14話目 風の大精霊の爆弾情報 後編
「そうなのか、俺は今は水魔法を使えるが、例えば土魔法を覚えるということか。
そうしたら、村の家々の修繕が楽になるな。
あっ、また俺の悪い癖が出ちまった。」
「それはいいんじゃないかと思うよ。
困っている人を救うのは大事なことだし。
ただ、その思いを特定の種族に限らないでほしいのが俺の願いだな。
願いというか俺の目指したいところだな。」
「ああ、わかったよ。
できれば俺は土魔法に目覚めたいな。
そうすれば住むところに困っている者、道が狭くて荷物を運べない者、川の氾濫に苦しめられている者の手助けができるのにな。」
「あなたがその土魔法に目覚めるためには条件がありそうなの。」
「条件とは、どんな。もしよかったら、教えてもらえるか。」
「それは発見者のシュウ君にお願いしようかしら。」
「ええっ、俺うまく説明できるかなぁ。」
「何を言っているの、これからいろいろな人を巻き込んで輪廻の会合を正解に導くつもりなのでしょう。
そのシュウ君が他人に自分の思いを説明できないのは困るわよ。」
「わかりました。
第1に、おばちゃん、この背中の大剣を背負うこと。
第2に、イザトラさんの背中で一生を共にする覚悟をおばちゃんが持つこと。
第3に、覚醒する前に土魔法でできることを自らの手で実践すること。
例えば、家の補修とか、道づくりがそれに当てはまります。
今回の場合、第2のおばちゃんに一生引っ付きたいと思わせるのがかなり苦労しそうです。
まあ、新たな属性魔法を身に着けなくても力と使命に覚醒すれば水の大精霊、アクア様の力は使えるようになるので、使徒としてはそれで充分かもしれませんね。」
「確かに使徒としてはな。
そして、輪廻の会合の措置を終了するまではな。
でも、その先も皆で生きていくためには一つでも多くの人々に役立てる魔法を覚えたい。困っている人を助け続けたい。」
俺は白にゃんこちゃんの体から一瞬わずかに光の炎が上がったような気がした。
「シュウ、妾はお前の背中から離れんからな。誰が女子の背中になんぞ行くものか。」
「おばちゃん、それでも吸い寄せらてしまうかもしれないよ。」
「何を言っておるのじゃ、この甲斐性なしは。」
「ははははっ、シュウ君見えたのだな。」
「エリナさんは見えたのかしら。」
「えっ、何が、どうしたの。」
「今のが見えないなんて、あなたはもっと修行する必要がありますね。
でないと一生"(仮)"が取れなくなりますよ。」
「は~ぁ、シュウは何が見えたの。」
「お化け。」
「それだったら見えなくてもいいわ。シュウに任せるわ。」
「「「は~ぁ。」」」
「ソシオ君、あなたは風の巫女として、覚醒したようですね。
エルフ族だけでなく全種族の救済を真に願うことで。
巫女自体は覚醒により使徒のような大きな力を得ることはできません。
しかし、ソニアちゃんを手助けすることにより、もしかしたら使徒以上の力を得るかもしれませんね。」
「そうですね。そんな気がしてきました。
力なき者のタイさんでさえ、輪廻の会合の中心にいるシュウ君たちの手伝いをすると言っています。
風の使徒で、僕の親族であるソニアさんの思いを形にすることが僕の使命ですよね。」
「その通りです、私たち風の大精霊は残念ながら皆さんの旅に同行することはかないません。
ですから、ここより先はまた、あなた方の力で進んで行っていただけますか。
ここまで親密になるといつでも連絡をとる事は可能ですけどね。」
「いつも気にして覗きに来ているわよね。
それって、ストーカーっていうんでしょ。お兄ちゃんが前言っていたもん。」
「ソニア、そんな言葉を発してはいけません。本物が出たらどうするんだ。」
「ソニアちゃん、そうよ。私はあなたの母親になったの。
だから、いつも覗きに行くのはストーカーじゃないの。」
やっぱりいつも来ていたのか、
「私は行っていないからな。いつも留守番だからな。」
「シルフ様、シルフィード様がここにいるときはどこに行っていますか。」
「そういえば、この頃神殿にあまりいないわね。兄様どこに行っているの。」
「・・・・・・・・」何故か冷や汗を流すシルフ様
