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29話目 情報の矛盾

過去に豹族に何があったんだ。

俺たちは朝食の手を止めて、イザトラさんの話を聞くことにした。


「事の起こりはかなり昔のことなんで、そこは本当かどうかはもうわからねぇ。

寿命の短い俺ら豹族にとってはその辺はもはや伝説級か御伽噺だ。


エルフ族ならまだ、数代前のじいちゃん、婆ちゃんの昔話かもしれんがな。」


「御伽噺と思えるぐらい昔のことですか。」


「まぁ、そのぐらい昔の話から始まると言うことだがな。


続けるぞ。


ここの地域にはもともとわれわれ豹族を始めとした、獣人だけが暮らしていたようだ。

しかし、だいたい2000年前ということだが、突如としてエルフ族が現れ、この土地に暮らし始めた。


どうやってやって来たかは全くわからんがな。


獣人の数は当時からとても少なく、この地域の土地はそれこそ誰も居ないと言っていいほど使われていなかったので、そこにエルフ族が多数移り住んでも、お互いに生活圏が重なることもなく、良き隣人として仲良く暮らしていたようだ。


その当時からエルフ族は他種族とのいさかいを嫌う思いがあったようなので、よっぽどのことがないと今でも争いにはならないがな。


その争いも異種族同士の争いなんてものではなくて、個人的ないさかい、良くある同族同士の個人的なのレベルの争いだがな。


そうやって、突然やってたエルフ族と獣人族はとても積極的とは言えないが好ましい隣人として、必要な時にはいつも助け合いながら平穏な年月を重ねていたのだ。


それが1000年ぐらい前だ。


魔族はもともとここの地域から海を挟んで、北東側の別の海に浮かぶ大きな土地で暮らしていた。

何でもエルフ族と同じころに魔族も突然その土地に現れたようなのだがな。


その遠くの土地で暮らしていた魔族が、突然われわれ獣人が暮らしていたここの地域の東側を侵略したのだ。


そして、侵略から逃れられた獣人たちは、ほとんどが豹族だったのだが、エルフの暮らす西方に移住し、東方に居座る魔族と対立するようになった。


東方から逃げ出せなかった同族はその後どうなったかは分からない。

当然、魔族の侵略を受けた東側にもわずかではあるがエルフ族が暮らしていた。

魔族に捕らわれたたエルフ族もどうなったかもやはり知られていないようだ。

こうして、エルフ族も東方の魔族と対立するようになったのだ。


どれほどの同族が魔族にとらわれたかはわからんが、もともと数が少なかったのが災いし、逃げ延びた我らは今でも数ヶ村を営んでいるにすぎんのだ。


我々、豹族、いや既に滅んでしまった獣人族の分も東方に居座る魔族は決して許すことのない天敵なのだよ。」


「我々エルフ族の方も今のイザトラさんのお話と同じような事情で魔族と対立しているんだ。


1000年前と言うとエルフ族にとっては数代前に当たるので、魔族に同族を奪われた恨みは家族を奪われたような怒りとなっているんだ。」


「ソシオさん、イザトラさんのお話だと、2000年前に突然この土地にエルフ族は連れてこられたんですよね。

その理由はわかりますか。

どうやって、連れてこられたんですか。」


「さすがに2000年前となると長寿のエルフ族でも当時の様子は古文書や言い伝えの類になってしまいますが。


そのレベルの信憑性で聞いてもらうとして、もともと3種族、エルフ族、人類、魔族は今の人類領で暮らしていたようなんだ。


しかし、だんだん数が増えると生活領域が重なり、種族同士のわずかなすれ違いから、互いに争うようになり、やがて種族が滅亡が心配されるほどの大戦争に発展したというんだ。


ここからは御伽噺的に語られていることではっきりとしたことはわからないんだが、種族の滅亡を哀れんだ天上の神が、その使徒を使って、エルフ族と魔族をこの土地に導き、種族同士を引き離すことで互いに争いのない新世界に導き下さったということなんだ。


