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37話目 もう、口にチャックしておくのじゃ

「お姉さま、そろそろ私をはめてみませんか。」


「そうねえ、シュウがはめてくれるかなぁ。」


「その指輪はお兄ちゃんたちの婚約指輪かなんかか?


その指輪の由来だけどな、聞いてくれるか。

実は、人類領とエルフ領がまだ繋がっているころ、人類領よりもたらされたものなんだ。


人類には聖戦士と言うものがいてな、魔法が使えないために実戦では肉壁となっている奴がいるそうなんだ。

しかし、そいつらが肉壁以外に役だつことがある。


それがある種の魔道具を通して、魔法を使えるものに魔力を分け与えるという役目らしい。なんでもやつらは魔力だけは馬鹿みたいに持っているそうだ。

自分では使えないって、残念なやつの典型例だな。


そして、なんと、聞いて驚け、この指輪がその魔道具らしいんだ。

どうだ凄いだろう。

まぁ、エルフ領ではそんな魔法の受け渡しが必要なほど魔力を使う機会がないので、必要とされていないがな。


普通の指輪ではないということで、お姉ちゃんのお守りがわりとして渡してもらえばいいんじゃないか。」


「おじさん、と言うことはこの指輪は何かと対になっていると思うんですが、片割れはどうしました。」


「さぁな、これも例のところで流たものを仕入れてきたから、対の魔道具があったかなんてもうわかんねぇな。」


「こんな古道具屋のオヤジの世迷言に付き合っていないで、お姉さまに早く私をはめてくださいな。


と言うより、そこの甲斐性なし、早くはめてやんなよ。

お姉さまが私を身に着けることを待ってんだよ。

これだから甲斐性なしは使えないんだよね。」


わかったはめてやる。


「早くしなさいな。」


「エリナ、遅くなったけど、結婚した記念にこの指輪を改めて君に贈るよ。」


俺はせっかく店のおじさんに包んでもらったが、この場で包みを開けた。

そして、買った指輪をエリナの、先週までは風神さんがはまっていた、指に着けてあげた。


「シュウ、うれしい、ありがとう。

ほんとにありがとう。

改めてシュウのお嫁さんになった気分を味わっているわ。

何て甘美なの。

このままずっと、この幸せに浸っていたいわ。」


涙ぐみ、俺を見てお礼を言った後、新しい指輪を見る。


「お姉ちゃん、よかったね。」


「ほんとは対になって、魔道具としても使いたかったんだけどね。

まあ、これは魔道具としてでなく、結婚記念の指輪としてもらってよ。」


「いいのよ、シュウ。

もともと結婚指輪としてほしかったんだもの。

こんなに綺麗なダイヤが入っている。

嬉しいわ。大事にするわ。


嬉しい、シュウに結婚指輪をもらっちゃったぁぁぁぁぁ、でへへへへへっ。」


"それに、この指輪の片割れも必要であれば、兄ちゃんに勝手に寄ってくると思うし。

なんて言っても、お兄ちゃんは中心にいる者だしね。

輪廻の会合に必要なものは勝手に寄ってきて、運命の会合を果たすのよね。"


「それよりも早く私をはめてよ。

そんな指輪より、お姉さまには私の方を先にはめてあげるべきよ。

その辺の順序と言うものがわからないのかしら。まったく、役に立たないわねぇ。」


「嬉しい、シュウに結婚指輪をもらっちゃったぁぁぁぁぁ、でへへへへへっ。」


ゴセンちゃんをエリナにここではめることはしたくないし、できない。


「ちょっと、それどういうこと。

私の魅力が強すぎて、今日買った指輪の価値が下がることを警戒しているのね。

まったく、たまに高い買い物をするとこれだから、甲斐性なしは。」


「ゴセンは少し黙ってな。

シュウはここでゴセンをエリナにはめて、エリナが土属性に覚醒することを心配してんだろ。」


「うっ、雷ちゃんにそんなことがわかるの。」


「俺はシュウの愛人兼美人秘書だからな、シュウの考えそうなことはすべて把握しているんだ。


巨乳好きとか、美脚好きとか、巨乳も好きとか、巨乳が好きとか。


ちなみに、エリナが覚醒後はゴセンを魔族領に捨てても良いとシュウはいま思っているかもな。」


「嘘でしょ、嘘よね、お兄様。

お姉さまのために買った私をもう用済みだと言って、捨てないわよね。


ポイ捨て反対~ぃ。


買ったからには最後まで面倒をみてねって、小学校の先生に教えてもらったでしょ。ねえ、お兄様。」


「嬉しい、シュウに結婚指輪をもらっちゃったぁぁぁぁぁ、でへへへへへっ。」


取り敢えず捨てるなんて考えていないぞ。

あんまりうるさいとわからんがな。


「はい、お兄様、今からしばらくお口にチャックします。

ところで、チャックって何?

