24話目 風の聖地の時間割
長い祈りの後にそれぞれはゆっくりと立ち上がった。
豹族の皆さんで事情を知っているものは輪廻の会合がうまく果たせることを祈り、事情が分かっていないものは種族を救う強者の出現を風の大精霊様と風の女神様に祈っていた。
アラナさんが祈りの後に立ち上がり、予言の石碑と風の女神像を見比べながら口を開く。
「この女神像、見れば見るほど駄女神様にそっくりね。
顔のつくりから体つきまで瓜二つね。」
「確かに、ここまで似ていると気持ち悪いわね。」エリナ
「何と失礼なことを言っているんだ、君は、我々の女神様に対して。」すっかり風の女神様信徒になった手伝いの豹族さんその1
「ごめんなさいね、この女神像が私たちの知り合いにそっくりなもんだから。
風の聖地の言い伝えが人類だけに残っていたことと言い、駄女神と言えども普段から女神様と呼ばれていたこととい、何か彼女と風の聖地との因縁を感じるわね。」必死に駄女神・風の女神の化身説を押し進めるエリナちゃん
「先ほどから聞いていると、この女神様に心当たりがあるのですか。」手伝いの豹族さんその2
「その方なら我々も知っていますよ。我々の村の付近で何やら秘密の活動をしているようです。」パキトさん、秘密の活動って、あれだよねあれ
「もう女神様は我々の豹族の救済に向けて一人で活動を始められているというのか。」豹族その1、この方が一番ちょろいかも
「でも、その方は女神ではありませんよ、人類の方ですよ。
我々は先週一緒に旅をしましたが、普通の方でしたよ。
強力な炎と風の魔法術士でしたけれど。」アイナさん
「では、その方はきっと、風の大精霊様と風の女神様が我々に遣わしてくれた巫女様じゃないのか、風の巫女様。」その2さん、間違ってはいないよ、確かに奴は風の巫女だ、いまだに信じられんけどな
「そうか、風の巫女様を通じて、風の大精霊と風の女神様に祈れと言っているのか。
祈りが風の大精霊様と風の女神様の力となり、その力を宿した強者がこの地に降臨するということじゃないか。
絶対にそうだ。」絶対に違うと思うけど、そう言う風に思ってほしいとは願っているよ、その1君
「種族の滅亡の危機にあるのは獣人族だけではないんですよ。
われわれエルフ族も緩やかではあるけれど、確実に種族の衰退の道をたどっているんだ。」駄女神さん風の巫女説にさらにガソリンを注ぐソシオさん
「私たち人類も魔族に攻め込まれ続けて、種族の衰退の道を突き進んでいると言えますね。」ガソリンをハイオクにしたのかタイさん、ハイオクって何?
「と言うことはこの風の大精霊様の予言は正しいということか。
予言の石碑に刻まれた言葉の前半部分が既に起こっているとすれば、その後半部分も本当に起こることが期待できるということだな。
こっ、これは村に帰って、 みんなに伝えなきゃな。
皆を誘って祈りに来なければな。」果然やる気が出てきましたねその3さん
「しかし、村人全員で来ては村人の生活が立ち行かなくなるぞ。
強者が俺たちを救ってくれる前に俺たちが持たないぞ。」まぁ、冷静な対応が必要だよねその4さん
「その通りだと思いますよ。だから、村の人々が交代で祈りに来るような形がいいのではないでしょうか。
我々突撃隊も昨日ここを訪ねて、風の大精霊様と風の女神様に祈りをささげる必要を痛感しました。
エルフ族ではここに巡礼するためのツアーと施設を作りたいと考えています。
そして、ここの礼拝堂はやはり、この風の女神像にそっくりな人類の駄女神さん、風の巫女様にお任せしたらどうかと思っています。」ソシオさん、ついに駄女神・風の女神の化身化計画と風の聖地巡礼計画の発表だな
「それはいいな、巡礼と言うとここ以外にもどこか巡るのか。」その3さん
「やはり、ここ風の聖地の前に吹いている突風も風の大精霊様と女神様の意思が働いているかと思います。この突風は何かの試練だと思うんです。
そこで、この試練を体験と言うか見てもらって、その後、突風が緩んだ隙にこの礼拝堂にきて、何度も何度も一晩中祈りを捧げ、その後また突風の緩んだ隙に街道に戻ってくるような巡礼行程を考えています。」ソシオさん
一晩中、祈るんかい。いつの間にそんな計画になった。
午前中に来て、夕方に帰るはずだったのに。
それに突風が風の聖地の試練にされているし。
まぁ、何で突風が吹いているのかわかっていないけどな。確かに試練かもしれんな。
「一晩中、ここで祈りをささげるのはいいが、やはり休憩所的なものがないとな。
それを新たに立てるのは厄介だな。突風の緩んだ隙に資材を運ばなきゃなんないだろ。完成はいつになるかわかわからんな。」その2さん
「その心配は無用です。この礼拝堂の後ろは宿泊できるような小さな個室がたくさんありました。後で見に行ってみましよう。
確かに、食料などの消耗品は運び込まなければなりませんが、豹族の方々が定期的に巡礼に来ていただければ、その時に運び込みも可能かと思いますよ。」
「おおっ、そんな施設があったのか。
