13話目 風の大精霊の爆弾情報 前編
新婚旅行もそれは大事だけど、それ以上に大事な話があるでしょ、エリナちゃん。
「何言っているの、結婚したばかりの二人で行く新婚旅行よ。
それをどこにするか以上の大事な要件は今の私にはないわよ。」
「まぁ、なんじゃ。これがエリナが光の公女としてまだまだ仮だと言われる所以じゃな。
シュウのケツばかり追うでないと皆に言われておるじゃろうが。」
「おばちゃんさん、光の公女の件も大事だけど、今は新婚旅行なの。
このままずるずる1年過ぎたら新婚じゃなくなるわ。
私は新婚のうちに行きたいの。」
「旅行なら、先週も今週も来てんじゃねぇか。エルフ領によぉ。
いろいろな場所をめぐって、あれこれ見聞きしながらなんて旅行みたいなもんじゃねぇか。」
「雷ちゃん、わかっていないですわね。お姉さまはこの甲斐性なしと、信じられないことに、二人で旅行に行きたいと言っているのですわ。ねぇ、お姉さま。」
「さすがゴセンちゃんです。その通りです。二人っきりが良いです。」
「聞いたか、雷ちゃん、二人っきりがいいって言っていますわよ。お姉さまは。」
「ゴセンよ、待つのじゃ。二人っきりということはあれじゃな。あれ。それだな。」
「どうした、おばば。耄碌して肝心な言葉をなくしたようですわね。」
「耄碌おばばは、本当に二人っきりでいいのか。それをゴセンちゃんが奨めていいのかと言いたいのですわ。」
「メイドさん、当然でしょ、新婚旅行なんだから二人っきりでしょ。」
「そっかぁ、ゴセン、まずいぞ。」
「雷ちゃん何がまずいの。」
「二人っきりというのは俺とお前もいらないってことだぞ。
てめぇは一生エリナから離れないと決めたんじゃないんか、ええっ。」
「・・・・・・そうでした。・・・・、訂正します。
私と二人っきりで新婚旅行に行きましょう。
お姉さま。あんな甲斐性なしより、私の方が器量がはるかに上ですわ。」
「ゴセン、そう来たか。じゃ、俺も便乗して。
シュウ、俺と二人っきりで危ない逃避行に行こうぜ。」
「ちょっと待って。
甲斐性なしの男と愛人の逃避行。
その先は、二人は断崖絶壁に立ち、冬の海から吹き上げる波しぶきと風に髪を持ておそばれながら、お互い、禁断の愛の逃避行の末に心と体が疲れ果てて・・・・・。」
「疲れ果てて、どうなるの風神ちゃん。」ワクタカのシルフィード様。
「まさか、ドボーンか。」風の神殿でアーティファクトたち声が聞こえるようになった白にゃんこちゃん
「これまでの逃避行の生活に別れを告げるため、指輪を外し、海に投げ込むシュウ。
そして、雷ちゃんは寸出のところでたまたま飛んできた光物が大好きな海ガラスに飲み込まれて、THE ENDですわ。」
カモメからカラスに変わった。
「で、雷ちゃんは片付いたたけれど、もう一方のエリナとゴセンちゃんはどうなるの風神ちゃん。」昼ドラ大好きシルフード様
「駅(馬車のね)に行く途中で奥様が小石につまずいで転んで、たまたまあった岩にゴセンちゃんをぶつけてしまった。
やっすい瀬戸物のゴセンちゃんは粉々に砕けてこちらの方もTHE END。」
「ちょっと待てや、そこのメイド。何で儂がやっすい瀬戸物ですぐ割れるんや。」
「ああよかったぜ、カラスに拾われて。
シュウは中心にいる者だからすぐに俺を引き寄せてくれるだろうしな。
ゴセン、残念だったな。割れちゃ、御仕舞だよな。」
「だ・か・ら、私は瀬戸物じゃなくて、金属だって何度も言うとろうが。」
「あのう。」
「どうしたんですか、イザトラさん。
そんなにおびえたような、申し訳なさそうに聞いてくるなんて。」
「いや、さっきからここにいない人たちの声が聞こえるんですか。
まさか、ここは風の神殿ではなく、亡者の砦かと思っちゃったりして。ブル」
「そういえば、まだ、憑依者(アーティファクトとも言うかも)たちについて話していませんでしたね。」
「お兄ちゃん、というか、輪廻の会合について白にゃんこさんとソシオさんに風の大精霊様から直接話してもらうことが第一の目的だわよね。
その他には輪廻の会合についての何か知っておかなければならない情報を聞いておくのもここをわざわざ訪ねてきた目的よね。
新婚旅行と愛人との逃避行について相談しに来たんじゃないでしょ。」
やばい、そうだった。
風の神殿の美しさに心が躍って、冷静な考えができなかったのかもしれない。
「風の大精霊様、ここの二人に輪廻の会合と必要な情報について伝えていただけますか。」
「わかりました。私も皆さんにここを訪ねてもらったことに多少興奮してしまっていたのかもしれません。
話は長くなりますから、皆さん適当なところに座っていただけますか。」
エリナは当然俺の隣に瞬間移動してきて、腕に抱き着いてきた。
若奥様、ぶれませんね、やることが。
ソニアはしっかりとシルフィード様の手を握って・・・・・、ああ、握られているのはソニアの方か。
