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18話目 怒女神様はこの世の春を謳歌(仮)

先に到着した芦高さんはすでに社の炎を消していた。

マジ、優秀な子。


あらかじめ水系の魔法を転写していたソニアもマジ、できる子。


いまだに誰も居ない方向を向いて土下座と訳の分からない言い訳をしているエリナは、まぁ、おちゃめな子。


「指揮官でありながら、本部への連絡を怠ったシュウはダメな子なのじゃ。」


うっ、鋭い。

昼寝していたんじゃないのかおばちゃん。


「だから、ダメな子には俺の様な優秀な愛人兼美人秘書が付いていないとな。


ご主人様、次はソニアを教会本山の魔力溜施設に向かわせ、祠を受け取った後に社の解放を行わせる予定です、ってな。


俺ってマジかっこえぇな。

シュウ、俺のことを惚れ直しただろう。

えっ、正直に言え。ほれ、ほれ。」


「まぁ、本当に優秀の秘書は自分で自分のことを優秀だ何て言いませんけどね。」


「姉ちゃんも忘れてたんだろ、大事なことを。

姉ちゃんはエリナのメイドなんだからちゃんとしないと。

俺の愛人のシュウが恥をかくだろ、しっかりしろよな。」


「私は今、ソニア様の秘書でございます。

奥様に着いているアーティファクトはおばばです。」


「あっ、そうか。

おばばは耄碌してないでしっかりそいつの面倒をみなよ。

駄目おばばコンビになっちまうぞ。」


「妾はそんなことは知らん。

好きで女の背中なんかに居るわけではないしのう。」


じゃぁ、そろそろ鞘氏と一緒に教会本山の宝物庫に戻るか。

かび臭い中で何百年間はゆっくりと昼寝ができるぞ。


「いや、ちょっと待っておくれ。

これからは心を入れ替えて自分の役目に励むゆえ、かび臭い宝物庫だけは勘弁してほいしのじゃ。

かび臭い剣になってしまうでのう。


ねっ、シュウ殿、シュウ御大尽殿、お願いなのじゃ。」


「ご主人様、水の使徒や巫女がまだ見つかっていない現状では、おばばを教会本山の宝物庫や泉の神殿に戻すのはまずいかと愚考致します。


まずは、水の使徒と巫女を探し出し、その者にこれまでのおばばの罪状をすべて告げて判断してもらうのがよろしいかと。


まあ、輪廻の会合に集いし者共の中心にいる者たるご主人様のご判断が最優先されることは間違いございませんが。」


「確かに、水の使徒が見つかるまではこのまま我慢した方が良いぞ、シュウ。」


まぁ、メイドさんと自称美人秘書がそういうのならそうしようかなぁ。


「妾も心を入れ替えて役目にはげむゆえ、この場でお母さまの元に送り返すのは止めてほしいのじゃ、シュウ様。」


"おばばの役目って、何だ、お兄ちゃん。"


