表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

297/620

23話目 祈り

「もうすぐ、突風が止む時間ですね。」


俺は突風が緩むのをタイさんの隣で待っていた。


「どんなふうに仕上がっているのか楽しみですね。

昨日は教会本山の礼拝堂と職校寮が並んで立っていたんでしょ。

エリナさんたちに聞いたわよ。」ボソ


「そうなんですよ。さすがにあれには開いた口が閉じなくなったというか、驚愕の事実を突きつけられたような感じになりました。」ボソ

「お兄ちゃん、今日はお兄ちゃんのお世話になったソンバトという町の教会と付属する宿泊施設にしてもらったんでしょ。

どんな感じに仕上がっているか楽しみ。」ボソ


「ソンバトはマドリンと同じように教会本山よりもかなり北にあるので、飾り気がなくい実用的なデザインだね。

でも、それが人々の教会への親近感を増しているという感じの建物だったよ。」ボソ


そして、風が緩む。

髪をなびかせるぐらいの風はあるがもう前を見て歩けなくなるほどの突風ということはない。

俺たちはのんびりと出発した。

のんびり歩いても30分はかからない。


実際の参拝で参拝者に小さな子供がいた場合には、突風の緩んでいる間に風の聖地に着かないかもしれないので、大人が背負う必要があると思われる。

小学校に上がるぐらいの年になれば何とか1時間で歩き切ることはできると思うが。

一度突風に巻き込まれると、風魔法の得意な大人と一緒でも大けが、最悪、死者が出るかもしれない。


思ったほど緩い巡礼ではないことが予想された。


この辺は巡礼ツアー担当のソシオさんもわかっていると思うが、後で必ず確認はしておかなければならない事項だと思う。


俺たちはゆっくりと突風が作り出した道を上り、やがて、風の聖地の門に到達した。

そこには確かにソンバトの教会が存在した。


しかし、次の瞬間、その後ろの宿泊施設を目にして、俺たち人類関係者は顔が半分引きつるのを止めることができなかった。


ソンバトの教会(レプリカ)の後ろには立派な職校寮が堂々といまだに鎮座していた。


「「「「・・・・・・・・」」」」

「「??????」」


「これはなかなか立派な建物がたっていますねぇ。こんな突風が吹き荒れる奥地に。風の大精霊様が立てたのでしょうか。

予言の石碑をまもるために。」事情を知らないパキトさん


まぁ、立てたのは確かに風の大精霊様ですが、教会部分は昨日の夜で、宿泊施設は一昨日?の夜のままだよね。


「シュウ、あれって変わってないわよね。職校寮のままよね。」ボソ

「エリナさん私にも職校寮に見えますわ。3年間も住んでいたので間違いないですわ。」ボソ


"いゃぁ、すまんな。徹夜続きで教会を改築しらそのまま、礼拝所の中で寝落ちしてしまってねぇ。" 寝落ちまでして頑張ってくれたシルフ様、ただのソニアストーカーじゃなかったのね


ありがとうございます。教会だけでも改築していただいて。

まぁ、ここにいる人類側はみんな事情を知っている者たちなんで、後で宿泊施設を改築しても騒ぎ立てる人はいないのでご安心を。


"教会と宿泊施設は繋がっているのかしら。"ソニアちゃん


"廊下でつながっているぞ。"


"お兄ちゃん、事情の知らない皆をとっとと礼拝所に押し込んで、職校寮をこれ以上見せないようにしようよ。

ソンバトの宿泊施設に外装を改築したときは内装はいじらないで、今と同じようにしておけば見せても問題ないでしょ。

兎に角、職校寮(レプリカ)の外観は見せないようにしようよ。"


