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7 話目 エリナの決意

次の日の朝。


久々にベッドで寝たこと、見張りなどの夜中の当番がなかったことでゆっくり寝ることができた。

食堂に行くと、エリナはいつものように入口で待っていた。


「一緒に食べよ。」


「もちろん、今日のメニューは何だろうね、少なくても遠征途中のキャンプメニューよりは豪華な朝飯たよね。うん。」


「ふふふっ。どうかしらね。

ここの基地の名前を知ってる? 」


「第6軍団の後方基地じゃないの。」


「少しは勉強もしないとね、シュウ。

クズミチは当然知っていたわよ。」


クズミチが知っていたなんて、妙に悔しい。

訓練だけでなく、勉強もしなきゃ。

職校の入試って、実技だけじゃないからな。

名前を書ければいいという筋脳者は聖戦士にいらないと言う話だからな。


「エリナお嬢様。わたくしめにここの基地の名前をおしえてくださいませ。」


「致し方ない、ダメなシュウ君に教えて進ぜよう。

ここはキャンプ・ザラエゲル。へへへへっ。

それではここでの食事は当然なんて呼ばれているでしょうか。」


「キャンプ飯!! 」


「正解です。いつものキャンプ飯です。」


キャンプ飯か。げんなり。


「そんなにがっかりしないでよ。

昨日までのキャンプ飯よりは少しは豪華だと思うわ。」


「ほんとだよね。嘘じゃないよね。豪華キャンプ飯だよね。」


「ふふふっ。さぁ、どうかしら。

確かめに行きましょうよ。」


食堂の配膳の列に並び、そわそわして自分の番を待った。いよいよ自分の番。


「・・・・・・・・。 キャンプ飯じゃーーーー。」


「あわてないでよく見て、シュウ。

ちゃんと向こうにハムエッグとウィンナー、肉野菜スープ、ヨーグルトと果物もあるわよ。」


「おおおおっ、今日はお誕生日?、結婚記念日? と騒ぐくらい、俺たちのキャンプ飯と差があるね。」


「ふふふっ、結婚記念日だってシュウったら、まだ早いわよ。

御代わり自由だって、たくさん食べてね。


それと荷物を積んだらすぐ出発だって。

帰りの荷物は・・・・、何だろうね。多分ここの空気かも。」


「とにかく飯だ。食い溜めだ。

昼食から4日間はキャンプ飯だ。」


一杯食べすぎて、動けなくなった俺に消化促進の魔法を掛けながら、ほどほどにしておかないと大食いの魔物と間違えられるわよと、エリナに窘められた。


帰りの荷物はほとんどなく、戦闘地域の空気だった。

行きは歩いていた人も荷物がないので、馬車に乗ってのんびりしている人が多かった。


俺とクズミチ、エリナは足腰の鍛錬のため歩くことにした。

俺たちが歩くというと若いもんには負けんと言ってマリアンナさんも歩き始めた。

マリアンナさんも十分に若いですけど。


帰り道は魔物を見つけることができず、3食キャンプ飯で辛い思いをしたこと以外は何事もなく無事に町に帰ってきた。


夕方、久しぶりに教会の宿坊で夕食後、エリナとお茶と雑談を楽しんでいると。


「私、今日の夜、教会本山に帰ろうと思うの。


明日、朝一番で授業があるの。

共魔法の習得についての授業の1回目なの。

共魔法は白魔法術士しか使えないので、対象になる生徒がほとんどいなくて、この授業は余り開かれないの。ぜひ聞いておきたいわ。


ほんとはもう一晩、シュウとゆっくり話をしていたいけれども。

戦闘でシュウの使える魔法を増やしたいの。

水と風の共魔法である雷系を取得したいわ。


戦闘でスタンを使えると多数の敵を一時麻痺させられるし。

サンダー系の魔法は敵に当たらなくても、敵が回避するためにちょっと弾いて触れただけでもマヒするの。

また、雷属性フィールドに敵が入ってくると抵抗を持たない魔物はそれだけでマヒして動かなくなるというし。


シュウは魔力がバカ高いから雷属性フィールド範囲がとんでもなく広いだろうし、ぜひ習得したいわ。

次に一緒に戦うまでに絶対習得して見せます。


だから、ほんとに寂しいけど今日戻ることにしたいわ。いい? 」


「もちろんだよ。

俺のためにそこまで頑張ろうとするエリナの足を引っ張るなんてできないよ。」


「シュウのためだけじゃないよ。

私のため、私の夢のため、今頑張るの。

だからシュウも、私がいなくて寂しいかもしれないけど、訓練頑張って。

でも手紙はちょうだいね。

町にいるときは毎日よ。約束しなさい。」


「手紙、苦手だけど、毎日書くよ。」


「いっぱい書いてね。

「元気です」とか一言だったら絶対に許さないから。

入試に筆記試験があるんでしょ。

手紙を書いて、自分の考えを文章にすることに慣れてね。」


「あと、変な女の子には引っかからないでね。

あなたには私がいます。

あなたの隣を一緒に進むのは私です。わかった。」


「わわっ、わかりました。」


余りのエリナの迫力に返事を噛んでしまったじゃないか。


「それならよろしい。

戻るために魔力溜めに、えっと、ここの小型転移魔方陣は確か8個、8個をいっぱいにしてくれないかな。

ねっ、ダーリン。」


「わかったよ。エリナ。」


「名前を呼んでもらえるとなんかうれしい。

シュウ、念話を試してみようね。

もし通じても手紙の件はキャンセルにならないからね。」


町にいる間、苦痛な宿題が。


宿題を残して、エリナは転移魔方陣で教会本山に帰っていった。


ちなみに、念話は遠すぎて使えなかった。

うるさい指輪は片割れと離れられて清々したと言っていた。

いなきゃいないで寂しいくせに。


次からはいよいよ、シュウのあのイベントと新しい生活が始まります。

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