22話目 いざ、風の聖地へ(目がどうしても泳ぐぜ)
輪廻の会合について、俺たちの志についてを聞いてもらった者がまた一人増えた。
まだ、納得して積極的に協力してくれるかはわからないが、きっとこれから少しづつ強力な仲間となってくれるにちがいない。
これで後は闇系統の者たちだけか。
3人とも旅団のメンバーだから話はしやすいな。
ただ、闇系統の方々はひねくれているということだからその点が不安だな。
死神さんはなんとなくわかるけど、シュリさんは物静かなだけで芯の強い素敵な人だけどな。
黒い塊の方は、俺はよく知らん。黒い塊と化した理由はなくとなく想像できるがな。
「下手を打っていたら、シュウもエリナから黒い塊に化けさせられていたのじゃ。」
うっ、マジでヤバかったな。確かにあれやこれやと死神さんにもらっていたしな。
「まぁ、しばらくは離れ離れで活動することになるんだな。ここは羽を伸ばせるというもんだぁ。」
「雷ちゃん、そこはお姉さまの代わりにシュウがおいたをしないように監視するのが役割じゃないの。」
「ゴセンちゃん、何か勘違いしていないか。俺は愛人兼美人秘書だからな。シュウのやりたいことを手伝うのが仕事だぞ。」
「じゃ、おばばがシュウの監視をしてくれるのですか。」
「妾はシュウの背中で昼寝をしながら若い男のエキスを吸い取るのが日課じゃから、シュウのやりたいことをさせて高揚させ、エキス分の揮発を誘発するのには協力するぞえ。」
「シュウがやりたいことって、それはまさか。」
「まぁ、なんだかんだで話が流れてきたが、例のメイド戦隊以下略のオーディションじゃねぇのか。」
「お姉さま、大変ですわ。この甲斐性なしとお憑きのポンコツ共が良からぬ計画の復活を目論んでいますわよ。」
"大丈夫よ。その点はイザトラさんに監視を頼んでいるし、それにそもそもそんな甲斐性があったら私が気持ち悪くなって、動けなくなっていても不思議じゃないでしょ。"
「確かにそうだよなぁ。あれだけ一緒に居てもまだ、気持ち悪くなってねぇもんなぁ。」
「雷ちゃん、そこで納得してはいけませんよ。あなたの役割は次の旅の間にご主人様に奥様が気持ち悪くなるように甲斐性を付けせることです。」
「姉ちゃん、どうやって。」
「そうじゃ、どうやってじゃ。花街に連れて行ってその手の度胸を付けさせるにしても、妾と雷ちゃんでは先立つものがないぞ。
妾なんぞは、介護保険も年金も払っていないでな。」
大剣の介護保険って。
いつものくだらないやり取りをしながら、俺たちはタイさんたちが設置してくれた風の聖地突風待機所にたどり着いた。
タイさんたちが作って入れていた熱々のスープに固くなったパンを浸しながらの夕食となった。
夕食を取りながら、全員で明日は風の聖地に行くことを説明した。
途中でエリナがアイナさんとアラナさんに風の聖地について聞かれていた。
礼拝堂があって、その中に予言の石碑があり、駄女神さんにそっくりな女神像あったと、その部分は詳しく説明していた。
しかし、礼拝堂の外観と付属施設に話が及ぶと、何故かソニアと二人で目を泳がせて、あぁだの、こうだの良くわからないことを口走っていた。
俺だってまだ見ていないし、今から徹夜の突貫工事で作り替えるつもりだなんて言えないし。
明日の予定を確認したところで、明日の探検に備えて、早々に各自のテントで寝ることになった。
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寒い、俺は朝の冷え込みで、その寒さから目が覚めた。テントにはエリナとソニアも居て、くっついて寝ていたが寝袋は別々なのでから腕をぎゅっとして引っ付いて寝ているときよりは人肌の温もりがあまり感じられず寒いのだ。
吐く息が白い。
俺は目が覚めたが、そこから外に這い出す勇気はなかった。
昨日は衝撃的な情報を風の大精霊様から聞いたな。
エルフ領の魔族の占領地に月の女王がいるとは。
それも月の女王が魔族で、俺の妻になるとのことだった。
光の公女がエリナで、人類きっての美少女。
ということは、月の女王も魔族きっての美少女。いや妖艶な女性。
でへへへへっ、どんな人かな。楽しみだなぁ。
妻はエリナだから、やっぱ愛人か。
妖艶な美人魔族が俺の愛人。
漸くまともの愛人が。
「シュウ、朝からデへへへするのはいいけどよう、愛人2号は俺だからな。忘れんなよ。月の女王は愛人3号だ。
そう言えば愛人3号ってもういたような。
まぁ、良いか。
とにかく、でへへへっする前にエリナが派遣するお目付け役を何とかしないとでへへへっどころか、おばばでデコデコデコだぞ。」
くっ、確かにあの素早そうな白にゃんこちゃんのお仕置きをどう回避するかが、今後のすべてのミッションの成功の可否を握っているな。
「そうだな、おばばでデコデコデコを回避する秘技が見つかったら、その後のもっと大事なミッションもやりやすくなるんじゃねぇか。」
その後のミッション?
