19話目 早く行こうよ、エルフ領へ すべての困難を打ち払って
俺は燃え尽きたエリナの体を支えながら、そっと耳元でささやいた。
「エリナ大丈夫? 何か無理をさせてしまったみたいだね。
しかし、駄女神さんはどうしたの。怒女神さんのはずが喜女神さんになっているよ。」ボソ
「シュウ、私もうだめ。
シュウ成分を補充しないと体が消えてなくなりそう。
さぁ、もっとキュッとして。揮発したシュウ成分を私の肺に送り込んでね。」ボソ
「おれ、そんなに臭うか?」ボソ
「違うのこれは私にとっての第2の食事なの。ちなみにお菓子が第3の食事ね。
ふぅぅぅぅっ、だいぶ楽ななったわ。
シュウありがとう。これで安心してエルフ領に行けるわね。
って、安心している場合じゃないわ。
怒女神さんの意識の方向をエルフ領に行くことに向けようとして、大変なことをしてしまったわ。」ボソ
「えっ、何があったんだ。何故に燃え尽きたんだ。」ボソ
「実は、余りに疲労したんで重要な点をかいつまんで、実際に有ったことを1/10程度に圧縮して言うわね。
怒女神さんがしつこく何故連絡をしないかと言うので、一刻も早く社を解放してエルフ領に行けるように努力しました。
そのために、連絡をする時間がありませんでしたと言ったの。」ヒソヒソ
「本当はペット魔族さんとお話を、それを基にした今後の俺たちの進む道を確認してたんだけどな。
まだこれは怒女神さんに話はできないからな。
エリナ、その辺も考えた上での対応だったんだろ、ありがとう。」ヒソヒソ
「もっと褒めても良いわよ。
そして、ご褒美に熱い抱擁とキッスを今晩寝ないでお願いね。」ボソ
「それは置いといてだ、何故にそんなに疲労したんだ。」ヒソヒソ
「一番置いといてはいけないことだからね。今晩は覚悟してね。
当然、夕食はトンカツに鰻、ニラとニンニクの炒め物、それから死神さんにもらったスッポンの〇●(シャーベット)があるからね。
当然、全部食べてもらうからね。勝手に寝れないように。
怒女神さんの方は私の話に納得しすぎたというか、それじゃ今からエルフ領に特攻だと言い出したの。
風魔法の通話では最後の方は馬のような鼻息しか聞こえなかったわ。」ヒソヒソ
「そりゃ、大変だったね。
夕食からは俺が一番大変なことになりそうだけどな。
しかし、それだけのことでどうしてそこまで疲労困憊になったんだ。」ヒソヒソ
「今すぐ、エルフ領に特攻すると言い出した喜女神さんは早くエルフ領に連れて行けと騒ぎ始めて、第23基地で暴れる寸前のようだったの。」ヒソヒソ
「もしかして口から火炎を放射したとか。」ボソ
「口ではなく右手から。ちょろっと漏れてたらしいわ。」ボソ
「それはかなりやばい状態だな。」ボソ
「私は今すぐは無理ですよと諭そうとしたら、また、怒女神さんに戻って、だから早く戦果の報告をしろと言ったんだと、今度は口からちょろっと炎が漏れ出たらしいわ。
カメさんが何とかなだめながら、できるだけ早くエルフ領に行けるようにしますからと言ったら、急に冷静になって、どうやってと擬女神さんが聞き返してきたの。
それに応えて、カメさんがそれはシュウ君しか知らないからシュウ君に聞きましょうと矛先をシュウに向けるようにしたようなの。
擬女神さんはシュウはどこだ、早くシュウを出せと、また怒女神さんになって暴れるぞと今度は口と手から火炎を出して舞っていたらしいわ。
私は、シュウは今は社の解放を準備しているので、解放が済めばシュウを呼び出せます。そして、エルフは領に行く段取りを決めましょうと言ったの。
そしたら急に喜女神さんに化けたらしくて、早くシュウに会わせろとウキウキしながら第23基地の転移魔法時の魔力溜めに充填を命じたらしいわ。」ヒソヒソ
「誰に命じたの。」ヒソヒソ
「熊元師匠に。
そして、嬉々としてここに乗り込んできたというのが今の現状。」ボソ
「つまり、怒女神さんが第23基地であはれないようにするのに、大変だってと言うことだよね。
今は全体の1/10しか話をしてもらっていないけれども、残りの9/10はすべて怒女神さんを喜女神さんに代えて、維持するのに使われたということだよね。
お疲れさんでした。」ボソ
「私の苦労が分かったでしょ。
だから今度はシュウが私のために働く番よ、今晩は。
でへへへへ。」
「何をぼそぼそと話をしているのですか。
まぁ、それは良しとしましよう。
で、シュウ信徒、エルフ領には今日の何時に出発ですか。今は13時ねぇ。
第1083基地に戻ってだから、13時30分に社の前に集合ね。
いいことわかったかしら。」
「えっ、このままいくんですか。
