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50話目 力のなき者の力

「実は、俺にはもう一人真実を告げたい人、今告げなければいけない人がいるんだ。」

「私も。」

「そうなんだ、誰って、あの人だよね。」


「タイさん。この人だけは真実を知っていてほしい。そして、力を貸してほしい。」

「お兄ちゃん、でも彼女は普通の人だよね。使徒とか巫女じゃなく。」

「ソニアちゃん、その通りよ。普通の人。

そう、人類領のどこにでもいる普通の人。だからよね、シュウ。」


「ソニア、エリナの言う通りだ。タイさんは人類の代表みたいなもんだ。」


「普通の人じゃ、これからの私たちの活動、いえ、全種族の存亡をかけた戦いにあまり役に立たないし、下手を打てば私たちと一緒に居て戦いに巻き込まれて・・・・、死ぬこともあるわよ。


私たちの戦いを知ったら、タイさんは一緒に戦うと言うだろうし。引いてくれないわよ。」


「タイさんだったらそうだろうな。

逃げずに、前に進もうとするだろうな。

たとえ自分の命が明日怪しいとしても。」


「それがわかっているのに彼女にすべてを告げて、死地にも連れて行くというの。」


「彼女が望むのであれば俺たちはそれを拒むことはできない。

そして、それは人類にとって絶対必要なことだと思う。」


「タイさんが死地に赴くことが必要なことって、私にはわからないわ。

持っている力に合わせて活動すべきだと思うけど。」


「もちろん、死地に赴く、言い換えれば自分の命の掛け時はタイさんに判断してもらうつもりだよ。

何でもかんでも俺たちに付いてきて、命を掛けろと言うわけでない。

俺としては命を懸ける必要がある場面には絶対居てほしくはないな。」


「お兄ちゃん、お姉ちゃん。私、わからなくなってきた。

命を掛けろだの危ない所にはいてほしくないだ。どっちなの。」


「うふふふっ、ごめんね、わかり難くて。」


「ちょっと長くなるが俺の、多分エリナも同じ考えだと思うけど、思いを聞いてくれるか。」


「もちろんだよ、私は風の使徒。

お兄ちゃんとお姉ちゃんの願いを、思いをかなえるのが使命だよ。」


「2000年前、前回の輪廻の会合の措置にはどれだけの人たちが関わっていたのだろう。

もちろん一人一人に聞いて回っていたわけではないのはわかっているよ。」


「えっとぉ、中心にいる者はもちろん、光の公女さん、月の女王さん、4人の大精霊に、闇の大精霊・・・・・・、8人かな。」


「そう、たった8人だ。

8人で世界の在り方を決めてしまったんだ。

じゃぁ、今回はどうだろう。」


「えっと、最終的にはお兄ちゃんが決定するとして、その意思決定前に意見を交わせるのは、先の8人に使徒と巫女で15人。アーティファクトで今わかっているだけで最低7人。


全部で30人になったよ。」


「その30人はそれぞれの意見があるでしょうから30の意見があるわね。」


「意見を可能性と言い換えても良いと思う。

よって、最大30の可能性が示せるわけだな。


全種族を滅亡から救い、そして、その後の繁栄と平和を築くためには30の可能性しかないのか。


全種族を滅亡から救う方法にはおそらく30もの可能性もないと思う。


俺が気にしているのは滅亡を防いだ後の繁栄と平和をもたらす方法だ。

たった、30の可能性しかないのか。


前回の輪廻の会合は滅亡を防ぐところまでしか考えていない措置だったのではないかとこの頃思うんだ。


滅亡を防ぐために各種族をバラバラにした。

おそらくバラバラにしたために世界のバランスが崩れ、その1000年後に新たな問題が生じたのではないかと思う。

しかし、2000年前のように全種族を、獣人族も含めてだけど、また一緒に暮すことはもうできない。


今回の輪廻の会合の措置は種族の滅亡を防ぎ、その後に平和と繁栄をもたらすような措置としたいと思っているんだ。

その方法がだった30の可能性の中から選ばなければならないのか。」


「そして、シュウの言う30の可能性にも問題があるわ。


30の可能性を考えたものが皆、力のある者ということだわ。


その上、大精霊様とアーティファクトたちは次の輪廻の会合があるし。

シルフィード様が先日おっしゃっていたわね、ダメだったら次があるという気持ちが否定できないと。


輪廻の会合、その後に平和と繁栄の方法を実践していくのは一般の力なき人々だわ。


力なき人々の思いが入っていない可能性から措置を選択するのは前回の輪廻の会合と同じ間違いをすると言いたいのではないですか、私の大好きな大切な旦那様は。」


「お姉ちゃん、しれっと最後に入れてきたわね。さすがだわ。

でも、言いたいことはわかったような気がするよ。


力なき一般の人たちの意見も聞きたいけど、だれかれと秘密を話すことができないから、今後、一般の民を導いてくれそうな信用のおける人にもすべてをわかってもらい、それで措置の可能性を増やしてもらうつもりなのね。」


「さすがは我が妹だ。えらいぞ。」

「190歳の私が13歳のお兄ちゃんに褒められるのは複雑ね。やっぱ私がお姉ちゃんの方が良くね。」


「だめだ、ソニアは俺の妹だ。絶対嫁にはやらん。

まっ、これが一番大事なことだが、あっ、嫁にはやらんということね。


可能性の話に戻って、その話の中で一番大事なことは、人から押し付けられた考えや生き方はすぐに破綻するということだな。


やっぱり自分たちが苦労して勝ち取らないと。


力なき人々が協力して全種族を滅亡から救い出し、そして平和と繁栄を自らの手で築いていく。

これが理想だな。我々力のある者はそれを手伝っていくというのが本筋だと思う。


しかし、現実には力なき人々に我々を導いてくれとは言えないので、我々力があるものと力なき人々の代表が今ある問題に一緒に取り組んでいくと言うのが良いんじゃないかと思っているんだ。」


「わかったよ。力なき人々の代表の一人がタイさんなのね。

だから、ここですべてを話しておくのね。」

「さすが俺の妹だ、その通りだ。

絶対嫁にはやらんぞ。」


「でもお兄ちゃん、私に好きな人ができて、その人と結婚すると言ったらどうする。」

「きっと、泣く、泣く、泣く。一週間エリナの巨乳の中で泣いて、そして、泣き腫らした目でおめでとうを言う。」

「うふふふっ、私の胸はシュウだけのものよ。」

「・・・・・・・・、ありがとう、お兄ちゃん。」


「さっ、時間がない。今からタイさんとソシオさんをここに呼んで、全てを話そう。」


俺たちは凍えるような寒さの中にタイさんとソシオさんを呼んですべてを話した。

おっきい白黒にゃんこさんたちも風の神殿には連れて行くが、それまでは秘密は何も話さないということを含めてだ。


二人とも大きくうなずき、協力して、命を懸けてでも俺たちの課せられた問題を克服することを誓ってくれた。

彼らは興奮したためか寒さのためかわからないが顔から湯気が出そうなほど頬が紅潮していた。


「力のなき者の力を見せてあげましょう。本当の力とは何かを。」

とタイさんはこぶしを振り上げて天に宣言する様に叫んだ。


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


次から新章が始まります。

いよいよ風の大精霊との対面です。

お楽しみに。


10/5より、「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。


この物語は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。

死神さんと旧ランク8位が結婚式のために故郷に帰ったときの物語です。

時間的には本編と同じ時の流れになっていますので、別伝としてお伝えすることにしました。


シュウが風の大精霊と会合した後の本編の進行に大きく影響してくる別伝ですので、本編ともどもよろしくお願い致します。


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