5話目 突風
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。
風の聖地(仮)の役割も決まったことで、ここは何、あなたは誰という記憶喪失的なリアクションでその場で状況を取り繕う必要もなくなって一安心。
特一風見鶏の村と風の聖地間に転移魔法陣を敷けば、2度の転移であっという間に第1083基地から風の聖地に転移してこられる。
まぁ、風の魔法術士の同伴がいずれの転移魔方陣の使用にも必須だけどね。
なんとなく風の聖地が旅団のエルフ領でのベースキャンプになりそう。
宿泊施設もあるし。施設の責任者は駄女神さんだし。
風の聖地、役割が決まったことで(仮)は取ることになった。
俺たちが密かに風の聖地の役割について話し終えるころ、昼ができたとソニアが呼びに来た。
今の話をしようとソニアをちょっと呼び止めたら、全部、風神様を通じて聞いていたとのことだった。
特にソニアと風神様は俺たちの考えに異議はなかったので黙っていたとのことだった。
ただし、ソニアとしては宿泊施設で扱うお土産に人類領の菓子類も置いたらどうだろうということだった。
できれば例ケーキ屋さんからクッキーを仕入れておいてほしいそうだ。
売れ残ったら、自分で全部買うからと。
全部売れ残ったらどうするのと聞いたら、いくらでもノームちゃんがさらに買ってくれるので心配ないとのことだった。礼拝堂のお布施をちょろまかしているようだ。
水の神殿には誰も来ないので、アクア様も礼拝堂のお布施を・・・・・・。
どんだけ貧乏なんだ。
というのは冗談で、収入のないアクア様にはチンチクリン3姉妹の長女のソニアがお小遣いを渡しているようで、チンチクリン3姉妹を解散したいまでもそれは続けているとのことだった。
ソニアも白魔法協会の総帥としてかなりの収入があるだろうし、どうせ使うのはお菓子だけだもんな。
もう、お布施収入があるノーム様が直接仕手れて教会本山の礼拝堂のお土産として売った方が良いんじゃねぇと思ったが。在庫として抱えると土ぼこりをかぶって、パーケージが汚れるから無理でしょうとの風神様の意見だった。
難儀な体だな、土の大精霊は。あっ、ゴセンちゃんもそうか。
「親子そろって難儀な体じゃ。」俺の背中にもう戻って来たおばちゃん
パキトさんたち狩り組は3匹の野ウサギを捕まえたのこと。
この人数だと焼肉は無理だが、夜の汁物はほし肉じゃない新鮮な肉入りだとパキトさんが言っていた。
昼食を終え、俺たちは再び雪山へ続く道をを登って行った。
イザトラさんが代表で、風の聖地の方向を聞いてきたので、雷ちゃんに引っ張ってもらって風の聖地の方向を指差した。
まぁ、まだ2日ぐらいは歩くので、ほぼ今歩いている道に沿っているような方向になった。
そうして、俺たちは2日間雪山に切り開かれた獣道のような道を歩き続けた。
3日目の午前中、ついに山と山の間から突風が吹く場所にたどり着いた。
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突風が吹いているため、地面はやや削れて、草や木も生えていない石がゴロゴロした景色が目の前に広がっている。
突風は街道まで来るとその力が弱まり、コートの襟をたてて、しっかり体を抱えると何とか飛ばされずに道を進めるといった具合だった。
「ちょっとここで、風の聖地の方向を確認します。」
俺はそう言って、大きな岩の陰にエリナをと一緒に行き、さも、方向を確認するようなふりをした。
なにも魔法を使わないとまずいかなぁと思い、エリナには俺と二人が入れるほどのエシールドを作ってもらった。
そして、5分ほど岩陰でじっと・・・・・・、その目をつむって唇を出すのは何ですか、奥様。
"だって、このところみんな一緒で、ご無沙汰だったでしょ。
私のかわいい唇が寂しいってシュウに言えと私の口に命令するの。
もう、かってよね、私の唇。"
「いっけぇ、それいけシュウ。ぷちゅっと。」
