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27話目 マドリンの景色

宿の同じ階にある俺たちのために借りてもらった部屋に入った。

当然、相部屋だ。

絶対相部屋だ。

俺は強く主張した。


もちろん、エリナもソニアも主張した。相部屋を。


と言うことで、俺の主張が通り、俺とソシオさんとパキトさん。

男で一部屋を確保した。

いや、死守したと言ってもいいだろう。


後ろではエリナの歯ぎしりする音が聞こえたが、でも、俺は何も聞いてはいない。


さすがに女子は人数が多いので、アイナとアラナ、そしてソニアのエルフ組?とタイさんとエリナの人類組に分けようとしたら、タイさんがせっかくだからエルフさんと仲良くなりたいということで次のような組み合わせになった。


アイナとソニア、エリナ部屋とアラナとタイさん部屋。


アラナはエルフの女の子らしく奔放な性格なのでまじめなタイさんとうまく話を盛り上げてくれるだろうとの考えだ。


アイナは人見知りしやすいので前回も一緒に旅をしたエリナとソニアと一緒だ。

まぁ、慣れたころにはこの組み合わせを変えていこう。

案内人も入ってくるしね。


ここマドリンの町に2~3日滞在して、風の神殿へ旅する準備とこの町を探検して、エルフ領について見聞を広げる予定にしている。


王太子にも言われたが、今回の旅の成果の一つとしては、この北の港町を知る、町の生活を知る、もっと言えばエルフ領の海を見た、海に足を付けてみたような単純な体験だけでもいいのかもしれない。


