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3話目 風の聖地(仮)の宿泊施設は王室御用達

おっきいにゃんこ村を出て2時間半ほどゆっくりと山道を登った。

まぁ、山道と言っても登山のようなものではなく、丘を登るハイキングのようなものだが。

丁度昼時と言うことと水場が近くにあるというので、この辺で昼食をとることにした。


昼食は村長の奥さんたちが作ってくれたサンドイッチと野菜とキノコのスープである。

さすがにスープを持っての山登りはできないので、休憩場所でタイさんとソニア、アイナさんが作ってくれることになった。

ちなみに夕飯はタイさんとエリナ、アラナさん、イザトラさんが当番だそうだ。


パキトさんとノアフさん、他のおっきいにゃんこさんたちはスープができるまでの間、野ウサギのような夕飯のおかずになりそうなものがいないか狩りに出かけていった。

30分ぐらいの狩では期待しないでくれとの事だったが、ほし肉じゃない肉を夕食に食べられるかもしれないので、俺は頑張ってと強くパキトさんにお願いしておいた。


俺とエリナ、そしてソシオさんは、風の聖地の方向を確認する魔法を使うふりをして、岩陰に隠れて、風の大精霊との交信を試みることにした。


風の聖地(仮)の場所を確認するためである。

魔法を使って、風の聖地(仮)を確認するのだから事情を知らない皆にも嘘は付いていないと思うよ。


俺はソシオさんにおばちゃんを背負ってもらって、皆の念話が聞こえるようにした。

おばちゃんは若い男の背中に行くのは特に拒む理由もないので、素直に背負われていた。女子だと駄女神さんのごとく駄々をこねるくせに。

大剣のくせに現金な奴だ。


まぁ、ソシオさんは特に新たな魔法属性に目覚めることもなかったので、おばちゃんはソシオさんの一生背中に住み着くつもりはないらしい。


「おなごの背中よりはソシオの背中の方が良いのじゃ。

でも今のところシュウの背中が一番じゃな。

成長期に入るので代謝が良くて汗臭くていいのう。」


やばいよおばちゃん。それは痴女かストーカーじゃないか。


"あっ、ソシオと言います。おばちゃんさん。初めまして。"

「ふむ、なかなか礼儀正しいではないか。さすがは腐っても王族じゃな。」


おばちゃん、ソシオさんは腐っていないから。おばちゃんの性根の方が腐っているから。


「確かにおばばの心は長年の宝物庫での幽閉暮らしで、ねじ曲がったかも知んねぇな。」

「それを言うなら雷ちゃんだって長年のタンス生活で心がカビにより浸食されてしまったんでしょ。」

「ゴセン、貴様だって、長年の質屋の倉庫暮らしと土ぼこりですっかりツンデレ体質に変わっとるのじゃ。」


"皆さん、苦労したんですね。そんな暗い所にずっと放置されていたなんて。"


でもゴセンちゃんの土ぼこりは自前だから。

土のアーティファクトだから仕方ないんだ。

そこは同情しなくてもいいですよ。


"そうなんだ。質屋の倉庫で土に埋もれていたってことだね。一番悲惨だね。"


「そうか、ゴセンが一番かわいそうな奴だったか。

俺はタンスにしまわれていただけだもんな。


ゴセンは質屋の倉庫でさらに土の中に埋まっていたんだもんな。

こりゃ、完全な引きこもりだな。


安心しろ、ゴセン。

おれが外界での世渡りと言うものを手取り足取り指導してやる。安心して任せろ。」


「雷ちゃんに指導をお願いしたら、土ぼこりの他にカビまみれになってしまいそうだわ。遠慮しておきます。」


「それじゃ、妾が教えて進ぜようぞ。毎晩夜遊びしているのでなぁ、世間の裏の裏まで知っておるぞ。」

「表を知らないおばば様は雷ちゃんより遠慮しておきます。

ここはやはり、私が憑依しているお姉さまにお願いしますわ。」


"えっ、私。いいわよ、世間の厳しさを教えてあげるわね。"

「お願いしますね。やっぱりお姉さまが一番頼りになりますね。」


「妾は止めておいた方が良いと思うがのう。」

"おばちゃんさん、私では頼りないというの。こうみえても私は風の魔法属性を持っているわ。情報収集には長けているわ。"

「おっ、さすが正妻だぜ。強気に出たな。」


「まぁ、そこまで言うなら儂は何も言うまい。ただ、覚悟はしておくのじゃぞ。」

「覚悟。」

「そうじゃ、エリナと雷ちゃんの世間一般の常識はシュウが必ず絡んでいるのじゃ。」


「それってどういうこと。」

「んっ、ゴセン、ようく聞くのだぞ。」

あちゃ~っ、おばちゃんにそのセリフを言わしちゃダメでしょう。碌な結果にならないことが確定だ。


"シュウ君そうなの。"