ますます、ここで風の大精霊様と風の女神様に祈れと促されているようだな。」もうここに住む勢いのその1さん,出世すればここじゃ無理だけど、風の聖地突風待機施設の司祭ぐらいにはなれるかもね
「礼拝堂ですからね、ここは。
まぁ、ここでの宿泊施設は心配ないとして、作らなければならないのは、街道沿いで突風が緩むのを待つ施設ですね。
あちらでも宿泊ができるような施設にする必要がありますね。
今回、人類の方々は優秀な土魔法術士がそろっているので、整地と基礎工事、建物は直ぐに作ってもらえるそうです。
内装は多少は時間が掛かってしまうかもしれませんが。
椅子や食器などの細々とした物はマドリンの街で買いそろえて、エルフ族が風魔法でここに運び入れることになりますね。」さすが巡礼運営者のソシオさん、あの後もいろいろ考えていたのね
「なんか巡礼地の形が整ってきそうだな。
結局、一般の巡礼者はどんな行程になるんだ。」その3の方
「初めから話しますね。ちょっと、変更しなければならない箇所があるので、人類の方々も、エルフ族の方々も皆さん聞いてもらえますか。」
「どの辺が変更されますか。ソシオさん。」
「風の聖地突風待機施設と特一風見鶏の村の間の転移魔法陣の設置についてだね。」
「何か問題でも。」
「特一風見鶏の村とは王都の城壁都市としか転移魔法陣を繋げないと思う。多分許可が出ないよ。
だから、城壁都市と風の聖地突風待機施設との間と、その他にマドリンと風の聖地突風待機施設との間に転移魔法陣を設置したいと思うんだ。」
「2か所ですか。」
「そうした方が風の聖地に来やすいかなと思って。
城壁都市と風の聖地突風待機施設はこれは人類側から移動しやすいようにだね。
城壁都市は、今回経験したように、特一風見鶏の村と繋がっているし。」
「マドリンと繋げるというのはどういう意味があるの、ソシオさん。」ソニアちゃん
「実は城壁都市はその性質上、余り一般の町とは転移魔法陣が繋がっていないんだよ。
万が一に外敵に転移魔法陣が利用された場合の防御システムとしての性質があるんだ。
そのため、城壁都市と繋がっているのは、ここで話せる範囲としては、特一風見鶏の村、マドリンの宿、東の魔族の占領地に近い軍の駐屯地だね。
マドリンの宿のものは今回の冒険の特例に設置しただけだから、マドリンの宿の魔法陣を風の聖地突風待機施設に移設することになるね。
こことマドリンをつなげるのは、マドリンは王都を含めた多くの町に繋がっているので、エルフ族が巡礼しやすくするためだよ。」
「ありがとう、わかったわ。」
「それで巡礼全体としてはどのような行程になりそうなんですか。」エリナちゃん
「突風が止むのが10時と夕方5時なのでね。これに制限されてしまうね。
巡礼の行程としては次のようになるんじゃないかと思うよ。
巡礼前日に風の聖地突風待機施設に宿泊してもらう。
次の日の10時に突風が緩む前に、飛ばされない程度のところで突風、風の大精霊の風を体験してもらい、まぁ、身を清めてもらうようなものかな。
9時に風の突風待機施設の広場に集合し、風の突風の入り口へ移動。
10時に風の突風の道を通って、風の聖地へ移動。子供や年寄りの足の遅いものが先に出発。下ってくる者がいるので左側を通行。
11時より宿泊施設に入所手続き
12時より宿泊施設、風の聖地の説明。
13時より昼食
14時より風の巫女様から毎日の説教と初回の拝礼
その後は自由に拝礼。施設見学や風の巫女様との懇談も可。
急いでいる人は夕方5時に帰ってもいいけど、せっかく巡礼に来たのにすぐ帰るなんてもったいないから勧めないけどね。
6時に夕食。その後は自由に拝礼。
10時消灯、
5時に起床。朝の拝礼。
7時に朝食。その後は宿泊施設の退去。自由に拝礼。
9時30分に外に集合して退去準備。
10時に風の突風の道を下って帰路へ
と言う感じかな。
とにかく礼拝堂と予言の石碑、女神像しか見るところがないから観光には向かないよね。
まさに巡礼地として、自由に拝礼してねと言う感じたね。」
「大人数だと移動に時間が掛かるから一日のに入山数に制限が必要かもね。
突風に巻き込まれたら命が危ないし。」
「巡礼の人が増えたら、午前の入山者と午後の入山者に分けないといけないかもね。」
「その辺は運営しながら考えていこうよ。
とにかく突風に巻き込まれる人を出さないようにするのが最優先で考えなきゃいけないことだね。」
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。
10/5より、「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。
この物語は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。
死神さんと旧ランク8位が結婚式のために故郷に帰ったときの物語です。
時間的には本編と同じ時の流れになっていますので、別伝としてお伝えすることにしました。
シュウが風の大精霊と会合した後の本編の進行に大きく影響してくる別伝ですので、本編ともどもよろしくお願い致します。