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32話目 幻想と妄想

俺は慌てて廊下に出て、窓から中庭を覗いてみた。


白いおっきいにゃんこはソニアに膝枕をされて、黒いおっきいにゃんこはソシオさんの陰に隠れてぶつぶつつぶやきながら目から汗をうっすら流していた。

にゃんこたちは化けにゃんこにでも出合ったか。


そして、彼らの向こう側にはエルフの子供たちと芦高さんがきょとんとして、突然どうしたのかわからずフリーズしていた。


中庭には、ただ、朝のさわやかな、海沿いなので潮の匂いをわずかに含んだ風がゆっくりと流れていた。


「エルフ領でかつて大蜘蛛さんは何をしたんだろうね。

エルフ族の例のお約束の反応が獣人さんからも出てくるなんて。」

俺はおっきなにゃんこたちのリアクションにちょっと呆れて、横に来たエリナの方につぶやいた。


「ちょっと、芦高さんがかわいそうだわ。そんなにおびえなくていいのにね。

いつもいつも、もうっ。

あそこにいる子供たちとはすぐに仲良くなれたようなのにね。」


「ちょっと、芦高さんのところに行ってくるよ。」

「私も行くわ。」


俺はソニアの頭を軽くなでてから、その脇を通り過ぎ、芦高さんと子供たちのとろに急いだ。

「芦高さん、大丈夫か。気にしてないか。」


「う~ん、いつもの反応だけど、気にしていないということはないんだな。

ここの子供たちとはすぐに仲良くなって、遊んでいたのに、おっきなネコさんたちはいきなり叫び声を上げて倒れたり、ひれ伏したりしたんだな。


僕と子供たちの方がびっくりしたんだな。」


「にゃんこさんたちに、ほんとは獣人の豹族なんだけど、あいまいな説明をしちゃった俺が悪かったんだ。

初めから宿の中庭に居る大蜘蛛さんが俺の家族だということをはっきりと伝えればよかったんだ。」


「ご主人さまは悪くないんだな。

それでもご主人様と奥様が僕のことを気にかけてくれたんで、それがうれしいんだな。

家族なんだな。」


「まぁ、ちゃんとにゃんこさんたちには後で説明しておくんで、皆はこのまま遊んでいても良いよ。


今日と明日はこの町に滞在する予定だから、芦高さんは俺たちについてくるかこのまま子供たちとここで遊んでいるかどっちがいい? 」


「一緒に遊ぼ。大蜘蛛ちゃん。」

「滑り台したい。」

「足で持ち上げてゆらゆらして。」


「今日はここで遊んでいるんだな。

もし、海に行くんだったら僕も見てみたいんだな。」


「今日は街で買い物かな。

明日は皆で海岸に行ってみようか。俺は海を見るのが初めてだし。」

「それはいいわね、私もあまり海にはなじみがないので、ゆっくりと見てみたいわ。」

「ソニアも行くだろ、明日海岸に。」


「行きたい、今日はお買い物? 」

ソニアは白にゃんこを膝枕しながら答える。


「それじゃ、今から街に出てみようか。

まだ、ここマドリンに転移してからこの建物から外に出てないよ。

俺って、つくづく街に縁がないな。門前町には行ったことすらないし。」


そんな海に行く約束をしながら俺は芦高さんのヒンヤリとしてボディをなでてあげていた。


海かぁ、どんなところだろう。楽しみだな明日は。

んっ、このひんやりメタルボディは大丈夫だよな。

海の潮風で錆びないよな。


俺が芦高さんの錆着きを気にしている間に、ソニアが状態異常回復の水魔法をにゃんこたちに掛けていた。


「エリナ、気絶って、状態異常回復魔法で治るのか。」

「気絶は何かショックを与えれば回復するけど、気絶した原因を取り除かないとまた気絶するかもね。

だから水魔法を掛けているのよ、ソニアちゃんは。」


「気絶した原因・・・・、 まさか芦高さんを取り除くの? 水魔法だからきれいに洗い流す? 」


「そうじゃないのよ、気絶した原因は芦高さんへの恐怖だから、恐怖心を状態異常回復魔法でかなり和らげているんだわ。


実際、黒にゃんこさんの方はおびえるような感じはなくなったでしょ。

完全に恐怖心をなくしたわけじゃないから、少し腰が引けているけどね。」


「そういうことか。

じゃぁ、白にゃんこさんの方をもう起しても大丈夫かな。」


俺はソニアに代わってもらって、白にゃんこさんの肩をゆすって起こした。


「うううんっ、」

「もうすぐ気が付きそう。」

「あれ、私は大蜘蛛様に食べられてしまったのに。・・・・・生きているの? 」


