思うよ。」ソシオさん

「それはどういうことでしょうか。」


「今までは魔族の占領地から同族を救い出すという、絶望的に思える方法しか思いつかなかったわけなんだ。

でも、今回思いがけず、祈りによる強者の出現での救いの可能性が出てきたよね。


どちらの方法も確定的とはとても言えないけど、強者による救済と占領地からの同族の解放と言う二つの可能性が出てきたことにより救済が現実味を帯びたように思えたのかもしれないね。

可能性の多様さが希望の大きさとなったんだと思うよ。


他には抗う力を子孫に残そうという思いが強く湧いてきたことにもよるよね。

彼らは豹族を滅亡から救いたいと願っているけど、子孫に何か残せるかと考えることは子孫が残る前提での話なんだよね。


彼らの希望でもある子孫が繁栄していくことを前提に話をしたり、子孫のために何かをすることは非常に嬉しいことじゃないかと思うよ。

シッポさんたちがそんなことまで意識して話をしているかはわからないけどね。」


「子孫の繁栄ですか。子孫の繁栄は今生きている我々の努力次第と言うことですか。」パキトさん

「シッポさんたちの話を聞いているとそのようなことに思い至った様でだね。」


「エルフ族の子孫のために何かできることはないかな。」パキトさん

「運命に従い、翻弄されるだけでなく、それに抗う力を身に着けるか。」アラナさん

「私たちエルフ族もシッポさんたちのように、今生きているエルフ族が子孫のために残せるものがないか考えないといけないということですね。」アイナさん


「そはれはエルフ族皆で考えていかなければならない問題だよね。」ソシオさん


ソシオさんは俺の方をみて、頷いた。


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


300に達しました。

まだまだお話は続きますよ。

お楽しみに。



10/5より、「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。


この物語は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。

死神さんと旧ランク8位が結婚式のために故郷に帰ったときの物語です。

時間的には本編と同じ時の流れになっていますので、別伝としてお伝えすることにしました。


シュウが風の大精霊と会合した後の本編の進行に大きく影響してくる別伝ですので、本編ともどもよろしくお願い致します。


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