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シュウの冒険 風の大精霊 1話目 炎の魔法でできること

おっきなにゃんこ村での歓迎会の次の日の朝。

俺は寒くて目が覚めてしまった。

この寒村はマドリンと同じぐらいの位置にあるのだが、山から冷気が降りてくるのか朝は一段と寒かった。


男たちは集会場で寝袋を敷いて雑魚寝だ。

しかし、毛皮を自前で持っているにゃんこはだだ丸くなって寝ていた。

毛皮って便利。俺も欲しい。


俺も猫耳と尻尾を付けたらモテるかも。

そうすれば、エルフ女子が可愛いと寄ってきて、エルフメイド戦隊以下略の設立も夢じゃなくなるのにな。

妄想が膨らんで思わず口元が緩むが、現実は震える体を自分の両手で抱えているところだ。


ちなみにおっきなにゃんこたちの耳は垂れていた。安心して寝ているのだろうか。


俺は皆を起さないようにそっと、寝袋からはい出し、集会場の隣の炊事場に水を飲みに行こうと思った。


炊事場には既にエリナとタイさんがいて、お湯を沸していた。


「おはよう、エリナ、タイさん。早いね。もう朝食の準備をしているの。」

「おはよう、シュウ。

今、タイさんに炎の魔法について教えてもらっていたの。

まずはお湯を沸す練習から始めて、今は、朝のスープを煮込んでいるところよ。」


「シュウ君、おはよう。昨日はよく眠れましたか。」

「寝たとは思うんですが、寒くて起きてしまいました。」


「じゃぁ、私が暖めてあげる。覚えたての炎の魔法で。」

「どういう魔法なんだ。エリナ。まさか、体ごと燃やすような危険なお仕置き魔法じゃないよね。」


「何言っているの、妻を信じなさい。シュウの周りの空気を暖める魔法よ。」

「そんな便利な魔法があるんだ。俺にも後で転写してくれないかなぁ。

冬山で気温が下がった時に試してみるから。」


「エリナさん、もう少し練習してからの方が良いんじゃないかしら。

先ほどはやかんを真っ赤に燃やしていましたよね。その魔法で。

やかんだから良かったものの、まだ人に試すのは危険だと思いますわ。

あなたの大事な旦那さんが火だるまに。」


「「・・・・・・・・」」


エリナちゃん、旦那を燃やしてどうするつもりだったの。


「てへっ。」

てヘッじゃないです。かわいいからいもう一回やって。

もちろん"てへっ"だけ。燃やすのはなし。


「でも魔法の転写はできるんだろ。俺も使えるようになりたいから、芦高さんで練習して来るよ。失敗したらあったまった芦高さんボディにやかんを置いてお湯にして、そのお湯で暖を取るから。

