41話目 魔法属性覚醒の秘密 後編
話をちゃんと元に戻すぞ。
「ソニアがメイドさんをはめた時って、別の指輪に込められたソフィア様の魂が消えかかっていたんだよな。」
「そうでございます。
その指輪と私が融合することによって、わずかの間ではございましたがソフィア様の魂を繋ぎとめることができました。
ソフィア様の思いを知ったソニア様がソフィア様の魂の指輪と融合した私を二度と手放しはしないだろうと思い、奥様にお別れも申し上げました。」
「ソニアの魂がこの世にある限り一緒に居る覚悟で、融合したということだな。
そして、ソニアが風属性に覚醒したと。」
「ちょっと待ってくれ、シュウ。
姉ちゃんはソニアにある意味嫁ぐ覚悟を持ってその指にはまったということだな。」
「どうしたの、雷ちゃん。」
「シュウ、エリナ、ゴセン、思い出してみろ。
ゴセンがエリナにはまった時のことを。」
「雷ちゃん何のこと。」エリナ
「私は一生身に着けてもらうつもりでお姉さまにはまったわ。」
「あっ、それじゃ。それそれ。」
「どうした、おばちゃん突然叫んで、昼飯食べたかどうか思い出せないのか。
ボケたな。必要な魔力は昨日注いだぞ。」
「シュウまで考え無しになったのじゃ。えぇぇぇい、仕方のない、皆のものよ~く聞くのだぞ。」
「つまり、アーティファクトが一生涯添い遂げるつもりで身に着けられた場合に新しい魔法属性に覚醒するということですわ。」
「その通りじゃ。んっもうっ。メイドが割り込んで妾の考えを先に言いおったわ。せっかく決め台詞まで出したのに。許せん。」
「おばばの前置きは年寄りの自慢話と同じで鬱陶しいので私が引き継ぎましたわ。」
「そうか、アーティファクトの覚悟が身に着ける者に新たな属性を覚醒させるのか。なんか納得だな、ソニアの場合は。」
「私の場合は違うっていうの。私もお姉さまに一生ついて行くと誓ったわ。」
「ゴセンの場合は動機が不純まみれだからな。
逆に良くそんなんで覚醒したなエリナ。さすがは光の公女(もうすぐ仮免)だな。」
「そうですわ、お姉さまは凄いんです。漸く雷ちゃんにもわかったようね。」
それでいいのか、ゴセンよ。
不純な動機で一生ついて行くと言ったお前の心情を認めたことになるぞ。
「まぁ、しょうがないのじゃ。ゴセンも考え無しシンドロームにどっぷりはまっておるのじゃからな。」
「それじゃ、なんで覚醒するかは分かった(まだまだ仮)として、なんで土じゃなく炎なの。
私の場合は風のアーティファクトを身に着けて風属性に覚醒したので、参考にはならないよ。」
「何でだ、ゴセン、何かないか。」
「そういわれても、炎が好きってわけでもないし。」
「わかったのじゃ。その腕輪は実は陶器製で火の耐久性に優れているという特徴を持っておるのじゃ。」
「おばば、ちょっと待て。陶器と言えば土だぞ。腕輪の特性説からすれば原材料の土属性に覚醒すると思うぞ。」
「それにゴセンちゃんは金属製よ。何なら炎で熔かして見せましょうか。」
ついに出たよ、エリナの天然平目ちゃんが。
アーティファクトを熔かして、材料を確認する気だ。
確か炎色反応で金属原料が特定できるという話があるような、ないような。
「姉さま、そんな殺生な、殺生は止めてください。にかっ。」
あっ、自分のダジャレに酔っているなゴセンちゃん。
その時に食堂にタイさんとアイナ、アラナが入ってきた。
「エリナさん、おやつの時間に皆に焼き菓子を振舞いたいと思うのですが手伝っていただけますか。」
「良いですよ。ソニアちゃんも手伝って。」
「いいよ。」
「タイさんの焼き菓子はほんと美味しいもんね。
焼き方が最高。あこがれちゃうわ。
私も焼き方を習って、シュウのハートをがっちり掴まえておかなきゃ。」
「あっ、そうか。わかった。」
どうした、雷ちゃん。夕飯のメニューがわかったのか。早く教えてくれ。
「もう、シュウは食いしん坊たなぁ。ちげぇよ。
エリナが何故、土でなく炎属性に目覚めたかだよ。」
えっ、わかったの。早く教えてくれよ、一応、たまたま俺の秘書なんだろ。
「しょうがないなぁ、おっほん。皆の者よ~く聞くのだぞう。」
「奥様の目標というか、希望、あるいはこれまでの経験によるということですわね。」
「姉ちゃん、なんで先に行っちまうんだよう。」
「例のフレーズが長すぎて待って居られませんの。」
「メイドさん、とういうことですか。私は全くわからないんだけど。」
「しょうがねぇなぁ、ゴセン、よ~く聞くのだぞ。」
「それはシュウの食欲に応えるためにエリナは料理の修行に熱心だからじゃ。
また、自分では火の魔法が使えなかったので料理、特に火加減が絶品のタイさんにあこがれていたということじゃな。」
「あ~んっ、おばばまで俺のセリフ捕った。返せ。」
「はんっ、早い者勝ちなのじゃ。初めに例のセリフを言ったのが敗因じゃ。
すぐに本題を言えばいいものを。恰好を付けようとするからじゃ。」
今日のひとこと: お前がそれを言うか、ああんっ。
とフレーズが俺の頭で何度も反響を繰り返した。
「そういうことか。まとめると次のようになるのですね。」
「新人のくせに、最後のまとめというおいしい所を持っていこうというのはいささか僭越すぎると言うものじゃなかろうかのう。」
あっ、おばちゃんがお局の新人いびりを始めたぞ。
「つまり、新しい魔法属性を身に付けるには、我々アーティファクトを身に着けると同時にその時のアーティファクトの心情が一生、身に着け続けてほしいという思いと言うか覚悟が必要ということですね。
そして、新たに覚醒する属性はアーティファクトの属性によるのではなく、身に着けるものの経験や目標、あこがれと言ったものに強く影響されるということですね。
ああっ、こんなに簡潔にまとめられる私って、天才アーティファクトだわ。」
おおっ、お局様のジュクジュク濃厚いびりを華麗にかわしたぞ。
凄い新人が入って来たよ。
「あっ、シュウちょっといいか。」ボソ
どうした、雷ちゃん。
「俺、大変なことに気付いちゃったよ。」ボソ
どうしたの、今日の夕飯のメニューは俺の大好きなエビチリか。
「ちげぇよ。エビチリじゃなく麻婆豆腐だ。
だから、夕飯から頭を切り替えろシュウ。おやつも食べてないだろ、まだ。
言いたくはないが、シュウの愛人兼美人秘書としてはどうしても報告しておかなきゃなんねぇ。」ボソ
えっ、そんな重大なことがここで起こっているのか。
このまったりとした食後のお茶を楽しんでいる空間でか。
わかった、俺も姿勢を正してちゃんと聞くよ。
「言うぞ、覚悟はいいか、シュウ。」ボソ
おおっ、どんとこい。いつでも雷ちゃんのことを受けてめる覚悟はできているぜ。
「あっ。エリナのやつがゴセンをはずして置いて行きよったわ。
漸く新しい属性を覚醒したもらったのにのう。薄情な奴じゃ。」
「・・・・・・俺が言おうとしていたことをなぜ先に言うかなぁ。」
「・・・・・・お姉さま、土の使徒が見つかるまでは絶対放さないって約束は・・・・」
まあ、いろいろ乙です。
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。