まだ、社の解放が終わっていませんが、ねぇ、ソニア。」
「お兄ちゃんとお姉ちゃんが何やらボソボソ、ヒソヒソしている間に解放しちゃった。」
そんなぁ、もうちょっとゆっくりでも良かったのに。
何なら一週間かけてじっくりと。
「さぁ、ここも第1085基地として唾を付けたし、戻りましょう皆さん。
そして、30分後には待ちに待ったエルフ領に出発だわ。
シュウ、エリナ、ぐずぐずしないでちゃっちゃと動くの。」
なんか俺の体も薄くなってきたような気がする。
戦勝の感傷に浸る暇など全くなく、皆で第1083基地にもどってきた。
腹減ったぞぉ。
「女神様、お腹が空いてエルフ領に行く方法が思い出せません。」
「私もシュウエキスが空になりそうで、立てません。」
「私もお菓子エネルギーが切れて、動けません。」
「何を言っているの崇高な信念の達成のためには物欲は捨てなさい。
美と慈愛と寛容の女神の教会の発展のためには、それぐらい我慢してくださいね。
どうしてもと言うのなら・・・・・。」
「「「いうのなら・・・?」」」
「私の笑顔で飢えを満たしなさい。
肉体の飢えは精神的な充足で満たされるはずです。」
「それでも腹減って動けない。」
「そんな笑顔はいらない、シュウエキスをよこせ。」
「こら、駄女神、そんな顔を見たらおかしくて余計にお菓子が食べたくなったぞ。」
「まあまあ、駄女神さんもシュウ君たちも旅団の仲間内でケンカをしないで、まずはお昼にしましょう。
キャンプ飯の他にサンドイッチと肉団子スープを作りましたの。」
天使降臨、タイさんのような人がほんとは女神をやってほしいな。
口から火を吐く女神なんて聞いたことないよ。
子供の夢を壊すな。
「まぁ、どうしてもと言うなら30分、いえ、20分、甘やかしちゃだめね、5分だけ昼食の時間を取ります。13時40分にはエルフ領に転移しますので、準備よろしく。」
「よろしくじゃねぇ。駄女神をどっかに捨ててこようか。
人類とエルフ族の未来のために。」ボソ
「まぁ、エルフ領に行けばおとなしくなるんじゃないかしら。
イケメン耐性が切れているかも知れないし。」ボソ
「私は明日の8時じゃないと出発できない。エルフ領に持ち込むお菓子を買っていないもん。」
「ソニアが行けないんじゃ、出発できないな。
しようがないな。
出発は明日以降に決定。」
「こりゃ、ちょっと待て。
なんでソニア様がいないとエルフ領に行けないんだ。」
「ソニアは俺たちの家族なんだ。
一人だけおいていけないよ。
それに前も言ったけど、あの特殊転移魔法陣を作動させるには俺の魔力の全てが必要なんだ。
今日の戦闘で使った分が戻らないとあの特殊な転移魔法装置が作動させられんぞ。
まぁ、明日までには回復すると思うから指を咥えて待っててほしいんだけど。」
「シュウ、今日戦闘で魔力なんて使ったの?
あと、特一風見鶏は強風の魔法で回せばいいので、魔力はあまり使わないし、風魔法術士の駄女神さんでも風見鶏の発動は可能だけど。」ヒソヒソ
「それを知られたら昼飯もゆっくり食えないぞ、このままじゃ。
その上、この人類の恥部に自由にエルフ領に出入りされたら、エルフ族が人類の敵に回ってしまうよ。」ボソ
「ううううつ、それじゃ仕方ない。
じゃぁ、明日の0時に出発と言うのはどうだ。」
「そんな時間に行っても、エルフ族もみんな寝ていている時間だと思いますよ。」
「何言っているんだ、シュウ。それこそ好都合じゃないか。みんなが寝ているなんて。」
「はっ?」
「寝込みを襲うんだろ、シュウも当然。」
「"も"って、俺はそんなことはしませんよ。」
「シュウ、ようく考えてみるんだ、これはチャンスだぞ。
エルフメイド戦隊なんちゃらを結成したいんだろう。
心配するな、私はエルフ女子には手を出さんからな。
エルフ男若衆専任だからな。」
は~ぁ、誰かこいつの世話をしてあげてぇぇぇぇぇ、お願いします。
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。
10/5より、「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。
この物語は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。
死神さんと旧ランク8位が結婚式のために故郷に帰ったときの物語です。
時間的には本編と同じ時の流れになっていますので、別伝としてお伝えすることにしました。
シュウが風の大精霊と会合した後の本編の進行に大きく影響してくる別伝ですので、本編ともどもよろしくお願い致します。