「シュウ、何を迷っておるのじゃ。早くしないとタイさんが心配して様子を見に来てしまうのじゃ。」
「お姉さま・・・・・、そんな、お姉さまの方から誘うなんて、大胆ですわ。」
"こうでもしないと甲斐性なしとはきっすもできないのよ。"
うううっ。
俺は黙って、エリナを抱き寄せてギュッとした。
だって、寒いんだもん。
「つまらん言い訳をしおって、キッスはどうしたのじゃ。」
"そうだ、早くやってぇ。ここは風の聖地の入口。これからは風の聖地の参道門となる所。
遠慮しなくてもいいのよシュウ君。"
あのぉ、シルフィード様言っていることがめちゃくちゃなんですが。
参道門とキッスと何が関係あるのですか。
"勢いでやったもん勝ち。"
シルフィード様の言っていることがさっぱりだが、ギュッとしたエリナからは暖かいものが体を伝わってきた。なんか幸せだ。この暖かさが。
"この甲斐性なし。
でも暖かいから今は満足よ。
風の聖地では続きをしてもらいますからね。"
"風の聖地の宿泊施設にシュウとエリナの部屋っていうのを作って於きましようか。そこでごゆっくりと。むへへへへっ。"
それはさすがにやりすぎです。シルフィード様。
あと、むへへへへっはおばちゃんに通じるものがあるのでやめた方が良いです。
「まぁ、風の大精霊の方が妾よりはるかに年が上なのはまちがいないでのう。むへへへへっ。」
そこだけ真似まねせんでいいって。
さっ、もうあったまったから良いでしょ。皆、強風の中で待っているし、ねっ、ねっ。
"もう、しょうがないわね、この甲斐性なし。"
だってここでキッスしたら、お互い顔を赤らめてもじもじして、何があったかばれてしまうよ。
"お兄ちゃんの甲斐性なし。期待してじっと待っていたのに。"
何をソニアまで期待しているんですか。
ソニアにはまだ早いです。
お兄ちゃんが許しませんよ、そう言うことをするのは。
ソニアは絶対嫁にはやらん。
"ソニアちゃんも、こんな甲斐性なしのお兄ちゃんを残しては安心してお嫁になんていけないわよねぇ。"
"シルフィードちゃんの言う通りよ。私が嫁に行くためにも早くオオカミになってね。"
うぐぐぐっ、ますますつるし上げられてしまった。
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俺は何もなかったように岩陰から皆の待つところに出て来た。
エリナは俺の手を握って離さない。
ソニアは、どうしようもないものを見るような蔑んだ目で俺を見ていた。
俺は当然、目を泳がせていた。
「どうもこの突風の吹いている先に風の聖地があるようです。」
「シュウ君、この先にあるの、確かに。」イザトラさん
「さっき、魔法で確認しました。確かに突風の吹いてくる方向です。」
「しかし、ここは一日中、一年中、突風が吹いて道から向こうへは全く近づけないよ。
優秀な風魔法術士でもこの突風を操ることはできなかったんだ。
まぁ、そこに風の聖地があるのはなんとなくわかるけどな。
これまではこの先には誰も近づけなかったし。
しかし、どうしようかこの突風。この先かぁ。」
"シュウ君、もうすぐ、10時ね。もうすぐ突風が止むわよ。"
"シルフィード様、こんなわかり易い時間に突風が止むのに誰も気が付かなかったんでしょうか。"
"エリナちゃん、この道は豹族がごくたまに通るだけだし、野営地しやすい場所からだとここはもう通り過ぎてしまう時間だから。"
"シルフィードちゃん、ちなみに午後はいつ止むの。"
"午後5時ぐらいかしら、ソニアちゃん。"
「もしかしたら、風が弱まるかもしれませんので少し様子を見ましょうか。
それでもだめそうなら、エリナが芦高さんにエアシールドを掛けて、芦高さんを風よけにして、進みましょう。」
「大蜘蛛様の風よけか。それであれば進めそうだな。」
俺たちは風が止むのをじっと待った。
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