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46話目 同族への思い

山のふもとの村、特に西に山が続くと日暮れが速い。

それに今は冬。

日が落ちるのがここでは極端に早いのだ。


空が茜色から藍色に変わっていくと外はどんどん寒くなり、やがて闇と凍てつく寒さの支配する時が訪れる。


芦高さんと元気に遊んでいた子供にゃんこたちは、いつもは家で母親の作る夕食の手伝いをする時間になっても外で遊び続けていたので、ついには村長の奥さん鬼が鍋の蓋を二枚撃ち合わせながら、例のセリフを叫び子供にゃんこを家に追い帰えしていた。


その一方で、俺たち旅の者と歓迎会に参加する村人は集会場の中にひしめき合っていた。


エリナたちは人類を代表する料理として、エビチリを出していた。

たぶん俺の好みを最優先した結果かなと、エリナたちに心の中で感謝した。

エリナたちは旅の途中の夕食にエビチリを出すつもりでマドリンでエビと調味料をそろえていたらしい。


しかし、歓迎会の参加者が意外と多かったものだから、エビが一人一匹となってしまった。

また、おっきいにゃんこたちはネギが食べられないとのことで、ネギ抜きエビチリとなり、ますますボリュームがなくなってしまった。

村人たちはそれでも食べたことのない料理を食べたので満足していたが。


おれは大量のネギの中にエビが一個と言うネギチリになったが、まぁ、そこを含めて旅の思い出となった、かな?


アイナ、アラナのエルフ姉妹は果実入りのサラダを作ってくれた。

旅の途中では青野菜が取り難いのでと言う気遣いからだった。

エルフ族の野菜に対するこだわりが半端ないことが、このサラダに十分に表れていた。


何、あのドレッシング。

あまりの複雑な味に材料が何かさっぱりわかりませんでした。

唯一、ドレッシングに浮いていたパセリがあったので、今日のパセリドレッシングは最高ですねとアイナさんに行ったら、笑われてしまった。


それを聞いていたソニアは微妙に目を細めて、何も知らないお兄ちゃんがはずかしいと言いたそうな顔をしていた。

実際料理のレシピを交換したソニア達は材料をわかっているかもしれんが、俺は舌と目でパセリだけがはっきりと認識できたんだ。


だからパセリドレッシングだよなと念話でエリナに同意を求めたら、微妙な沈黙の後に、おいしいものを一杯食べさせて旅先でも恥をかかないようにしなきゃと、何かを悟ったような独り言を念話で送ってきた。


エリナちゃん、何を言いたかったのかな、俺にはわからん。


豹族は基本肉でした。焼く、煮る、蒸す。ひき肉を焼く、煮る、蒸す。野菜と一緒に焼く、煮る、蒸す。すべて肉料理です。

野菜とのバランスが取れておいしかったです。


野生の豹は生肉をだけを食べているので、豹族はどうするのか心の奥底でちびっとだけ心配していたが、非常においしい肉料理でした。


まぁ、それぞれの種族の料理を堪能しました。


また、大人たちは酒を楽しみ、酒を飲まない者はお茶とジュースを飲み、お互いの自己紹介も兼ねて好きな料理とか、それがどんなものであるとか、或いは自分の仕事や趣味などの話をしました。


