こちら次元間 チャンネルわん・にゃん放送局 報道特集 あの世界の秘密 第2回放送
190323 誤字修正
「7時になりました。こんばんは。7時のニュースの時間ですが、今日は報道特集の第2回目を、放送時間を延長してお送り致します。キャスターはいつものまねき猫です。
それでは、前回放送以降の調査の進展についてDデレクターに報告してもらいます。それではよろしくお願いしますにゃ。」
「はい。よろしくお願いします。
まずは前回の放送が素晴らしすぎて、思わぬ反響に苦しめられたところからお話ししますにゃ。」
「反響に苦しめられたとはどういうことですかにゃ。」
「実は番組を見ていた星間移民政策庁の移民先開拓局から、当局が訴えられたにゃ。」
「それは大ごとですね。どういった点が問題になったのですかにゃ。」
「前回の放送で、当局の特派員が現地の住民と直接コンタクトを取ったことが問題だとあいつらは主張しているにゃ。」
「この案件は稟議案件ですので、検討する段階で当局の法務部の担当者が法的に問題がないか確認をしていると思います。
その上、外部の放送倫理委員会にも問い合わせて、問題ないことを確認したと聞いています。
それらの確認に問題があったということですかにゃ。」
「移民先開拓局のやつらが言うには、希少動物の取引について定めたワシントン条約の忖度条項にある非文明地域における非科学的生活住民との接触制限に引っかかるとのことだにゃ。」
「しかし、忖度条項ですよね。
絶対的な縛りのある取り決めではなく、何となくみんなで守ってみようかなぁ程度の条項で当然罰則規定も適用されないと思いますが。
それにかの地を非文明地域というのは、かの地にお住いの方々に物凄く失礼と思いますにゃ。」
「奴らはそこではなく非科学的生活住民の「非科学的」というところについて騒ぎ立てているようですにゃ」
「具体的に奴らはどのようなところを指摘しているのですかにゃ。」
「魔法が使えるということで、非科学的と決めつけているようですにゃ。」
「それでは、魔法が非科学的かどうかについて、専門家にご意見をお伺いしたいと思います。
本日はゲストとして、星間異文化科学研究所のF教授にお越しいただいておます。
教授、本日はよろしくお願い致します。
教授のご専門は生活様式と科学の関係性を明らかにすることだと伺っております。
特に、次元の異なる宇宙にお住まいの方々の異なる生活様式について科学的な根拠付けをすることだとお聞きしておりますにゃ。」
「丁寧なご紹介をありがとうございます。私も前回の報道特集を非常に興味深く拝見させていただきました。
かの世界は魔法が生活の中に浸透しているわけです。
しかし、かの住民の皆さんの生活ぶりを拝見していると、我々の歴史の中で中世と言われる時代の生活様式とほとんど同等であると考えられます。
魔法が使えるから全く異なる文明レベルにあるということはないと考えています。
つまり、われらの先祖が中世時代においてですね、例えば、お湯を沸かす場合に薪を燃やすことで熱エネルギーを生み出し、それを利用していました。
一方、かの地では魔法を熱エネルギーとして利用しているということになります。
熱でお湯を沸かすという部分については薪を燃やすか魔法を使うかの違いで、発生した熱エネルギーを水からお湯に変化させるのに使うという根幹部分については科学的に同等です。
よって、移民先開拓局が主張とているようなかの地の住民が非科学的とはまったくもっての言いがかりで、どんだけかの地の住民を馬鹿にしているのか憤慨に堪えません。」
「先生ありがとうございます。非常にわかり易いご解説でした。
Dさん、当局にたいする訴えはどうなりましたでしょうかにゃ。」
「実はこの訴えが外交成立前人権保護市民団体に漏れまして、星間移民政策庁と移民先開拓局の前で連日の抗議活動が行われました。
その結果、本業である移民政策が全く機能を停止してしまいました。
そのため、星間政府の判断により、訴えの取り下げ、移民先開拓局のお取り潰し、同局の課長職はすべて転局の上、減俸30%6か月間、それより上級職は一般職員に降格の上、全員まとめて桃太郎星の鬼ヶ島政府出張所に転籍し、鬼族の接待担当となりました。
