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6話目 成長を妨げるもの

大隊長たちとの面談を終えた俺たちは、元の席で座っていた。


エリナの眼元には涙が乾いた跡が。

クリスティアさんに何かいやなことを言われたのだろうか。

いつもは二人きりになるとニコニコして、今日のおやつは少し甘すぎとかあれこれ雑談を始めるのだが、今は何か考え込んでいた。


沈黙に堪えられず俺はエリナに尋ねた。


「クリスティアさんに何か言われたの。」


一息、ため息をつき、何か決したように話を始めた。


「クリスティアさんの話は今日の戦闘のことじゃなかったわ。」


俺と同じだ。


「私がシュウに依存しすぎだって。

このままだとわたしが、シュウが大きく飛躍できなくなると言われたの。・・・・」


「クリスティアさんと館長たちは仲が良くてね、

何でも話し合える仲だそうよ。

今日、ここに戻る途中で私たちについて色々情報を交換したらしいの。」


だから、エリナや俺、そして両親のことを良く知っていたのか。


「館長や先生が私たちを見てて、気になることがあるとクリスティアさんに相談したそうよ。


本来は身近に接している先生や館長が話すべきなんだけど、私が年頃の女性ということで、クリスティアさんに私と話をしてほしいとたのんだそうなの。


女性でもマリアンナさんはまだ、このことを相手に話すには若すぎるからって。」


「それでどういう話をしてもらったの。」


「わたしの心が、全てシュウに依存してしまって、おんぶに抱っこになってしまっているって。


良いパートナーとは、頼ることはあっても一方的に支えられることはないって。


支えている方はあらゆることを一人で背負わなくてはならなくなるためいずれは精神的に追い込まれてしまうって。


一方、支えられる方は自分で判断することを放棄してしまうから、成長できないし、支えてもらっている相手がピンチの時に何もできないどころか、目の前の現実を否定する為にパートナーを見捨てて逃げ帰ってしまうかもって。」


「本当は私はシュウのことを支えて、シュウの夢を一緒にかなえたいと思っていたの。

でも、いつの間にか抱っこされることが心地良くて、シュウを後押ししたり支えたりすることを放棄していたみたい。

ごめんね。」


「でも、転写魔法をかけてもらったり、楽しい話をしたり、俺を十分に支えていると思うけど。」


「そういう面じゃないの、今日の戦闘で、あなたにと離れてちょっと連絡が取れなくなった時に、私は気が狂いそうになったの。


それはあなたが心配のはもちろんだけど、自分を抱っこしてくれる人を失うことに堪えられない自分がいたことも確かなの。」


「クリスティアさんにそれを指摘されて初めてわかったの、私の卑しさが。

だから必要以上にあなたを危険から遠ざけたかったみたい。

私の精神のよりどころを失わないために。


クリスティアさんは言ったわ。


あなたの力とそれを支える私が、将来、人々に必ず必要になる時が来るって。

でも、それは今じゃない。もっと、もっと成長して、あなたや私の代わりがいないぐらいの高みにまで登らないといけないって。


その高みに上り詰める可能性を十二分に二人は持っているけど、今の私では二人の成長を妨げる結果にしかならないと思うと。


私の夢はあなたと一緒に生き抜くこと。


あなたの夢は人々を魔族から守ること。


私があなたと一緒に歩んでいくためにはあなたの夢を実現させなければならないわ。

そのためにはあなたの、そして私の成長を妨げるようなことを決してしてはいけないのだとクリスティアさんと話をして悟ったの。


私、自分の足で歩くは。

もうあなたに常に抱っこをせがむことはしないわ。

だから私があなたの隣を歩むことを許してほしいの。」


「そんな話をしていたんだね。

俺はエリナが俺におんぶに抱っこばかりしているなんて思っていないけどな。


でも、他から見てるとそう感じたんだろうな。

具体的にどうしていいかわからないけど、そうだねぇ、まずは俺を信じることから始めるのはどうかなぁ。」


「今でも信じているけど? 」


「盲目的に信じるばかりでなく、俺が考えていることや、やりたいことを理解してほしいということかな。


それで、間違ったことがあれば諫めたり、何としてでも止めるということかな。」


「それならわかるわ。そうしていきたいわ。」


エリナはようやくいつもの天使の笑顔を見せた。


「シュウの方はどういう話だったの。」


「俺の方はまずはエリナと俺を一度引き離して、話を冷静に聞いてほしいということだった。

エリナから今の話を聞いてようやく大隊長の言ってた意味が分かったよ。


確かにクリスティアさんの話を二人で聞いたら、お互いに依存あった状態で、冷静にクリスティアさんの言ってることを聞いていられなかったと思う。」


「そうね。私もそう思うわ。」


「それとこちらが話のメインだったんだけど、俺たちのコンビは今でも非常に目立っているみたい。


そのため、邪な考えで接近してくる大人がいっぱい出てくるから自分を見失わないで、そういう大人の言う通りにならないようにしてほしいと言われた。」


「そして、俺が本山の職校に合格したら、白魔法協会の総帥に指導を仰げと言っていた。

本山で頼りになるのはエリナの母さんとその方だって。」


「えっ、あの方を。でも話を聞いてくれるかしら。

あんな高位の魔法使い様が。」


「なんでも俺の母さんを出しに使えば必ず話を聞いてくれるって。」


「あなたのお母さんは白魔法教会で参議まで務めた方ですもんね。

きっと、総帥の直接のお弟子さんだったんじゃないかしら。」


「詳しくはわからないけど、俺もエリナが決心したように、強くなるためにはそういった伝手はできるだけ利用しようと思う。」


「頼もしいわ。

私も一緒に鍛えてもらうように頼み込むことにするわ。」


「一緒に頑張ろう。」


「私の方が先に直弟子にしてもらうわ。負けない。」


「その調子だよ。」


「ありがとう。旦那さま。

あなたを一所懸命支えてあげますよ。ふふふっ。


でもなんで憎まれ役まで買って出てクリスティアさんたちは私たちにそんな話をしてくれたのかしら。」


「なんでも駆け出しのころ、俺とエリナの両親のチームに命を助けてもらったとか大隊長は言っていた。」


「そうなんだ。大隊長さんたちと両親たちに感謝ね。

でも、シュウの両親と私の両親が同じチームだったなんて初めて聞いたわ。」


「俺なんて俺の母さんとエリナの母さんが親友だったことも聞かされていないよ。」


「両親の間に何かあったのかしら。

仲たがいをしていなければいいけど。」


「まぁ、時が来れば話してくれるよ。

今日のところは、親が結んでくれた縁に感謝しようよ。 」


「そう、そうだわね。ダーリン。

親は親の人生が、私たちには私たちの人生が。

人生を目いっぱい楽しみましょう。」


俺たちは一つの試練を超えたようだ。これも親の愛情なのかもしれない。


荷物の整理が漸く終わったクズミチたちと食堂で合流し、ちょっとだけいつもより遅い夕食を取った。


恋に目覚め、恋することに恋していたエリナは、クリスティアや周りの大人たちの助けを借りて、人を愛いする意味に気付き、シュウに恋する人に変わっていってくれると思います。

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