今まで一度って、役に立つ情報を吐いたことがないからね。


「すべて甲斐性なしの視点から学ぶということじゃ。

まぁ、反面教師にするのならば非常に有効じゃが。

まねしたら、碌な結果にならんな。」


「・・・・・・・、わかりました。やっぱり、風神様にします。」

「まぁ、それが無難じゃな。夜の町に関しては妾に聞くがよいぞ。」


"まぁ、今日も楽しそうねぇ。何を話していたのかしら。また、シュウ君の甲斐性なしにをどう直そうかについてかな。

そろそろあきらめ時と思うけど。"


えっ、シルフィード様まで俺の甲斐性なしがもう不治の病とおっしゃるのですか。


"人はそれぞれ良い所と悪い所があるわ。どうしようもない所はあきらめて、得意な点を伸ばすことも必要だと思うの。"


"風の大精霊様。エルフのソシオと言います。よろしくお願いします。"

"あら、風の巫女もお話に参加していたのね。こちらこそ。

ソニアちゃんを支えてあげてね。"


"はい。ソニアさんの使命を手伝うことが、私の夢をも実現させることになると昨日聞かされています。頑張ります。"

"うふふふっ、よろしくね。"


シルフィード様。ところでそろそろ風の聖地(仮)だと思うのですが、具体的にはどの辺にありますか。


「シュウはもう甲斐性なしを直す気はないようじゃのう。あっさり、話題を捨て去りおった。」


"近づけば甲斐性なしの愛人の雷ちゃんがわかるとは思いますが。

この道沿いを2日ほど歩いて行き、山と山の間から常に突風が吹き下ろしているところがあります。

その突風に向かって30分ほど歩いたところにあります。"


突風に向かって歩くのですか。


"それは無理だと思うので、まあ、ソニアちゃんが風のシールドで防げないことはないのですが。


それよりも午前と午後に1時間ほど風が止む時間があります。

その時間を見計らって、一気に登ってくれば大丈夫よ。

シルフ兄様が豪勢な社に作り替えていますから、くればすぐわかりますよ。"


豪勢な社ですか。


"そっ、風の聖地(仮)ツアーを企画するんでしょ。エルフの皆が来たくなるような豪華さがないとね。

あっ、宿泊所も作ったから。旅行者の受け入れもばっちりね。"


ここで俺とエリナは嫌な予感がした。


そう、例の第1083基地名物のホテルに申し訳がなくてホの字も使えない従業員も受付で金をとるだけで何にもサービスがなくキャンプ飯をとりあえず食っとけ本棚がベッド代わりの倉庫宿泊施設だ。


"そんなことはないわよ。

風の聖地の宿泊施設は豪華絢爛長期滞在にうってつけ駅近飯うま従業員も親切対応王室御用達ホテルよ。"


確かにソシオさんが泊まったら王室御用達ホテルだな。

でも、駅近っていうのはどうなんだ。駅ってのは何のことだかわからないけど、何か移動に便利という意味かな。駅馬車の事か?

こんな辺鄙なところは駅近って言わないよな。移動が登山だもんな。


"そこはソシオさんに移動式の転移魔方陣を設置してもらったらどうかしら。"


でも、いくらツアーを企画するからと言って、あまりたくさんの人が来ても困るよ。

風の神殿(こちらは本物)への転移魔方陣があるんだし。


"それでは、その山と山の間の突風が吹くというところに近い道沿いに転移魔方陣を設置するというのはどう。もう一方は特一風見鶏の村に。

そうすれば突風が自然と風の聖地(仮)に入る人数を制限してくれると思うんだけど。

それに人類領から風の聖地(仮)に移動が楽だし。"


"それが良いわね。さすが風の巫女だわ。

後は宿泊施設の経営ね。

誰かいい人はいないかしら。"


俺とエリナは同時にお互いを見合い。そして、冷や汗が止まらなくなった。


「シュウ、止めとけ。奴の名前だけは言うんじゃねえ。


そうだ、タイさんがいるじゃねえか。料理はうまいし、親切だし。

ほらだんだん豪華絢爛長期滞在にうってつけ駅近飯うま従業員も親切対応王室御用達ホテルになってきたろう。

やっぱりタイさんだよ。」


「経営と言えばやつじゃな。

ずばり越後屋。」


あ~あっ、言っちゃったよ。言ってはいけない名を。

これで風の聖地(仮)の宿泊施設はホテルに申し訳がなくてホの字も使えない従業員も受付で金をとるだけで何にもサービスがなくキャンプ飯をとりあえず食っとけ本棚がベッド代わりの倉庫だな。


風の聖地(仮)チ~ン。


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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