我々の導かれた土地には先に獣人族が暮らしていたけれど、我々エルフ族は獣人族と生活圏を別にし、種族同士が争う愚を繰り返さないように努めてきたんだよ。


しかし、魔族が1000前に東の土地を攻め取り、その後はずっと居座っているんだよ。」


「天上の神が導いたと、エルフ族と魔族を。」


「まぁ、そこは御伽噺の類になりますが、エルフ族と魔族は突然この土地に導かれたことは間違いないでしょう。」


「俺たち獣人族とエルフ族はうまくやっていたんだ。

平和で、豊かで、時には助け合うような種族で分け隔てがないような生活をだ。

それを魔族が台無しにした。


家族を、そして、種族を引き裂かれ、そのために我々獣人族が、いやもうほとんどここでは豹族しか残っていないが、滅亡の危機に瀕しているんだ。

そんなことを引き起こした魔族を許せるわけがないだろう。


俺はきっとまだあの魔族に侵略された土地に俺たちの同族が生き残っていると思っている。

魔族に虐げられながら、同族が解放してくれることを期待して地獄のような日々を耐え忍んでいるにちがいないんだ。

俺たち獣人族はしぶといんだ。大丈夫、きっと、生きている。」


"お兄ちゃん、ちょっとおかしいんだけど。"


どうした、ソニア。


"あっ、確かに。ペット魔族さんが嘘を言ってるとは思えないし。"


エリナ、何のこと。


「シュウはもう忘れたのか、一昨日のことだぞ。ペットの魔族と話したのは。


しょうがない、ここは愛人兼美人秘書の俺がかわいいシュウのために一肌脱いで、何を脱げばいいんだ俺は。

まぁそういうことで、大事なことを思い出させてやろう。」


一人でボケて、それに自分で突っ込んでいるやつの言うことなんざぁ、大したことないはず。つまらんなかったら、熔かすぞ。


「まぁ、聞け。一昨日のペット魔族はこう言っていたぞ。覚えているか。


魔族は人類領を種族としての劣化を防ぐために侵略したが、エルフ領は侵略しちゃいねぇと。

そんな無駄な二面攻撃はしていないはずだと。


かつての魔族軍の中級幹部、それも情報担当将校が言っていたんだ。

間違いはないと思うがな。」


そうだった。魔族はエルフ領を攻めてはいないという話だ。

これって、どういうこと????


「東方に侵略してきた敵は、確かに魔族なんですか。別の種族じゃないんですか。

どうやって魔族であることを確かめたんですか。」


「我々エルフ族は時々東方に籠った敵にちょっかいを出します。

そうすると迎撃して来るのは頭に角が生えた輩です。闇魔法で、我々の攻撃を封じ込めようとしてきます。」


「そっ、そうなんですか。

確かに、頭に角が生えて闇魔法を使えるとすれば。それは魔族ですね。」


まさか、ペット魔族さんが俺たちにウソの情報を流したとか。

それとも、本当に極秘に東方占領がなされたとか。


しかし、エルフ族と獣人族が暮らしていた広大な領域を占拠ているとなると作戦行動が全くもれていないとは信じられない。

かれは、その上、軍の情報担当将校なんだぞ。


他の領域に攻め込んで、その上勝利し、且つ、占領をし続けていることを何のために秘密にする必要があるんだ。

成果を自慢はしても、極秘にすることはないはずだ。


「ということは獣人族の生息領域を犯したのは、今の魔族軍じゃない、別の魔族の可能性があるということだよな。シュウ。」


はい、その通りです。雷ちゃんに先に言われてしまった、俺乙です。


"そういえばペット魔族さんは、今は魔族の間で内紛は起こり得ないけど、昔はそういうこともあったと言っていたわね。"


東方にいる魔族は何なんだ。


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


10/5より、「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。


この物語は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。

死神さんと旧ランク8位が結婚式のために故郷に帰ったときの物語です。

時間的には本編と同じ時の流れになっていますので、別伝としてお伝えすることにしました。


シュウが風の大精霊と会合した後の本編の進行に大きく影響してくる別伝ですので、本編ともどもよろしくお願い致します。


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