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10話目 予言の石碑

急いで偽教会本山礼拝堂の門を通り抜けた。

芦高さんが最後尾に付けていたが、間に合わないで突風に巻き込まれていた。


巻き込まれているよね。


突風の中、平然と佇んでいた。


「涼しいんだな。」


そよ風が当たって、涼しいそうです。

きっと、流線型のボディーがうまく風を後方に流しているんだと思いたい。

決して体重が重たくて動かないのではないと信じたい。

だって、そんなに重たいのなら、間違って寄りかかられたら、ぶちゅっといってしまうじゃないですか。


「まぁ、両方なんだな。重たいのと風がうまく体をすり抜けていくのが。」


やっぱ、重たいのか。


まぁ、これで突風の中、どうしても移動しなければならないときは芦高さんに用事を託そうと思った。


ぎりぎりだったが、誰も突風に飛ばされることなく風の聖地に来ることが出来た。

これで今回の旅の目的に一つを、表向きはこれが最大の目的で実は出来レースだが、達成することが出来た。


「シュウ君、エリナちゃん、よくきたわね。皆さんもいらっしゃい。」


美しい幼女がソニアの背中にくっついていた。

肌の色は透き通るように白く、肩まであるブロンドの髪はゆるやかに波をうっており、先端は軽くカールしていた。

そして、緑を基調にしたロリ衣装。


この方がシルフィード様か。


「シルフィード様ですか。シュウです。お会いできてうれしいです。」

「エリナです。よろしくお願いします。」

「漸く会えましたね。」


そう言って口調は落ち着いた大人の女性だが、見かけはソニアにべたべた甘えている幼い妹にしか見えないんですが。


「シルフィードちゃん、ソニアだよ。よろしくね。」

「ソニアちゃんにもようやく会えました。

私のことはお母さんかお姉ちゃんと思って、いっぱい甘えてくださいね。」


おままごとだ。


そうにしか見えん。

小さい妹のシルフィード様が駄々をこねてお母さん役を勝ち取り、妹のわがままを聞いてあげているお姉ちゃんのソニア。


一番上の姉のエリナはそんなおままごとには興味がないけど、母親に幼い妹たちの面倒を見るように言われて、仕方なく側に佇んでいる図だな、これは。


実際は一番小さい子が多分数万歳、真ん中が190歳、一番上のおねぇちゃんが13歳と言う、見かけと実際の年齢は別よと言う女性一流の化粧術も真っ青な状況だ。


あっ、今度は手を繋いだよ。

小さい妹が迷子にならないように手を繋ぐお姉ちゃんと言う図に変化した。


「そちらのエルフさんがソシオさんね。そして、こちらの白にゃんこさんがイザトラさんね。」

「はじめまして、ソシオです。よろしくお願い致します。」

「イザトラです。あなたが風の大精霊様なのですか。こんなかわいらしい女の子が。」


「うふふふっ、女は見かけじゃわからないことぐらい、女性のあなたなら知っておいでですわよね。」

「見かけがエルフ族と非常に似ているので、エルフ族の少女と言う感覚で見えてしまったんだ。なんかすまん。」


「いいのですよ。ところで、イザトラさん。覚悟は定まりましたか。」

「覚悟と言うと。」

「私の話を聞く覚悟です。シュウ君から聞いていると思いますか、これから私の兄様のところに行って話を聞いていただきます。

半端な気持ちでは聞けないような話になろうかと思います。


私からはああしろこうしろとは言えませんが、話を聞いたあなたはこれからどうするか考えていただくことになります。

どんな事柄も冷静に聞いていただき、そして、考え、行動してもらわなければなりません。

感情にまかせたまま行動するのであれば、私たちの話は聞かない方がいいと思います。」


「さっき、俺はシュウ君たちと約束したんだ。

どんなにつらい言葉でもまずは冷静に話を聞くと。

おれは種族のことになると短絡的に、よく考えずに感情に任せて動いてしまう。

それは卒業しようと思う。


まずはあなたの話をすべて受け入れてから、よく考えて、そして自分の意志を決定してから動く。

特に大精霊様の話を聞くときは絶対感情的な行動はとらないと誓う。」


「その覚悟があればあなたも私たちの話を聞くに値する人物です。

ソシオさんはもう覚悟は決まっていますものね。」


「はい、僕はシュウ君の全種族を衰退、滅亡の危機から救いたいという志の手伝いをしたいと思います。

手伝うためには私も大精霊様の話を直接聞いてみたいと思います。」


「それではここにいる方々は全員風の神殿に入る資格がありますね。

あっ、芦高ちゃんも一緒に来て話を聞きますか。

何かいつも外でお留守番なんでしょ。

風の神殿は水や土のそれとは違って、広いので遠慮なくどうぞ。」


「ご主人様が付いて来ても良いというのなら、行ってみたいんだな。」

「いつも留守番をさせてごめんね。

シルフィード様がご招待してくれたんだから遠慮なく訪問すると良いよ。」


「じゃ、僕も風の神殿に行きたいんだな。どんなところかな。」

「うふふふっ、とっても素敵なところよ。

さぉ、皆さんも、礼拝所に行きましょう。その裏に風の神殿への転移魔法陣が設置されています。」