朝ごはんまで練習してくる。」


「確かに使えた方が便利ですわね。では、私が転写しましょうか。」

「タイさん、お願いします。」

「それっ。これでいいわよ。

使い方としては、芦高さんの周りの空間を小さの炎であぶるようなイメージですわ。

余り火を強くイメージすると燃え上がるので、そこは加減してくださいね。」


「あれがとう、タイさん。じゃぁ、行ってくる。」

「私も朝ごはんの練習が終わったら、行くわ。便利な魔法は早く習得したいから。」


朝ごはんの用意じゃなくて、魔法の練習だったんだ。

まさか、キャンプ飯になっていないよな。

野菜が生煮えとか。


「シュウ君、大丈夫よ。コンロの代わりをする魔法の方はエリナさんはちゃんと火加減をコントロールできていたわよ。」

さすが料理で炎属性魔法に覚醒しただけはあるな、エリンちゃん。


「シュウは本当に食いしん坊なんだから。

これからは私がたくさんおいしいものを作ってあげますからね。」

「エリナさん、あまり上手になったら私が今回の旅にの同行する立場がなくなりますわよ。」


「あっ、ごめん。

でも、私が炎属性に目覚めたのをみんなが知っているわけではないので、旅の野宿での料理はタイさんと一緒にするわよ。

タイさんが炎を扱っているように見せないと。」


「私は秘密を教えていただきましたから良いですけれど、確かにエリナさんが3属性魔法術士になったと知れてら、大騒ぎですわね。

特に人類領では。

あっ、ソニア様も3属性でしたか。」


「大騒ぎになるとは。どういうことですか。」

「あなたのお母さまが若い頃と同じようになるということ。」

「母さん(今のところ縁切り状態)の若いころですか。」


「あっ、光の公女として祭り上げられるということね。まぁ、私は本当にそれになることを目指しているけどね。」


「人類側ではそれは大騒ぎになって、身動きが取れなくなりますね。

気軽に冒険などできなくなりますよ。

第1083基地に籠っても、軍のお偉いさんなんかは強引に押し掛けてくると思うし。」


「そうすると俺も似たような境遇だから、俺の場合は自主的だけど、エルフ領に住み着くしかないね。ソニアも同じか。」

「ソニアさんの方が騒ぎは大きくなると思いますわ。

今でも軍のトップアイドルですもの。それが光の公女候補となったら。」

「もう人類領には戻れないですね。」


「私は別にエルフ領に住み着いても構わないわよ。

シュウがいるところが私の住処、桃源郷そのもの。」

「俺は人類領では旅団の支配地域と第2軍団の基地以外は出入りしたくないからな。ここに住んでも問題ないし。」


「特一風見鶏の村であればすぐ第1083基地に戻ってこれるので、ここエルフ領に住み着くのも悪くないかしら。」


「しかし、エルフ領では光の公女の伝説はどうなっているのかな。

エルフ領でも人類と同じような伝説があったら、ここにも居場所がなくなるわ。

情報が伝わる速さが半端ないし。移動も風見鶏なら手軽だし。」

「エリナ、その辺はソシオさんに聞いてみようか。」


「それがいいですわ。

ただ、昨日の話し合いの様子からするとエルフ族は光の公女に特にこだわりがなさそうでしたわ。

エリナさんがその修行中だと聞いても大きな反応はなかったようですもの。」


「じゃぁ。後で聞いてみようよ。

まずは俺は先ほど転写してもらった魔法の練習をするよ。

徐々に温める感じかなぁ。

いつもは氷を徐々に大きくする魔法で基礎訓練をしているので、それの逆だね。」


「芦高さんをあっため過ぎたら冷やすように反対側の手に冷却魔法を転写しておくね。それっ。」

「エリナありがとう。じゃっ行ってくるよ。」


*

*

*

*

*


俺は集会場のドアを開け外に出た。マドリンよりも風が冷たい。やはり山から冷たい風が吹き下ろしているのかも。

地面はシャキシャキと、なんと霜柱が。これは冷えるわけだ。

早く空気を温める魔法を習得せねば。

俺は外で待っている芦高さんを探した。


「キャーッ、ツルツル」「キャーッ、冷たい。」


村の入り口の方から何やら歓声が。

ああっ、朝から子供たちと遊んでいるのか。

しかし、いつもと様子が違っていた。

芦高さんを子供たちが取り囲んでいるのだけど、いつものように背中に乗っている子供はいなかった。


俺は遊んでいるところに、霜柱を踏みながら、近づいて行った。


「芦高さん、おはよう。」

「ご主人様、おはようなんだな。今日は寒いんだな。」


「芦高さんでも寒いの。」

「僕は寒くはないんだけど、子供たちが寒い寒いと言っているし、僕の体が冷たくなっていて、触れないんだって言うんだな。」


「そうか、だから誰も背なかで滑り台をしていなかったんだね。納得したよ。

芦高さんと遊ぶなら滑り台は必ずやるのに、誰もやっていないから不思議に思っていたんだ。」


「もうすぐ出発なのに、それまで遊ぼうと思ったけど残念なんだな。

冷たくて触れないんじゃな。

日を浴びれば温まるんだけどな。」


「ちょっと待ってくれる、俺が炎の魔法で温めてみるよ。

初めての魔法だから少し時間が掛かるけど、丁度良く温めてあげるからね。」

「そんなことを覚えたんだ。さすが僕のご主人様なんだな。」

「タイさんに転写してもらったんだ。これから冬山に行くのに必要だろうからって。じゃぁ行くよ。」


俺は魔法を芦高さんに掛けた。少しづつ空気を暖めてと。どうだ。

何か空気が揺らいでいる。

暖めすぎたか。


「ごめん暖めすぎたかも。一度冷やしてからもう一度やってみるね。」

「頑張って、ご主人様。」 「早く遊びたいから、がんばれ、お兄ちゃん。」


芦高さんと子供たちの声援を背に俺は暖める魔法と、失敗して、冷める魔法を

交互に5回ほどかけた。


「あっ、これでぢょうど良さそうだ。どうかなぁ。」

「体の温度ぐらいにになったんだな。これなら遊べるんだな。」

「それは良かった。じゃぁ、出発まで遊んでていいよ、芦高さん。」

「ありがとう、ご主人様。」「ありがとうお兄ちゃん。」


俺の魔法の訓練に付き合ってもらったのに、お礼を言われてしまった。

魔法を掛けていないのに俺の心は温かくなった。


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


10/5より、「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。


この物語は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。

死神さんと旧ランク8位が結婚式のために故郷に帰ったときの物語です。

時間的には本編と同じ時の流れになっていますので、別伝としてお伝えすることにしました。


シュウが風の大精霊と会合した後の本編の進行に大きく影響してくる別伝ですので、本編ともどもよろしくお願い致します。


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