この大精霊、まじでソニアのストーカーじゃないよね。
「えっと、ところで魔族ことも話しておいた方が良いんじゃないかい。
まずはシュウ君たちの掴んでいる情報から。
どうだろうか、シュウ君。」
何故か目が泳ぎっぱなしなんですけど。
まぁ、俺のソニアにストーカーするやつは大精霊でも許せん。
後で真実を突き止めて、例の大精霊ネットワーク放送で真実をノーム様から告げてもらおう。
「わかりました。」
俺は魔族の人類領への侵攻の理由と、魔族の中級士官でもエルフ領に魔族が侵攻していることを知らなくて、その理由もわからないことを告げた。
その過程でペット魔族さんのことも話した。
「そんな、エルフ領の魔族占領が魔族の間でもほとんど知られていないということなのか。」
「どうもそのようです。情報部門の大隊長が知らないというのですから、魔族でも皇族とか上位の貴族しか知らないことなのではないでしょうか。」
「しかし、なんで隠す必要があるんだ。
2方面侵略だと戦力が十分に整わないわないために人類とエルフ族に反撃されると思ったからなのか。」
「それは僕もかなり不可思議なことだと思うんだよね。
人類領への侵攻は理解ができたけど、エルフ領への侵攻、そして、占領の意味が全く見えてこないよ。
あっ、シュウ君ごめんね。」
「良いんですよ。おれも同じ考えです。
なぜ、エルフ領への侵攻なのか。
誰にもまだ話してはいませんが、次はエルフ領の魔族占領地を探ってみたいと思っています。」
「えっ、先日はそれはできないと言っていたよな。
急にどうしたんだ。
話が逆になっている。数日で考え方が変わったのか。
そうであれば説明ほしんだが。」
「今のイザトラさんの言葉が答えです。」
「俺の言葉が答えだと。また、わけがわからん。
俺にもちゃんとわかねように説明してくれ。」
「豹族の村で占領地の偵察の話が出たときはイザトラさんはかなり危ない様子でした。
死神になって特攻するだの、芦高さんに特攻してくれだの。
そういう心の状態の人にこんなきわどい計画を話せるわけがないと思います。」
「悪かったよ。反省しているよ。」
「今は、その計画の危うさをわかった上で、俺の話をちゃんと聞いてくれようとしています。
前だったら、もう飛び出していたんじゃないんですか。」
「確かに、あの時の俺だあればもうここにいらんねぇ、早く行こうとシュウの手を強引に引っ張っていたかもしれないな。そう言うことか。」
「危うい計画を危ういと知ったうえで話を聞いてくれる。
旅の仲間としては本当に心強いと思います。」
「でも、俺は水の使徒として覚醒していないし、実力的にも一兵士の力しかねぇ。
そんな俺でも連れて行ってくれるのか、その計画に。」
「まずは偵察ですから、みんな無事に帰ってくるような作戦を考えましょう。」
「何か良い考えはあるのかい、シュウ君。」
「一つは闇の使徒に強力な遮蔽の魔法を掛けてもらい、芦高さんと共に敵陣に潜入することです。
あの使徒は力には覚醒していますから闇魔族でさえもその闇魔法を破れないと思います。」
「闇の使徒とは、確か。」
「そうです。我が旅団の中隊長の死神さんです。」
「はい、は~い。ちょっといいかなぁ。」
「どうしました、シルフィード様。」
「がんばっているシュウ君たちに素敵な情報のプレゼント。」
「情報のプレゼントですか。」
「そっ。月の女王はそのエルフ領の魔族の占領地に居るわよ。
行くなら死神さんを連れて行きなさい。」
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。
10/5より、「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。
10/31ですべての話を公開しました。
シルフィード様の最後の爆弾情報はこの別伝と繋がってきます。
今後は別伝の話も織り交ぜて行くことになります。
是非、別伝の方もお読みいただけたらと思います。
この別伝は死神さんと旧ランク8位が結婚式のために故郷に帰ったときの物語です。
時間的には本編と同じ時の流れになっています。