手を繋いだシルフィード様とソニアを先頭に、腕を組んだ俺とエリナ、そして、ソシオさんとイザトラさんが続いた。


エリナちゃん、なんで腕を組むんですか。


「だって、私もシュウと仲良くしたいんだもん。

友達じゃなく夫婦なんだからで手じゃなくて、腕でしょ腕。」

といって、例のふくらみをわざと押し付けてくる。

おれもうれしいので、手を振りほどけない。


後ろから呆れた視線が痛いです。


「シュウ君とエリナちゃんは仲がいいわね。これで赤ちゃんオオカミができないなんて、どんだけ甲斐性がないのシュウ君。」


ううっ。


エリナちゃんは勝ち誇った顔は止めて。

また一つ堀を埋めて敵本陣に近づいたという、したり顔はやめてちょ。


「あっ、これが昨日作った、風の大精霊の予言の壁と言うか石碑ね。」


昨日作ったというところで全く威厳なし。


「えっと、なんてかいてあるのかな。どれどれ。」


知りたがりのエルフの本能に突き動かされて、真っ先に威厳のない石碑に近づくソシオさん。代表して声を出して読み始めた。


「日が昇り月が沈み風が立ち、やがて龍をも押しつぶす岩が土に還るころ、この地に、この空にありしすべての生あるものは邪悪なるものの戯れにより風と雨に曝されたかの岩のように土に還るだろう。

風に祈れ。

祈りによって遠くの地に生まれ立つ強者を側に引き寄せよ。

風に祈れ。

祈りによって呼び寄せた強者がこの生あるものの運命を断ち切ることを。」


「なるほど勇者の出現を祈り、勇者が生きる者の滅びる運命を断ち切ることを祈れと。そういうことですね。」


「できるだけわかりやすく、かつ、予言めいた言葉を選んだつもりです。

どうかしら。」


「僕は良いと思いますよ。


んっと、風に祈れか。

ここでは突風に祈れと言う感じになってしまいますね。」


「そこを駄女神さんが、風の女神に祈れ、風の大精霊に祈れと、予言の壁と言うか石碑に横に立っている駄女神像を指差して民に諭すべきところよね。」


「風に祈れだけじゃなく、風の女神にも祈れと言う風に付け加えた方がいいわよ。」


「あとは邪悪なるものと言うところをどう説明するかだな。

これだと魔族のことを連想して、打倒魔族をあおっているような印象を受けるな。

昨日までの俺だったら、その運動の真ん中に立っちまいそうだぞ。」


「じぁ、内に抱えし宿命によりって代えるのはのはどうかな。」


「内に抱えし宿命かぁ、なんか自分の中にある避けがたいいやなものについて言われているようで、自分の問題として捉えられるね。

ソニアさん、僕は良いと思うよ。

そうするのであれば最後の一文の運命も宿命と変えた方がいいね。」


「うちに抱える宿命は良いとして、それを強者が断ち切るというのはどういうイメージを持たれるかしら。」


「はやり病のような自分の中で巣くったいやなものを強者の力で断ち切るという感じであれば、問題ないと思うぞ。」


「それであれば駄女神さんもちゃんと信者に説明できそうだ。


それと土に還るというのは死ぬことを意味していることなので、当たり前のことだよね。

ここは種族の衰退・滅亡とを表したいのだから、

風と雨に曝されたかの岩のように土に還るだろうを、この地、この空より消え去るだろうに代えればどうかな。

これであれば避けられない個人の死と言うより、種の滅亡を感じ取れると思うんだけどね。


「それとこの予言が風の大精霊の言葉だとわかった方がいいと思うんだけど。」


「確かにね。それがないと誰かの落書きと同じだもんね。」


「じゃ、修正したものを私がもう一度読んでみるわね。おっほん。


" 我、風の大精霊がこの地に、この空にありしすべての生あるものに告げる。

日が昇り月が沈み風が立ち、やがて龍をも押しつぶす岩が土に還るころ、この地に、この空にありしすべての生あるものは内に抱えし宿命によりこの地、この空より消え去るだろう。


風に祈れ。風の女神に祈れ。

祈りによって遠くの地に生まれ立つ強者を側に引き寄せよ。

風に祈れ。風の女神に祈れ。

祈りによって呼び寄せた強者がすべての生あるものの宿命を断ち切ることを。 "


どうかしら。」


「いいと思うわ。シュウはどう。」

「俺もこっちの方がいいと思う。」


「そのように代えてちょうだいね、兄様。」

"おおっ、建物を建て替えるときに一緒に作り直すぞ。"


やっぱ威厳がないよな。直ぐに取り換えられちゃう予言の石碑って。


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


10/5より、「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。


この物語は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。

死神さんと旧ランク8位が結婚式のために故郷に帰ったときの物語です。

時間的には本編と同じ時の流れになっていますので、別伝としてお伝えすることにしました。


シュウが風の大精霊と会合した後の本編の進行に大きく影響してくる別伝ですので、本編ともどもよろしくお願い致します。


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