17話目 新結成チンチクリンポンコツ~ズ!?
女子たちは、チーズケーキの他にもいろいろ準備されていたお菓子を堪能したようだ。
決して、こちらのテーブルを見ないようにしていたのは、わざとじゃないよね。
話が盛り上がっていたからだよね。
一番評判が良かったのは、ソニアが持ち込んだ門前町の例のケーキ屋のクッキーのようだった。いつの間に用意していたんだ、ソニア。
「ソニアちゃん、これおいしいわねぇ。作ったんならレシピが欲しいわ。それとも買ったのかしら。」
「買ったんだよ。お土産のつもりだったんだけど、食べちゃったね。
人類領の教会本山の門前町で売っているから、今度一緒に買いに行こうよ。」
「そうねぇ、近々にアクアちゃんとノームちゃんを訪ねたいと思っていたから、その時に買いに行こうかしら。
ノームちゃんは一緒に行ってくれるかしら。」
「ノーム様はその店は出禁だそうですよ。
ちなみに、アクア様は乾き物の買い物は厳禁だ自分で言ってました。
私かソニアちゃんと一緒に行きましょうか。」
「えっ、出禁なの、ノームちゃん。」
「店に入ると舞うから。あれが。」
「ということはじゃ、ゴセンを身に着けたエリナも入店を嫌がられるということじゃ。」
「えっ、確かに私自身である腕輪にはちょっと土ぼこりが付いているけど、まわりに土ぼこりを舞い上がらせるほどには出ませんのよ。お母様と違って。」
「そん時は、ゴセンの母ちゃんのノーム様と待ってりゃいいんじゃねぇ。」
「私、絶対にお姉さまから離れないわよ。外そうとしてら体をぎゅっと縮めてやるわ。ウエストだけでもできるのよ。」どこがウエストだかわからないゴセンちゃん
「俺もこれぐらい惚れられないといけないのか、あのおばちゃんさんに。」
「イザトラちゃん、そんなに思い詰めなくてもいいわよ。
そうだわ、イザトラちゃんも自分の宿命を知ったんだから、一度、水の大精霊アクアちゃんに会いに行ったらいいわ。すぐに行って帰れるでしょ。きっと可愛がってくれるわよ。」
「土の神殿と水の神殿への転移魔法陣、そして、特一風見鶏も全部第1083基地の社に収まっているの。
風の聖地と特一風見鶏の村が繋がれば、ものの一日もかからずにお互いの神殿を行き来できるようになるわね。
そうだ、シルフィードちゃん。
シルフィードちゃんがお店に入っても何も出てこないよね、体から。
土ぼこりを出すノーム様のようにお店に迷惑をかけて出禁になっても困るし。」
「変なものは出していないと思うけど。でも動くと風も動くから、歩く分にはそよ風が吹く程度かしら。」
「ちょっと待って、甘いお菓子屋さんでそよ風が、甘い風がお店をめぐるわけね。
お菓子を食べたくなる気持ちをさらに高めてくれるわね。」
「時たまマドリンのチーズケーキ屋さんの店内が甘い香りとチーズの芳醇な香りで爆発しそうになることがあったな。
それがあるとすべての商品が1時間で売れきれるって、酒を下ろしに行ったときに店主が行ってたな。
それって、まさか。」
「お店の方には申し訳ありませんが、多分私か店に入ったためだと思います。」
「でも、レシピを覚えるために調理場の天井に潜んでいた時にはそんなことはなかったんだろ。異常があれば潜んでいるのがばれてしまうかもしれんしな。」
「あの時は風の流れを換気用の窓の方向にもっていくようにしておりましたし、潜んでいましたので私の動くことで発生する風はわずかなものでしたから気が付かなかったようです。
もちろん、強力な遮蔽の魔法を使っておりましたし。」
「それじゃ、シルフィードちゃんと一緒に例のケーキ屋に行った折にもあっという間にお菓子が全部売り切れるということだわね。
むむむっ。これはまず私が先に入って最低限必要なお菓子、季節のクッキーを購入してからシルフィード様に入ってきてもらわないと、私たちが買う前に売り切れてしまうということね。あの店の勢いからすると。
まして、シルフィードちゃんが一人でケーキ屋に行ってあれあれ悩んでお店の中を動き回るとおいしそうなにおいでお店が爆発し、あっという間に商品が売り切れて、悩んでいたシルフィードちゃんが何も買うことができないということになるんだ、きっと。」
「シルフィード様は門前町のケーキ屋さんに一人で行ってはダメですよ。
私かソニアちゃんと一緒に行くことにしましょうね。」
結局、シルフィード様も一人でケーキを買いに行けないポンコツ仕様でしたか。