風の神殿に行くこともそうだが、そこにたどり着くまでのエルフ領での体験がすべて今回の旅の成果だと王太子は言っているのだろう。


風の聖地に行くという派手な成果よりも、人類が改めてエルフ族に接触し、エルフ族の生活を体験し、エルフ領を見て回ることこそを大事にしてほしいのだ。


荷物を置いて、部屋の窓を開けてみた。


少し日が傾いて来て、空に浮かぶ雲が徐々に茜色に染まりつつあった。

村で見た緑と茜空も素晴らしかったが、ここの茜空と潮の香りのコントラストが非常に素晴らしい。


こんな素晴らしい光景をエリナと・・・・・

パキトさんが隣で仁王立ちしていた。

部屋割りを間違ったかもしれない。


「シュウ殿、素晴らしい光景ですな。

人類領でもこのような光景が見られるのでしょうか。」

「俺は内陸部の出身で、海と言うものを見たことがないんです。

初めて見た海がここ、エルフ領ですね。」


「自然は素晴らしいですな。特にエルフたちが望んだわけでもないのにこのような素晴らしい景色を見せてくれる。」

「そうですね、ただですもんね。」


「パキトさん、その自然がひとたび嵐などを引き起こすと皆を苦しめることがあります。

いいことばかりではありません。」


「確かに、そうですね。

結局、自然はありたいようにしているだけですかね。

我々エルフなどの思いに関係なく。」


「僕はそれが素晴らしいと思うよ。」

「ソシオさん、ありたいようにある自然がですか。」


「そうだよ。誰からの干渉にも影響されることなく、自らが望んだようにある。

エルフやたぶん人でもそのような頑なな生き方はできないね。

その頑なさ、意思の強さを僕はこの美しい夕日の風景に感じているんだ。」


「人やエルフでもそのような生き方はできると思いますが・・・・、確かに、非常に難しいですね。

俺なんて、エリナとソニアの一言で右往左往してしまいます。」


「それで、別部屋を希望されたのですかな。これからの旅のことを一人で考えたくて。」


「パキトさん、そんな高尚なものじゃないですよ。

夕飯に一服盛られるというか、自分でなくなるようなものを混ぜられそうなので、混ぜられたも言い様に男部屋にしてもらったんですよ。」


「えっ、何を混ぜられそうなり。」

「精力剤だそうです。」


「げっ、シュウ君、僕を襲う気じゃ。」


「ソシオさん、あなたまで変な方向に話を持って行かないでください。


精力剤を盛られたら、この剣を振るつもりです。

この頃はいろいろ任務などがあって、訓練をさぼり気味なので。

この部屋だったら剣を振ってもいいかなぁと思って。」


「シュウ殿はやはり戦士なのですね。常に敵と言うか、戦う相手を見据えている。」


「パキトさん、俺一人では魔族相手に満足に戦えないと思います。

エリナやソニアが一緒でないと。


いざ戦うときに自分の準備不足で2人に迷惑を掛けたくないんです。

俺にできることは、2人から転写された魔法を最大限に生かすことです。

そのために体力を気力を、集中力を鍛えておく必要があります。

だから、無心で剣を振る必要があるんですよ。」


「そういうことであれば、私も付き合うとするかな。

無心に剣を、剣を振ることだけに集中しようかな。」


「じゃ、僕もナイフを振るよ。速く振るよ。そして、弓を引くよ。速く力強く。

僕の志を達成するために挑戦するよ。」


夕日を見ながらそんな男の心持の話をしていると、ドアをノックする音が。

「お兄ちゃんたち、夕飯できたって。一階の食堂でだったさ。」

「わかったよ、ソニア。今行くよ。」


軽装に着替えて、下の食堂に3人で降りて行った。

女性の方は既に席についていた。

女性の方が用意に時間が掛かると思い、のんびりしすぎてしまっていたようだ。


「シュウ、部屋が別々なんだから夕食は隣に座ってよ。いいでしょ。」

あっ、目があやしく輝いている。


「お兄ちゃん、今日は寝るときは別々なんだからせめて夕飯は隣で食べてよね。」

あっ、こっちはおいでおいでをしながら、あやしく片方の口の端がちょっと上がっている。


おめぇら、なんか企んでいるだろう。

ここは隣に座ったら負けだな。何としても・・・・・。

空いているじゃないか、タイさんの隣が。

丁度、エリナの正面だし、ここはこそっと収まろうか。


「「早くこっちに来なさい。席も決めらんないの、全く甲斐性なしなんだから。」」

強引に連れ込まれました。2人の間に。


「混ぜないよね。」

「何を?」

「例の、精力剤とか。」

「さぁ、どうかしら。」


マジか、混ぜる気満々じゃねぇか。

しかぁし、今日の俺には必殺の精力剤完全消費手順書がある。


今は亡き熊元師匠にもらった、剣の形を示した指導書だ。

この形を一つ100回、無心で剣を振ることで、精力をすべて使い果たすことができると言うものだよ。

残念だったなエリナ。


俺はそれを思って、自分の狡猾さに思わずにやつくと、一瞬驚いた表情をしたエリナが、さっき以上にあやしく微笑んだ。

まずい、もしかして俺の精力剤完全消費手順書では消費しきれない精力を付ける秘策があるんじゃ。


俺は驚愕のあまりテーブルの下の膝が震えるのが分かった。

俺、この旅が終わるころには人生の全ての精力を使い果たすんじゃねぇだろうな。



「皆さん初めまして、マドリンの町で行政官をしている者です。よろしくお願いします。」


皆が食事のテーブルの席に着いた直後に見知らぬエルフの男性が立ち上がり、話をはじめた。


当然、イケメンである。

毎日見ているのでイケメン飽きた。

エルフの美女はどんだけ見ても飽きないがな。


そんなことを頭の片隅で考えていたら、テーブルの下で両足を蹴られた。


エリナちゃん、ソニアちゃん痛いんですけど。俺の表情なんかずっと観察していないで、行政官の話を真剣に聞きましょうよ。


「本来ならば、皆さんの旅、バルデス山脈の探索の案内人をご紹介する予定でしたが、今夜は何か予定があるとのことで、明日の朝に改めてご紹介することにします。


今日は皆さんと私たち町の行政官との交流会と言うことでよろしくお願い致します。

ご存知のように、この町は北方の港町でして、北の海の魚介類が大変おいしい土地柄です。

エルフの魚介利用理を堪能していただければと思います。


それでは始めましょうか。」


その日の夕飯は食べたことのないような豪華な魚介料理を堪能した。

混ぜてないよね、ねっ、混ぜてないよね、エリナちゃん。


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


10/5より、「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。


この物語は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。

死神さんと旧ランク8位が結婚式のために故郷に帰ったときの物語です。

時間的には本編と同じ時の流れになっていますので、別伝としてお伝えすることにしました。


シュウが風の大精霊と会合した後の本編の進行に大きく影響してくる別伝ですので、本編ともどもよろしくお願い致します。


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