星間政府の星間移民政策担当大臣は、当然、罷免です。
どんだけかの地の住民を馬鹿にしたか反省してほしいものですにゃ。」
「ありがとうございます。つまり、言いがかりは取れ下げられ、このまま取材と放送が公式に認められたと考えていいのですかにゃ。」
「その通りですにゃ。」
「それでは改めて、かの地の調査の進捗状況を今度は、えーと、失礼しました、Jデレクターですね、JDさん、報告をお願いしますにゃ。」
「担当デレクターの一人のJDです。皆さん、よろしくお願いします。
今回は名無し星の人類側の軍構成についての調査結果の報告をしますわん。」
「よろしくお願いしますにゃ。」
「軍に関する調査は、国のトップシークレットということもあり、困難をきわめました。
特派員のHAD及びIADさんはあまりの困難さに、どうしたらよいかわからなくなったため、調査開始3日目で調査継続をサボタージュ、初夏の陽気に誘われて1日20時間の昼寝という有様で、増々調査が進まないというジレンマに陥ったワン。」
「うーん、猫族の悪癖が出てしまいましたね。
集中力と突撃力はあるのですが、地味な仕事の継続ができないということですかねにゃ。」
「まぁ、それも種族ごとの生活様式ということで、しっかりと他種族を理解し、足りないしころを補い合うことが全宇宙の平和につながるというものですね。」
「教授、貴重なコメントをありがとうございますにゃ。」
「まずは、調査がなかなか進まないことを正直に地球の調査依頼者様に報告させていただきました。
それに加えて、教授のおしゃるように、種族的特性を考慮した特派員の新たな派遣をするつもりであることを伝えましたわん。」
「それを聞いた調査依頼者様から、まことにありがたいことに、激励と追加調査費用として、●ねこ宅急便で荷物が届きましたわん。」
「これがもしかして、先々週に起こったチャンネルわん・にゃん、人事部大会議室及び中会議室崩壊事件に繋がるのですかにゃ。」
「さすがは当局No.1のキャスターですね。お察しの通りです。
まずは荷物の中身ですが、地球の静岡県の御殿〇高原印のビーフジャーキーが3kg程度入っていましたわん。」
「確かあの崩壊事件のあった日は、10時ぐらいですかねぇ、犬族の職員が鼻をひくつかせて、ソワソワしていましたにゃ。」
「報道部としては、追加の調査費用をいただいたわけですので、新たに特派員をかの地に派遣することになりました。
特派員の派遣は社内の人事決済が必要ですので、我々はこの調査費用を持って人事部と折衝を行いました。
あっ、調査費用の安全性を確認のため、一部報道部で預からせていただいています。決して、ピンハネではありませんわん。」
「安全性の確認は重要ですから、当然の対応ですねにゃ。」
「ご理解ありがとうございます。
人事部で特派員の人選を行いましたが、やる気が重要ということで、社内公募をしてみることになりました。
それで荷物が届いた日の13時に職員全員にメールを流しました。」
「そういえばその時間は職員が半分ぐらいしか席に居ませんでしたにゃ。」
「そのメールが予想外な騒動を生んでしまいました。
特派員の希望者は13:05までに、人事部中会議室に集合。
調査費用は御殿〇高原印のビーフジャーキー2.5kg×0.5÷特派員人数。
応募者がいない場合は人事部より派遣するという内容だったわん。」
「私のところにもメールが来ていましたので、それで間違いないです。
ちょっと待ってください、調査費用として依頼者から3kg送られてきたと思いますが。500gは報道部の安全性確認用に預かっている分ですよね。これは先ほどの説明で理解しました。
しかし、人事部の計算式に0.5の係数が掛かっているのは、これは人事部のピンハネですか。これはまずいですね。
人事部の横領としてとらえられてもおかしくないですにゃ。」
「今回の騒動の原因は2つあります。
一つは人事部が特派員を人事部員に任せるため、公募から締め切りまでの時間が極端に短かったこと。
もう一つは人事部による調査費用のピンハネですわん。」
「ところで、公募に間に合った職員はいましたかにゃ。」