料理が終わり、大方の片づけが終わった後に、酒とお茶でさらに交流を続けます。明日の朝の出発が遅いのは、多少の夜更かしは想定済みと言うことでしょうか。


「シュウ殿、今日は人類と交流できて楽しかったよ。」

「俺も楽しかったです。旅に出て良かったと思います。」


「そう言ってもらえると嬉しいよ。こんなさびれた村なのでね。あまり訪ねてくる人もなくてね。


静かでいいと言えるのは我々のような年が上の連中で、イザトラのような若い連中は物足りないのだよ。

しょっちゅうマドリンの街に出かけているよ。酒を売りにな。」


「酒ですか。」

「ここの村は麦類が良く取れるのでな、麦酒を作り、税として納める以外は町で売ってくるのさ。

税金の方は酒精の薄い発泡性の麦酒で、町で売る方は蒸留して樽で寝かせた非常に酒精度の高いものだ。

まぁ、これが街では高値で売れるとの話だ。」


「だから皆さんはこんなに飲んでも酔っぱらった風ではないんですね。」

「いや、かなり酔っぱらっている者が多いぞ。

座って飲んでいると顔に出ないのでわからないが、立って歩くと、ほれあいつのように今にも倒れそうだよ。」


「やっぱり、豹族と言うことかな。トラではなく。」ソシオさん

「トラではなく? どこから見ても俺には豹に見えますが。」


「シュウ君はまだお酒を飲まないので、この意味がわからないかもね。

或いは人類にこの言葉が残っていないということかもしれないけど。」

「私はその意味を知っていますわ。熊師匠が酔っぱらうと周りにトラ師匠と言われていたことがありましたから。」タイさん


「と言うことは、シュウ君がもっと人生の経験を積まないと覚えない言葉と言うことだね。」


「かつては獣人族の中には虎族と言うものがいたそうで、黄色と黒のまだらの毛皮をしていたようですな。

言い伝えではそれはもう酒が大好きで、酒癖が悪くて困った種族だったようですな。」


「酔っぱらうとあばれるとか?」

「いえいえ、彼らは酔っぱらうと子猫のようにおとなしくなって、誰かの膝に乗りたがるので別の意味で困ったようですな。」


「なんかかわいいわね。」

「でもエリナさん、考えてもみてください。儂より一回りも大きな虎族があなたの膝で丸くなるのですよ。」


「私なら押しつぶされて、死にそうになっちゃうよ。」

「ソニアちゃん、私も押しつぶされそうになるけど、きっとシュウが助けてくれるわ。」


「そっか、お兄ちゃんが代わりに虎さんに踏みつぶされるということか。」

「違うから。つぶされる前に引っ張って助けてくれるということだから。」

「そんな虎族も今じゃ言い伝えの中にしかいねぇな。」イザトラさん

「イザトラ・・・・」


「俺は絶対に東の魔族の占領地に虎族、それだけじゃない、豹族も狼族、熊族、現在のエルフ領ではいなくなった獣人族の仲間が、魔族どもに虐げられながら生きている、魔族から解放されることを待っていると信じている。

俺は捕らわれている同族を魔族から助けたい。そして、魔族を俺たちの元々の居住地から追い出したいんだ。」


「イザトラ、気持ちはわかるが、そうであるなら私もそうしたいが、同族が捕らわれているかも確認しないで、魔族の占領地に戦いを仕掛けることはできん。

それに我々だけでは占領地に近づくことさえできない。

エルフ族の協力が必要だ。


その為には、確かに獣人族がそして、エルフ族があそこに捕らわれていることを示さねばなるまい。」


「ソシオさん、エルフの風魔法で占領地の様子は本当にわからないのかい。」

「残念ながら。

あの東の占領地には黒い霧、魔族の闇魔法の結界が、それも強力な結界が張り巡らされている。

風魔法が通らないんだ。力不足で申し訳ない。」


「ごめん、責めているつもりはないんだ。

だから謝らないでほしい。

何とか中の情報を知る手立てか、攻め入る手立てがないか知りたいだけなんだ。」


「いいんだ。気持ちは僕も同じだから。

突然やって来て、仲良く暮らしていたエルフと獣人たちを虐げて、その地を占領し続ける。許せるわけがない。

まして、人類領でも魔族は同じことをしている。


僕は師匠のような人を二度と作りたくはないんだ。」


「ソシオさん、ありがとう。お母様のことを思い続けてくれて。」

「ソニアちゃん・・・・・。」


「シュウ君、無理は承知で一つ聞かせてくれるか。」

「イザトラさん、なんでしょうか。答えられるものであれば何でも聞いてください。」


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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