おおっ、そうだな。まずは教会の方に押し込んじゃおうか。


「さぁ、皆、礼拝所に行きましょう。まずは、予言の確認してください。」


俺はパキトさんの背中を押す様に急かして、教会の礼拝所の中に皆を誘導した。


外観と違って教会の内装はあまり昨日と変わっていなかった。

ソンバトの教会の内装のイメージまではよく覚えていなかったからな。

情報としてうまく伝わらなかったのかもしれないな。

まずは予言の石碑とそれを守護する駄女神像を見てもらおう。


「あっ、駄女神様がいる。」早速駄女神像に食いついてくれたアラナさん

「そうなのよ。びつくりだわね。駄女神さんにそっくりなのよ。」若干目が泳いているエリナちゃん、目が泳がないように頑張って、あとはセリフの棒読みは厳禁ね


「駄女神さんがあの石碑を守っているような感じね。」駄女神・実は風の女神化身説を推し進めようと努力するタイさん

「確かにあの石碑を守っている女神の図ね。駄女神様とそっくりな女神像かぁ。」あなたも素直な方でしたね、アイナさん


「まぁ、その駄女神様が守っているという予言の石碑を俺たちも見てみようじゃないか。」そうそうその調子で、駄女神・実は風の女神化身説をどんどん受け入れて行ってねパキトさん


俺は事情を知らない方たちの言葉にはらはらしながら事の成り行きを見守っていた。


そして、まわりをきょろきょろ観察しながら礼拝所の奥にやって来た。

ちなみに

・事情を知っている人類の方々

教会本山の礼拝堂にどうか似ていませんように。


・事情を知っているエルフ領の方々

昨日とどこが違うんだ。


・昨日ここを訪れていない方々

こんなところがあったなんて。

しかし、放置されていた割にはきれいなところね。

さすが風の大精霊の祝福を受けた教会だわ。


まったく、安心していい様子です、はい。


アラナさんは予言の石碑の前に来て、代表でその内容を読み始めた。


「私でも読める文字で書いてあるわ。さすが我が風の大精霊様、親切丁寧ね。」


"それほどでもあるぞ、娘よ、もっと我を称えよ。"


""あっ、寝落した大精霊だ。""


「えっと、なになに。


" 我、風の大精霊がこの地に、この空にありしすべての生あるものに告げる。

日が昇り月が沈み風が立ち、やがて龍をも押しつぶす岩が土に還るころ、この地に、この空にありしすべての生あるものは内に抱えし宿命によりこの地、この空より消え去るだろう。


風に祈れ。風の女神に祈れ。

祈りによって遠くの地に生まれ立つ強者を側に引き寄せよ。

風に祈れ。風の女神に祈れ。

祈りによって呼び寄せた強者がすべての生あるものの宿命を断ち切ることを。 "


と書いてあるわ。」


「なるほど確かに、予言のような文面だな。」パキトさん


「この世界に生きるものすべては自分たちが持っている宿命によって、滅亡すると述べているわね。

それを防ぐために、風や女神に祈って、宿命を打ち砕く強者の出現を促せと言った内容ね。」アイナさん


「風とは一番最初にある風の大精霊様として、女神はそこの石碑を守護している風の女神様の事じゃないかしら。」アラナさん


「強者とは誰を指すのかわからないけど、祈りによって、その出現を促せということだな。」パキトさん


「この予言は少なくとも我々豹族、いや、獣人族の将来を的確に指示しているな。

すでに俺たちは滅亡の淵に立たされているぞ。」事情を知っていても改めて石碑の予言に驚愕する黒にゃんこちゃん


「確かに、ノアフの言う通りだ。

この予言は我々のことをすでに言い表している。

この予言は本物かもしれない。」黒にゃんこちゃんの仲間たち、うまく誘導されてきた


「おお確かにその通りだ。じゃあ、まずは祈ろう。

風の大精霊様と風の女神様に。

俺たち種族を滅亡の淵から救いあげてくれる強者の出現を頼もう。」別のにゃんこちゃん、そうそう、祈っておくれ


おっきなにちゃんこちゃんたちはその場でひざまずいて熱心に祈り始めた。

ちなみに事情を知っている白黒のおっきいにゃんこちゃんたちまで熱心に祈り始めたのはなぜ。


あっ、つられて、パキトさん兄妹まで祈り始めた。


ということは、俺たちだけぼ~っと立ってちゃまずいよね。

立っているみんなとうなずき合って、俺も祈り始めた。


もちろん駄女神さんじゃないよ。

まだ見ぬ月の女王が妖艶な美魔女であることを期待して風の大精霊様に祈りました。


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


10/5より、「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。


この物語は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。

死神さんと旧ランク8位が結婚式のために故郷に帰ったときの物語です。

時間的には本編と同じ時の流れになっていますので、別伝としてお伝えすることにしました。


シュウが風の大精霊と会合した後の本編の進行に大きく影響してくる別伝ですので、本編ともどもよろしくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