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21話目 エルフ領で歓迎される者、陰で失笑される者

「いろいろありましたが、また、再会できてうれしいです。村長」

「随分と疲れているように見えますが、人類領に戻っているわずかな間に何かありましたか。」


「そうですね、帰ったら魔族軍と戦いが始まっていて、それに参加しました。

何とか人類軍は勝利することができましたが、やはり命のやり取りですから勝っても負けてもかなりの疲れはありますね。

昨日のことですし。」


「えっ、昨日戦って、今日はここに来たんですか。

それはまた何故そんなに急いだのでしょうか。

私としては早く再会できて、また。交流できることがうれしいですが。」


「駄女神さんのせいよ。

本当は昨日来るって言って暴れ出しそうなのをシュウが何とかなだめて、今日来ることにしたんです。

本人は風見鶏の前で徹夜していたようですが。


それが、いざ来てみると例の病気が再発して、何のために急いできたんでしょうね。

ほんと駄女神さんには振り回されっぱなしです。ぶ~っ怒。」


「エリナさん、駄女神様はここが気に入ってくれたようですね。

今のところ実害もないですし、少し好きにさせてみるのもいいのではないでしょうか。

締め付けすぎて、ストレスで爆発して炎魔法を撒かれても困りますから。ハハハッ。」


「でも、前回は段々慣れてきたんだよね。

慣れてくると本性が現れて、わがまま言い放題、暴れ放題の暴特攻大魔神に豹変するかもね。」カメさん


「シュウ殿、失礼ですがこちらの方はどなたですか。」


「紹介するのが遅れて申し訳ありません。村長、ソシオさん。

そう言えば二人とも一昨日の夕飯時にちょっとお邪魔した時にはいなかったですね。」


「家内から聞いているとは思いますが、人類側と外交の下交渉をするためのエルフ側の打ち合わせを王都でしていたんですよ。」


「そうでしたか、それでは改めて紹介します。


今回の訪問で新たに2人の俺たちの仲間を、予定通りに、連れてくることができました。滞在の許可をお願いします。


こっちがアラダール、通称、カメさんです。

風の魔法術士で我々の小隊では情報担当と参謀をしてもらっています。

今回は駄女神さんの抑え役とエルフ族と人類の外交の下交渉をお願いしています。


そして、こっちがジェンカ、通称タイさんです。

炎の魔法術士で我々の小隊では指揮を執ってもらっています。

今回の訪問では俺たちと一緒に風の聖地を探す仲間です。」


「「よろしくお願い致します。」」


「タイさん、カメさん。

こちらがエルフ族の王族で、ソフロニオ王太子の次男のソシオさんです。

ちょっと前に話をしましたが、ソシオさんはソニアのエルフ側の親族に当たります。


ソニアの母さんは現国王の妹で、ソシアさんの父さんの王太子とソニアはいとこと言う関係になりますね。

ソシオさんは俺たち冒険組ですね。


そして、こちらが人類領とエルフ領の転移魔法陣、通称特一風見鶏を管理している一族の村長さんです。

人類との外交の担当行政官も兼ねています。

カメさんとは外交の下交渉をやってもらう手はずです。


ちなみに村はここから歩いて15分ぐらいのところにあります。」


「「初めまして、これから仲良くしてください。」」


「人類側のメンバーではこのタイさんと俺、エリナ、ソニア、大蜘蛛の芦高さんが冒険組です。


カメさんと行方不明で、見つかっても役に立たない可能性が特大の駄女神さんが外交の下交渉役になります。

よろしくお願いします。」


「皆さん、こんな場所で立ち話もなんなんで、村の集会場に行きませんか。


大蜘蛛様の方は子供たちが一緒に遊ぶのを大変楽しみにしていますので、集会所の脇の広場で遊んでもらっていただけませんか。」


「僕も子供たちと遊びたいんだな。でも、お仕事があるのならそっちに行くんだな。」


「芦高さん、これからエルフ領の冒険をどうどうするかの話だから本当は俺たちの話を聞いてもらいたいんだけど、芦高さんには芦高さんしかできないことがあるからな。」

「ご主人様、私にしかできないことってなんなんだな。」


「それはエルフの子供たちと親友になることじゃないかしら。」

「奥様、わかったんだな。今後どうするかは後で教えてもらうことにして、今、僕にしかできないことをやるんだな。

楽しみだな。」


「それでは、皆さん、集会場に行きましょうか。」


俺たちは歩いて、村の方に向かった。


ここは冬でも暖かい。

日を一杯に浴びた木々がこんなに大きくなるのも納得だ。


緑は人の心を癒してくれる。きっと、生命の輝きにあふれているからだろう。