チンチクリンズは本当にチンチクリンポンコツ~ズだなこりゃ。
「シュウ君、何か言った? お腹ではねるわよ」
止めてください。ヤバいものが噴射しますから。
「そうだわ、ソニアちゃんにここを訪ねた時にもらえる例の特典を上げなきゃね。兄様。」
男3人はお腹を上にして転がったままだ。お腹がパンパンだ。
食い過ぎたのか例の最凶キャンプ飯を。どんだけ腹が減っていたんだ俺たちは。
ということではなく、実は普通のキャンプ飯も一杯用意してありました。
残るともったいないとみんなで無理した結果です。
芦高さんが心配して3人のお腹をさすっています。あっ、押しちゃダメ。
ヤバいものを噴射しそうだから
「兄様があんな状態なので、私から授けましょう。それ。」
ソニアだけが淡い光に包まれ、姿が見えなくなった。
そして、すぐに淡い光はうすれ元のソニアが現れた。
「これでエルフ領の、あるいは魔族領でも、どこからでも風の神殿に来ることができるわよ。
同行を望むものはソニアと手をつないだり、肩に触れたりすれば一緒にここに転移されてきますよ。
でも、一緒に来ることができるのは、中心にいる者と光の公女、月の女王、そして風の巫女ね。
この中ではイザトラちゃんだけは直接来れないわね。残念ね。
それでも帰りは、風の聖地からは歩きね。」
「今度、ソシオさんが、特一風見鶏の村と風の聖地突風待機施設との間に転移魔方陣を開設してくれるという話をしていたよ。」
「そう、それまでは不便ね。
私はマドリンの町ぐらいであれば魔方陣なしでも転移はできるので良いんだけど。飛んでも行けるし。」
「人類領からは直接転移して来れないのかなぁ、私。」
「ソニアちゃん、さすがにそれは無理ね。
でも、あなたも風の魔法術士。
特一風見鶏を使えるのですぐにでもエルフ領に入れるでしょ。
むしろ、人類領での移動の方が面倒ね。
土の祠を利用した転移魔方陣の展開なので、必ず教会本山にを経由しなければならないのでしょ。
ソニアちゃんはそれでも覚醒した使徒なので大きな魔力を持つから魔力量が足りなくて転移ができないなんて言うことはないでしょうけどねぇ。」
「そういえば、アクアちゃんの転移魔方陣は普及していないのかなぁ。
第1083基地と泉の神殿を結ぶような小さな泉は他にはないのかなぁ。」
「アクアちゃんの小さな泉は他にもあると思うわ。数は多くないと思うけど。
本人は水があればどこにでも出現可能だからある意味反則よね。
私なんて飛んで行かなきゃなんないのに。」
「じぁ、ノーム様は土がある所にはどこにでも瞬時に移動というか転移できるのかしら。」
「そういう転移はできないと思うわ。やっぱり歩きなんじゃないかしら。
土の祠の大きな普及とアクアちゃんとのコンビというところがみそね。
土の祠がない所にはアクアちゃんに連れて行ってもらっているんじゃないかしら。」
「魔族は魔族の炎で転移魔方陣を作動させるのですよね。」
「そうですね、炎の大精霊、ヴァルカンちゃんの転移魔方陣は魔族の炎で作動するわ。
その炎は何故か自然鎮火することがないの。
どこから魔力を吸い取っているのかはわからないけどね。
消すためには水系統の魔法で消すしかない魔法の炎ですわ。」
「そうすると残りは闇の大精霊、シャドウ様の転移魔方陣ですよね。どのようなものでしょうか。」
「それはシュウ君が月の女王に会う折に聞いてみてはどうでしょう。
彼女なら事情を知っていると思いますわ。」
「シュウ、聞いてる? 今度聞いて来てね。」
俺は口を開くと、いけない物が出てきそうだから了解の合図として右手を上げた。
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。
10/5より、「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。
この物語は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。
死神さんと旧ランク8位が結婚式のために故郷に帰ったときの物語です。
時間的には本編と同じ時の流れになっていますので、別伝としてお伝えすることにしました。
シュウが風の大精霊と会合した後の本編の進行に大きく影響してくる別伝ですので、本編ともどもよろしくお願い致します。