「それが100名ほど間に合いました。
100名が締め切り前1分以内に会議室になだれ込み、受付前では誰が先かを争って、大混乱。
それに締め切り時間を過ぎてもどんどん応募者が会議室に入ろうとするため、会議室がパンクし、廊下側の壁が壊れて崩壊したというわけですわん。」
「すさまじい混乱ですね。私の想像を超えていますにゃ。」
「仕方がないので、とりあえず、場所を大会議室に移して仕切りなおすことになりました。
ところが、ここで人事部の横暴が明るみになったのですわん。」
「その横暴とは、何となく想像はつきますにゃ。」
「ご想像の通り、会議室に場所を移して、この間にも応募者がまだ増えていたのですが、人事部長がハンドマイクを通じて説明を始めました。
「公募締め切りまでに応募の手続きを終了した社員はいませんでしたわん。メールしたように応募者がいなかった場合は人事部より人員を出しますので、今回の特派員は人事部長の私と新人研修課課長の2名と決まりまたわん。」
と宣言したわん。」
「待ってください。
非常に応募期間が短いとはいえ、時間内に受付に間に合った社員はいたんですよね。ちょっと矛盾がありませんかにゃ。」
「そこが人事部長、今は元が付きますが、の小狡いずるいとこです。
応募の手続きにはパスポートや履歴書、志望動機の論文などの添付資料の提出が必要とのことで、とても5分で用意できるものではなく、さらに、必要添付書類がなんであるか公募のメールに記載されていなかったのですわん。」
「たしかに、そんな添付資料が必要とはメールに書かれてありませんでしたにゃ。」
「その上ですが、人事部で誰が特派員となるかの打ち合わせも行われておらず、人事部長と新人研修課課長が行くことが2人の間だけで決められていたようなんです。
事実、公募のメールが出される前の昼休みに、2人は星間入国管理局にビザの申請と現地で使用するキャンプ用具の予約、社有の次元間輸送豪華客船の予約をしていましたわん。」
「それはひどいですね。ここまでの極悪非道なワンコを私は見たことがありませんにゃ。」
「当然、大会議室にいた応募予定の職員、特に自分が特派員になれるかもと邪心していた人事部員はうなり声を上げながら2人の極悪非道犬に詰め寄り、もみくちゃになり、混乱は混乱を呼び、大会議室は混沌の坩堝と化して、結局大会議室の廊下側の壁が破壊されて、崩壊したわけですわん。」
「あの日、あの短時間にそんな重大事件が繰り返されていたんですねにゃ、」
「今回の一連の不正公募、ピンハネ事件の責任から人事部長と例の課長は一般職職員に降格の上、コンプライアンスの再研修を山の中のぽつんと研修所で一箇月間実施。
その間は3食焼き魚定食で、お肉は一切メニューには載らないそうです。
人事部担当のBわんこ役員は、先月の自社ビル爆破未遂事件の責任から専務から常務に降格されていましたが 、さらに常務から平取に降格させられましたわん。」
「できれば私も研修にご一緒したい・・・・、失礼。
しかし、犬族の欲望というのは怖いですね。
ところで、特派員は、結局、どなたになりましたでしょうかにゃ。」
「それはですね報道部のベテランのK課長代理と若手のポープL主任が行くことになりました。報道部では妥当な人選だと評判ですわん。」
「よろしいでしょうか?」
「教授、如何がされましたかにゃ。」
「部外者が社内の話に首を突っ込むのは良くないかもしれませんが、初めから報道部で話し合い、特派員をKさんとLさんにすべきだったのでは。
まっ、いろいろ社内事情もあるかもしれませんが。」
「・・・・・・・・・・わん」
「・・・・・・・・・・にゃ」
「白熱した議論となり、予定の1.5時間の放送時間を過ぎてしまいました。
ここでいったん20分ほど休憩を挟んで、報道特集をさらに時間を延長してお送りしますにゃ。
休憩中は前回の放送のダイジェスト版を放送しますので、前回、見逃した方はゆっくりご覧くださいにゃ。」
鬼が島とぽつんと研修所に行っていたら、放送時間が無くなったようです。
放送延長分は次回の掲載になります。
次回の前半部分にまだ登場していない、重要人物が出てきます。
お楽しみに