昨日、魔族師団と命のやり取りをした身には、この地にあふれている生命力は本当に眩しく感じられた。


生き残ったという実感がわいてきた。


雑談しているエリナとソニアをそっと見る。


そこも生命力で溢れていた。

俺の家族、一緒に戦って、一緒に生きて帰ることができた。


昨日の戦場では感じることがなかった、生きているという輝きを見て取ることができたのだ。


一人で生命の輝きを堪能していると、タイさんが話しかけてきた。


「シュウ君、ここは輝いているわね。」

「そうですね。俺も今、生命の眩しさを感じていました。」


「私は昨日は戦場に出てはいませんが、最前線基地の殺伐とした、茶色の世界にどっぷりと浸っていました。

それが今日は、緑とそこからこぼれる日の光をいっぱいに浴びています。


生きているという喜びが心に広がってきましたわ。」


「俺は実際に戦場に出ていました。


そこは色のない世界です。光すらもないかもしれません。

あそこは死の世界、正確には最も死に近い世界といえますよね。


でもここは生命力にあふれています。

その生きる力が俺には眩しく感じられます。」


「そうですね、実際の戦場は色のない光すらも感じない特異な空間。

そのような中で何度も生き抜いてきたあなた方は生きる力で溢れています。

ここの世界に負けないぐらい。」


「タイさんも俺たちと一緒に戦ってきました。

タイさん、カメさん、そして、越後屋さん、あの人は儲け話をしている時が一番輝いていますけどね、皆さんも生きる力で輝いていますよ。」


生きる力の輝きについてタイさんと話をしながら歩いていたらもう見慣れた門の前に到着していた。

門の前には一杯のエルフの人たちで溢れていた。


精悍なパキトさん、にこやかに手を振るアイナ、アラナ姉妹、料理の途中で駆けつけてくれたのかお玉を振っている村長の奥さん。


そして、不敵に笑うカロリーナさんが不気味です。


前回お世話になったエルフの皆が待っていてくれました。

なんか、帰って来たんだなぁという懐かしい故郷に帰ってきたような気持ちにさせられました。


俺って、故郷のルーエンからは縁を切られているし、教会本山にも出入りし難いし、俺を無条件で出迎えてくれるところって少ないんですけど。


「まぁ、なんだ、甲斐性なしだからじゃな。あきらめるのじゃ。」

「泣くなシュウ、愛人兼美人秘書の俺は裏切らないぜ。だからお前も俺を熔かすなよ。」

「甲斐性なしがここまで被害を広めるとは。恐ろしいですわ、旦那様の甲斐性なしが。」


すげぇぇぇ、甲斐性なしパワーすごくね。

なんて感心している場合ではないか。

ルーエンと教会本山についてはもう仕方ないとしてあきらめるにしても、ソンバトとかこことか、俺を歓迎してくれそうなところは大事にしよう。


"あとは土の神殿や泉の神殿、旅団の基地なんかも歓迎してくれるわよ、お兄ちゃん。"


甲斐性のないお兄ちゃんですまんな、ソニア。

エルフ領では甲斐性がないことがばれないように頑張るよ。


「いや、そのことはエルフ、特にエルフのおばちゃんの間では有名になっているはずなのじゃ。


前回の訪問で村長の奥さんにそれがばれたであろう。

エルフのおばちゃんにばれたということは風の井戸端会議でエルフ領全国ネットに絶賛放映されたということじゃ。


もう、エルフの女子職校生、女子中学生はもちろん小学生の女の子からも陰で笑われておるわ。


難儀な事じゃな。」


エルフ領全国ネットで俺の甲斐性なしが絶賛放映中なんて、俺は終わったということか。


「シュウ、大変だな。

まぁ、俺は甲斐性のないシュウの愛人兼美人秘書をやめるつもりはないから、安心しろ。

だからペンチでペチャっと潰すのもなしな。」


エルフ領の緑色の生命力にあふれた光景がこの瞬間に色のない景色に変わった。


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


10/5より、「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。


この物語は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。

死神さんと旧ランク8位が結婚式のために故郷に帰ったときの物語です。

時間的には本編と同じ時の流れになっていますので、別伝としてお伝えすることにしました。


シュウが風の大精霊と会合した後の本編の進行に大きく影響してくる別伝ですので、本編ともどもよろしくお願い致します。


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