ふと、頭に浮かんだの。

おばば、知らない? 」


「そんなもん知らんのじゃ。」

「ちっ、使えないやつ。耄碌したか。」


「シュウよ、やっぱりゴセンを魔族領に捨てた方がいいと思うのじゃ。

うるさくて昼寝ができんのじゃ。夜遊びに支障が出そうなのじゃ。」


「ゴセンを選んだのは誤選だったか。

ぷふふふふっ、俺って面白いだろう。なぁ、ゴセン。」


「雷ちゃん、全くつまらないんだけど。うるさいから黙ってて。」


「えっ、俺のハイセンスな笑いをつまらないだとう、もう頭に来た。

ゴセン、表に出ろ、決着をつけてやる。」


「嬉しい、シュウに結婚指輪をもらっちゃったぁぁぁぁぁ、でへへへへへっ。」


「ご主人様、うるさい2人をまとめて、魔族領の近海に沈めてきましょうか。」


「「ごめんなさい、もう騒ぎません。


ピポパポ~ン ♪。

ただいまからお口チャックの時間をお知らせします。

ただいまからお口チャックの時間です。

雷ちゃんと、ゴセンは、ただいまからにお口チャックです。

ピポパポ~ン ♪。」」


「結局、何をしてもうるさいのじゃ。」


「嬉しい、シュウに結婚指輪をもらっちゃったぁぁぁぁぁ、でへへへへへっ。」

「嬉しい、シュウに結婚指輪をもらっちゃったぁぁぁぁぁ、でへへへへへっ。」

「嬉しい、シュウに結婚指輪をもらっちゃったぁぁぁぁぁ、でへへへへへっ。」


「こいつも、うるさいのじゃ。何とかしろシュウ。

耳元で、変な呪文をさっきから永遠と繰り返しておるのじゃ。


きっとこの指輪は、魔道具じゃなく、呪いの指輪じゃ。

だから質に入れられて、流されたのじゃ。」


「おばばもうるさいです。今は何の時間ですか。」

「お口チャックの時間なのじゃ。・・・・・・・」


"お兄ちゃん、そろそろ宿に戻ろう。

お姉ちゃんは妄想界に行ったので、あと10年は戻ってこないと思うし。

私が風魔法を掛けるから、おばばともども背負ってくれる。"


「わかったよ、帰ろうか。

おじさん、お騒がせしました。」


「いいよ、いいよ、不良在庫の腕輪を引き取ってもらったし。

こんどは、その指輪の片割れも探してみるから、また寄ってくれよな。」


「はい,是非お願いします。

あっ、指輪の片割れですけど、それが指輪とは限らないみたいなんで、例えば剣とかかもしれません。

指輪が質に入った頃のことがわかれば、何か情報が出るかもしれません。」


「ありがとよ、探ってみるよ。見つかったら高く買ってくれよ。」

「見つかったら、町の行政官に伝言をお願いします。

特一風見鶏の村から来たシュウと言えば俺のところに話が回ってくると思います。」


「わかった、特一風見鶏の村のシュウだな。」


「それでは、また。」

「いい腕輪が入ったら、来てやってもいいわよ。」


「じゃぁな。」


店の前には俺たちがゆっくりと買い物ができるようにと気を利かせて待っていたパキトさんとアラナさんが雑談をしていた。


「いい物が買えましたか。」

「はい、おかげさまで。

でも、エリナが妄想界に入って返ってきません。」


「エリナちゃんはよっぼとうれしかったのね。気持ちはわかるわ。

でも、タイさんやアイナが待っているから宿に帰りましょう。」


俺は心が妄想界に旅立ったエリナの抜け殻を背負って、宿に向かって、歩き始めた。


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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