昼寝と夜遊びだろ、日頃そう言っているもんな。


「「じゃ、役に立たない耄碌おばばは今すぐ泉の神殿へでOK?」」


「みんなぁ、そんな殺生なぁぁぁぁ。」


「いつまでもおばちゃんをからかっていても先に進まないな。

ソニア、そろそろ教会本山に行って祠を受け取ってきて、社を解放してくれるかな。」


「わかったわ、お兄ちゃん。行ってくるね。」


そう言ってソニアは社の中に入って行った。


その時俺は気付くべきだったのだ、エリナの様子を。

この世の終わりを見たような燃え尽きたような白い、影の薄い存在になっていたことに。


俺は社の中を覗いた。

ここも旅団が解放した他の社と同様にがらんとして何もなかった。

ただ、転移魔方陣の周りに多数の魔力溜が無造作に置いてあるだけだった。


「エリナ、もうすぐ社が解放できるよ。

んっ、あれ、エリナどこ行った?」


その時、目の前の転移魔方陣が淡く仄かに光った。

そして、そこには・・・・・・、何故かどなたがいました。

正確にいうと怒になった方です。今にも怒鳴り散らしそうです。


「これゃぁぁぁぁぁ、シュウ何度言ったらわかるんだぁ。

戦闘が終了したら、連絡をよこせと言っているだろうがぁぁぁぁぁ。

みんな心配してんだぞぉぉぉぉぉ、熊公以外。」


「申し訳ございませんでした。女神さまぁぁぁ。

哀れのな子羊をおゆるしくだされぇぇぇ。」


俺はジャンピング土下座をして、女神様に拝礼をした。

恕女神様、怒特攻大魔神様、御静まりください。

生贄におばちゃんをささげます。


「こりゃ。シュウ、妾を勝手に生贄にするでない。

怒女神様の生贄だったら、そうだ装飾品だ。腐っていても、女神じゃしな。

かび臭い指輪のお前が行けぇぇぇ。」


「アホか、恕女神様にかび臭い指輪をささげてどうする。

ここはねえちゃんだ。


ああよかった、かび臭くて。

危うく恕女神様の生贄にされるところだったぜ。」


「生贄と言えば、老い先短いおばば様の役目。

漸く真の役目が果たせる時が来ましたね。

さらばです、おばば様。」


「生贄役が戻って来たのじゃ。

やっぱり、この際だから多少かび臭くても理性を失った恕女神様であれば気が付くまい。


行くのじゃ、多少カビ臭い指輪よ。

お前の尊い犠牲は無駄にはしないのじゃ。」


「恕女神の生贄にぐらいなら、もう、使ってやる。

絶対、時を戻す魔法を使ってやる。

これでチャラだ。

俺は最愛のシュウと一緒に逝けるので満足だぁぁぁ。」


「何をこの期に及んで愛の告白をしておるのじゃ。

お前だけが生贄となって、怒女神の元で熔かされるのじゃ。

怒女神スペシャル炎の魔法でなぁ。


さらばじゃ。」


「シュウさん、ちゃんと連絡しないと駄目と言っているじゃない。

ほんとに心配したんだから。


このまま戦いが長引くとエルフ領に行くのが遅くなっちゃうじゃない。

そうしたら、私の美と慈愛の女神に直属のエルフ男若衆親衛隊の設立が遅くなってしまいますわ。」


そうだった、こいつはそういうやつだった。


後ろでカメさんが両手を合わせてごめんなさいをしている。


そして、何だか少し白っぽく、影の薄くなったような気がするエリナがよろけながら祠に入って来たのを俺は目の端でとらえていた。


何があったんだ。先ほどのエレナと第23基地に居た怒女神様、カメさんの間に。



「まぁ、間違いは誰にでもあります。

まして、若年の信徒には。


我が美と慈愛と寛容の女神はそのような信徒に目くじらを立てていつまでも怒りを向けるようなことは致しません。


さあ、顔を御上げなさい。我が信徒よ。

そして、私に素直な反省の気持ちを伝えておくれ。」


気持ちわりぃぃんだけど。


まぁ、恕女神のままじゃ困るからここは素直に謝ろう。


「女神様、再び勝手な振る舞いをしたことをお許しください。

本当は一番に女神様に戦勝を報告すべきでした。


しかし、緑の魔石の回収と社の探索を優先してしまったことをお許しください。」


「私は過ぎたことを攻めるつもりはございません。

次はまず私に戦況を報告してください。


いざとなったら信徒を守るために死臭の漂う戦場にて我が愛剣を振るうことを厭いません。


だから、まずは私に報告をお願いしますよ。」


「わかりました女神様。次回以降は必ず。誓って。」


「よろしい。

それでは次はそなたたちの戦勝を祝って、凱旋パレードですね。」


「凱旋パレード、ですか? 」


「そうです。エルフ領にてそなたたちの雄姿をエルフ男若衆に見せつけるのです。


そして、その雄姿にあこがれて我が美と慈愛と寛容の女神の元にはせ参じるエルフ男若衆を取り込むのです。


彼らはきっと我を守る親衛隊となってくれるでしょう。」


「それは確かにその通りです。さすが我が女神。

常に美と慈愛と寛容の女神の教会の発展をお考えなのですね。」


「今から楽しみです、親衛隊には多くのエルフ男若衆が馳せ参じるでしょう。


しかし、彼らの前には親衛隊の選抜試験という、我の厳しい審査があります。


でも、安心して。

一次選抜から漏れた者でも次の親衛隊選抜試験を目指して、エルフ男若衆牧場で自らを鍛え、出直せばいいのですから。


今から楽しみですね。そんなエルフ男若衆の雄姿を見るのはもうすぐです。


うふふ、楽しみです。


えへへへ、楽しみ。


でへへへへ、これこれ、ついに俺の世が来るぜ


ぶはははははっ、わが世の春はもうすぐじゃぁぁぁぁぁぁっ。」


カメさんよ、エリナよ。

駄女神に何を吹き込んだんだ。


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


10/5より、「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。


この物語は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。

死神さんと旧ランク8位が結婚式のために故郷に帰ったときの物語です。

時間的には本編と同じ時の流れになっていますので、別伝としてお伝えすることにしました。


シュウが風の大精霊と会合した後の本編の進行に大きく影響してくる別伝ですので、本編ともどもよろしくお願い致します。


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