物凄い妄想だ。芦高さんは向こうでエルフの子供たちと遊んでいただけなのに。

見ただけでこれだけの妄想を生むとはかなり怖いんだな大蜘蛛さんのことが。


「大丈夫ですか。」

「なんか大蜘蛛様を見たような気がして、まさかこんな所にいるわけないわよね。

もし、いたら食べられちゃっているはずだし。」


どうやったらそんな恐怖心を摺り込むことができるんだ、見ただけで食べられちゃったと勘違いするとか。


「実は大蜘蛛さんはあそこで子供たちと遊んでいますよ。

何もしなければ、まぁ、彼に対してはどうすることもできないけどね、危険はありませんよ。

俺たちの家族ですし、ちゃんと言葉も通じますし。」


「えっ、確かに大蜘蛛様だ。

エルフの子供たちも一緒に楽しそうに遊んでいる。


もしかして、ここは天国か。

そうか、そうだったのか、やっぱ大蜘蛛様に食べられてしまったんだな。


油断したよ。とっとと逃げるべきだったんだ。

いや、案内役なんて引き受けなきゃよかったんだ。そうしたらここにはいなかったのに。


父ちゃん、ごめんよ~ぉ。

俺が案内役になるのを渋っていたのに、俺が人類に興味があったばっかりにこんなことになるなんて。


母ちゃん、ごめんよ~ぉ、

お見合いから逃げ回って。

あんなクズにゃんこでも婿にしてたら、今頃は孫を抱かせてやれたのになぁ。


ほんとごめんよ~ぉ。

弟や妹たち・・・・・・・・。」


物凄くめんどくさいにゃんこがいた。

気絶させたままほっとけばよかった。


「お兄ちゃん、お互いの紹介も終わったし、あとはそこの黒にゃんこさんにお任せして、エルフ族と私たちは街にいって、おいしいお菓子を探そうよ。」


「そうだな、あとはにゃんこ同士にお任せして、俺たちは出掛けますか。

せっかくの休暇だし。」


「そうだわ、私たちは休暇を利用して冒険に来ていたのよね。

決して、労働をするためにここにいるわけじゃないわ。


そうだわ、結婚指輪をシュウにおねだりしちゃおうかな~ぁ。

門前町にはシュウが行けないしね。エルフ領でブツを買ってもらうなんて素敵じゃない。

どんなのがいいかなぁ。

まってよ、エルフ族も結婚指輪を送るのかしら。

エルフ男って皆、甲斐性がないらしいから、ろくなものがないかも。

いやいや、いくら甲斐性なしでも結婚指輪ぐらい買える貯金はあるわよね。

そう言えば村長さんの奥さん、指輪なんてしてたっけ。

村の奥さん連中も、指に何もしていなかったわ。

恐るべし甲斐性なし。

好きなエルフ女子に指輪も買ってあげていないなんて。

その点、うちのシュウは黙って、自分の旅費を削ってまで、あの指輪を買ってくれたの。

えへへへへっ、うれしかったわ。

だれよ、シュウのことを甲斐性がないと言ったのは。

あっ、おばちゃんさんだわね。

もう、シュウのことを甲斐性なしと言わせないためにも、街でい一番高いブツを買ってもらわなきゃ。

いいわよね、結婚指輪だもの。

少し、愛のマイホーム貯金を切り崩しても。

あっ、待ってそれではシュウの甲斐性なしは解消しないわね。

ここはやはりシュウのお小遣いで・・・・・・・」


「ソニア、お姉ちゃんは無限妄想の魔法を自分に掛けたようだから、しばらくこっちの世界には戻ってこないよ。


帰還を待ってても仕方ないから、エルフの皆とタイさんを誘って、今から街に行こうか。

エリナは気が付いたら風魔法でソニアに連絡をくれるだろうし。」


「ここなら芦高さんもにゃんこさんたちも一緒だから安心だしね。

じゃあ、お菓子に向かって進すすめぇぇぇぇ。」


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


10/5より、「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。


この物語は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。

死神さんと旧ランク8位が結婚式のために故郷に帰ったときの物語です。

時間的には本編と同じ時の流れになっていますので、別伝としてお伝えすることにしました。


シュウが風の大精霊と会合した後の本編の進行に大きく影響してくる別伝ですので、本編ともどもよろしくお願い致します。


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