そして、シルフィード様はゆっくりと透き通る声で輪廻の会合と俺たちの掴んでる情報について語り始めた。
各種族の滅亡の危機について。イザトラさんは特につらそうな顔をしていた。
これまでの輪廻の会合と運命の会合について。そして今回のそれの違いについて。
輪廻の会合に集いし者共と中心にいる者、光の公女、月の女王について。
そして、使徒と巫女、アーティファクトについて。
使徒について語るときにシルフィード様は俺に問いかけるような視線を送ってきた。
おそらく、イザトラさんが水の使徒であることを教えていいかどうか俺の判断を促してきたものであろう。
俺はかまわないという気持ちで強くうなずいた。
「イザトラちゃん、これは大事なことです。冷静に聞いてくださいね。」
「俺はシュウたちにどんな時にも感情のままに行動しないと、ちゃんと考えてから、時にはまわりに相談してから動き出すと誓ったんだ。
だから、どんな悪い知らせでもまずは聞くよ。先を続けてください。」
「わかったわ。
今、言ったように使徒とは我々大精霊の力を宿したアーティファクトを使う者です。
力と使命に覚醒したら、自分の属性のアーティファクトの力を使いこなすことができます。
そして、あなたは水の使徒です。
シュウが背中に背負っている大剣が吹雪と言って、あなたの使う力、水のアーティファクトです。」
「俺が使徒だと。水の使徒だというのか。」
「そうです。
しかし、残念ながら、あなたは力にも、まして輪廻の会合ら集いし者共としての使命にも覚醒しておりません。」
「そうかぁ、俺はまだ力も使命も手に入れていないか。
そうだよな、同族の救済ためと言って、考え無しでなんでも矢のように飛び出して行って、あたりかまわず、味方にさえにもかみついていたんだからな。」
「この話を冷静に聞けて、己のこれまでの所業を顧みることができるのであれば、覚醒する日もすぐにくると思いますよ。
ちなみに水の巫女はノアフさんね。」
「ノアフが水の巫女。炎の属性魔法士なのに。」
「折を見て、あなたから彼に今日聞いた話をしてあげてください。
彼も知る必要があります。
シュウ君からでも構いません。」
「わかったよ。冷静に聞けるようになったら話してみるよ。
でも信じられねぇ。俺が水の使徒だと。
輪廻の会合に集いし者共だというのか。」
「使徒が覚醒する方法はわかっているのですか。」ずっとおとなしく話を聞いていたソシオさん
「覚醒の方法はわかっていません。でも、ここのソニアちゃんのように覚醒した者がいるのです。
多分、白にゃんこちゃんもシュウ君たちと旅を続けて、中心にいる者と光の公女、月の女王の輪廻の会合に対する真摯な思いと行いを目にすれば、すぐに覚醒するものと思いますわ。」
「俺はあの大剣、水のアーティファクトを持つことも今は許されないのか。
覚醒しないと無理なのか。」
「それは中心にいる者と吹雪ちゃんの判断によるものと思います。吹雪ちゃんは嫌な者に触られると勝手に串刺しにしてから逃げてきますから。」
「そのようなこともございました。」あまりに久々の登場でその存在が闇の渦に消えたと思われていた鞘氏
「妾は若い男の背中にしか用がない。女子は嫌じゃ。」
「あなたが嫌いっていうより、若い男が良いというわがままなアーティファクトなんですの吹雪ちゃんは。
でも必要な時はエリナちゃんの背中に居たこともあるので、その日が来たらあなたの手に渡ると思うわよ。」
「今はその時ではないとおっしゃるのか。」
「それが輪廻の会合に集いし者共と言うものです。
特に今回はシュウ君が中心にいる者なのでその傾向が強いかもしれませんね。」
「そうか、まだ俺は強大な力を使う資格がないっていうことか。」
「資格がないというよりも、その時でないと言った方がいいかしら。
先ほども言いましたように、これからはシュウ君と旅を共にして迫りくる厄災に思慮深く、そして果敢に立ち向かいなさい。
それを繰り返すことで覚醒するものと思います。
もう一つおまけに話をさせていただきます。
アーティファクトを身に着けると属性魔法の一つを新たに覚えるそうです。」
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。
10/5より、「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。
この物語は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。
死神さんと旧ランク8位が結婚式のために故郷に帰ったときの物語です。
時間的には本編と同じ時の流れになっていますので、別伝としてお伝えすることにしました。
シュウが風の大精霊と会合した後の本編の進行に大きく影響してくる別伝ですので、本編ともどもよろしくお願い致します。