「シュウの究極の目的だぜ。これなくして成功とはいえんだろ。人生の勝ち組を目指せシュウ。甲斐性なしと言った連中を見返してやるんだ。」
おおっ、俺はやるぜ、やってやる。
俺の究極目的、志なんかよりも大事な目的。
「そうだ、その意気だ。この頃それを忘れているんじゃないかと心配してたぜ。」
"朝っぱらから何を二人でこそこそ悪だくみしていたのかなぁ。
シュウ、あなたの志より大事な目的って何かなぁ。
はっきり言ってみて。"
えっと~ぉ、風の突風待機施設を運営しながら、エリナちゃんとソニアとわかんないけど月の女王と仲良く暮らすこと。かなぁ~
"なんで月の女王も家族に入っているの。しわくちゃ魔女かもしれないでしょ。"
いやわかる、俺にはわかる。月の女王はきっとエリナと並び立つぐらいの美魔族か妖艶のバインバインの美魔女だ。
俺は断言しよう。
バインバインの妖艶な美魔女だ。
「その意味もない、確固たる信念はどこから来るのじゃ。」
"おばちゃんさん、それはある病だから。シュウぐらいの年の甲斐性がない少年が掛かる病だから。
3年後に今の話をすると目の前から逃走して1週間は帰ってこないから、恥ずかしくて。"
「ああっ、あの病なのね、シュウは。
わかるわ、あれは酷いのね。私のあれに通じるし。」
「ゴセン、お前もあの病なのか、それは難儀じゃなぁ。前々からその気があるとは思って負ったのじゃが。
それは難儀なことじゃ。
まあ、すぐに過ぎ去るとは思うがそれまではおとなしくしておくのじゃ。黒歴史を永遠と築くくことになるでなぁ。」
「何を言っているの、知っているでしょ、私のはもう治らないの。そういう仕様なの。」
「ゴセンちゃん、マジが。治んないのか。それはさすがにまずいだろ。
いろいろやっちまうぞ。
暗黒星雲より力を得しなんちゃらとか町の中で叫んじゃうんだぞ。
まぁ、ゴセンちゃんでなく、エリナが叫んだように見えるけどな。」
"えっ、私が叫んだように見えるの。それまずくない。
遥か馬頭星雲より来たれし、正義の剣を持つ究極美少女とか、私叫んでないわよ。"
「みんな何を暗黒星雲だの馬頭星雲だのとわけわからないことを言っているの。そんな知らない大宇宇宙に居る若者よりも、目の前で悩む少年を救ってやりましょうよ。」
「おおっ、そうだな、まずは目の前のシュウがゴセンちゃんのように町中で暗黒星雲なんちゃらと叫ばないようにしないとな。」
「何でシュウがニキビの悩みを暗黒星雲とか言って、皆に教えなきゃなんないの。
あっ、そうか。〇二病だからニキビを大げさに行っちゃうのね。まぁ、それはしようがないわね。」
「「「ニキビの事だったのかぁ、でも結果的に俺たちの意図するところに落ち着いて良かったぞ、ゴセンちゃん」」」
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テントの中で、外には言えないようにごたごたがあったが、俺たちは全員、突風の吹く街道の前までやって来た。
「さぁっ、いざ、風の聖地へ。」
俺はみんなに勇ましく掛け声をかけたが、当然、目は泳いでいた。
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。
10/5より、「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。
この物語は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。
死神さんと旧ランク8位が結婚式のために故郷に帰ったときの物語です。
時間的には本編と同じ時の流れになっていますので、別伝としてお伝えすることにしました。
シュウが風の大精霊と会合した後の本編の進行に大きく影響してくる別伝ですので、本編ともどもよろしくお願い致します。